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先端医療分野における特許保護について

2009年6月4日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
弁理士 黒田 敏朗

1.はじめに
 平成21年4月28日、内閣官房知的財産戦略推進事務局より「先端医療分野における特許保護の在り方について(案)」(以下、本案と称する。)が公表され、本案に関するパブリックコメントが募集された(意見募集は平成21年5月17日で終了済)。
 本案は、平成20年11月に知的財産戦略本部 知的財産による競争力強化専門調査会の下に先端医療特許検討委員会が設置され、これまでの7回の会合を通じ、先端医療分野における特許保護の在り方について調査・検討を行った結果、取りまとめられたものである。今後、本案について寄せられた意見を参考として、最終的に「先端医療分野における特許保護の在り方について」の正式報告書としてまとめられる。本報告書の提言に基づいて、審査基準の改訂を始めとする所要の措置が関係府省庁により実行されることになる。
 本案によれば、先端医療分野における特許保護の対象が拡大される予定である。以下に、本案の内容について紹介する。今後の先端医療分野における特許保護の動向把握の参考となれば幸甚である。


2.「先端医療分野における特許保護の在り方について(案)」の概要
 本案の中から特許実務上の有用な情報である「審査基準における特許対象の明確化」および「特許対象の見直し」の2つに絞って概説する。
2-1.審査基準における特許対象の明確化
 本案では、(1)既存物と既存物の新規な組合せに特徴のある発明、(2)生体外で行われる細胞等への処理方法に特徴のある発明、(3)細胞等の生体由来材料の用途に特徴のある発明、(4)細胞の特定の困難性がある発明、(5)アシスト機器技術関連の発明について、審査基準において特許対象を明確化すべきであると提言されている。以下、順に説明する。
(1)既存物と既存物の新規な組合せに特徴のある発明
 (i) 物理手段(磁気発生装置、赤外線照射装置、超音波装置等)と生化学手段(薬剤や細胞)との組合せやこれらを組み合わせた一連のシステム、(ii) 細胞等の生体由来材料と足場材料との組合せ、(iii) 細胞等の生体由来材料と成長因子等の薬剤との組合せ等の組合せ発明についても、「物」の発明として特許対象となることを、特許可能な例示を示しつつ審査基準に明記すべきであると提言されている。
(2)生体外で行われる細胞等への処理方法に特徴のある発明
 再生医療の鍵を握る技術といわれている、(i) ヒトiPS細胞を神経細胞等の組織細胞に分化誘導する方法、(ii) 採取された幹細胞や分化誘導された組織細胞の分離・純化方法、(iii) 処理を行った細胞等の安全性の確認・検査方法等については、医薬品又は医療材料を製造するための方法に該当するため、現行の運用においても特許対象である。しかし、研究者にとってはこれらの発明が特許対象か否か分かりづらいものとなっているため、特許対象となる発明に係る判断基準を、特許対象となる事例と特許対象外となる事例の充実等を行いつつ、審査基準において一層明確化すべきであると提言されている。
(3)細胞等の生体由来材料の用途に特徴のある発明
 ヒトiPS細胞の樹立を契機に、再生医療に係る研究開発が活発化しており、今後も様々な細胞が人工的に作成され、これに関連した用途発明も数多くなされることが予想されている。しかし、このような細胞等の生体由来材料に係る用途発明が特許対象となることについての研究者等の理解は不十分なものとなっている。このため、細胞や細胞由来製品等の生体由来材料に関しても、その新しい用途については用途発明として表現することにより特許対象となることを、特許可能な例示を豊富に示しつつ審査基準に明記すべきであると提言されている。
(4)細胞の特定の困難性がある発明
 細胞組成物を新規適応症の治療目的に用いることに発明の特徴がある場合には、治療剤等の「物」の用途発明として表現することにより特許対象となる。一方、細胞組成物の中で実際に治療のために有効な細胞を同定して既知の細胞と区別することは困難な場合は、治療剤等の「物」の用途発明として特許対象とならない。しかし、原料、処理方法(生産方法)及び用途が確立されている発明については、原料や処理方法(生産方法)は公知であっても、用途が新規である場合には、「被生産物に用途限定を付した物の生産方法の発明」(例えば、人間から採取した細胞組成物Xに処理方法Aを施して組成物を取得することからなる、該組成物を有効成分とする疾患Z治療剤の製造方法、いわゆるスイスタイプクレーム)として特許対象となることを審査基準に明記すべきであると提言されている。
(5)アシスト機器技術関連の発明
 介護者を支援するロボット、歩行補助装置などの人の行動を補助・支援する技術等の、いわゆるアシスト機器関連技術に関して、包括的な保護を可能とする方法クレームはその性質上、人体に作用するステップ又は人体の状態を判定するステップが含まれるため、医療方法も概念上包含するため医療方法の発明に該当するとの理由で拒絶される可能性があり、せっかく開発された技術についての特許出願が躊躇されるおそれがある。
 このような事態を回避し、アシスト機器関連技術に関する特許取得の円滑化を図るため、(i) 診断でない判定方法の発明、(ii) 人体への作用工程を含む医療機器以外の機器の作動方法、及び(iii) 作業者等の作業負荷を軽減する方法の発明については、「人間を手術、治療又は診断する方法」に該当しないことが明らかなため、特許対象であることを、特許可能な例示、請求項の記載例を豊富に示しつつ審査基準に明記すべきであると提言されている。


2-2.特許対象の見直し
 本案では、以下の2つの発明について、先端医療において新たに特許付与の対象とすべきであると提言されている。
(1)細胞や薬剤の用法・用量に特徴のある発明
 現在、我が国では、細胞や薬剤の用法・用量に特徴のある発明については、「特定の用法・用量の医薬」というように「物」の発明として表現した場合であって、かつ患者群が明確に異なる場合や適用部位が異なる場合のように、医薬用途が相違すると認められる場合のみ、用途発明として新規性を有し得ると評価され、特許対象となっている。これ以外の「時間、手順、投与量、移植場所等の薬剤や細胞の用法・用量に特徴のある発明」については、いかにその用法・用量に進歩性があろうとも、新規性がないとして特許対象外となっている。
 しかし、新規物質開発が困難になる中、今後、国内だけでなく、海外においても、新用法・用量に関する研究開発が活発化していくことが予想される。このような状況下で我が国において専門家の予測を超える効果を示す新用法・用量のみに特徴がある医薬を特許保護していないことが当該医薬の我が国市場への投入の阻害要因となるおそれがある。
 そこで、用法・用量の刷新により副作用の発生を劇的に低減する医薬や患者の生活の質(QOL)を大幅に向上する医薬の研究開発を促し、かかる医薬が広く利用可能となることを促進するため、専門家の予測を超える効果を示す新用法・用量の医薬の発明を「物」の発明として保護すべく、審査基準を改訂すべきであると提言されている。
(2)最終的な診断を補助するための人体のデータ収集方法の発明
 現在、我が国では、X線CT装置やMRI装置等の新規の断層画像撮像の仕組み、原理等の測定方法の発明については、電磁波等を人体に作用し、その応答信号を測定するものであるため人体への作用を除いた作動方法として発明を特定することが困難である。この際、作動方法以外の方法の発明として特定すると、人間を診断する方法であるとして、特許対象外となっており、今後測定機器の技術分野における画期的な発明がなされても、測定の仕組みを端的に特定する測定方法の発明として包括的な特許保護が受けられない。このため、物理的な構造等の装置としての特徴を特定した測定装置等の「物」の発明を様々な変形例を想定して多重的に特定すること等の対応が取られているが、特許迂回の可能性が否定できず、保護が不十分ではないかとの懸念がある。
 そこで、先進諸外国の特許制度との調和を図りつつ、今後出現する画期的な仕組み、原理の測定機器に係る発明の包括的な保護を可能とし、新たな技術を適切に保護するため、現在特許対象外となっている「最終的な診断を補助するための人体のデータ収集方法(手術、治療、診断が含まれない人体の計測・測定方法)の発明」(例:MRI、X線CT等による断層画像撮像の仕組み、原理等)を新たに特許対象とすべく、審査基準を改訂すべきであると提言されている。


3.最後に
 先端医療技術は、国民の健康長寿の実現、種々の疾病への対応など国民の健康や生活の向上に直結する重要な技術である。先端医療分野における技術革新は予想を超えるスピードで進んでおり、特許保護等の法的な整備が追いついていないのが現状であろう。安全性がとりわけ重視される医療の特質や「医療のフリーアクセス」、また医療費高騰の抑制の観点等から保護は慎重に行うべきとの意見が存在することは承知しているが、先端医療技術の更なる発展を促進するという観点からも、優れた先端医療技術が適切に保護されるような特許制度の改定が望まれる。特に、諸外国における特許保護の対象が拡大している中、我が国での特許保護が遅れると、我が国の国民が優れた先端医療技術による恩恵を享受できないおそれもでてくる。このようなことの無いよう本案の提言に基づいた適切な措置が速やかに実行に移されることを強く要望して結びとしたい。

以 上
(参考文献)
[1] 日本経済新聞 平成21年3月17日夕刊 「医療特許 診断・治療にも」
[2] 「「先端医療分野における特許保護の在り方について(案)」に関する意見募集について」、内閣官房知的財産戦略推進事務局、平成21年4月28日





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