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新規性喪失の例外について

2003年2月21日
原謙三国際特許事務所
弁理士 山口 充子

目次

1.新規性喪失の例外規定について
2.新規性喪失の例外規定を利用するにあたっての留意点
3.米国・欧州・中国・韓国における新規性喪失の例外規定
4.参考文献

1. 新規性喪失の例外規定について
新規性の有無の判断は出願時を基準になされます。しかしこの原則を貫くと、技術の進歩の観点から妥当でなく、また発明者に酷となる場合があるので、特許法30条で新規性喪失の例外規定が設けられています。
特許法30条は、例外として認められる以下の理由により新規性を失った後、6ヶ月以内に出願した場合に限り、新規性喪失の例外とすることを認めています。

(a) 試験
(b) 刊行物発表
(c) 電気通信回線を通じての発表
(d) 指定学術団体が開催する研究集会における発表
(e) 博覧会出品
(f) 意に反する公知

(a)から(e)の新規性喪失該当行為は特許を受ける権利を有する者が行ったものでなければなりませんが、特許を受ける権利を有する者がその権利を譲渡した場合、その承継人も特許法30条の適用を受けることができます。
この例外規定の適用により、これらの理由で公知となった発明は新規性を喪失していないとみなされ、出願された発明の新規性・進歩性の判断にあたり、引用例から除外されます。
ただし、この規定は、新規性を喪失しなかったとみなされるのみであり、出願日が遡及するものではありません。したがって、発明が公表されてから出願までの間に他の新規性喪失事由が生じれば当該出願は拒絶される点には注意しなければなりません。

2.新規性喪失の例外規定を利用するにあたっての留意点
上述したように、新規性喪失の例外規定は出願日が遡及するものではありませんので、使わないにこしたことはありませんが、利用せざるを得ない場合の留意点について述べます。

(1) 発明が新規性喪失該当行為により公知となってから6ヶ月以内に出願しなければなりませんが、この出願日は実際の日本の出願日でなければなりません。即ち、外国において同様の例外規定を適用された出願を基礎として、優先権を主張して我が国に出願する場合でも、公表が我が国出願日から6ヶ月より前であるときは、日本では例外規定の適用を受けることはできません。

(2) 国内優先権主張出願では、これに反して、先の出願について適法に新規性の例外規定をうける手続きがされていれば、後の出願でも例外規定の適用をうけることができます。

(3) 学会での発表は、特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会における発表でなければなりませんが、外国の学術団体はいまだ指定されていないので、外国の学術団体が開催する学会で発表しても、例外規定の適用をうけることができないので注意が必要です。ただし、日本の指定学術団体が共催団体の中に含まれていれば適用をうけることができます。

(4) 2001年12月から大学が特許庁長官の指定する学術団体として指定されることとなったため、学術団体として指定された大学における研究発表も学会発表と同様の取り扱いがされることとなりました。しかし、大学が開催することが必要であるため、単に大学内でする研究発表や、学部・学科で自主的に行われる博士論文、修士論文、学士論文の発表会での発表は例外規定の適用をうけることができません。

3.米国・欧州・中国・韓国における新規性喪失の例外規定
新規性の喪失の例外規定は世界の100を超える国々で設けられていますが、発明の公表から特許出願をするまでに認められる猶予期間(これをグレースピリオドといいます。)は国により異なるので注意を要します。猶予の期間、例外として認められる理由、猶予期間の優先的取り扱いの有無については以下のようになっています。

(1) 猶予期間
欧州・中国・韓国では我が国と同様6ヶ月の猶予期間が認められています。米国においては、米国特許法102条(b)で、米国出願日から一年を超える以前に「内外国で特許または刊行物公知」あるいは「米国内で公然用いられあるいは販売」された発明は特許しない旨を規定しており、この1年の期間がグレースピリオドとよばれています。しかし、米国は先発明主義を採用しており、新規性判断の基準日は発明の日となるので、米国におけるグレースピリオドは先願主義を採用している国のグレースピリオドとは違った意味を持つものとなっています。即ち、発明の日以降であれば、発明が公表されても新規性を失うことにはなりませんが、発明が公表された場合は、その日から一年以内に出願しなければ特許を受けることができないということになります。

(2) 例外として認められる理由
米国では、制限なく適用されるのに対し、欧州では、出願人等に対する明白な濫用の場合と一定の国際展示会に陳列した場合に限り、例外適用が認められています。したがって、欧州では、試験・刊行物発表・学会発表には例外規定が適用されませんので注意が必要です。また、中国では、一定の国際博覧会に展示した場合、学術会議で発表した場合、出願人の同意を得ずに他人がその内容をもらした場合に例外規定の適用があります。韓国では我が国特許法と同様の理由が規定されています。
このように、例外規定が適用される理由が国によって異なる点には注意が必要です。また、同様の理由を認めている場合でも、公表の場所や手段の制限、博覧会の範囲の差があることにも注意が必要です。

3) 猶予期間の優先的取り扱いの有無
米国・欧州・中国・韓国のいずれの国においても猶予期間に優先的取り扱いはされません。したがって、我が国特許法30条の適用をうけた我が国国内出願の一年後に優先権を主張して出願しても、当該国で例外規定の適用を受けることはできません。

4.参考文献
1)吉藤幸朔,特許法概説,有斐閣
2)岩田敬二,「各国特許法における新規性喪失の例外規定(グレースピリオド),A.I.P.P.I.,Vol.46,No.5,270頁
3)特許庁ホームページ

以上

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