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米国特許出願明細書の記載およびプロセキューション時の陳述と不公正行為

特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
平成22年11月29日
(文責:新 井)

1.はじめに

不公正行為(inequitable conduct)の成否を決定する要因には二つあり、その一つは、問題の行為が当該特許の特許性判断にとって重要か(materiality)否かであり、他の一つは、問題の行為がUSPTOを欺く意図(intent)があったか否かであることが知られています。/p>

たとえば、情報開示義務(IDS)違反等が立証された場合、米国特許庁に対して不誠実な行為により特許を得たという理由でフロード(不公正行為)と判断され、特許権者は特許権を行使できなくなります(unenforceable)。/p>

出願当初明細書に記載された従来技術の内容に誤りがあったり、プロセキューション時の陳述が発明の特許性に影響を及ぼしたりする場合、情報開示義務違反等の場合と同様に、出願の際に不正行為があったものと判断され、その結果、特許権の行使が不能となる可能性があります。米国の出願当初明細書において、従来技術の記載、及び/又はプロセキューション時の陳述には細心の注意を払う必要があり、従来技術に係る不用意な記載やプロセキューション時の不用意な陳述が、後日、訴訟の段階で不公正行為と判断されることがあります。以下に、Ring Plus v. Cingular事件*1 を参照して説明します。



2.Ring Plus v. Cingular事件の概要

Ring Plus v. Cingular事件において、CAFCは、本件特許(U.S. Patent No. 7,006,608、以下608特許という。)のプロセキューション時にファイルした反論、及び出願当初の明細書において、記載された従来技術に関し不公正行為の可能性があると判断しました。原告であるRing Plus 社の出願当初明細書は、Background of Inventionにおいて、従来技術として二つの特許文献(① U.S. Pub. No. 2001/0051517 (Strietzel) および ② U.S. Patent No. 4,811,382 (Sleevi))を記載していました。


争点の608特許は、「呼び出し信号期間に電話回線上でメッセージを生成し配送するためのソフトウェアに基づくアルゴリズム及び方法」に係るものです。連邦地方裁判所(United States District Court for the Eastern District of Texas)において、本件特許は不公正行為により権利行使不能と認定されました。根拠は、出願当初明細書のBackground of Inventionにおける上記①②の特許文献に係る記載と、出願審査段階における上記①②の特許文献に係る反論にありました。これを不服とし、Ring Plus 社はCAFCに控訴しました。これに対し、CAFCは、不公正行為の上記要因の一つである「欺く意図」が十分に立証されていないとの理由で連邦地方裁判所に差し戻す判決を下しました。


(2-1) 「重要性」について

出願当初明細書のBackground of Inventionの記載によれば、上記①②の特許文献が、「電話システムはハードウェアによって動作するものに係り、いずれも、電話システムを動作させるためにアルゴリズムまたはソフトウェアを使用することを提案していない」旨、記載されていました。一方、出願審査段階において、「出願人は、上記①②の特許文献を精査した結果、発呼者と受呼者との間の電話回線が使用中でないときにメッセージが生成されることの記載がない」旨の反論を行いました。


連邦地方裁判所は、上記①の特許文献が、コンピュータ関連の要素を含むテレコミュニケーションシステムを図面に描いていると共に、このようなシステムがワイヤレスシステムやインターネットを介したシステムに組み込むことができる旨を記載していると認定しました。上記①の文献は、更に、上記システムが各手段によって実行されることを示すフローチャート(アルゴリズム)を図面に示している旨を認定しました。


また、連邦地方裁判所は、上記②の特許文献は、ソフトウェア関連の内容について明確には開示していないが、少なくとも、予め記憶されたプログラムによって制御されるデジタルスイッチシステムがよく利用されることを記載している旨、認定しました。


以上より、連邦地方裁判所は、上記①②の特許文献が、ソフトウェアによって実行されるアルゴリズムを開示していると判断できるので、特許権者による上記の記載および反論は誤っており、重要事項の不実告知に相当すると認定し、この点に関し、CAFCも同意しました。なお、CAFCにおいて、問題の上記①②の特許文献に関する本件の特許弁護士による反論は、Background of Inventionにおける記載がreasonable Examinerにとって重要であり、それゆえに審査にとって重要であったであろうことを示す最も関連深いものであると認定されました。このように、不公正行為の要因の一つである「重要性」については、連邦地方裁判所とCAFCとの間で判断は一致しています。


CAFCは、「特許弁護士は、不公正行為との疑惑を受けることなく特許性に有利な積極的反論を自由に行えるが、重要な事実に係る偽りの陳述を行うことを法律は認めておらず、今回の特許弁護士による上記反論は、特許弁護士に許される限界を超えたものである。」と判断しました。


(2-2) 「欺く意図」について

不公正行為における「欺く意図」という要因に関し、CAFCは、「上記①②の特許文献が開示する内容は、特許弁護士に開示内容がもっともらしいと信じさせるに足るくらい曖昧であり、それゆえ、被告Cingular社は、不公正行為の成立に必要な確信的立証のレベルまで審査官を欺く意図が存在したことを立証していない」との結論に達しました。


一方、「欺く意図」に係る連邦地方裁判所の判断は、CAFCとは異なり、出願当初明細書のBackground of Inventionにおける記載内容と、審査過程における反論内容とから、608特許の出願人にはUSPTOを欺こうする意図があったことが明らかであると判断し、この点に関し被告であるCingular社を支持していました。


このように、不公正行為の他の一つの要因である「欺く意図」については、連邦地方裁判所とCAFCとの間で判断は一致していません。


3.実務上の留意点

本件は、出願当初明細書のBackground of Inventionにおける記載と、審査過程においてなされた陳述とが、最新の注意を払って行われるべきであると共に、不公正行為の問題が情報開示義務違反に固有のものではなく、審査官によって考慮された従来技術に係る陳述にまで及ぶことを示しています。


この判例に鑑み、米国特許出願明細書の作成時および審査過程の反論時において、従来技術に関し不要な陳述は厳に慎むべきです。また、従来技術との差異についても、単なる類推等に基づくものはなくて事実に基づいて必要最小限度の重要事項に係る陳述にとどめるべきであって、特定の従来技術や一般的な従来技術について広く陳述することは避けるべきです。


4.欺く意図と重要性に係る関連情報

(4-1) 大法廷審理について

不公正行為に係る二つの要因である「欺く意図」と「重要性」との関係に関し(Therasense and Abbott v. Becton, Dickinson and NOVA (decided January 25, 2010)*2 )、大法廷審理が認められました。大法廷における審理事項は次のとおりであり、「欺く意図」と「重要性」との関係が明確化される予定です。



1. 不公正行為の成否判断において、「重要性」と「欺く意図」とのバランシングは変更すべきか、又は他のものと置き換えるべきか?


2. もしそうなら、どのように変更すべきか、どのようなものと置き換えるべきか? もしそうならば、フロードまたはunclean handの適正な基準とは何か?


3. 「重要性」の適正な基準とは何か? 「重要性」を定義する際、米国特許庁のルールはどのような役割を果たすべきか? 不公正行為であるとされる行為が無かった場合に、1以上のクレームに特許付与しなかったということが、「重要性」を充足するために必要か?


4. 「重要性」から「欺く意図」があったと判断するのに適切な状況とは何か?


5. 「重要性」と「欺く意図」とのバランシングは中止すべきか?


6. 他の連邦政府関係機関において適用されている「重要性」と「欺く意図」の基準であろうと、コモンローにおいて適用されている「重要性」と「欺く意図」の基準であろうと、それらは、特許において適用される「重要性」と「欺く意図」の基準の解明を助けるものとなる。


(4-2) en banc heard oral argumentについて

 なお、2010年11月9日に実施されたen banc heard oral argument in Therasense, Inc. v. Becton, Dickinson & Co.*3 *4 によれば、CAFCは、全体的に不公正行為をリフォームするために何らかの措置を講ずるようです。


CAFCは、また、“reasonable examiner” standardに反対のようであり、一旦“reasonable examiner” standardが破棄された場合、”materiality” standardがどの程度制限されるべきかに焦点を合わせるようです。


欺く意図」("intent”)については、CAFCは、不公正行為が具体的に「欺く意図」を必要とすること、及び「欺く意図」を証明するハードルが高くあるべきであることに同意しているようです。ただし、現時点では、CAFCが、制限の程度や、「欺く意図」と「重要性」とをどのように分離するかは不明です。



以 上


*1 LINK: http://www.cafc.uscourts.gov/images/stories/opinions-orders/09-1537.pdf
*2 LINK: http://www.finnegan.com/files/Publication/127f6baa-22e3-41f4-a2e2-0885c1af2a76/Presentation/PublicationAttachment/75d4607a-b472-4b54-b4eb-08f4f7cead22/09-1008%2001-25-2010.pdf
*3 http://www.paulhastings.com/assets/publications/1757.pdf?wt.mc_ID=1757.pdf
*4 http://www.patentlyo.com/files/therasense-v-becton---transcription.pdf

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