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PCT出願と米国102条(e)

2004年2月17日
原謙三国際特許事務所
外国専門部長 新井 孝政

1.はじめに
USPTOは、1999年改正法(AIPA)において、PCT出願から発行されるUS特許が、英語で国際出願がファイルされたか否か、英語で国際公開されたか否かに無関係に、USC§102(e)の先行技術としての判断基準日を有しない旨の解釈を示していた。しかしながら、この解釈はUS Congressの意図に反すると共に、上記改正法が不明瞭である旨、指摘されていた。また、上記解釈は、外国の出願人(non-US Applicants that do not file in their country in the English language)を差別するものであった。
1999年改正法を明瞭なものにするために、"technical" amendmentsなるものが導入された。その後、USC§102(e)の最終条文が2002年11月2日に成立し、2002年12月11日にUSPTOから公式なガイドラインが発表され、その中で、PCT出願が先行技術としての効力(後願排除効)を発生する日について言及された。

2.USC§102(e)の判断基準日の意義
USC§102(e)に係る判断基準日は、防衛的な日ではなくて、他に対して攻撃的な日となる。USC§102(e)に係る判断基準日は、USC§102(a)(b)下で引用文献として使用される判断基準日よりも前でなければ意味がない。つまり、国際出願(USを指定)において、USC§102(e)下の利益(後願排除効)を出願人が享受するためには、USC§102(e)に係る判断基準日が国際出願の公開日よりも前でなければならない。さもなければ、国際公開公報は、その国際公開日をもって、USC§102(a)(b)下で引用文献となり得るのみである。

3.§102(e)の変更点
新法(35U.S.C.§102(e))の条文は次のとおり。

§102 以下の場合を除いて、何人も特許を受けることができる。
(e) 以下のいずれかに記載された発明
(1) 特許出願人による発明日よりも前に米国において他の者によって出願され、 §122(b)に基づき公開 された特許出願、又は
(2) 特許出願人による発明日よりも前に米国内において他の者によって出願され、付与された特許、ただし、§351(a)で規定される条約に基づき出願された国際出願は、米国を指定し、PCT21(2)(a)に基づき英語で公開された場合のみ、本条の目的における米国において出願された特許出願とみなす。

新法(35U.S.C.§102(e))の適用対象は、 2000年11月29日 以降のUS特許出願、およびPCT(US)出願である。

4.新§102(e)下の後願排除効
PCT21(2)(a)下で公開された国際出願は、2000年11月29日以降に出願されたものであって、英語で国際公開され、国内段階移行(§371)後にUS特許として発行された場合に限って、§102(e)(2)下において、国際出願日が先行技術としての判断基準日(後願排除効が発生する日)となる。

PCT出願のUS国内段階移行(§371)出願は、2000年11月29日以降に出願されたものであって、英語で国際公開され、特許発行前に USPTOによって出願公開(§122(b)) された場合に限って、§102(e)(1)下において、国際出願日が先行技術としての判断基準日となる。

5.新§102(e)の適用に係る留意点
新§102(e)によれば、PCT出願については、上述のように、 (1)2000年11月29日以降に出願 され、 (2)指定国にUSを含み 、及び (3)英語で公開 された場合にのみ、国際出願日が先行技術としての判断基準日とされる。

ただし、先行する仮出願や通常出願(§111に基づく通常出願)を優先権主張の基礎としている場合(パリ条約上の優先権主張を除く−ヒルマー・ドクトリン)には、その優先日(2000年11月29日前でも可:ヒルマー・ドクトリンに該当しない。)が先行技術としての判断基準日となる。
これに対して、 英語以外の言語で国際公開されたPCT出願は、たとえ国内段階移行後に§122(b)等下で公開されても、新§102(e)下の先行技術としての判断基準日を有しない。 ただし、§102(a)(b)下の先行技術としての取り扱いは受け、先行技術としての判断基準日は国際公開日である。

2000年11月29日以降に出願され、英語以外の言語で国際公開されたPCT出願に対して継続出願が行われた場合、新§102(e)下の先行技術としての判断基準日は、継続出願日となる。

なお、2000年11月28日以前に出願されたPCT出願については、旧§102(e)が適用 され、発行された特許公報は、先行技術としての判断基準日が 国内段階移行日となる。

また、2000年11月28日以前に出願されたPCT出願に基づいて 2000年11月29日以降に継続出願 をし、その後、§122(b)等下で公開され、特許発行されても、上記 継続出願日 が新§102(e)下の先行技術としての判断基準日となる。

6.早期の後願排除効を得る方策
新§102(e)下で、より早期の後願排除効を得る方策として、たとえば、 英語でPCT出願 を行ったり、あるいは 仮出願 を行ったりすることが挙げられる。費用面や翻訳期間等を考慮すると、仮出願の方が実際的な方策と言える。

仮出願を行う場合、 日本国における国内出願後、できるだけ早期に日本語で仮出願をUSPTOに対して行い、1年以内に国内優先権主張を伴う通常出願(英語出願)をファイルする ことになる。

なお、日本国において国内出願をする時間的余裕のない緊急の場合には、まず、米国に仮出願を日本語で行い(明細書のフォーマットにしなくてもよい。)、後日、国内優先権主張を伴う通常出願をファイルすることも可能。この場合、上記の仮出願及びその通常出願を優先権主張の基礎としてPCT出願を行い、日本国を指定することによって日本国における国内出願手続きも可能。

このように、日本語で仮出願を行い、1年以内に英語で通常出願を行うことによって、本願は、§122(b)下でUSPTOによって公開(英語で公開)されることになる。これにより、新§102(e)の適用を受けることが可能となり、先行技術としての判断基準日は 日本語による仮出願の出願日となる。
この場合、受理官庁をJPOとし英語でPCT出願することも可能であり、この場合、サーチ機関はEPOになるが、次のメリットがある。

1. 原則、国際サーチを行った審査官が、EP広域段階の実体審査も行う。
このため、国際サーチ結果に対する見解書において、特許性に係るポジティブな見解が示された場合、早期の権利化が期待できる。
2. サーチが漏れなく行われ、追加のサーチが行われることはないので、サーチ費用の節約が可能となる。
3. サーチの優先度が高く、権利化までの時間が短縮できる。

なお、日本語でPCT出願を行った場合、国際段階でJPOが行ったサーチとは別にEPO独自のサーチが行われるので、その分費用が嵩む。また、未処理のEuro−PCTが多いために、追加のサーチが行われるまでに時間を要し、権利化までの時間が長くなる。

仮出願に係る留意事項
通常出願時にベストモードの更新の要否を検討すること。
通常出願のクレーム事項が仮出願によってサポートされていること。
発明者が、通常出願と仮出願とで少なくとも1人共通していること。
仮出願においては、どのような優先権主張も伴うことはできない。

以 上

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