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TPP交渉が大筋合意され、2015年10月22日にその合意内容が説明された。著作権の分野では、主として下記3点が問題となっている。

1.非親告罪化

2.保護期間の長期化

3.法定損害賠償

そこで、以下それぞれの問題点につき検討する。





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1.非親告罪化について

(1)はじめに

現在、我が国では著作権侵害の罪は、原則として*¹親告罪となっている。我が国では、日常的に著作権侵害が発生しているにもかかわらず、著作権の制限規定に該当するとして侵害にならない場合の他、侵害となっているにもかかわらず、権利者が黙認しているため、公になっていないという場合もかなり多いというのが現状である。


*¹「親告罪」とは、被害者が捜査機関に対して処罰を求める意思を示して初めて捜査がなされるというもの。



(2)非親告罪になるということの意味

  • ①捜査機関が自らの判断で、著作権侵害の捜査を行えることとなり、著作物の利用がこれまでより制限される恐れ
    → これまで制限されなかった(権利者が黙認していた)著作物の利用行為であっても、捜査機関の判断により、罰則の対象とされることも起こり得る
  • ②日本では、制限規定についてもアメリカのようないわゆるフェアユース規定が存在しない
    → 柔軟な法解釈によって、実質的に処罰に値しないような行為につき非侵害との判断を導けるのか
  • ③世界的にみても厳しい日本の著作権侵害の罰則



(3)問題点

このように非親告罪にすると言うことは、これまで認められてきた著作物の利用が制限されるということであり、文化の発展を法目的とする著作権法の趣旨を損なうおそれすらある。ここで、特に著作物の二次創作に萎縮効果を与えないようにとの配慮の下、非親告罪として扱うものを下記のように限定するとされた。

具体的には、著作権侵害において非親告罪として扱われる場合として、

(A)商業的規模であること

(B)市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与える場合であること

の2点が必要とされた。


 上記から、例えば下記のような場合は、現状通り親告罪と扱われるものと考えられる。

  • (i)所属する会社内や団体内での複製等
    → よほど大きな規模でない限り「商業的規模」には当たらないと考えられる
  • (ⅱ)コミケ等でのパロディ等の二次創作物(二次的著作物)の販売
    → 通常、原著作物の著作権者等の収益を脅かすような売上を上げるとは考えにくい

ただ、このように言っても、具体的にどの程度であれば、上記(A)(B)の要件を満たして、非親告罪と扱われるのか明確ではない。





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2.保護期間の長期化について

(1)はじめに

現在、我が国の著作権の保護期間は原則として、著作者の死後50年とされているが、下記の例外が設けられている(著作権法51条以下)。

・*²無名又は変名の著作物 = 公表後50年

・団体名義での著作物 = 公表後50年

・映画の著作物 = 公表後70年


*²「無名又は変名」とは、著作者名が明らかにされていない場合やいわゆるペンネームが用いられている場合等を指す。



(2)保護期間が70年とされることの意味と問題点

  • ①これまで50年分で済んでいた著作物使用料が20年分上乗せされる
    → 我が国の著作物使用料の国際収支は、米国を中心に2013年時点で約6200億円の赤字とされているが、この赤字幅が増大する
         ↓ただし、
    → 海外でも評価の高い日本のアニメなどの著作物使用料についてもTPP加盟国に対しては、70年分使用料が徴収できる
  • ②著作権の保護期間が切れて自由利用が可能となっている作品(パブリックドメイン)が、保護期間の延長により、自由利用が認められなくなるのではないか
    → TPP条項案には「著作権が期間満了で消滅後に、権利が復活することはない」というベルヌ条約の規定の遵守条項が入るとのことで、この点は問題ないと考えられる
  • ③いわゆる孤児著作物の問題
    → 権利者と利用許諾のための連絡が取りたくても、なかなか連絡が取れない状態が70年続くということで、その利用の促進のために裁定制度の利用(著作権法67条以下)やその手続の簡素化が期待される。


※敗戦国として負わされていた*³戦時加算は廃止される見込み

*³「戦時加算」とは戦勝国に対し、戦前の著作物の保護期間を約10年延ばすというもの。





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3.法定損害賠償について

(1)はじめに

まず、法定損害賠償とは私法上の損害賠償の一種であり、賠償額の算定について、実際の損害額を算定して計算するというものではなく、制定法の範囲内で決定するというものである。


諸外国を見ると、アメリカにおいて、一つの著作物につき750$以上30,000$未満の範囲内で、法廷が裁量により決定するとされている(ただし、被害者側が侵害者の故意を立証できた場合には150,000$を超えない範囲での賠償が認められることもあり、逆に侵害者側が自らの*⁴善意・無過失を立証できた場合には、200$を超えない額まで減額される可能性もあり得る)。その他、カナダ、中国、台湾においても法定損害賠償制度が取られている。


*⁴「善意・無過失」とは自分の加害行為について、それが加害行為であることを知らず、かつ知らなかったことにつきやむを得ない事情があること。



(2)日本でのこれまでの取扱と法定損害賠償制度導入により生じる影響

日本では、原則として、不法行為に基づく損害賠償においては実際に被害者が被った損害額を被害者の方で証明する必要があるが、著作権の損害額はその立証が容易ではないため、第114条において「損害の額の推定等」という規定が置かれている。法定損害賠償制度はこれをさらに進め、最初から著作物ひとつあたりの損害額を決めておき、その範囲内で賠償責任を負わせるものといえる。


これにより、どのようなことが言えるのかについては、

利点:

  ①権利者としては得られる賠償額が明確となる

  ②侵害者に対する抑止力が期待できる

欠点:

  ①一つの著作物につき一定の賠償額を決定したとして、その金額の妥当性の根拠が不明

  ②同じ著作物に対して、同じ者が加害を繰り返した場合に、同じ扱いとしてよいのか

  ③訴訟が頻発する恐れ



(3)法定損害賠償制度導入の問題点

(ⅰ)二次創作の自由の幅を不当に狭めるおそれ

(ⅱ)妥当な賠償額をどのように算定するのか

(ⅲ)法定損害賠償が認められる著作物として何らかの要件を求めるべきではないのか


上記(ⅲ)と関連して、アメリカにおいては法定損害賠償が認められるためには著作権侵害発生前にアメリカ合衆国著作権局に登録されているか、または侵害後であっても発行から3ケ月以内に登録された著作物であることが要件とされており、著作権侵害について無条件に法定損害賠償が適用されるわけではない。我が国においては、著作権の登録制度の利用は少なく、またそもそも権利が存在することを証明するための登録制度とはなっていない等、アメリカとは制度の相違がある。





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4.今後について

現状、TPP交渉はあくまで大筋合意に過ぎず、今後国内での著作権法の取扱が変わるためには、TPPの正式決定に基づいた国内法整備が必要となる。その際、上記で検討したような問題につき、慎重な考慮が求められるところである。


特に、非親告罪化については、非親告罪として扱うための(A)(B)の要件があいまいなままでは留保付の非親告罪としたことの意味も半減することとなる。また、法定損害賠償制度についてもその適用を認めるための適切な要件が定められなければ、訴訟の頻発という事態を招来しかねず、懸念されている二次創作に対する萎縮効果を簡単には避けられないものと思われる。





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