優先権主張の効果に関する参考資料
2008年5月12日
特許業務法人 原謙三国際特許事務所
文責:平田
<国内優先のケース1>
実施例の追加、および請求項追加
(説明)
・基準日1の請求項
1.構成a1を備えた装置。
・基準日2の請求項・・・○は優先権主張の効果あり。×は優先権主張の効果なし
×1.構成Aを備えた装置。
○2.構成Aとして構成a1を備えた請求項1に記載の装置。
×3.構成Aとして構成a2を備えた請求項1に記載の装置。
×4.構成Aとして構成a1+a2を備えた請求項1に記載の装置。
<国内優先のケース2>
実施例追加(請求項は元のまま)
(説明)
・基準日1の請求項
1.構成Aを備えた装置。
・基準日2の請求項
×1.構成Aを備えた装置。
構成Aに含まれる構成a2を新たな実施例として追加したことにより、請求項1には優先権主張の効果が認められなくなる。
この判断は、優先権に関する以下の審査基準に基づいている。
第一国出願の出願書類の全体には記載されていなかった事項(新たな実施の形態等)を日本出願の出願書類の全体に記載したり、記載されていた事項を削除(発明特定事項の一部の削除等)する等の結果、日本出願の請求項に係る発明に、第一国出願の出願書類の全体に記載した事項の範囲を超える部分が含まれることとなる場合は、その部分については、優先権の主張の効果は認められない。(参考:東京高判平15.10.8、平成14年(行ケ)539号審決取消請求事件「人工乳首」)
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<国内優先のケース3>
上記のケース2において、基準日1に開示していた実施例a1が実施可能要件違反であり、基準日2に実施例a2を追加して初めて構成Aに係る発明が実施可能になった場合。
ケース2と同様、請求項1(構成Aを備えた装置)には優先権の効果が認められない。
1.前提となる考え
優先権主張の効果の有無がどのように判断されるかを説明する前に、その判断の必要性について前提となる考えを先ず述べる。
(1)国内優先権を利用したときに、以下に
述べる優先権主張の効果が問題となるのは、優先期間内に、特許法第29条、第29条の2、第39条に関する先行技術の存在が判明した場合、後願排除については同じく優先期間内に他人の出願の存在が判明した場合のみである。そして、国内優先権の利用によって、明細書の完成度を高めて、
記載要件の適正化を図り、権利内容を強化したことについては、優先権主張の効果がみとめられないからといって、何ら問題にされることはない。
(2)審査基準において、優先権主張の効果についての判断の基本的な考えとして挙げられているのは、次のi)~iii)である。
i) |
優先権主張の効果が認められるのは、先の出願の出願当初の明細書等(明細書のみではなく、特許請求の範囲、図面を含む。以下同様。)に記載した事項の範囲内のものである。そして、記載の範囲内かどうかの判断は、新規事項の例による。
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ii) |
優先権主張の効果の判断は、原則的には、請求項ごとに行われる。また、1つの請求項に、選択肢によって記載された事項があるときは、その選択肢ごとに判断される。 |
iii) |
新たに実施の形態が追加されている場合は、その新たに追加された部分について、優先権主張の効果が判断される。 |
(3)以上のように、
優先権主張の効果が認められるか否かは、新規事項の例によるとされており、明細書等の補正について策定されている
新規事項についての審査基準が適用されることになる。
ただし、優先権主張の効果の判断の場合と明細書等の補正の場合は、新規事項の基準を適用するにしても、状況が大きく異なる。
すなわち、明細書等の補正においては、特許請求の範囲はもちろんのこと、明細書の発明の詳細な説明や図面の一部に新規事項に該当する事項が追加されると、新規事項の追加として補正がゆるされない。しかし、国内優先権主張出願では、先の出願の明細書に対して、改良した技術事項すなわち新規事項を追加していることが通常であって、またそれが制度の趣旨に沿ったものである。
したがって、優先権主張の効果の判断においては、明細書等の一部に新規事項が追加されているからといって、出願全体について優先権主張の効果が否定されるのではなく、それぞれの請求項ごとに、新規事項の基準に照らして優先権主張の効果が認められるか否かが判断される。そして、1つの請求項であっても、発明特定事項として選択肢での記載が含まれるときは、それぞれの選択肢ごとに判断され、また、発明の実施形態が追加されている場合は、その発明における追加された実施形態に係る部分について判断される。
参考
国内優先権制度の活用ガイド ~ 有効なけんり取得のために ~
創英知的財産研究所 発行:経済産業調査会 から抜粋