意匠のFTO調査

意匠のFTO調査とは

意匠のFTO(Freedom To Operate)調査とは、自社の製品デザインが他者の意匠権を侵害しないかを確認するための調査をいいます。

「クリアランス調査」または「侵害予防調査」とも呼ばれ、通常は新製品を市場に投入する前に実施します。

他者の意匠権を調べずに製品を製造・販売した場合、そのデザインが他者の意匠権を侵害するとして警告書の送付や訴訟提起を受けるおそれがあります。その際には、訴訟対応のほか、製品回収や設計変更などの対応が必要となり、多大な損害(時間的・経済的コスト)を被る可能性があります。

したがって、新製品を開発する際は、意匠出願のみならず事前の意匠調査(FTO調査)を実施することが重要です。

開発・販売前に他社の権利状況を確認しておくことで、設計修正などによって侵害リスクを未然に防止することができます。

 

 

調査の手順

(1) 対象意匠の特定

調査対象となる自社製品の完成予想図、3Dデータ、レンダリング画像等をご提供ください。

併せて、デザイン上の特徴点(ポイント)や工夫した要素、参考にした既存デザインの有無などもご説明いただくと、調査の精度が向上します。

 

(2) 先行登録意匠の検索

日本特許庁が提供するデータベース(J-PlatPat等)を利用して、問題となり得る先行意匠を抽出します。

この際、自社製品そのものだけでなく、構成部品も対象とする場合があります。なぜなら、部品意匠が他者の登録意匠の権利範囲に含まれると、「利用関係」が成立し、差止・損害賠償の対象となる可能性があるためです。

抽出した先行意匠については、権利の存否も確認します。年金不納等により意匠権が消滅している場合には、原則として差止請求のリスクはありませんが、過去の侵害行為に関して損害賠償責任が発生する可能性は残ります。

 

(3) 類否判断(対比検討)

抽出された先行意匠と自社デザインを対比し、物品の類否・形態の類否を総合的に検討します。

 

(4) リスク評価

各先行登録意匠との関係について、抵触可能性と影響度に応じて「高リスク」「中リスク」「低リスク」に分類します。

リスクの程度に応じ、以下の対応を検討します。

  • 設計変更(形状・構成の変更)
  • ライセンス交渉
  • 無効理由調査(無効審判の可能性検討)

 

 

調査の際の留意点

部分意匠

最近は部分意匠の登録が増加しており、デザイン全体ではなく一部分が類似している場合でも侵害が成立し得ます。

 

部品意匠

たとえ全体として異なる製品であっても、たとえば自動車のバンパーやライトなどのように、外部から見える部品・パーツは調査の対象となります。これらに他者の登録意匠(部品意匠)が存在する場合、利用関係が生じ侵害に該当する可能性があります。

また、外観上見えない部品でも、流通時に視認可能な場合は問題となることがあります。

 

意匠の存続期間

意匠権の存続期間は、

2007年4月1日以降の出願:20年間

2020年4月1日以降の出願:25年間

となっています。したがって、少なくとも過去20年分の先行登録意匠を調査することが望まれます。

 

意匠権の地域性

意匠権は各国ごとに独立して成立する属地主義を採用しています。

したがって、海外市場への展開を予定する場合は、各国・地域における意匠登録状況の確認が必要です。

 

 

当所のサービス

当所では、意匠専門の弁理士が担当し、専門的な侵害予防調査を実施しております。

必要に応じ、類否判断に加えて無効可能性の検討を含む「意匠権侵害の可能性に関する見解書」を作成・ご提供いたします。

詳細につきましては、「意匠の類否判断に関する見解書作成について」のページも併せてご参照ください。

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