サウジアラビア

サウジアラビア王国(以下「サウジアラビア」)の概要

サウジアラビアはアラビア湾に面し、人口3501万人(2020年)、GDP約7015億ドル(2020年)を数え、世界最大の石油埋蔵量を誇る中東の主要国家である。一方、サウード家を君主とし、イスラム法を遵守する絶対君主制国家でもあり、イスラムの規律は外国人にも適用されている。

主要産業は石油、LPG、石油化学であり、今のところ、石油関連以外に目立った産業の創出は見られないが、石油に代わる新エネルギー開発のための研究教育機関の設立、育成にも注力しており、今後成果が日の目を見ることが期待されている。また、サウジアラビアは、中東では大きな市場規模を持ち、しかも若年層の割合が高いため、市場としての将来性が注目されている。サウジアラビアへの日系企業進出数は、108社(外務省「海外進出日系企業拠点数調査 2021年調査結果(令和3年10月1日現在)」)である。

脱石油依存を図るとともに、知的財産権の関心が高まっており、サウジビジョン2030を掲げ、その取り組みとしてサウジ知的財産総局(SAIP)が設立された。SAIPは、各国の IP 機関との協力を 進めている。

日本への主な輸出品は原油、石油化学製品、LPGであり、日本からの主な輸入品としては自動車、電気機械、金属が挙げられる。サウジアラビアにとって、日本は輸出入共に主要貿易相手国である。

サウジアラビアは、アラビア湾沿岸地域における地域協力機構である湾岸協力会議(Gulf Cooperation Council、以下「GCC」)の加盟国であり、首都・リヤドにはGCC特許庁が置かれているなど、GCC内でも主要な地位を占めている。

 

サウジアラビアの知的財産制度の概要

サウジアラビアの知的財産制度について、各法域に共通する事項を表1に示す。

サウジアラビアでは、特許および意匠が2004年7月17日の勅令第M/27号により発出された特許、集積回路の回路配置、植物品種及び工業意匠に関する法律(以下「特許法」)により保護され、商標は、GCC商標法によって保護される。実用新案制度は存在しない。

 

【表1】

  特許 意匠 商標 実用新案
現地代理人の必要性 制度なし
出願言語 アラビア語 アラビア語 アラビア語
実体審査 あり なし あり
審査請求 あり なし なし
存続期間 出願日から20年(延長制度なし) 出願日から10年 出願日から10年、10年毎に更新可
異議申立 あり あり あり
無効審判 あり あり あり

*2021年6月 SAIPがアラビア語の知財用語集 (1st.Ver)を発行した。英語およびアラビア語からなる対訳で250以上の知財用語を含んでいる。

 

 

特許制度

出願人適格

発明者およびその承継人が出願人となりうる(特許法第8条、特許法施行規則第10条(2))。出願人がサウジアラビア居住者ではない場合、サウジアラビア居住者である代理人を任命する必要がある(特許法施行規則第8条(3))。

出願書類、言語

(i)願書、明細書、委任状、譲渡書、優先権証明書が必要(特許法施行規則第9条~第17条)。

(ii)優先権は出願と同時に主張要。

(iii)明細書には要約、詳細な説明、クレーム、必要な場合図面を記載する(特許法施行規則第11条)。

測定値はメートル法、温度は摂氏により記載する。

要約書は1頁を超えてはならない。発明の名称は7ワードを超えてはならない。

(iv)委任状(包括委任状可)および譲渡書必要。出願日から60日以内に提出、手数料支払いにより最長2ヶ月延長可。登記簿謄本は不要。

出願日が2022年12月7日以降である出願については、委任状等の領事認証は不要となり、アポスティーユを取得した書類の提出で足りる。サウジアラビア特許庁から要求があった場合は、該書類についてさらに国内官庁(Ministry of Justice)による認証を受ける必要がある。そのため、早めに書類を手配しておくことが好ましい。国内官庁(Ministry of Justice)による認証手続には、費用は発生しない。

(v)出願言語はアラビア語である。明細書、クレーム、図面および要約の英訳の添付が必要である。

(vi)2019年6月14日付の新施行規則により、英語による出願が可能となった。ただし、出願日から3月以内に正式なアラビア語訳を提出する必要がある。

(vii)クレーム数に制限はない。日本と同様のクレームの従属形式可。Jepson形式、Murkush形式、機能クレームの何れも可。

(viii)一つの発明、又は、単一の一般的発明概念を構成するように関連する複数の発明を一出願に包含可能。単一性違反は無効理由にはならない。

(ix)電子出願が可能である。

出願ルート

サウジアラビアはパリ条約同盟国であり、GCC加盟国である。また、2013年8月にPCTに加盟し、2015年1月からサウジアラビアへの国内移行が受け付けられている。よって、優先権を主張する場合、

  • ①パリルートを利用してサウジアラビアに出願すること、
  • ②パリルートを利用してGCCへ出願すること、
  • ③PCT出願を行い、サウジアラビアを指定すること

により保護を求めることができる。GCCにおいて登録された場合は、サウジアラビアのみならず、GCC加盟6カ国全てにおいて特許権の効力が及ぶ。

注)GCC特許庁は、2021年1月6日、新規特許出願の受付を停止する旨を発表した。 2023年1月1日、クウェートおよびバーレーンについては特許出願の受付および審査を再開したが、サウジアラビアについては上記②の利用はできなくなっており、パリルートでの直接出願、またはPCTルートによって権利化を図る必要が生じている。GCC係属中の出願については、審査が継続される。

サウジアラビアが、特許出願の受付、審査、特許付与の全部または一部をGCC特許庁に要請した場合は、②が利用できることになるが、現時点では要請の有無は不明。

PCT出願の国内移行期限は、優先日から30月である。

サウジアラビア特許庁は、国際調査機関、国際予備審査機関に指定されている。

出願から登録までの流れ

①方式審査

 特許は、アブドゥラジズ王科学技術都市(KACST)内の特許総局(特許庁)が所管している。
 特許庁は出願後直ちに方式審査を行い、要件を満たしていれば、出願番号が割り当てられ、出願日が確定する(特許法第12条、特許法施行規則第8条(2))。出願が形式的に整っていれば、通常、優先日を確保可能。

 開庁日は日曜日~木曜日である。ラマダン時の労働時間の短縮、突然定められる祝日等の制約があるため、早め早めの対応が望ましい。

 毎年1~3月の間に出願維持年金の支払が必要。期間を徒過した場合、4~6月に、追加料金と共に支払可能。

 PCT出願のサウジアラビア移行件については、移行後の初回年金納付期限(移行翌年の1/1~3/31)に、国際出願日を起算点とした累積年金の納付の納付が必要。

②出願公開

 公開手数料納付を条件として、出願日から18ヶ月以内に公開される。(特許法第11条)。

③実体審査

(i)所定の公告手数料が出願人に通知され、通知の日から3月以内に納付要。納付しない場合は、出願は拒絶され、このことが登録簿に記載され、かつ、公報に公告される(特許法施行規則第35条)。

(ii)実体審査に必要な費用が出願人に通知され、通知の日から3月以内に該費用を納付することにより、サウジアラビア特許庁にて実体審査が開始される(特許法施行規則第35条)。そのため、実質的に審査請求制度があると言える。納付しない場合は、出願は失効し、このことが登録簿に記載され、かつ、公報に公告される(特許法施行規則第35条)。

 出願日から1st OA送達までの平均期間は約12~18か月、出願日から審査査定日までの平均期間は約20~26ヶ月である。2021年の特許出願件数は3979件、登録件数は1746件。

④早期審査

(i)出願人は、保護の内容が侵害されているか又は保護の内容の侵害が急迫している旨の請求を、法第35 条~39 条に規定する法律家3 名及び技術専門家2 名から構成される委員会に行うことができ、委員会は審査を迅速に行うよう、特許庁に要求できる(特許法施行規則41条)。

(ii)米国特許庁、韓国特許庁、中国特許庁、および日本特許庁との間で、特許審査ハイウェイ(PPH)試行プログラムを利用可能。ただし、対象は、物理学、土木、機械および冶金に関する特許出願に限られている。

⑤自発補正

 特許査定まで可能。補正は明細書に記載された範囲内で行うことができる。

⑥特許要件

・新規性
 出願日または優先日前に先行技術によって予期されないことを要する(特許法第44条(a))。地理的要件は、国内・国外を問わない。

・新規性喪失の例外
 以下の場合新規性を喪失しない(特許法施行規則第30条)。
(i)出願人又はその前権利者に対する濫用行為により、出願日又は優先日に先立つ6月間に開示された場合。
(ii)出願日に先立つ1年の間に、パリ同盟国の1における公認の国際博覧会での展示の結果として開示された場合。

・進歩性
 当該特許出願に関係する先行技術に関して、当該技術の当業者にとって自明でない場合は、進歩性を有するものとみなされる(特許法第44条(b))。進歩性は関係文献に由来する技術における平均的な者の知識の利用を通じて評価される(特許法施行規則第36条(f))。

・産業上の利用可能性
 発明は、「製品、工業的方法又はその何れかに関連するものであればよい」とされている(特許法第43条)。つまり、新規な一切の物、製法または物もしくは製法の改良が含まれ、 医薬発明も保護される。

 手工芸、漁業及びサービス業を含む何れかの種類の産業又は農業において製造又は使用することができる場合は、産業上利用可能とみなされる(特許法第44条(c))。

・不特許事由
 以下のものは特許を受けることができない。(i)は特有の事項である。手術、治療、診断方法については、動物が対象であっても不特許事由となる。植物品種は、植物品種育成者権によって保護されうる。

(i)商業利用がイスラム法に反するもの
(ii)商業利用が生命、または人、動物もしくは植物の健康に有害であるもの、または環境に相当程度有害であるもの
(iii)発見、科学的理論および数学的方法
(iv)商業活動、精神活動、またはゲームを行うための計画、規則および方法
(v)植物品種、動物品種、又は、植物若しくは動物を生産するために用いられる生物学的方法。ただし、微生物学的方法及びそれにより得られる物質は除く。
(vi)人又は動物の身体の外科治療又は診断の方法、及び、人又は動物の身体について用いられる診断方法。ただし、これらの方法において用いられる製品を除く。

⑦拒絶理由通知
(i)実体審査の結果は出願人に通知され、出願人は通知の日付から3月以内に応答することができる(特許法施行規則第42条(4))。応答期間は1ヶ月延長が可能。延長庁費用及び延長理由の陳述は不要。審査官との電話インタビューが可能である。
(ii)再び拒絶理由が通知され、応答したが特許付与の条件を満たさないことが判明した場合、出願を拒絶する旨の決定がなされる(特許法第14条)。
(iii)決定に対しては、法律専門家および技術専門家から構成される委員会に不服申立を行うことができる(特許法第35条、36条)。

⑧分割出願・出願の変更
分割出願は特許査定までは可能(特許法第46条)。出願の変更は制度がないため不可。

⑨特許権の存続期間
拒絶理由が解消し、公告手数料が納付されると、保護書類が発行され、公報に公告される。特許権の存続期間は出願日から20年である(特許法第19条(a))。樹木については25年認められる。存続期間の延長登録制度はない。年金は、出願した年の翌年の1月1日までに納付する必要があり、それ以降も毎年、翌年の1月1日までに納付する必要がある。

⑩異議申立・無効審判
付与後異議申立制度、無効審判制度が存在する(特許法第32条)。利害関係人は⑦に記載の委員会に対し、全部または一部の取り消しを求めることができる。

特許異議申立期間は、登録公告日から90日以内。

委員会の決定に不服の場合は、当該決定の通知の日から60 日以内に、不服申立審議会に提起することができる(特許法第37条)。提起しない場合は、委員会の決定が最終決定となる。

⑪第三者による情報提供制度
制度が存在しないため不可。

⑫訂正審判
制度なし。

⑬実施義務
特許権者が特許を出願日から4年間又は付与された日から3年間のいずれか先に期限を迎える期間にわたり、正当な理由なく、自らの発明を利用していないか、これを十分に利用していない場合、利害関係人の申請により、強制実施権付与の対象となりうる(特許法第24条第1項(a))。

⑭実施行為
物の発明の場合、その物の製造、販売、販売の申し出、使用、保管またはそのいずれかを目的とする輸入が該当する。工業的方法の発明の場合、方法の使用に加え、当該方法により製造された製品に関する上記行為が該当する。正当権原のない者による実施は特許権侵害となる。
特許権侵害に対しては自由刑または約600万円以下の罰金刑が科される。

⑮微生物の国際寄託
ブタペスト条約を批准しているため、国際寄託当局に微生物を寄託することにより、寄託の要件を充足した特許出願を行うことができる。

 

 

意匠制度

サウジアラビアにおいて、意匠法は特許法の一部として規定されており、「工業意匠」が保護対象とされている。なお、工業意匠は、「2次元の線若しくは色彩又は3次元の形状であって、工業製品又は伝統工芸品に特別の外観を与えるもの。ただし、これが織物意匠を含め、単に機能的又は技術的な目的のみのものでないことを条件とする。」と定義されている(特許法第2条)。

以下、サウジアラビアの意匠制度について概説する。特許と共通するところは省略した。

出願書類(特許法施行規則第25条)

願書、工業意匠のデータ、および他の関連する全ての添付書類、並びに保護を求める工業意匠の図(画像および図面)が必要とされる。

「工業意匠のデータ」とは、工業意匠の説明、ロカルノ分類に基づく製品の種類、国際工業意匠分類などを記載するための書面である。

出願ルート

GCCでは特許出願しか扱っていないため、優先権を主張する場合、パリルートを利用してサウジアラビアへ出願することになる。優先期間は6ヶ月である。

出願から登録までの流れ

①出願公開

出願公開制度は採用されていない。

②実体審査

実体審査制度は存在しない(特許法第13条)。方式要件を満たせば、登録費用を支払うことによって登録される。登録表示は不要。
保護期間は出願日から10年。

③意匠に特有の制度

部分意匠制度、関連意匠制度、組物の意匠制度、秘密意匠制度のいずれも存在しない。

④登録要件

・新規性
 出願日または優先日前に使用又はその他の方法で何れかの場所において目に見える形での公表により公衆に開示されたことがないことを要する(特許法第59条)。地理的要件は、国内・国外を問わない。

・新規性喪失の例外
 権利濫用による開示については特許と同様。パリ同盟国の1における公認の国際博覧会での展示については、出願日に先立つ6月の間が時期的要件となる(特許法施行規則第30条)。

・不登録事由(特許法第4条)
(i)商業利用がイスラム法に反するもの
(ii)商業利用が生命、または人、動物もしくは植物の健康に有害であるもの、または環境に相当程度有害であるもの

・異議申立、無効審判
 特許に準ずる(特許法第32条)。無審査登録制度であるため、登録要件を満たさない場合、異議申立または無効審判を活用することになる。

 

 

商標制度

以下、サウジアラビアの商標制度を概説する。サウジアラビアは、従来、2002年商標法が施行されていた。しかし、湾岸協力会議(GCC)商標法および施行規則を導入し、2016年9月29日に発行した。

※GCC商標法は、GCC加盟国の商標制度を統一しようとするものであり、GCC加盟国の全てが参加している。

※GCC商標法に基づきサウジアラビアで商標登録を受けた場合も、他の加盟国で登録を受けたい場合には個別に出願をする必要がある。

出願人適格

  • ①GCC加盟国の国民である自然人または法人。これには、製造者、生産者、小売店、職人およびサービス提供者が含まれる
  • ②GCC加盟国の在留外国人であって、商業活動、工業活動、職人的活動またはサービス提供活動に従事する免許を持っている者
  • ③GCC加盟国が加盟している多国間国際協定の加盟国の外国人または在留外国人
  • ④公共機関

サウジアラビアはパリ条約、WTOに加盟しているため、日本国民は出願人適格を有する。

保護対象

GCC商標法導入により、伝統的商標に加え、色彩、音、匂いなどの非伝統的商標の登録も認められるようになった。GCC商標法2条では、商標を次のように定義している。

「商標とは、 名称、語、署名、文字、象徴、数字、題名、印章、図面、図画、銘刻、包装、図形的要素、形状、色、色群もしくはこれらの組み合わせ、または記号もしくは記号群等の識別的形状を有するものであって、ある事業の商品もしくはサービスを他の事業の商品もしくはサービスから区別するために使用されるもの、もしくは当該使用を目的とするもの、またはあるサービスの識別を目的とするもの、もしくは商品もしくはサービスに係る証明商標として意図されるものとみなされるものとする。 音響標章 または匂いの標章は、商標とみなされることがある。」

2020年8月25日
後述のGCC統一商標法に基づき、サウジアラビア知的財産庁が初めて音の商標の登録証を発行した。

サウジアラビアで登録を受けようする音の商標がユニークで識別力があるという条件で、出願人は音譜あるいはMP3ファイルを提出することができる。

 

出願書類、言語

願書に、書誌的事項の他、登録を求める商標の複製、登録を求める商標の説明、商品または役務およびその区分などを記載・添付する。

団体商標制度があり、団体商標の出願に際しては、登録を求める組合または公社の規約の写真複写などを提出することが要求される。

出願言語はアラビア語である。
  商標が1語以上の外国語を含む場合、その公認のアラビア語訳およびその語の発音表記を示さなければならない。

一出願多区分制度はない。一出願一区分制度である。

サウジアラビアは、ニース協定へ正式加盟したことから、ニース協定の分類を第11版から正式に採用し、商品及び役務の分類を行っている。ただし、33類ワイン、スピリッツおよびリキュールの他、32類のアルコール製品、29類の豚肉等、一部の商品および役務に関する商標の登録は認められない。

 

出願ルート

サウジアラビアの締約国となっている多国間国際条約の締約国、又は、サウジアラビアと相互主義の取決めを有する他の国において行った先の出願を根拠として、優先権を主張可能。

サウジアラビアはマドリッド協定議定書には加盟していない。

 

出願から登録までの流れ

①出願公開

 制度がないため、行われない。

②実体審査

 審査請求制度はない。主な不登録事由例は下記のとおりである。

  • 識別性を欠く標章、または商品、サービス、図面の確立された用途もしくは商品のありのままの図によって与えられる名称にすぎないデータで構成される標章
  • 公共の道徳または秩序に反する表現、図面または記号
  • GCC加盟国その他の国、アラブもしくは国際的な組織もしくは関連機関の公的スローガン、旗、軍勲章もしくは名誉勲章および他の国内外の標章、硬貨および銀行券その他の象徴、またはこれらの模倣
  • 赤新月社または赤十字社のロゴならびに他の同様の象徴およびその模倣にあたる標章
  • 同一または類似の商品またはサービスについて第三者が登録または出願している標章と同一または類似の標章であって、当該新標章が意図される通りに登録されると、それが登録済み商標の所有者の商品およびサービスと関係しているかのような印象が作り出され、当該所有者の不利益となるもの
  • 第三者の周知の標章またはその一部の写し、模倣または翻訳にすぎないとみなされる標章であって、当該周知商標によって区別される商品またはサービスと同一または類似のものを区別するための使用が意図されているもの

③オフィスアクション

 出願日から90日以内に、出願が登録要件を満たす場合は出願を承認する決定がなされ、満たさない場合は拒絶理由が通知される。
 拒絶理由通知に対しては90日以内に応答でき、拒絶の決定がなされたときは、決定の通知の日から60日以内に商業相に不服申立を行うことができる。

④商標権の発生・存続期間・異議申立

・付与前異議申立制度が存在する。利害関係人は、公告の日から60日以内に、SAIPに対し異議申立を行うことができる。この場合、異議申立書の写しを添えて商標局にも異議を通知しなければならない。これにより、商標局は不服審査委員会が異議に関する最終決定を下すまで処理を停止する。
・商標登録を承認する決定が確定すると、登録簿に登録され、商法権が発生する(商標法第16条)。存続期間は出願日から10年である
・登録の更新は申請によって行われ、新たな審査なしに更新される。 
防護標章制度は存在しない。
・登録手続完了までには、約3~4月を要する(オフィスアクション伴わない場合)。

⑤取消審判

・過誤登録について利害関係人は商標登録の取消を請求できる。
・サウジアラビアでは、出願及び登録維持の要件として商標の使用を求めていない。しかし、商標権者が正当な理由なしに5年間継続して商標を使用しない場合は、利害関係人によって、商標登録が取り消されるおそれがある。

 

 

 

参考文献

①特許庁委託 ジェトロ知的財産権情報 模倣対策マニュアル 中東編(2009年3月、JETRO)
②ロシア、中南米及び中東における知的財産権制度及びその運用状況に関する調査研究報告書(平成22年3月、社団法人 日本国際知的財産保護協会)
③特許ニュース、第12954号~第12956号、財団法人 経済産業調査会
④UAE・サウジアラビアにおける特許権取得・行使上の留意点(初版)(一般社団法人 日本知的財産協会)
⑤中東諸国における特許・実用新案・意匠・商標の審査運用の実態および審査基準・審査マニュアルに関する調査研究 報告書(一般社団法人 日本国際知的財産協会)
⑥SAIPホームページ:https://www.kacst.edu.sa/eng/IndustInnov/SPO/Pages/spo.aspx
⑦サウジアラビアの知的財産制度およびその運用に関する調査(ジェトロ)

 

 

弁理士 スペシャリスト  松村 一城


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