不正競争防止法改正によるビッグデータの保護
【従来法の限界】
創作性のあるものは著作権や特許権等で保護され、有用性・秘密管理性・非公知性のあるデータは営業秘密として保護されてきました。しかし、ビッグデータについて、創作性が認められるかが問題となり、社外提供が前提となっており非公知性の点でも問題があるため、従来法では保護することができませんでした。また、勝手にデータを使われた場合、民法上の不法行為として損害賠償請求を行うことが考えられますが、差止請求は認められず情報の拡散を止めることができませんでした。
【新たなデータ保護】
そこで、2018年の「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」にて、「営業秘密」とは別に、ID・パスワード等の管理を施した上で提供されるデータ(「限定提供データ」)の不正取得・使用等を新たに「不正競争行為」に位置づけ、これに対する差止請求権等の民事措置を認める規定が創設されました。(改正不正競争防止法第2条第1項第11~16号、同第7項、第19条第1項第8号)
(経済産業省『不正競争防止法等の一部を改正する法律案(不正競争防止法、工業標準化法、特許法等)の概要』より)
不正競争防止法で保護される「限定提供データ」とは
◆定義(不正競争防止法第2条7項)
業として特定の者に提供する情報として電磁的方法により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報(秘密として管理されているものを除く。)
⇒すなわち、次の3要件を満たしている必要があります
ID・パスワードによる認証や暗号化、さらには専用回線やアプリ等で、アクセス権を限定する必要があり、無償で公衆に利用可能となっているものは除きます。
具体的には・・・
主として、企業間で複数者に提供・共有されることで、新たな事業の創出につながったり、消費者に対するサービスや製品の付加価値を高めるといったような利活用が期待されるデータをいいます。
具体例
車両の走行データ |
自動車メーカー |
災害時に公共機関に提供することで、道路状況把握に役立てられている。 |
消費動向データ (小売販売等のPOS加工データ) |
調査会社 |
購買データや小売店からのPOSデータを加工したものを各メーカーに提供することで、商品開発や販売戦略に役立てられている。 |
人流データ (外国人観光客、イベント等) |
携帯電話会社 |
携帯電話の位置情報データを収集した人流データをイベント会社、自治体等に提供することで、イベント時の交通渋滞緩和や、外国人向け観光ビジネスに役立てられている。 |
裁判の判例データベース |
法律情報提供事業者 |
研究者、実務家、学生が、研究活動や実務に活用している。 |
機械稼働データ (船舶のエンジン稼働データ等) |
データ分析事業社 |
船舶から収集されるリアルデータを収集・分析・加工したものを船舶機器メーカー、気象会社、保険会社に提供することで、造船技術向上や保守点検等に役立てられている。 |
限定データに関する不正競争行為の概要
(経済産業省『不正競争防止法等の一部を改正する法律案(不正競争防止法、工業標準化法、特許法等)の概要』より)
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