特許事務所 輸出入差止支援室
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輸入差止申立制度とは

 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、育成者権を有する者及び不正競争差止請求権者が、自己の権利を侵害すると認める貨物が輸入されようとする場合に、税関長に対し、当該貨物の輸入を差止め、認定手続を執るべきことを申し立てる制度です(関税法第69条の13)。
 なお、知的財産権のうち、回路配置利用権については、輸入差止の申し立てが認められておりませんが、権利者からの「輸入差止情報提供」により、税関が水際での取締りを行います。
不正競争差止請求権者とは、混同惹起行為、著名表示冒用行為、形態模倣行為(不正競争防止法第2条第1項第1号~第3号)を差し止める権利(不正競争防止法第3条)を有する者をいいます。



輸入差止申立ての要件

1.権利者(知的財産権を有する者及び不正競争差止請求権者を含む)であること
 輸入差止申立てを行うことができる者は、権利者又は専用実施権者、専用使用権者若しくは専用利用権者です。権利者又は専用実施権者等の確認は、登録原簿等により行います。
 また、権利者は、弁護士・弁理士等の代理人を通じて申立手続を行うこともできます。

2.有効な権利に基づく請求であること
 権利の有効性については、特許庁等への登録により有効となるのであって(著作権、著作隣接権は除く)、登録申請中のものについては、輸入差止申立てを行うことができません。
 不正競争差止請求権者は、不正競争防止法第2条第1項第1号から3号に規定する商品等表示等であって、当該差止請求に係るものが需要者の間で広く認識されているものであること(第1、2号)等を経済産業大臣に意見を求め、意見が記載された書面を税関に提出する必要があります。

3.侵害の事実があること
 侵害の事実とは、侵害物品が現に日本国内に輸入されている場合のほか、現に存在しているかは問わず、侵害物品が日本国内に輸入されることが見込まれる場合を含みます。

4.侵害の事実を疎明できること
 侵害の事実を疎明するために、侵害物品の提示又はそのカタログ・写真等の提示が必要となります。
 また、侵害物品やカタログ等の提示だけでは、侵害していることに疑義が生じるような場合には、知的財産権を侵害していることを証する裁判所の判決書若しくは仮処分決定書、特許庁の判定書又は弁護士・弁理士等が作成した鑑定書等の提出が必要となります。運用では鑑定書よりも判定書が重視されています。

5.税関で侵害物品であることを識別できること



輸入差止申立ての手続き

 輸入差止申立てを行う場合には、税関の様式に従った申立書に必要な書類を添付して、各税関本関業務部の知的財産調査官に提出します。
 税関は、函館・東京・横浜・名古屋・大阪・神戸・門司・長崎・沖縄地区の9つのブロックに管轄が分かれており、輸入差止めを求める税関に応じた数の資料が必要となります。ただし、資料の提出は、各税関に直接する必要はなく、輸入差止申立てをしようとする者の住所(法人である場合には、その主たる事務所の所在地)を管轄する税関または侵害物品の輸入が予想される税関官署を管轄する税関に一括ですることができます。
 輸入差止申立て自体には手数料は不要です。
 また、申立ての手続きを迅速に行うことができるよう、税関に事前相談をすることができます。事前相談では、申立て要件に関する確認や申立書の記入要領等の説明を受けることができます。

 輸入差止め申立てに必要な書類
(必要書類)
①申立書(税関様式)
  主な記載事項・認定を執る税関長
        ・輸入差止申立てに係る権利の内容
         (権利の種類、登録番号及び登録年月日、権利の存続期間、権利の範囲、原権利者、実施権者等)
        ・輸入差止申立てを行う侵害すると認める物品の品名等
        ・侵害物品と認める理由
        ・識別ポイント
        ・ライセンス料の基礎となる資料
        ・輸入差止申立てが効力を有する期間として希望する期間(2年以内)
        ・予想される輸入者等
②登録原簿謄本・公報(著作権・著作隣接権については、当該権利の発生を証すべき資料。不正競争差止請求権者の場合は、経済産業大臣の意見書)
③侵害の事実を疎明する資料及びサンプル・写真等
④通関解放金の額の算定資料(特許権・実用新案権・意匠権のみ)
⑤委任状(代理人が申立手続を行う場合)

(参考資料)
①判決書・仮処分決定通知書・判定書
②弁護士・弁理士等の鑑定書
③警告書等
④係争関係資料
⑤並行輸入関係資料
⑥その他侵害物品に関する資料



輸入差止の流れ



(1)認定手続
認定手続とは、税関が、輸入申告された貨物や国際郵便物が知的財産権を侵害する物品であるかを認定するための手続です。
 認定手続が開始される場合には、その貨物等を発見した税関に所属する知的財産調査官または知的財産担当官から、権利者および輸入者に書面で通知が届きます。この通知においては、権利者には輸入者・仕出人・生産者の、輸入者には権利者の、氏名(名称)・住所が併せて通知されます。
 権利者・輸入者は、一定期間内にそれぞれ税関に対して意見を述べ、証拠を提出します。知的財産調査官・担当官は、これらの意見や証拠によって、その貨物等が知的財産権を侵害するものであるかを認定します。その結果と理由は、権利者・輸入者にそれぞれ書面で通知されます。
 認定手続にかかる期間は、早ければ開始通知から約1ヶ月程度です。権利者と輸入者の意見が対立する場合には長期化することもあります。

(2)認定手続取り止め請求
 輸入者は、認定手続開始通知書の日付の翌日から10執務日(延長された場合には20執務日。特許庁長官へ意見照会をした場合は、特許庁の回答後10日)経過後、税関に対して認定手続の取り止めを請求することができます。
 この場合、税関は輸入者に疑義貨物が権利を侵害するものであった場合に権利者が被る損害の担保として、通関解放金の供託を輸入者に命じます。



輸入差止めの流れ

仕出国(地域)別輸入差止実績(件数)
  平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 前年比 構成比

中国

9,440

16,116

21,529

18,893

20,996

111.1%

90.4%

韓国

8,720

4,527

3,287

1,480

574

38.8%

2.5%

香港

424

735

660

458

558

121.8%

2.4%

フィリピン

445

472

308

403

488

121.1%

2.1%

タイ

343

572

356

392

313

79.8%

1.3%

台湾

20

28

31

35

68

194.3%

0.3%

米国

52

37

62

75

55

73.3%

0.2%

ベトナム

44

51

32

22

36

163.6%

0.2%

トルコ

35

4

10

2

24

1200.0%

0.1%

インドネシア

10

22

16

16

19

118.8%

0.1%

上記以外の国

58

97

124

117

102

87.2%

0.4%

合計

19,591

22,661

26,415

21,893

23,233

106.1%

100%

(注1)本表は仕出国(地域)ベースであり、原産国(地域)を示すものではない。
(注2)件数は、侵害物品に係る一般輸入貨物及び輸入郵便物の件数を計上している。
(平成22年の税関における知的財産侵害物品の差止状況、財務省HPより)



仕出国(地域)別輸入差止実績(件数)
  平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 前年比 構成比

中国

452,216

694,299

699,533

847,650

515,573

60.8%

81.7%

香港

68,727

107,950

37,836

38,711

38,724

100.0%

6.1%

韓国

384,173

165,180

109,490

76,859

30,360

39.5%

4.8%

タイ

27,798

20,527

21,332

6,104

16,108

263.9%

2.6%

米国

2,987

476

2,038

4,520

7,488

165.7%

1.2%

シンガポール

572

2,733

260

850

7,168

843.3%

1.1%

フィリピン

33,187

24,531

22,177

59,840

4,980

8.3%

0.8%

台湾

587

1,506

37,136

4,817

3,096

64.3%

0.5%

マカオ

2

7

1,433

1,257

2,625

208.8%

0.4%

マレーシア

67

58

342

340

2,120

623.5%

0.3%

上記以外の国

8,908

22,091

12,464

3,074

2,446

79.6%

0.4%

合計

979,224

1,039,358

944,041

1,044,022

630,688

60.4%

100%

(注1)本表は仕出国(地域)ベースであり、原産国(地域)を示すものではない。
(注2)点数は、侵害物品に係る一般輸入貨物及び輸入郵便物の点数を計上している。
(平成22年の税関における知的財産侵害物品の差止状況、財務省HPより)



知的財産別輸入差止実績
  平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 前年比 構成比

特許権

26

15

27

15

9

60.0%

0.0%

67,211

20,787

69,472

27,314

4,258

15.6%

0.7%

実用新案権

1

0

0

0

0

-

-

4,896

0

0

0

0

-

-

意匠権

54

54

80

88

56

63.6%

0.2%

58,977

90,040

91,472

81,270

49,266

60.6%

7.8%

商標権

19,363

22,447

26,140

21,415

22,994

107.4%

98.5%

784,591

877,895

685,529

768,534

519,274

67.6%

82.3%

著作権

198

214

226

423

273

64.5%

1.2%

63,540

50,636

97,487

166,721

57,865

34.7%

9.2%

著作隣接権

1

0

1

0

0

-

-

9

0

2

0

0

-

-

育成者権

0

0

0

0

0

-

-

0

0

0

0

0

-

-

不正
競争
防止
法違
反物

周知
表示
混同
惹起

0

0

4

19

1

5.3%

0.0%

0

0

79

183

25

13.7%

0.0%

著名
表示
冒用

0

0

0

0

0

-

-

0

0

0

0

0

-

-

形態
模倣

0

0

0

0

0

-

-

0

0

0

0

0

-

-

合計

19,591

22,661

26,415

21,893

23,233

106.1%

100%

979,224

1,039,358

944,041

1,044,022

630,688

60.4%

100%

(注1)件数・点数は、侵害物品に係る一般輸入貨物及び輸入郵便物の件数・点数を計上している。
(注2)1事案で複数の知的財産侵害に当たるものがあるため、知的財産ごとの件数の合計と合計欄の件数は一致しない。
(注3)著作隣接権とは、著作物の創作者ではないが、著作物の伝達に重要な役割を果たしている実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者に認められた権利である。
(平成22年の税関における知的財産侵害物品の差止状況、財務省HPより)



輸出差止制度

 平成18年の法改正により、輸入差止とほぼ同様の仕組みが導入されました。
 輸出差止の対象となるのは、育成者権を侵害する物品、不正競争防止法第2条第1項から第3項までに掲げる行為を組成する物品、特許権・実用新案権・意匠権・商標権を侵害する物品です。
 なお、著作権・著作隣接権については、輸出差止めの申し立てが認められておりません。
 また、回路配置利用権については、輸入差止と同様、輸出差止めの申し立てが認められておりません。



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