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AIと著作権をめぐる2つの問題と、そこから見えるコンテンツ産業のこれから

20161024

文責 :  松井

技術・金融・法務、あらゆる分野に進出するAIですが、コンテンツ産業も例外ではありません。AIがレンブラントの画風を再現し、小説で文学賞を獲得し、ポップミュージックを作曲する……AI創作物に関するニュースが日々飛び込んできます。このようなAIコンテンツ時代に、何が起こるのでしょうか。


AI創作物にまつわる2つの問題

内閣の「次世代知財システム検討委員会」が平成28年4月にまとめた報告書には、AIと著作権にまつわる問題として、大きく以下の2つが挙げられています。




1. AIがインプットするデータ:ビッグデータ活用のための著作権法整備

そもそもAI(人工知能)とは、推論・判断などの知的機能を人工的に実現するための研究又はこれらの機能を備えたコンピュータのことをいいます。

我々人間にとって、「判断材料」となるのは過去の知識や経験です。AIには、知識や経験の代わりに大量のデータ(ビッグデータ)が使われています。しかし、あるいはIoTを通じて、あるいはクローラーによって自動的に収集されたデータには、著作権で保護されたものが混在します。

例えば、自動作曲の学習データ収集のため、様々な音声データを自動で収集するとします。その中には、「鳥の鳴き声」のような、著作物でないデータも入っていますし、誰かが作って死後50年経っていない音楽のような、著作物にあたるデータもあるでしょう(この期間はTPP加入によって70年に延長される可能性もあります)。

そのような膨大なデータの中から、事前許諾が必要なものを特定し、著作権者ひとりひとりの許諾を得るのは容易ではありません。

大量の著作物について事前許諾を取ることの困難さを示す例として、同報告書は国立国語研究所が公開した日本語研究用のデータベース『現代日本語書き言葉均衡コーパス』を挙げています。コーパスの編纂、一般公開に当たり、過去30年間に出版された書籍から無作為に抽出されたサンプル約2万4千件の著作権処理が必要となりましたが、5年間にわる継続的な調査にも関わらず、最終的に、著作権者の約3割については連絡が付かなかったと言われています。

このような状態では、新技術の開発が停滞することが予想されます。そこで、同報告書では、より適切な柔軟性を確保した権利制限規定をいくつか提案しています。

権利制限の柔軟性の選択肢】(同報告書より)



※1 既存の権利制限の対象となっている行為と同等と評価しうる利用についての受け皿規定

※2 著作物のデータ的利用の特徴である「著作物の表現を享受しない」態様に注目して権利制限を設けるとの考え方


(1)米国型フェア・ユース

権利制限が許容される一般的な要件を法制化し、実際にフェア・ユースに該当するかは個別事案ごとに司法判断(事後判断)される仕組み。


    【利点】
  • 現状では予測のつかないようなイノベーティブな事業や利用態様が生じた時にも制度として許容されうる。
  • 米国発のことがグローバル市場で既成事実化されている時代にあって、米国と同じ制度で競争できる。


  • 【欠点】
  • 抽象的な条文になるため予見可能性が低い。「居直り侵害」の助長につながる。
  • 日本では米国より裁判を起こす精神的ハードルが高い。

これらの欠点に対する批判を受けて、提言されたのが以下の案です。


(2)受け皿規定

  • 現在の制限規定に、「○○条から△△条までの規定に掲げる行為に準ずるようなサービスであって、・・・に照らし正当(またはやむを得ない)と認められるものについては、著作物を利用することができる」という、受け皿になるような規定を置く。

(3)C類型

「著作物の表現を享受しない」態様での利用という類型を設け、データ的利用に対応する。




2. AIがアウトプットするデータ:AI創作物を著作物として保護するか?

現在の著作権法上、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法第2条1項1号)です。AIが遠い未来に思想や感情を持つようになる可能性はあるかもしれませんが、現在のところAIは「道具」であり、同報告書によれば、現状では下記の解釈が一般的です。

    現在の知財制度上、人工知能が生成した生成物は、人工知能を人間が道具として利用して創作をしていると評価される場合には権利が発生しうる。他方で、人間の関与が創作的寄与と言えず、人工知能が自律的に生成したと評価される場合には、生成物がコンテンツであれ技術情報であれ、権利の対象にならないというのが一般的な解釈である。


すなわち、同じAI創作物でも、人間の創作的関与があるか、ないかで、権利が生じるか否かが変わってきます。

後者、すなわち、人工知能が自律的に生成した創作物について、このまま権利を認めないとどうなるでしょうか。

AIが創作したものと、人間が創作したものは、もはや見分けがつかなくなりつつあります。しかも、AIは疲れを知らず、網羅的なパターンを作り出すことができます。権利はないけれども、権利を持っているように見えるAI創作物が氾濫することになります。

さらに、AIが作ったものが著作物としてまったく保護されないとなると、AIを使ってコンテンツを作っている側が権利主張できないということのほか、もう一つ問題があります。著作権で保護されないということは、事前承諾を取る必要がなく、利用しやすいということでもあります。その結果、人間が苦労して創作したコンテンツが利用されなくなり、AI創作物の中に埋没してしまう可能性があります。

また、AIが作ったものが他人の著作物に類似する場合も考えられます。たまたま他人の楽曲と同じメロディになるのはまだしも、サンプルの元データがたまたまそのまま表れた場合、それは果たして依拠性がないといえるのでしょうか。

このような問題があるとはいえ、AIの利用は今後進んでいくと考えられています。


【想定されているAIの利用】(同報告書より)




これらの課題のなかで、どう対応すべきかは随時検討とされていますが、以下の方向性は示されています。

    ○例えば市場に提供されることで生じた価値などに着目しつつ、一定の「価値の高い」AI創作物について、それに関与する者の投資保護と促進の観点から、知財保護のあり方について具体的な検討を行う。

    ○ 制作ができるような人工知能の構築において重要なビッグデータの収集・活用に優位性を有するプラットフォーマーについて、ビジネスモデルの実態把握等を含め、その影響力について調査分析を行う。併せて、ビッグデータの蓄積・利活用の促進に向け、データ共有に関する先行事例の創出や、データ共有に係る契約の在り方について検討を進める。

    ○ AI創作物など新しい情報財と知財制度の関係について、国際的な議論を惹起する観点から、我が国における検討状況の海外発信に努める。




3. これからのコンテンツ産業、人間の戦略は?

著作権はそもそも「人間の人格から出たもの」を守る権利、という視座からすれば、AI創作物に著作権法上の保護を与えることはおかしな話だと思われるかもしれません。しかし、「文化の発展に寄与する」という法目的からすれば、人が直接作るにしても、道具(AI)を通して作るにしても、文化を作るものを経済的に守ることを暗示しています。これは発明や意匠等の創作分野すべてに言えることですが、AI創作物と人間の創作物が市場で競い合う時代、創作する人はいったいどうやって生き残ればよいのでしょうか?

ひとつは、「戦略」です。AIは大局的に物事を見るのが苦手と言われています。いくらコンテンツが量産されても、それをどう使うか、方向性を考えるのは人間の得意分野です。適切なシチュエーション・タイミングでコンテンツが使われるよう戦略を立てることが、今後ますます重要になるのではないでしょうか。

もう一つは、人間から創作されたものであること自体を価値にしていくという考え方です。人間が作ったコンテンツを「発見」「まとめ」「紹介」する、雑誌的なサービスも考えられます。コンテンツが創作者の人格又はキャラクターと結び付けられることが増え、セルフブランディング・コーポレートイメージの確立が今後ますます重要になりそうです。


AIを提供する側の人はどうでしょうか。コンテンツが量産されるとなると、他者著作物と類似になる可能性がそれだけ増えます。そのような場合に、「これはAIから作り出されたもの」と証明できることで、無用のトラブルに巻き込まれる可能性は低くなります。

また、サンプリング元のデータについても、著作権で保護されているのかいないのか、今のところはまだ気を配る必要がありそうです。著作権で保護されていないことが確実なデータだけを使うのも一手ですし、コンテンツ制作のための情報解析のためだけに使う(著作権法第47条の7)ことも考えられます。




参照

『次世代知財システム検討委員会 報告書 ~デジタル・ネットワーク化に対応する 次世代知財システム構築に向けて~』平成28年4月 知的財産戦略本部 検証・評価・企画委員会 次世代知財システム検討委員会



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