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後発医薬品参入と特許-日米韓の比較-

2009年4月14日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
弁理士 黒田 敏朗

1.背景
 後発医薬品とは、特許権が消滅した新薬について、特許権者以外の医薬品メーカー(いわゆる後発医薬品メーカー)が製造販売する医薬品であって、新薬と同じ有効成分を含んだ医薬品をいう。近年「ジェネリック医薬品」とも呼ばれるようになっている。後発医薬品は、新薬と治療学的に同等なものであるとして製造販売が承認され、一般的に、開発費用が安く抑えられることから、新薬に比べて薬価が安く設定される。厚生労働省は、患者負担の軽減や増大する医療保険財政の改善のために、後発医薬品の使用促進に取り組んでいるが、現在のところ、我が国では、後発医薬品の数量シェアは16.9%(平成18年度)に過ぎず、欧米諸国と比較してそれほど普及が進んでいない。
 後発医薬品の製造販売については、薬事法・特許法といった体系の異なる2つの法制度が関連しており、他の製品と比べ複雑なものとなっている。また、諸外国と我が国との間においても後発医薬品を取り巻く制度や環境が異なっている。そこで、後発医薬品に関して最も進んでいる米国を中心として、我が国と韓国における後発医薬品と特許を取り巻く状況について紹介する。


2.米国における後発医薬品参入を取り巻く状況
 米国では、1984年にHatch-Waxman法が制定され、後発医薬品メーカーは、莫大な費用のかかる臨床試験を行うことなく、既に認可されている新薬の「生物学的同等品」を販売することができるようになった。この「生物学的同等品」を販売するためには、後発医薬品メーカーは、後発医薬品が新薬と生物学的に同等であることを示すデータを添付してFDAに簡略型医薬品申請(ANDA)をしなければならない。米国では、後発医薬品メーカーが特許権存続期間中に上記データを取得する行為は、特許権侵害行為から除外される(米国特許法271条(e)項(1)、Bolar条項)。
 また、米国では、新薬に係る特許権が無効であるか、または自らの後発医薬品の製造・販売・使用行為が特許権を侵害しないことの証明(いわゆるparagraph IVの証明)を行うことにより、特許権消滅前においても適法に後発医薬品を製造販売することができる。Hatch-Waxman法により、最初にANDAを申請した者には、後発医薬品販売において180日間の市場の独占が認められている。その一方で、新薬の特許権者は、ANDAの申請者を相手として合衆国連邦地裁に特許侵害訴訟を提訴することができる(米国特許法271条(e)項(2))。特許権者が所定期間内に特許侵害訴訟を提訴した場合、FDAは当該ANDAを30ヶ月、または特許無効あるいは特許非侵害と裁判所(CAFC)が判決するまで自動的に停止する。
 米国では、上述したように、最初にANDAを申請した後発医薬品メーカーに一定期間の市場独占が認められているうえ、後発医薬品メーカーにとってはたとえ特許侵害訴訟で敗訴したとしても臨床試験等と行っていないためリスクは少ない。その一方で新薬メーカーは、勝訴しても利益は小さく、仮に敗訴した場合には医薬品の販売シェアを奪われるというリスクが大きい。このため、ANDAを申請する後発医薬品メーカーが新薬の特許権者を相手取り訴訟を行うケースが多くなっている。
 例えば、我が国の新薬メーカーに関する近年の訴訟として、以下のような事件がある。
・ 武田薬品工業とAlphapharm社らの2型糖尿病治療薬の後発品を巡る特許訴訟
・ 武田薬品工業とTeva社とのプロトンポンプ阻害剤(PPI)の後発品を巡る特許訴訟
・ 塩野義製薬が高コレステロール血症治療薬のANDAを行ったCobalt Pharmaceuticals社を含む後発品メーカー7社を相手取った特許訴訟
・ 大塚製薬とTeva社との抗精神病薬の後発医薬品を巡る特許訴訟
・ アステラス製薬とImpax Laboratories社との排尿障害改善剤の後発医薬品を巡る特許訴訟
・ エーザイとTeva社とのアルツハイマー型認知症治療剤のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の後発医薬品を巡る特許訴訟


3.我が国における後発医薬品参入を取り巻く状況
 我が国では、後発医薬品メーカーが、新薬の特許権存続期間満了後に販売することを目的として、薬事承認に必要な情報を提出するために必要な範囲において特許権存続期間中に特許発明を実施する行為は、特許法69条1項にいう『試験又は研究のためにする特許発明の実施』に当たり、特許権の効力は及ばないとされている(最高裁平成11年4月16日第二小法廷判決-膵臓疾患治療剤事件)。
 一方、我が国には、米国における「paragraph IVの証明」のような特許権の存続期間中に「適法」に後発医薬品を販売することを認める明示の規定はない。ただし、後発医薬品メーカーが新薬を購入した後にこれを破砕・精製・再結晶化を行い後発医薬品として販売する行為は、当該有効成分が変化していないことを前提として消尽論により適法に認められ得る(東京高裁平成13年11月29日判決-アシクロビル事件)。
 また、世界的にいえることであるが、新薬メーカーが新薬の形態・成分・構造の一部を変更し、後続特許を出願・登録することで、医薬品の独占期間を延長する戦略(いわゆるエバーグリーン戦略)をとっており、我が国においても後発医薬品メーカーと新薬メーカーとの間で特許等の知財を巡る訴訟が数多く行われている。
・ ファモチジン事件(「リヒターゲテオン v. ジェネリックメーカー16社」 東京高裁平成15(ネ)3034 2004.04.28判決)
・ ニカルジピン事件(「山之内製薬 v. 大正製薬」 大阪高裁平成14(ネ)1567 2003.02.18判決)
・ セフジニル事件(「アステラス v. 大洋薬品」 知財高裁平成19(ネ)10034 2007.09.10判決、2007.12.27上告棄却)
・ セルベックスカプセル事件(「エーザイ v. 大洋薬品」 平成18年(ネ)第10009号不正競争行為差止等請求控訴事件)
・ クラビット事件(「第一三共 v. 沢井製薬等ジェネリックメーカー13社」、2008.12.24、特許無効の審決取消訴訟を知財高裁へ提訴 継続中)


4.韓国における後発医薬品参入を取り巻く状況
 韓国においても、日米と同様に特許権存続期間中に後発医薬品メーカーが韓国食品医薬品安全庁(KFDA)へ後発医薬品に関する品目製造許可を申請することができる。この過程において、新薬メーカーは、後発医薬品メーカーに対して特許侵害訴訟を提起したり、積極的権利範囲確認審判を請求したりする。これに対抗して、後発医薬品メーカーも新薬特許の無効審判や消極的権利範囲確認審判を請求する。
 近年、韓国では、後発医薬品に関する特許紛争が激化していることが韓国特許庁の報告から読み取れる。韓国特許庁の報告によると、後発医薬品を巡る当事者系特許審判(無効審判・権利範囲確認審判)の請求件数は2005年の18件(全体当事者系の特許審判請求の4.2%)から、2006年には25件(同2.8%)、2007年には57件(同5.3%)、2008年は51件(同5.4%)である。このような状況のなかで注目すべきは、後発医薬品メーカーの相次ぐ勝訴である。
 以下、代表的なブロックバスターに関して、新薬メーカーと後発医薬品メーカーとが争った特許紛争の事例のうち、後発医薬品メーカーが勝訴したものである。
・ エロキサチン(Eloxatin)事件・・・大腸がん、胃がん治療薬に関する特許無効判決に対する上告を大法院(日本でいう最高裁)が棄却し、後発医薬品メーカーの勝訴が確定。
・ プラビックス(Plavix)事件・・・抗血小板薬に関する特許無効判決に対して、新薬メーカーが上告し、現在、大法院にて審理係属中。
・ リピトール(Lipitor)事件・・・高脂血症治療薬に関する特許無効判決に対して、新薬メーカーが上告し、現在、大法院にて審理係属中。
・ リヴィアル(Livial)事件・・・骨粗しょう症治療薬に関する特許無効判決に対して、新薬メーカーが上告し、現在、大法院にて審理係属中。

 現在、韓国と米国との間で、自由貿易協定(FTA)の協議が進んでいる。今後、両国間でFTAが合意に至り、医薬品の許可-特許連携制度(いわゆる「approval-patent linkage」)が導入されれば両者間の特許紛争はさらに増加するものと予想されている。


5.その他の国における状況
 中国では、2008年12月27日に開催された中国全国人民代表大会(全人大)常務委員会会議で、「中華人民共和国特許法」第三回改正案が採択され、改正後の特許法は2009年10月1日から発効する予定である。今回の改正のなかで、「当局の承認に必要な医薬品等の許認可に関するデータを取得することを目的として、特許権に係る薬物・医療機器を製造等する行為は、特許権侵害ではない」旨の、いわゆるBolar条項が導入された(第69条)。
以 上

(参考文献)
[1] アダム・サマンスキー,梅室 淳,「KSR判決後のANDA訴訟」,知財管理 Vol.58 No.6 p703-710 2008
[2] 「多国籍製薬会社-国内製薬会社間の特許紛争が加熱」,JETRO seoul 知財チーム ニュース 2008.11.14


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