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ポストゲノム研究とこれからの特許制度

2000年9月7日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
弁理士 圓谷 徹

(1)ポストゲノム研究
(2)これからの特許制度

(1) ポストゲノム研究

1)ヒトゲノムの解読作業が完了を迎えようとしている。2000年6月26日、ヒトゲノムの解読を進めてきたヒトゲノム計画の国際チームと、米国の民間企業セレーラ・ジェノミクス社との官民共同発表が行われ、国際チームは、全ヒトゲノムの約90%の解読完了を発表する一方、セレーラ社は、全ヒトゲノムの解読を終了したと宣言した。

2)もっとも、ヒトゲノムの全塩基配列が明らかになったからといって、直ちに治療薬の開発などの産業化に役立つわけではなく、得られたゲノム情報を利用した更なる発展的研究が必要である。焦点は、今や、ヒトゲノムの全体像の解明よりもむしろ、ゲノム情報を用いたポストゲノムの研究に向けられている。
具体的には、各遺伝子がコードするタンパク質の構造・機能を解析する「プロテオミクス」や、遺伝子の転写制御を研究する「トランスクリプトミクス」、さらに、遺伝情報の分析や活用により生命のシステムをコンピュータ上で解析する「バイオインフォマティクス」「In silico 生物学」といった新たな学問分野も注目されている。

3)こうした状況の中、国内での研究環境も、大きく変わろうとしている。今年度から始まった「ミレニアム計画」では、1200億円以上もの国費がポストヒトゲノムの研究に投入されるという。
理化学研究所は、今秋、横浜市にゲノム科学総合研究センターをオープンさせ、ゲノム、遺伝子、タンパク質の構造解析を広域的に行う。タンパク質の構造解析では核磁気共鳴装置を20台設置し、タンパク質の分析施設としては世界最大規模になる。
関西においても、大阪大学が、2001年度に未来医療センターを設置すると共に、ポストゲノム学等の5講座を開設した未来医療専攻を大学院に新設する予定である。また、厚生省は、ゲノムの解析情報をもとに、がんや痴呆症などに対する新薬の開発や再生医療の実用化を目指す研究所を大阪府に新設する方針を決め、2004年度にオープンさせる計画である。
このように、ポストゲノムをにらんだ新たな研究環境が国内でも整備されつつあり、今後ポストゲノムの研究において日本でも数々の重要な研究成果が生まれることが期待されている。

(2)これからの特許制度

1)こうした研究成果を特許制度によってどのように適切に保護していくかは、今後の研究の促進・活性化を図るためにも重要であり、そのためには、特許制度がとりわけ研究者・研究機関にとって分かりやすいものでなければならない。

2)特許庁は、昨年10月、遺伝子関連発明についての事例集を公表し、単一性の要件、実施可能要件、進歩性の要件について、より具体的な判断基準を示した。これは、特許性の要件をより分かりやすく明確にしたものであり、評価することができよう。

3)しかし、事例集には、今後より明確にすべき問題点も存在する。例えば、ESTsの事例についていえば、事例7では、DNA断片の発明について、全長DNAにコードされるタンパク質の機能や生理活性に関する記載がなく、それらを予測することもできない場合に、実施可能要件を満たさない例が記載されているが、実際には、ホモロジー検索等の周辺情報から機能を推認できる場合が殆どであり、全く機能未知の事例は極めて稀と思われる。また、この場合、推認された機能に基づいて進歩性についても安易に肯定されかねない。
したがって、このような場合に要件として求められる「特定の機能」についてどのように判断していくか、今後より一層明らかにしていく必要があろう。

4)取得した特許権の効力についても、分かりやすいものでなければならない。例えば、遺伝子特許の場合、明細書には当該遺伝子の特定の機能・用途に関する記載が求められるが、特許権の効力は、明細書に記載された特定の機能・用途にしか及ばないのであろうか。
また、ESTsの場合、特定の用途として、全長cDNAを取得するためのプローブとしての用途しかないのであれば、特許権を取得しても、特許権の効力は試験又は研究のためにする実施には及ばない(特69条1項)から、事実上特許権が無意義に帰する可能性もある。

5) したがって、今後、遺伝子関連発明の特許権の取得によってどのような権利行使が可能でどのような権利行使ができないのか、といった具体的な権利活用の事例まで踏み込んだかたちで、研究者・研究機関に示すことが望ましい。これによって、本来不必要な特許出願を抑制する一方、技術的貢献度の高い研究成果については特許によって適切に保護することができよう。
かつて、国内の公的研究機関が、重要な研究成果について、特許権取得に走るのは公の利益に反するという理由から権利化を断念した、ときく。こうした重要な研究成果が特許制度によって保護されなかったのは残念であり、これからは、特許制度をより一層分かりやすいものとしつつ、研究成果を特許によって適切に保護する、といったポストゲノム研究と特許制度とのより良い調和が一層求められることになろう。

以上

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