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「平成18年意匠法等の一部を改正する法律(平成18年法律第55号)」(1)
~意匠法の改正項目~

2007年2月6日
                        特許業務法人原謙三国際特許事務所
                               担当 田中 陽介

法改正の趣旨について
近年、発展途上国における産業の競争力が急速に高まっており、わが国としても国際的な制度調和の観点を踏まえた上で、産業財産権の保護の強化、権利取得の容易化を図り、国際競争力を強化することが求められている。
ここで、わが国が国際競争力を強化する上での1つの障害として、「模倣品問題」がある。特に近年は、アジア諸国から日本企業の製品のデザイン等を模倣した商品が大量に製造、輸入される等被害は深刻さを増す一方である。
そこで今回の法改正では、権利保護の強化と模倣品対策の強化を図るために、①デザインの保護強化(意匠法改正)②特許権取得の容易化(特許法改正)③ブランド保護の強化(商標法改正)④模倣品対策の強化(刑事罰の強化)が行われた。
 本稿では、上記改正点のうち、「デザインの保護の強化」(意匠法改正)の概略について説明する。

① 意匠権の存続期間の延長

(ⅰ)改正点
意匠権の存続期間が、設定登録日から20年に延長される。

(ⅱ)改正の趣旨
現行法では、意匠権の存続期間は設定登録日から15年である。しかし、優れたデザインはロングライフ化するため、魅力あるデザインは長期間に渡って保護していくことが求められる。一方、意匠法では、機械器具等の物品の形状等も対象としていることから、特許権の存続期間と大きく乖離させることは妥当ではない。従って、意匠権の存続期間を設定登録の日から20年とした。

(ⅲ)注意点
施行日(平成19年4月1日)以降の出願が対象になる。よって、現在存続中の意匠権の存続期間は15年である。

② 画面デザインの保護対象の拡充

(ⅰ)改正点
情報家電等の操作画面のデザインの保護対象が拡大される。

(ⅱ)改正の趣旨
近年の技術開発に伴い画面デザインの重要性は高まっているのに対し、現行法では保護を受けることができない画面デザインもしばしば見受けられた。かかる状況下では画面デザインの創作意欲の減退につながる。よって、画面デザインを意匠権によって保護できるものとし、模倣被害の防止を図ることとした。

(ⅲ)注意点
今回の改正により、初期画面以外の画面デザイン(例:デジタルカメラの設定画面)や、機器からの信号や操作によってその機器とは別のディスプレイ等に表示される画面デザイン(例:DVDレコーダーと接続されたテレビに表示される操作画面)についても保護を受けることが可能になる。しかし、パソコンのアプリケーションソフトの画面やインターネットの表示画面等は保護対象外である。

③ 意匠の類似概念(判断基準)の明確化

(ⅰ)改正点
意匠の類否判断は、需要者(消費者・取引業者)の視覚による美観に基づいて行うことが明確化される。

(ⅱ)改正の趣旨
最高裁判例では、意匠の類似とは一般需要者からみた美感の類否であるとされていた。一方、実務等においては創作者(デザイナー)の視点から評価を行う場合もあり、最高裁判とは異なる判断手法も混在していた。
そこで、意匠の類否判断について明確化するために、意匠の類似とは、需要者からみた意匠の美感の類否であることと規定した。

(ⅲ)注意点
 今回の法改正により、拒絶理由通知に対する応答等の中間処理においては、反論の仕方が変わってくるであろうが、出願段階では、実務上大きな変更点はないと考える。

④ 関連意匠の保護の拡充

(ⅰ)改正点
関連意匠出願が、本意匠の意匠公報発行前まで出願可能になる。

(ⅱ)改正の趣旨
最近は、製品を市場に投入後、売れ行きをみながらバリエーション製品を開発する等デザイン戦略がより多様化している。また、出願段階において予め全てのバリエーション製品を同日に出願することは困難であった。さらに、現行法では、市場投入製品から順次出願していくとする柔軟な出願方法には対応できなかった。そこで、一定期間後に出願された関連意匠であっても登録を認めることとした。

(ⅲ)注意点
本意匠出願が施行日前の出願であっても、関連意匠出願が施行日後の出願であれば、改正法が適用される。また、本意匠が秘密意匠の場合でも、最初の公報発行前であれば関連意匠出願が可能である。

⑤ 意匠法第3条の2の見直し

(ⅰ)改正点
先願意匠の公報発行前までは、先顔意匠の一部の意匠を出願することが可能になる。(但し、先願意匠と後願意匠が同一出願人である場合に限る)

(ⅱ)改正の趣旨
 デザイン開発では、先に製品全体の外観を完成させ、細部は後に完成させるという開発実態がある。また、優れたデザイン製品は、特に独自性の高い部分が模倣の対象となりやすい。そこで、創作性の高いデザイン部分を保護するため、全体意匠の出願後に先の意匠の一部を出願した場合でも、登録を認めることとした。

(ⅲ)注意点
現行法では、部分意匠→全体意匠の順番での出願する、若しくは全出願を同日にする必要があった。しかし、今回の法改正によって、先願意匠の意匠公報発行前であれば、全体意匠→部分意匠の順序での出願も可能になる。

⑥ 秘密意匠の保護の拡充

(ⅰ)改正点
第1年分の登録料の納付と同時に秘密意匠の請求をすることが可能になる。
(ⅱ)改正の趣旨
近年の審査の迅速化に伴い、出願のタイミングによっては、商品販売前に意匠公報発行により製品が開示される場合があった。そこで、審査が想定よりも迅速に行われた場合に、審査が終了した後にも秘密意匠の請求をできるようにした。

⑦ 新規性喪失の例外の適用の手続の見直し

(ⅰ)改正点
 証明書の提出期間が、出願日から30日以内に変更された。

(ⅱ)改正の趣旨
インターネット等の様々な情報媒体の増加に伴い、出願前に出願人自らが意匠を公開するケースが増加している。これにより、出願意匠に係る物品が日本国内外において公然知られた意匠となったことについて第三者からの証明書を取得することに要する手間等が増加し、証明書の準備期間が不十分になりつつあった。そこで、今回の法改正により証明書の提出期間を延長することとした。

以上

《参考文献》特許庁総務部総務課制度改正審議会編   
『平成18年意匠法等の一部改正 産業財産権法の解説』

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