発明の単一性要件に関する特許法・審査基準等の改正
2004年2月3日
原謙三国際特許事務所
特許部長、国際部長 平田 光俊
産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会が提起した発明の単一性要件の見直しは、国際的権利を出願人が円滑に取得することができることを狙いとしている。
この提起された内容を受けて、特許法第37条及び特許法施行規則第25条の8等の法律が、条約に基づく規則の第13規則(PCT第13規則)の規定を参考にして改正され、平成16年1月1日から施行されることになった。
また、発明の単一性要件に関する審査基準も併せて改訂された。
以下、改正のポイントを概括して説明する。
1.改正された条文
今回、法改正された条文は以下のとおりである。
(1) 特許法37条
(2) 実用新案法6条
(3) 特許法施行規則25条の8
(4) 実用新案法施行規則7条の2
(新)第三十七条
二以上の発明については、経済産業省令で定める技術的関係を有することにより発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するときは、一の願書で特許出願をすることができる。
※上記の経済産業省令とは、施行規則25条の8(後記)のことを指す。
(新)特許法施行規則25条の8
特許法第三十七条の経済産業省令で定める技術的関係とは、二以上の発明が同一の又は対応する 特別な技術的特徴 を有していることにより、これらの発明が単一の一般的発明概念を形成するように連関している技術的関係をいう。
2 前項に規定する特別な技術的特徴とは、発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴をいう。
3 第一項に規定する技術的関係については、二以上の発明が別個の請求項に記載されているか単一の請求項に択一的な形式によって記載されているかどうかにかかわらず、その有無を判断するものとする。
※上記施行規則25条の8、1項でいう「単一の一般的発明概念」とはPCT第13規則で規定された「a single general inventive concept」に対応している。
2.新審査基準の適用時期
単一性に関する 新審査基準は平成16年1月1日以降の出願から適用 される。
(しかし、実務としては、平成15年12月31日以前の出願における発明の単一性についても、新審査基準に即した審査官判断の示された例が散見される)
付則第二条
第一条の規定による改正後の特許法(以下「新特許法」という。)第三十七条の規定は、この法律の施行後にする特許出願について適用し、この法律の施行前にした特許出願については、なお従前の例による。
3.新審査基準の概要
1.「特別な技術的特徴(STF;special technical feature)」という概念の導入
施行規則25条の8によって、上記STFの概念が導入された。
2.単一性判断の基本的考え方
発明の単一性を判断するにあたり、上述したSTFの存否の判断を要する場合と、要しない場合とがある。
①STFの判断を要する場合
発明の単一性は、二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴(STF)を有しているかどうかで判断する。
旧37条2号に規定された「主要部が同一」か否かの判断は、同一カテゴリー(物同士あるいは方法同士)の発明についてなされたが、新審査基準では、 カテゴリーによる区別をしない 。
上記STFは、施行規則25条の8第2項により、「発明の 先行技術に対する貢献を明示 する技術的特徴をいう」と規定されている。
ここでいう先行技術とは、29条1項各号に該当する発明のこと(新規性の判断)であり、29条2項に該当する発明(進歩性の判断)を含まない。
(例1)
請求項1 A+B
請求項2 A
請求項3 B
旧基準では、上記のA,Bが共に特徴点となる場合に、請求項1の発明を特定発明として、主要部同一の考え方を適用し、単一性あり、と判断するケースも有った。
しかし、 新基準では、単一性無し 、と判断する。
なぜなら、 全請求項に貫くSTF (先行技術に対する貢献を有す)の有る範囲を単一性有りの範囲と判断するからである。
上記の場合、AをSTFとすれば、請求項1・2が単一性を満たす範囲であり、請求項3は単一性無しと判断される。したがって、この出願は37条違反となる。
一方、BをSTFとすれば、請求項1・3が単一性を満たす範囲であり、請求項2が単一性無しと判断されるため、この出願はやはり37条違反となる。
(例2)
請求項1 光源からの照明光を一部遮光する照明方法。
請求項2 光源と照明光を一部遮光する遮光部とを備えた照明装置。
請求項1・2は、異なるカテゴリー(方法と装置)の発明であるが、「照明光を一部遮光する」がSTF(先行技術に対する貢献を有す)である場合、請求項1・2は単一性ありと判断される。
(例3)
請求項1 センサ → 請求項2 請求項1のセンサは光センサである。
→ 請求項3 請求項1のセンサには、角度調整手段が設けられている。
請求項2は内的付加の限定
請求項3は外的付加の限定
この場合、請求項1のセンサがSTFを有さない(先行技術に対し新規性が無い)と判断された場合、 直列的従属系列を形成している上記請求項2までは審査する 。
直列的従属系列を形成していない上記請求項3については、審査を効率的に行なえない(例えば、従来技術のサーチ負担が大)ときに、37条違反を通知する。
②STFの判断を要しない場合(特定の関係を有する場合)
旧37条3号・4号の規定(下記)に基づく単一性判断を、新基準においても、STFの判断を要しない場合として踏襲する。下記の特定の関係を充たす発明同士はSTFを有している為、STFの存否の判断が不要となる。
ⅰ.物とその物を生産する方法、物とその物を生産する機械、器具、装置、
その他の物(旧37条3号)
ⅱ.物とその物を使用する方法、物とその物の特定の性質を専ら利用する物(旧37条3号)
ⅲ.物とその物を取り扱う方法、物とその物を取り扱う物(旧37条3号)
ⅳ.方法とその方法の実施に直接使用する機械、器具、装置、その他の物(旧37条4号)
3.実務上の留意点
①請求項1が最初に審査される
今後の審査では、発明の単一性に関し、請求項1に記載されたSTFと同じSTFを持つかどうか、およびSTFを用いない特別な場合かどうかを判断する。
このため、「 最初に審査してほしい請求項を、請求項1とする 」ことが特許庁審査官の説明で推奨された。
②単一性の判断は単一請求項内の択一的記載についても行なわれる
特許法施行規則25条の8第3項は、上記の点を明記している。
4.具体的な判断の進め方