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U.S. Case Brief (59)
特許業務法人 原謙三国際特許事務所
平成22年04月26日
(文責:新 井)
Incorporation By Referenceの有効性の判断基準が示された判例
Fed. Cir.: Harari v. Hollmer, No. 09-1406 (April 19, 2010) *1
1. はじめに
他の文献を参照して引用する(incorporate by reference)ことにより、明細書の記載内容を省略することができることがあります(MPEP §2163.07(b)参照)。ただし、参照文献を特定にした上で、参照による引用(”Incorporation By Reference”)を行う旨を明細書中に記載しなければなりません(37 CFR 1.57(b)参照)。なお、優先権主張等を伴う特許出願において明細書中に記載されていない場合でも、Incorporation By Referenceが記載されているものとされます(37 CFR 1.57(a)参照)。*2
2.USPTOの判断
インターフェアランス手続において、the Board は、”Incorporation by Reference “statement が不十分であり、Harariのクレームが米国特許法第112条に規定の記述要件を充たしていないという理由に依拠し、特許付与できないと認定しました。
問題の特許出願は、一連の4つの継続出願から派生していると共に、複数の関連出願からの教示内容が組み入れられたものでした。原出願は2つの異なる特許出願を参照しているが、当時、そのうちの一つはすでに出願番号が付与されていたのに対し、他のひとつは出願番号が付与されていませんでした。
問題の特許出願において記載されていなかった内容は、Copending U.S. patent applications(Serial No. 204,175, filed June 8, 1988, by Dr. Eliyahou Harari and one entitled “Multistate EEprom Read and Write Circuits and Techniques,” filed on the same day as the present application, by Sanjay Mehrotra and Dr. Eliyahou Harari)に開示されており、これら二つの特許出願が”Incorporation by Reference “の対象とされていました。
また、問題の特許出願は、継続出願としてファイルされたことを特定する”transmittal”、親出願書類の写し、親出願を改訂する旨の自発補正書、及び先行出願においてファイルされた発明者によるデクラレーションを含んでいました。
自発補正において、明細書には出願番号、出願日、およびテキストの複数のパラグラフ、複数図面を追加する旨の補正が行われ、これらは先の出願から複写されたものでした。加えて、少なくとも部分的に先の出願に記載されている事項に係る新クレームが追加されていました。自発補正書の反論において、出願人は、これらの補正の根拠を説明していました。
これに対して、USPTOは、上記の”Incorporation by Reference“を認めず、次のように認定しました。すなわち、当初開示に鑑み、”Incorporation”という文言が原出願と同日にファイルされた特許出願を参照しているのか、あるいは問題の特許出願と同日にファイルされた特許出願を参照しているかが識別できない。The Boardは、このように”Incorporation”という文言が非常に紛らわしいので、先の出願情報を問題の特許出願明細書に盛り込むことのサポートが存在しないので、上記自発補正は新規事項を導入するものである旨を認定しました。
3.CAFCの判決
これに対して、CAFCは、以下のようにUSPTOの判断を覆しました。
『新規事項を導入しているとの理由によりUSPTOが自発補正を却下する際、The Boardは、自発補正の内容と親出願の出願時の記載内容とを比較していなかった。…中略… ’566特許出願がファイルされた時点で、Co-pendingであって同時にファイルされた’579特許出願には出願番号および出願日が付与されていなかった。このように、発明者名、および特許出願が’ 566特許出願と同日にファイルされたという事実等は、 ’566特許出願の明細書作成者に入手可能な特定情報の全てを構成していた。これらの情報は、’579特許出願の開示を明瞭に特定し566特許出願に参照により盛り込むには十分なものであった。…中略…自発補正は、それゆえ、親出願の当初開示に対して新規事項を導入するものではない。自発補正は、受理されたとき、争点の「本願特許出願」という文言を補正し、’880特許出願が有する全ての紛らわしさを解消しようとした。自発補正を親出願の当初開示と比較し損ねたことに加えて、the Boardは、”Incorporation”という文言が紛らわしい旨の決定を行う際に、誤った基準を適用した。問題の特許出願(継続出願)の最初の出願段階で、審査官はまずオリジナルの開示と自発補正とを受領した。種々の手続のうち、この段階で、”Incorporation by Reference“の文言の十分性を評価するための適正な基準は、参照により盛り込まれたものが、提出された書類に鑑み、分別のある審査官にとって明らかであるか否かである。換言すれば、「自発補正等において行われた説明にもかかわらず、分別のある審査官であれば、オリジナルの開示の文言によって非常に混乱させられたので、どの書類が”Incorporation by Reference“の対象とされていたのかを判断できなかったであろうか否かである。」
Harariは、「”Incorporation by Reference“ statementが当業者によってどのように理解されたかが正しい基準である」旨を反論しています。これに対してCAFCは、次の見解を示しています。
すなわち、『問題の”Incorporation by Reference“ statement(この陳述において実際には上記文言”Incorporation by Reference“が付与された特許以外の特許出願を参照している。)を含む「本願特許出願と同日にファイルされた」特許を有効であると認定していたとしたら、当業者であれば盛り込まれた情報を特定できたであろうか否かを懸念するであろうという点において同意する。しかしながら、本件は、上記特許とは無関係であるし、上記特許において記載することが意図されている文言も含んでいない。したがって、問題の文言を観察するための適正なレンズとは、分別のある審査官にとって確認できるものであると言える。』
以 上
*1 LINK: http://271patent.blogspot.com/search?updated-min=2010-01-01T00%3A00%3A00-06%3A00&updated-max=2011-01-01T00%3A00%3A00-06%3A00&max-results=42
*2 参照対象には、"essential material"と"non-essential material"とがあります(37 CFR 1.57(c)-(d), MPEP § 608.01(p)参照)。
(i) "essential material"
"essential material"とは、米国特許法第112条第1段落の3つの要件(記述要件、実施可能要件、及び最良実施態様要件)を満たすために必要な事項を意味し、” Incorporation By Reference”を記載していない米国特許または米国公開特許出願を参照対象文献として参照により引用することが認められます(37 CFR 1.57(c)参照)。
(ii) "non-essential material"
"non-essential material"とは、たとえば、発明の背景や従来技術の項が該当します(MPEP §608.01(p)参照)。なお、公開済の内外国特許または特許出願、権利者が共通の未公開の先行特許出願、特許以外の刊行物を参照対象として参照により引用することが可能ですが、URLを用いたハイパーリンクによる” Incorporation By Reference”は認められない(37 CFR 1.57(d))。