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「りそな次世代型店舗」ビジネスモデル特許の紹介

2012年1月31日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
文責:児島

1.はじめに

「ビジネス関連発明」は、1998年あたりから盛んに出願されるようになり、一時はいわゆる「ビジネスモデル」特許ブームとなっていた。その後、2000年の現行審査基準への改訂等を経て、出願件数はブーム時代に比べ減っている。しかし、ビジネス方法自体はは、ITの進歩にともなって、コンピュータを使用して行われることが多くなっており、コンピュータを用いたソフトウェア関連発明の一形態として、ブーム時代以降も引き続き出願され、特許登録にいたっている。

先週(2012年1月25日)、株式会社りそなホールディングスが取得した特許第4863717号(2006年1月12日出願、2011年11月18日登録)の特許公報が発行された。

本特許は、銀行窓口の取引の電子化に関するものである。日本経済新聞(2012年1月25日朝刊)では、「りそな銀行には1月時点で、全国約250店に次世代型システムを導入。例えば現金の振込みを行う場合、顧客の待ち時間を平均6分から3分に半減できた。現金の出し入れなどを機械でほぼすべて処理できるようになり、特許取得につながった。」と説明されている。

本稿では、最近の「ビジネス関連発明」の登録例を紹介することを目的に、本特許の特徴と共に、審査経緯を簡単に説明する。




2.本特許の特徴

特許された請求項1は以下のとおりである。


店員により操作され且つ第1の端末種別情報を含む出金要求を送信する第1の種別の端末と、預金者により操作され且つ第2の端末種別情報を含む出金要求を送信する第2の種別の端末とにネットワークを介して接続され、且つ現金を所定枚数毎に束ねて小束として保持する現金取扱機器を制御する方法であって、前記現金取扱機器からの小束の出金を要求し且つ前記第1又は第2の端末種別情報を含む出金要求を前記第1又は第2の種別の端末から受信するステップと、現時点における前記現金取扱機器の小束の在高を確認するステップと、前記小束の在高によって前記出金要求に応じることができるか判断する第1判断ステップと、前記出金要求に含まれる前記端末種別情報が、前記出金要求の要求元の端末が前記第1の種別の端末であり且つ前記出金要求の要求元の端末に前記現金取扱機器が隣接配置されていることを表しているかを、前記端末種別情報に含まれる配置情報を用いて判断する第2判断ステップと、前記第1及び第2判断ステップにおいて肯定的な判断がなされた場合には、前記現金取扱機器に前記出金要求に係る小束の出金を指示するステップと、を含む制御方法。


本特許に係る発明は、現金取扱機器を制御する方法であって、金融機関において行われる大口入出金業務の効率を安全性を保持しつつ向上させることを目的としている。

詳細には、上記のように現金取扱機器を制御することによって、大口の出金を行う場合においても、小束単位で出金されるので、金融機関の従業員による現金計数の手数を削減することができ、事務効率を向上させることができる。

また、特に、上記波線部に記載されているように、店員が操作して送信される出金要求に含まれる端末種別情報には配置情報が含まれ、この配置情報を用いて、端末種別情報が出金要求の要求元の端末に現金取扱機器が隣接配置されていることを表しているかを判断し、第1及び第2判断ステップにおいて肯定的な判断がなされた場合に現金取扱機器に出金を指示する。これにより、現金取扱機器と出金を要求する者とが離れている状態では、現金取扱機器から出金を行わないようにして、安全性を保持している。




3.審査経緯

(1)出願当初の請求項1(2006年1月12日提出)

現金を所定枚数毎に束ねて小束として保持する現金取扱機器を制御する方法であって、前記現金取扱機器からの小束の出金を要求し且つ端末種別情報を含む出金要求を端末から受信するステップと、前記現金取扱機器が前記出金要求に係る小束を出金可能であるか判断する第1判断ステップと、前記出金要求に含まれる前記端末種別情報が前記出金要求の要求元の端末に前記現金取扱機器が隣接配置されていることを表しているか判断する第2判断ステップと、前記第1及び第2判断ステップにおいて肯定的な判断がなされた場合には、前記現金取扱機器に前記出金要求に係る小束の出金を指示するステップと、を含む制御方法。



(2)拒絶理由通知書(2011年3月15日発送)

要するに、以下の理由A,Bが指摘された。(上記波線が該当箇所)


 (理由A)第36条第6項第2号違反

「現金取扱機器が前記出金要求に係る小束を出金可能であるか判断する第1判断ステップ」と記載されているが、如何なる技術を如何に用いて判断することができるのか、その技術的構成が不明である。

 (理由B)第29条第2項違反

引用文献3(特開平9-91497号公報。特に、段落番号の【0038】の記載参照)には、窓口処理機と現金処理機の接続の有無を検査することが記載されており、接続されていない場合に、他の端末で処理することは、普通に行われているものと認められる



(3)拒絶理由通知書に対応して補正した請求項1(2011年5月11日提出)

 (理由A)の解消のために、旧請求項2を追加して、以下のように補正された。


現金を所定枚数毎に束ねて小束として保持する現金取扱機器を制御する方法であって、前記現金取扱機器からの小束の出金を要求し且つ端末種別情報を含む出金要求を端末から受信するステップと、現時点における前記現金取扱機器の小束の在高を確認するステップと前記小束の在高によって前記出金要求に応じることができるか判断する第1判断ステップと、前記出金要求に含まれる前記端末種別情報が前記出金要求の要求元の端末に前記現金取扱機器が隣接配置されていることを表しているか判断する第2判断ステップと、前記第1及び第2判断ステップにおいて肯定的な判断がなされた場合には、前記現金取扱機器に前記出金要求に係る小束の出金を指示するステップと、を含む制御方法。


 (理由B)については、以下のように反論された。(上記波線が該当箇所)

引例1乃至3には、「前記出金要求に含まれる前記端末種別情報が前記出金要求の要求元の端末に前記現金取扱機器が隣接配置されていることを表しているか判断する」ような構成については開示も示唆もされていない。

この点に関し、・・・(中略)・・・。引例3の技術は、窓口処理機が現金処理機と接続されている(現金処理機を使用可能である)かを容易に認識できるようにするために、上記のような構成を採用しているのであり、安全性を確保しつつ出金を行えるようにするというような観点は無い。

一方、本請求項の構成では、出金要求の要求元の端末に現金取扱機器が隣接配置されているかを第2判断ステップにおいて判断し、上記第1及び第2判断ステップにおいて肯定的な判断がなされた場合に現金取扱機器に出金を指示している。これは、現金取扱機器と出金を要求する者とが離れている状態で現金取扱機器から出金を行ってしまうと、安全性が損なわれるという点を考慮しているためである。



(4)拒絶査定(2011年7月12日発送)

 要するに、以下の理由が指摘された。(上記波線が該当箇所)


先の引用文献3(特開平9-91497号公報:段落番号の【0038】の記載参照)には、窓口処理機と現金処理機の接続の有無及び通信エラーの有無などを判断することが記載されており、窓口処理機の近くの現金処理器が使用可能かどうかを判断できるものと認められ、現金を扱うことから、安全のため、近くの現金処理機で処理することは、当業者が容易に着想し得るものと認められる(必要ならば、例えば、参考文献1(特開2005-280811号公報。特に、段落番号の【0031】の記載参照)等の記載参照)。



(5)特許された請求項1(2011年11月8日特許査定)

拒絶査定に対して審判請求と同時に以下のように補正され、前置登録された。

この補正では、「出金要求に含まれる端末種別情報が出金要求の要求元の端末に現金取扱機器が隣接配置されていることを表しているか」の判断を、要求元の端末が第1の種別の端末である出金要求に含まれる端末種別情報に含まれる配置情報を用いて行うことが特定された。すなわち、第2判断ステップの内容が情報処理としてより明確化された。


店員により操作され且つ第1の端末種別情報を含む出金要求を送信する第1の種別の端末と、預金者により操作され且つ第2の端末種別情報を含む出金要求を送信する第2の種別の端末とにネットワークを介して接続され、且つ現金を所定枚数毎に束ねて小束として保持する現金取扱機器を制御する方法であって、前記現金取扱機器からの小束の出金を要求し且つ前記第1又は第2の端末種別情報を含む出金要求を前記第1又は第2の種別の端末から受信するステップと、現時点における前記現金取扱機器の小束の在高を確認するステップと、前記小束の在高によって前記出金要求に応じることができるか判断する第1判断ステップと、前記出金要求に含まれる前記端末種別情報が、前記出金要求の要求元の端末が前記第1の種別の端末であり且つ前記出金要求の要求元の端末に前記現金取扱機器が隣接配置されていることを表しているかを、前記端末種別情報に含まれる配置情報を用いて判断する第2判断ステップと、前記第1及び第2判断ステップにおいて肯定的な判断がなされた場合には、前記現金取扱機器に前記出金要求に係る小束の出金を指示するステップと、を含む制御方法。




4.むすび

本特許は、ビジネス関連発明ではあるが、コンピュータを用いないビジネス関連発明(いわゆる純粋ビジネス方法)ではなく、先行技術との相違点が情報処理として特定可能なものであったため、拒絶理由に対する対応は、その点を明確化すればよく、容易であったものと思われる。

本特許は、いわゆる「ビジネスモデル」特許ブーム後の出願であり、現行の審査基準を踏まえて、出願人も審査官も安定した対応ができていることが伺える。




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