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出願審査段階の不作為がその後のUSPTO手続の妨げとなることが示された審決
Ex Parte Smith, Appeal No. 2009-014595 (BPAI, Aug. 17, 2010)*1

特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
平成22年08月30日
(文責:新 井)

1. はじめに

一般に、クレームの文言を解釈する場合、出願審査履歴(prosecution history)が考慮されます(Phillips v. AWH Corp., 415 F.3d 1303; 75 USPQ2d 1321 (Fed. Cir. 2005) (en banc))。これに対し、明細書の開示に基づいてクレームを最も広く解釈する場合には、出願審査履歴は考慮されません。

本審決において、出願審査段階において、出願人(審判請求人)の不作為に対し、その不作為の事項については放棄したものとして取り扱われ、その後のPTO手続において妨げになることが示されました。

また、本審決において、許可可能状態にするために出願人が開陳したことは、クレームの範囲に対してディスクレーマを強いることも確認されました。

以下に、本審決について説明します。


2. 簡単な経過説明

(2-1) 本件特許発行までの経緯

特許権者であるA. James Smith(以下、Smithという。)は、親出願である特許出願を1998年にファイルし、最終拒絶後、2001年に継続出願をファイルし、その後、CIP出願(U.S. App. No. 09/891,132 filed on June 25, 2001, now abandoned)をファイルしました。

上記CIP出願の審査過程において、審査官は、CIP出願のクレーム発明に対して親出願(U.S. Patent No. 6,253,328)の出願日まで遡及することを認めませんでした。審査官は、クレームに記載の幾つかの文言が35. U.S.C. § 112に規定のサポート要件を充足していない旨、認定していました。

これに対して、Smithは、単に該当クレーム(クレーム12)が親出願の複数のクレームによってサポートされていると反論しましたが、その他のクレームについては反論していませんでした。

その後、SmithはRCEをファイルし、上記クレームのサポート要件違反は審査官によって取り下げられ、Notice of ALLOWANCEを経て'336特許 * として発行されました。なお、Examiner’s Reasons of Allowanceの中で、審査官は、上記サポート要件を充足していることが十分に説明されていない旨を繰り返していました。


(2-2) 本件特許発行後の再審査手続の経緯

その後、Smithは、'336特許に関して非当事者系の再審査請求手続(filed on June, 26, 2006)を行いました。再審査請求手続において、審査官は、一つの引用文献 * に基づいて、幾つかのクレーム発明が §102(e)下の特許性の要件を具備していない旨、認定しました。

なお、上記の引用文献は、上記CIP出願の出願日前に米国出願されたものであるが、上記CIP出願の親出願の出願日後に出願されたものであったので、Smithは、'336特許の親出願に対する優先権を根拠に反論し、上記の引用文献を先行技術から取り除くことを試みましたが、認められませんでした。

これを不服とし、SmithはBPAI(Board of Patent Appeals and Interferences -特許審判部/抵触部)に審判請求手続を行いました。


3. 審決の内容

BPAIは、Smithによる”swear back”による上記の試みを一切考慮しませんでした。その理由は、Smithが、審査段階において、上述のように、上記サポート要件違反の拒絶理由に関し、沈黙し争わなかったからです。つまり、出願審査段階における不作為をその後の再審査手続において手当てしようとすることは、禁反言であると考えられるからです。


審判部は、以下のように説示しています。

 審判請求手続を行ったからといって、全ての拒絶理由について改めて審判部に検討してもらう権利を審判請求人が有しているわけではない。出願審査段階で特定の事項(広義には、特定の拒絶理由)について、審判請求人が反論を提示しなかった場合、審判部は、一般に、対応されなかった拒絶理由について一方的に再検討をすることはない(たとえば、Hyatt v. Dudas, 551 F.3d 1307, 1313-14 (Fed. Cir. 2008)を参照。)。つまり、審判部は、審判請求人が或る拒絶理由に対して対応しなかった場合、その拒絶理由に係る事項については放棄したものとして取り扱う。

 出願人が許可可能状態にするために審査官に対して開陳したことは、クレームの範囲に対してディスクレーマを強いることを意味する。なぜなら、審査官を説得して出願を許可可能状態にするために行われる反論は、先の優先日を享受するのに充分であったかもしれない曖昧な開示に勝るからである。

 再審査手続において、審査官は、本件請求人が親出願に対する優先権の享受を主張することを認めなかったと共に、“graphical image”を文言する'336特許のクレーム発明ごとに、それらをサポートするものが親出願中に記載されていないと認定した。

審判部は、再審査手続中に本件請求人によって反論が提示された発明の主題をサポートするものが親出願に開示されているか否かについて決定する必要性を見出せない。それどころか、'336特許の出願審査段階において優先権に係る審査官の認定に対して本件請求人が反論しなかったので、上記引用文献が親出願日とCIP出願日との間の出願日を有するということを根拠に上記CIP出願の先行技術に該当しない旨を請求人は反論しているが、これは禁反言であると認定される。事実、特許権者による非当事者系の再審査手続において、本件請求人は、親出願に対する優先権の享受に係る事項を請求理由として挙げていない。

 決定に際し、'336特許の出願審査段階において、審査官が、First Office Action、 Final Office Action、及びExaminer’s Reasons for Allowanceのそれぞれにおいて優先権の認定を明瞭且つはっきりと行っていたにもかかわらず、本件請求人は、一切反論せずに、審査官のclerical errorを訂正しただけであった。

このように、'336特許の出願審査段階において先行技術を克服する際に優先権に係る審査官の認定に対して反論しなかった。それゆえ、本件請求人は、先の優先日を享受するのに充分であったかもしれない曖昧な開示中に、請求人によって反論が提示された発明の主題をサポートするものが存在する可能性があることを反論して審査官を説得する機会を自ら放棄した。

 加えて、Examiner’s Reasons for Allowanceに直面した特許権者の沈黙が、審査官の認定を黙認したことにはならないことを審判部は理解しているが、Examiner’s Reasons for Allowanceに先立つ上記2回のOffice Actionsに対する応答においても上記認定に対して沈黙していたことと結びつけると、これらの事実が説得力を帯び、それゆえに無視し得ないものであると認定せざるを得ない。

したがって、これらの事実に基づき、(i) 本件請求人が審査官の上記優先権に係る認定に反論しなかったと共に、(ii) 実際に、本件の争点となっているクレーム発明が親出願の有効出願日を享受する正当な権利を有していないと結論することに合理性があると審判部は認定する。このように、先の出願審査担当の審査官による優先権に係る認定に基づいて、本件請求人の沈黙および出願審査履歴の故に、全体として出願人によって上記優先権が拒否(disavow)されたと競業者が考えることに合理性があると審判部は認定する。


4. 実務上留意すべき事項

本審決は、出願審査段階の不作為が、後日の手続の妨げになることを教示すると共に、クレーム発明の範囲に対してディスクレーマを強いることを教示しています。なお、本件においては上述のように、出願審査段階において、サポート要件違反に係る拒絶理由については取り下げられましたが、その後機会があったにもかかわらず、最後まで出願人は上記サポート要件違反に対して適切に対応しなかったことに留意すべきです。


実務上、審査官の認定事項(途中で取り下げられた認定事項を含む。)のすべてを確認・検討した上で適宜適切に対応することが必要であるが、この際、対応次第では禁反言の法理によりクレーム発明の範囲が限定して解釈されてしまうことに留意して対応する必要があります。



以 上



*1 LINK: http://des.uspto.gov/Foia/ReterivePdf?system=BPAI&flNm=fd2009014595-08-17-2010-1
*2 United States Patent 6,571,336 B1 issued to A. James Smith, Jr. on May 27, 2003
*3 Juels et al.: USPN. 7,219,368 B2 issued on May 15, 2007

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