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バイオ関連判決・審決

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リサーチツール特許

2009年6月4日
特許業務法人 原謙三国際特許事務所
弁理士 鶴田 健太郎

 今年(平成21)の4月から、リサーチツール特許データベースがウェブサイト(※1)上において公開された。上記データベースは、企業及び大学等が有しているリサーチツール特許について、その所在及びライセンス条件を蓄積しており、利用者は、それらの情報に容易にアクセスすることができる。これにより、リサーチツール特許の円滑な利用を促進させることがリサーチツール特許データベースの目的である。
 尚、リサーチツール特許についてはいくつかの定義があるが、ここでは、ライフサイエンス分野において研究を行うための道具として使用される物又は方法に関する日本特許を指す。例えば、実験用動植物、細胞株、モノクローナル抗体、スクリーニング方法等が含まれる。
 平成21年6月24日時点において、上記データベースへの特許の登録者は62、内、企業が6、大学及び研究機関(科学技術振興機構、理化学研究所等)が56である。又、登録されている特許の数は875、内、企業が登録したものが34、大学等が登録したものが841である。対象とする技術の性質を考えれば、この数字は順当なものであろう。
 上記データベースの運用は始まったばかりであり、どの程度活用されるかは未知数である。しかし、その運用の経過如何によっては将来の特許制度に影響を与える可能性がある。何故なら、上記データベースは、十年以上前から国際的に検討されている特許制度上の問題を解決するための施策であり、場合によっては、上記問題を解決するために、他のアプローチが採られることもあり得るからである。
 上記問題とは、端的に言えば、リサーチツール特許が、自由な研究・開発を阻害する可能性があるというものである。又、リサーチツール特許には代替性の無い技術(例えば、疾病関連遺伝子)も含まれ、ライセンス料が高額になるのではという危惧が、主に製薬業界において存在する。更に、浜松医科大学に対し、ガン転移モデルマウスの特許を有する米国のバイオベンチャーが訴訟を起こすという事件も起こった(東京高判平成14年10月10日)。
 このような問題を解決するため、これまで、主に、以下のようなアプローチが考えられている。
 1)特許権の効力の制限
 特許法第69条には、「特許権の効力は、試験または研究のためにする特許発明の実施には、及ばない」と規定されており、「試験・研究」の範囲を広く解釈することにより、リサーチツール特許の効力を制限しようというものである。但し、現状では、上記の規定が適用されるのは、実施する特許自体の試験・研究のための実施に限られるとの解釈が一般的である。
 2)強制実施権の設定(裁定)
 代替性の無いリサーチツール特許について、特許法第93条等の裁定を適用しようというものである。
 3)ガイドライン、パテントプール、パテントクリアリングハウス等の活用
 IT分野等において行われているパテントプールのような仕組みや、ライセンス締結のための基準となるガイドラインを定めることにより、上記の問題を解決して行こうというものである。
 この3番目のアプローチに関し、平成19年3月1日に、総合科学技術会議より「ライフサイエンス分野におけるリサーチツール特許の使用の円滑化に関する指針」が発表されている。この指針の中では、リサーチツール特許については、ライセンスの供与、対価等について、できるでけ円滑に行うことを求めており、特に、大学間のライセンスは、無償で行うことが望ましいとしている。そして、このようなライセンスの締結の円滑化のために、リサーチツール特許に関する情報を公開するための統合データベースの構築について言及している。冒頭で述べたリサーチツール特許データベースは、このガイドラインに従って構築されたものであると考えられる。
 但し、他のアプローチが忘れられたわけではない。例えば、平成21年3月27日に開かれた第2回特許制度研究会では、裁定については否定されている様子であるものの、上述した「試験・研究」の範囲内にリサーチツールの使用を含めるべきといった意見も出されている。
 以上のように、リサーチツール特許をどのように取り扱っていくかはまだ定まっていない状態である。但し、私見を述べれば、上記リサーチツール特許データベースに大学・研究機関の登録が多かったことからも示されるように、リサーチツール特許が研究・開発のインセンティブとなっているとも考えられる。よって、そのようなインセンティブを損なわないような制度となることが好ましい。この点において、上記リサーチツール特許データベースが活用されることを期待したい。

※1 http://www.ryutu.inpit.go.jp/RTPatents/

参考資料
・財団法人知的財産研究所「特許権の効力の例外及び制限に関する調査研究報告書」(平成16年度特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書)
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisanken/165kouryoku.pdf
・隅蔵康一「バイオ分野の標準と特許発明」(知財管理Vol.59, No.3, 2009)
・石川浩「ライフサイエンス分野の企業における研究・開発段階での特許使用について」(特許研究No.43, 2007/3)
・総合科学技術会議「ライフサイエンス分野におけるリサーチツール特許の使用の円滑化に関する指針」(平成19年3月1日)
http://www8.cao.go.jp/cstp/project/bunyabetu2006/life/4kai/siryo3-2.pdf
・産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会「代替性のないリサーチツール特許の問題点」(第7回特許戦略計画関連問題ワーキンググループ配付資料、平成16年3月3日)
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/strategy_wg07/paper03.pdf
・特許庁「第2回 特許制度研究会 議事要旨」(平成21年3月27日)
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/kenkyukai/tokkyoseidokenkyu02_giji.htm




スタッフ紹介

副所長弁理士
特定侵害訴訟代理人
アドバイザー
黒田 敏朗 (くろだ としろう)
弁理士 黒田 敏朗 1975年生まれ 生命科学専攻
研究経験:分子細胞生物学、遺伝子工学
専門分野:生命科学、バイオテクノロジー

知的財産権、特に、バイオ関連発明についての知的財産権は日本国内だけでなく、世界中でその重要度を増してきています。
そのため私は、バイオ関連発明全般に関して、お客様に満足いただけるサービスを提供していく所存です。
バイオ関連発明についてご相談の場合は、ご一報ください。
バイオ知財情報室長
弁理士/特定侵害訴訟代理人
特許部課長/アドバイザー
長谷川 和哉 (はせがわ かずや)
弁理士 長谷川 和哉 1969年生まれ 工業化学専攻
研究経験:免疫学、発酵工学、酵素工学、糖質化学
専門分野:アレルギー、食品、微生物、化粧品、酵素、糖質

私は,何より新しいことにチャレンジすることが大好きです。
企業での研究経験で培ったノウハウを生かしつつ、皆様にご満足いただけるサービスを提供できますよう、チャレンジを続けていく所存です。
どうかよろしくお願い申し上げます。

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