1.アルゼンチン知財情報
2.アルゼンチン共和国の概要
アルゼンチン共和国(以下「アルゼンチン」と略す)は、総面積が276万654平方キロメートルで日本の約7.4倍で、約3390万人の人口を擁している。アルゼンチンは、2001年にデフォルト(債務不履行)に陥ったが、肥沃で広大な国土を持つうえに、石油や天然ガスなどの天然資源が豊富で、食料的にもエネルギー的にも、ほぼ自給自足が可能である。従って、通貨=アルゼンチンペソの安定化が図れれば、今後、高度成長に入る可能性を秘めていると考えられる。
アルゼンチンは、パリ条約(PCT条約には非加盟)、世界知的所有権機関(WIPO)を設立する条約、モンテビデオ パン アメリカン条約(Pan-AmericanConvention of Montevideo 1889)等に加盟している。
3.アルゼンチン産業財産権の概要
表1に各保護対象に共通する事項を示す。日本の各法域と共通する事項が多いが、大きな相違点として、実用新案の審査制度が採用されており、意匠の審査制度が採用されていない点が挙げられる。
表1
| |
特許(追加特許) |
実用新案 |
意匠 |
商標 |
| 現地代理人の必要性 |
要 |
| 出願言語 |
スペイン語(英語) |
| 審査制度 |
有 |
有 |
無 |
有 |
| 審査請求 |
出願日から36月 |
出願日から36月 |
無 |
無 |
| 存続期間 |
出願日から20年(追加特許は原特許権と同じ) |
出願日から10年 |
登録日から5年(5年ずつ2回延長可能) |
登録日から10年(更新可能) |
| 異議申立 |
無 |
無 |
無 |
有(広告から30日) |
| 無効審判 |
有 |
4.アルゼンチン特許制度の概要
アルゼンチンの特許法は、1864年の特許法を大幅に変更し、現在は1995年11月1日に施行された特許法が改正特許法として適用される。この改正特許法では、GATT-Trips協定の規定に適合させるべく医薬品に関する特許について5年間の期間が猶予期間として認められることになった。
アルゼンチン特許法の特許出願について、出願から特許権取得までの概要を以下に示す。
(1)出願ルート
PCT条約に非加盟であるため、国際出願で指定することはできない。このため、パリ条約の優先権主張を伴う出願ルートが有効である。
(2)特許権の種類
・通常の特許
発見、科学理論、数学方式などは発明とみなされず、公共秩序維持、人間・動物の生命健康を阻害する発明、自然界に存在する生物体・遺伝子等以外が保護対象となる。
日本と異なり、コンピュータプログラムそれ自体は特許発明とならない点に留意すべきである。なお、ソフトウェアは98年法律25036号にて著作権の対象にされている。
・追加特許
追加特許とは、基本となる発明(Main patent)に新たな主題を付加して完成させた発明である。この追加特許は、何人も受けることができるが、その発明の実施には、基本特許発明の特許権者の同意が必要となる。
追加特許の特許権の場合は、原特許権の存続期間と同じである。なお、2以上の原特許がある場合は,最後に満了する特許を原特許とみなされる。
・実用新案
実用新案は特許法に含まれており、実際に使用できる道具、日用品や装置等に関する新規な配列や形状等に関するものと定義されている。方法は実用新案の保護対象とはならない。なお、特許の場合とは異なり進歩性は要求されない。
(3)出願書類
特許出願には、以下の書類が含められる。
願書、明細書(クレーム)、必要な図面
なお、実用新案に係る特許出願の場合、図面は必須書面である。
(4)出願言語
出願言語は、スペイン語以外に英語での出願が認められる。
ただし、日本の外国語書面出願と異なり、英語による出願日から10日以内にスペイン語の翻訳文を提出する必要がある点に留意すべきである。
(5)出願公開
出願から18月経過後に出願公開される。また、早期公開請求制度がある。
日本と異なり、取下げまたは放棄された特許出願も強制的に公開される点に留意すべきである。
(6)出願の変更
・特許
特許法第23条によれば、出願の変更は,出願日後90日以内又は特許庁による変更要求日後90日以内に限り、特許出願から実用新案証出願への変更及びその逆の変更が可能である。応答期間内に提出しない場合、出願が放棄されたものとみなされる点に留意すべきである。
現在は、特許登録までに約3年~5年を要する。
・実用新案
実用新案出願についても実体審査は行われるが、新規性や産業上の利用可能性は要求される一方、進歩性の欠如は阻却事由とならない。
(7)出願の分割
分割出願の時期的制限を規定した決議NO.147が取り消されたため、出願継続中であればいつでも分割出願をすることが可能である。
(8)審査
出願人が審査請求をすると、審査官により新規性、進歩性、産業上利用性及び特許法の他の要件に出願が合致しているか否かについて審査される。
絶対新規性を採用しており、世界のいずれかの国において出願日又は優先日前に公然知られておらず、公然実施されておらず、刊行物に掲載されていない発明であることが必要である。
審査に関し、特許庁は対応出願が他の国に出願されている場合には、他の国での審査結果の情報の提出を要求することができ、この場合には90日以内にその情報を提出する必要がある。
(9)office action
審査官が、拒絶理由を発見した場合には、出願人はその拒絶理由通知の受領後60日以内に明細書の補正や意見書を提出することができる。なお、この応答期間は、料金納付により延長をすることができる。
OAの平均発行数は3件/特許出願である。
(10)特許権の発生
・手数料の納付
特許出願が許容された場合、登録料納付を条件に特許権が発生する。
(11)特許及び実用新案の無効及び失効
特許及び実用新案は、違法に付与された場合、全体的または部分的に無効とされる(第59条)。無効又は失効の訴は、適法な権利を有する何人によっても提起することができる(第64条)。
なお、特許の無効自体では、追加特許は無効とされない。ただし,当該追加特許の独立特許への変更が無効宣言の通知後90日の期限内に請求されることが前提となる(第61条)。
以上