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先行技術文献開示制度について

2003年2月6日
原謙三国際特許事務所
弁理士 比村潤相

はじめに
従来、わが国の特許法は、米国のように特許出願時に先行技術を開示する義務を課していなかった。しかし、平成14年特許法改正において、わが国でも先行技術文献開示制度が導入されることとなった。これにより、平成14年9月1日以降に出願されたわが国の特許出願においては、原則として先行技術を開示する義務が課せられている。

(1)先行技術文献開示制度導入の理由
特許出願および審査請求件数は年々増加しているため、審査処理を迅速化する必要が高まっている。このような状況において、特許出願人が通常行っている先行技術文献調査の結果を特許庁に提出させ、その情報を特許審査に有効活用することができれば、迅速かつ的確な審査に資するものと期待される。
また、出願発明に関連する複数の先行技術文献を十分に考慮した結果として、強い特許権の付与が期待される。
そこで、特許出願人の有する先行技術文献情報を審査において有効活用すべく、先行技術文献の開示が義務化されることとなった。

(2)特許庁の制度運用に望むこと
審査基準案によれば、「個人や中小企業が出願人である場合には、出願時に特許を受けようとする発明に関連する先行技術文献情報を全く知らない可能性があるにもかかわらず、本要件違反と認められる場合に必ず拒絶理由を通知しなければならないとすれば、迅速な審査に寄与しないばかりか、これら出願人に過度の負担を課すことにもなりかねない。」とされている。つまり、先行技術文献開示義務の判断は、出願人の調査能力に応じて審査官の裁量で行われるものと予想される。

一方、大企業は調査能力が十分に備わっていると判断されることが予測される。ところが、大企業であっても、目標出願件数の増加による業務の複雑化等により、やむを得ず、先行技術を完全に把握できないまま出願に踏み切るケースも多い。よって、先行技術調査の徹底を早急に実現することが困難な大企業も存在する。
他方、本制度導入の目的は出願人の審査協力にあり、出願人に負担をかけることが目的でないことは明白である。
したがって、本制度が完全に浸透するまでの間、企業の規模にとらわれずに、「出願人の調査能力」が柔軟に解釈され、本制度が弾力的に運用されることを特許庁に切に願う次第である。

(3)特許事務所の果たす役割
上述したように、先行技術文献開示義務の判断は、出願人の調査能力に応じて審査官の裁量で行われるものと予想される。よって、中小企業や個人が出願人の場合、本制度が厳格に運用されることはないものと予想される。このような観点からすれば、本制度が中小企業や個人にまで完全に浸透しないものと考えられる。

しかし、本制度導入の理由に挙げられているが、強い特許権の取得のためには、先行技術の把握が極めて重要である。これは、適正な特許請求の範囲の作成、無駄な出願の防止、他社からの攻撃に耐えられる権利取得の観点から、先行技術をできるだけ把握することは極めて重要であるという意味と解される。

したがって、審査において本制度が厳格に適用されないといえども、特許事務所は中小企業や個人の顧客に対して先行技術の重要性を積極的にアドバイスすべきでないだろうか。

具体的にいえば、先行技術文献の提示のない出願依頼に対しては、先行技術調査を実施したか否かを必ず確認すべきであろう。さらに、調査方法を熟知していないために先行技術文献を提示できなかった依頼者に対しては、IPDL等による公報検索方法のみならず、精度の高い検索を行うコツ等を積極的にアドバイスするべきであると思う。

以上

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