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機能性RNAについて

2008年3月3日
                        特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
                               文責:青野

 機能性RNAとは、文字通り「何らかの機能を有するRNA」のことである。RNAi(RNA干渉)が発見されてから一躍脚光を浴びることになるが、このようなRNAは以前から知られている。1980年代に、T.CechやS.Altmanらは触媒活性を有するRNA(リボザイム)が生体内に存在することを見出した(CechとAltmanはリボザイムの発見により1989年にノーベル化学賞を受賞)。これにより、タンパク質のみならずRNA自身も触媒として機能し得ることが明らかとなり、これを契機としてRNAの機能とその存在意義が大きく見直されるようになった。後に、特定の機能を有するRNAのスクリーニング法であるSELEX法(in vitro selection法)が開発されると、新たなリボザイムを創出することが可能となりリボザイムが医薬品として利用されるようになった。また、同じようにSELEX法を利用して創出できるRNAアプタマーが開発されている。RNAアプタマーは、標的物質に結合してその機能を阻害するものであり、ターゲットは核酸やタンパク質に限られず、低分子化合物、ウイルスも標的にできる。そのため、新しい医薬材料として注目されており、米国においては既にある種の治療薬として実用化されている。そしてRNAiが発見されてからは、機能性RNAの注目度が大きく高まることとなった。RNAi関連の特許出願は2001年から急激に増加しており、特許庁も、2006年に、RNAiに関する特許出願技術動向調査報告書をまとめている。

 RNAiは、標的遺伝子と相同な配列を有する二本鎖RNAを細胞内に導入すると、標的遺伝子のmRNAの相同部分が特異的に分解され、これにより遺伝子発現が抑制されるという現象であり、酵母からヒトにいたるまで多くの生物種で見られる。RNAiは、1998年にA.FireやC.Melloらにより線虫を用いた実験で初めて見出された(FireとMelloはRNAiの発見により2006年にノーベル生理学・医学賞を受賞)。細胞に導入された二本鎖RNAは、RNaseIIIの一種であるDicerによって、siRNAと名づけられた21~23merのsmallRNA断片に切断される。そして、このsiRNAとRISC複合体とによって、相補的なmRNAが分解される。RNAiは発見からわずか数年の間で、遺伝子機能解析のスタンダードなツールとして急速に普及している。また、アンチセンスやリボザイムに比して、特異性および活性が強く、医薬および医療への産業応用も急速に進展している。
 RNAi研究においては、その現象の発見からメカニズムの解明に至るまでの基礎研究の大部分が欧米主導で進められ、現在、基本特許とみられている技術に対する日本の研究の寄与は少ない。また、基礎分野の特許出願、非特許文献の数において、欧米、特に米国に比べて日本は劣位にある。欧米における、RNAiに関連する企業の数、特にベンチャー企業の数は日本を圧倒している。欧米がRNAi関連ビジネスで優位に立った一因として、大学・公的機関の基礎研究の成果をすぐに研究支援産業に移転して試薬等として使用することによりRNAi関連研究を活発化し、その成果をさらにベンチャー企業に移転して医薬品等の応用分野の研究を活性化するという体制がいち早く結成された点にある。日本でも大学・公的研究機関の成果移転をうけたRNAi関連ベンチャー企業が増えつつあるが、まだ十分ではなく事業化体制を形成するまでには至っていない。
 このようなわが国におけるRNAi分野の状況を鑑み、上記の報告書では、産学官連携の効率的な創薬基盤の確立、RNAiの利点を生かした医薬(RNAi医薬)の開発、および技術の統合を提言している。さらには、近年大きな注目を集めているnon-codingRNAを含む機能性RNA分野において、研究開発を推進する必要があると提言している。

 non-codingRNA(ncRNA)は、タンパク質に翻訳されないRNAである。ncRNAには、標的mRNAに配列特異的に作用してそのmRNAの翻訳を抑制するなどの機能を有する20塩基程度のmiRNA(microRNA)から、ヒストンの修飾を介してX染色体の不活性化に関与するXistのように長大なものまで存在する。RNAに転写されるゲノム情報のうち、97~98%がncRNAであるとされている。また、ヒトのゲノムの中でタンパク質に翻訳される領域は全体の2%であるのに対し、ncRNAの占める割合は40%にものぼる。このようにncRNAは生体内に数多く存在するものの、多くのncRNAが未解明である。しかし近年、ncRNAによる遺伝子発現調節機構が、細胞の分化・増殖、生物個体の発生に重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。また、2002年に腫瘍において特定のmiRNAの欠失、発現抑制が起きていることが判明して以来、様々な疾患への関与も報告され、疾患メカニズム解明とその治療法開発という面からも注目されている。特許出願においても、miRNAもしくはncRNAに関連する特許は、2002年頃から出願件数が急激に増加している。
 日本では、機能性RNAを推定するバイオインフォマティクス技術の開発、新たな支援技術・ツールの開発、機能性RNAの機能解析を実施する「機能性RNAプロジェクト」(経済産業省)が2005年度より5ヵ年計画で開始された(2006年度以降は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構において委託して実施)。具体的には、(1)二次構造の類似性も考慮し、機能性RNA候補をゲノム上から推測するバイオインフォマティクス技術の確立、(2)機能性RNAを高感度、定量的かつ網羅的に捉える新しい手法の確立、(3)機能性RNAをゲノムワイドに解析するためのツールの確立、を目標としている。そして、これらのツールを活用して、ヒト疾患に関連する機能性RNAおよび発生・分化などをはじめ細胞機能に重要な働きを示す機能性RNA候補の解析を行うとしている。それにより、医薬品開発や再生医療等に有用な基盤知見の取得や、基盤技術の構築を目指している。これらを通して、細胞分化誘導因子、遺伝子発現抑制因子、タンパク質翻訳調節因子等の機能を持った機能性RNAを同定し、成果をすばやく特許化することを目指している。得られた知見、新技術および成果を統合し、産学官が効率よく連携できれば、再生医療やRNA医療、遺伝子治療、疾患治療等、産業応用を促進し、新産業を創出できると考えられる。さらには、機能性RNAの研究・開発を飛躍的に進めることで、本分野における我が国の優位性を確立できる。出遅れたRNAiの轍を踏むことなく、産学官が連携して効率的な研究・開発を推進していくことを期待したい。

 RNA分野が飛躍的に発展していく中で、わが国においても、RNA研究の更なる振興を図るべく日本RNA学会が1999年に設立され、2005年には特許法第30条(新規性の喪失の例外)の適用を受けられる特許庁が指定する学術団体に認定された。これから特許出願を念頭においた研究・開発が進められることと期待される。ncRNAがどのような形で知的財産権を確保できるのかは未知であるが、産学官が連携し合い、多くの可能性を秘めているこの分野において日本が世界をリードしていくことを切に願う。

以上


参考
「平成18年度特許出願技術動向調査報告書 RNAi(RNA干渉)」、平成18年4月、特許庁
「機能性RNAプロジェクト」http://www.nedo.go.jp/activities/portal/p06011.html
「実験医学増刊 躍進するRNA研究」羊土社


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