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ビジネス関連発明の特許出願について

2002年3月26日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(文責:児島)

1.CS発明とBM発明

(1)CS発明
コンピュータ・ソフトウェア関連発明(以下「CS発明」という)とは、その発明の実施にソフトウェアを必要とする発明をいう。
他の技術分野と異なり、ソフトウェア技術で主に発達しているものは適切な処理の発想である。その一方で、当該処理のコンピュータ内での物理的な実施、すなわち、プログラムを実行するためにコンピュータのメモリを物理的に変更するだけの行為は、その直接的な結果にすぎない。そのため、CS発明は、ビジネス方法などの抽象的な原理の発想によって構成されることが多くなる。

(2)BM発明
ビジネス関連発明(以下「BM発明」という)は、ビジネスアイデアをIT(情報技術)を活用してコンピュータ上で具体化したものであると一般に理解されている。
実際のところ、ビジネス関連の特許(例えば金銭登録機(「レジ」)や金銭支払機など)は世界中にこれまでずっと存在していた。BM発明特許が話題となった理由は、電子商取引の増大やビジネス処理にコンピュータの利用が増えたことに起因している。

審査においては、BM発明は、従来から存在している管理目的、業務目的、経営目的といった特定の用途に適合したデータ処理システムに関する発明の延長線上にある発明として扱われる。すなわち、BM発明は、あるビジネス分野の用途に適合したデータ処理システムまたはその動作方法に関する発明ということができる。
従来から存在しているデータ処理システムに関する発明(例えば銀行の窓口業務に使用されるATM)は、ある業務の一部を支援する装置やシステムに関する発明と位置づけることができる。一方、BM発明は、例えば電子商取引におけるB toBやBtoCを実現するデータ処理システムのように、発注、販売、決済、広告といったビジネスに係る業務全般をITを活用してコンピュータ上で具体的に実現した発明であり、いわば、ビジネスを行う方法や仕組みをコンピュータ上で具体化した発明ということができる点で、従来の発明と性質が異なっている。

なお、BM発明において、ビジネスアイデアを具体化する手段としてIT以外のものが排除されているわけではない。しかし、現状ではITを利用しないBM発明のほとんどは「人為的取決め」に該当すると考えられ、実際には、ITを用いず、かつ、「発明」に該当するBM発明というのは、想定することが困難である。よって、BM発明をCS発明として扱うことに問題はないと考えられている。
このようにCS発明の一形態として扱われるBM発明であっても、その特許がコンピュータによるビジネス方法の実施そのもの、または技術的に可能な実施をカバーしている場合、そのビジネス全体に競合者が参入することを排除する可能性を有する。そして多くの場合、コンピュータによるビジネス方法の実施を保護することが、ビジネス方法それ自体を保護することになる。

2.特許の対象

(1)日本
①「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの(特許法第2条第1項)」に該当すれば特許の対象となる。よって、BM発明は、「ハードウェア資源を用いる」ことにより、CS発明として成立の可能性がある。
②具体的には、BM発明は次のものとして請求項に記載できる。
・装置、システム=ビジネス方法を実現するハードウェア
・方法=ビジネス方法を実現するハードウェアにおける処理
・プログラム(データ(構造)も可。但し、保護はプログラムとしてのもの)=ビジネス方法をハードウェアに実現するプログラム
・プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体=ビジネス方法をハードウェアに実現するプログラムを記録した媒体
・なお、信号・搬送波は不可(米国・欧州では可)

(2)米国
クレームされた発明が「有用、具体的かつ有形の結果」を生成すれば、ビジネス方法であっても特許の対象となる。

(3)欧州(EPO)
発明が、技術的性格を持ち、技術水準に対して何らかの技術的貢献を行っていれば、非技術的なものが含まれていても特許の対象となる。

(4)国際特許出願(PCT)
事業活動の方法(ビジネスモデル)は国際調査および国際予備審査の対象外であり、実質的な報告は行われない。これは、不特許事由による拒絶理由を示すものではなく、実体的な審査は国内段階において各国ごとに行われる。

3.(参考)BM発明の分類

(1)特許分類

①国際特許分類(IPC)
・「ビジネス関連発明」というまとまった分類項目はない。
・G06F 17/60
管理目的、業務目的、経営目的、監督目的に特に適合したデジタル計算機またはデータ処理の装置または方法

②FI分類(国際特許分類を細かく展開した国内分類)
・G06F 17/60 100-250
計算機システムの適用される業務を日本標準産業分類を参考として展開した業務別の展開(例:製造業、物流業、金融・保険業のための業務システム)
・ G06F 17/60 300-432
新たなビジネス形態である「電子商取引技術」や「支払い、決済技術」に関する展開(例:発注、生産、販売、仲介、決済)

③Fターム(分野毎に目的や構成などの異なる観点で検索キーが付与)
・5B049  特定用途計算機
・5B055  銀行業務及び給与計算

④広域ファセット(複数分野の横断的調査)
・ZEC  電子商取引関連技術
「電子商取引(=インターネット等のコンピュータネットワークを用いた商取引)」そのものに関する技術、「電子商取引」に特に適合した要素技術、「電子商取引」を応用した技術が含まれる
(注)ファセット分類番号ZECは2000年4月から、G06F17/60を新たに細展開したFIは2000年年7月からそれぞれ分類付与されている。

(2)ビジネス方法に関連する技術

段階的に、
①コンピュータ基礎技術、通信基盤技術
②電子決済や電子マネー等のビジネスシステムインフラ技術
→従来からコンピュータ関連技術として特許の対象
③ビジネスシステムインフラ技術を実際のビジネスに適用させたビジネス応用システム
→特許の対象
④純粋なビジネスモデルやビジネスアイデア等の非技術的な特徴に関するもの
→日本では特許の対象でない

(3)ビジネスのやり方・その仕組み
①商品やサービスの流通市場
②金融サービス
③広告やコンテンツの提供の仕方
④会社の経営手法や内部管理

(4)出願の目的
①新規ビジネスのアイデア出願
②基幹システムの防衛出願

(5)ソフトウェアが制御するハードウェア
①汎用のハードウェア(パソコン、PDA等)
→ハードウェアに特徴なし
②特定のハードウェア(LCD、MD記録再生機、コピー機等)
→ハードウェアに特徴あり

4.BM発明出願の動向
1998年 7月 米国連邦巡回控訴裁判所のステートストリートバンク判決(「ハブ・アンド・スポーク」特許(米国特許第5193056号))
1998年 7月 「オートカフェ」特許(第2804933号)の設定登録(現在存続中)この頃より、BM特許ブーム(誤解に基づく“純粋ビジネス”の出願、実施中のシステムの防衛出願)
2000年 1月 「婚礼引き出物の贈呈方法」特許(第3023658号)の設定登録
2001年 4月 「婚礼引き出物の贈呈方法」特許の取消決定この頃より、BM特許ブームが鎮静化(審査基準が明確化され、出願ラッシュから相次ぐ拒絶へと環境が変化。慎重な出願姿勢。)
2001年11月 「ハブ・アンド・スポーク」出願(特表平6-505581号)の拒絶査定

(参考)
「ハブ・アンド・スポーク」・・・管理者が金融情報の流れを監視し記録することができ、パートナーファンド金融サービス構造を維持するために必要な計算を行うことができるシステムに関する。このパートナーファンド金融サービスの構造は、複数の投資信託(スポークス)がそれらの投資資金を単一のポートフォリオ(ハブ)にプールし、経済的スケールメリットによる資金の管理費用の節約とパートナーシップでの税法上のメリットをもたらす。日本では進歩性により拒絶査定。
「婚礼引き出物の贈呈方法」・・・婚礼の引き出物を明記した贈呈リストを予め作成し、婚礼後に異なる引き出物を来客者に直接届ける方法。部分的に、「贈呈リスト」を手段として用いてはいるものの、全体としてみれば「引き出物贈呈者」の行為と「委託者」の行為のみから構成されているので、自然法則を利用していない人為的な取決めを利用したもの。
「オートカフェ」・・・セルフサービスによる飲食店のシステムに関する。来客した客自身が、自動食器貸し機と飲食物供給装置とを操作してコーヒー、サラダ等をサーブして飲食するシステム。人による操作手順でもって特定されていることから発明成立性に、また、従来の自動販売機システムからみて進歩性に、それぞれ疑問があるとされている。

5.審査基準

(1)BM発明は、審査においてCS発明の一形態として取り扱われ、「特許・実用新案審査基準第Ⅶ部第1章コンピュータ・ソフトウェア関連発明」(現在は 2000年の改訂審査基準)にしたがって記載要件、特許要件等の判断が行われる。なお、BM発明のための特別な審査基準はない。

(2)審査基準の改訂履歴
① 1997年 CS発明の審査運用指針の確定版の公表
「コンピュータ・プロダラムを記録した機械読み取り可能な媒体(プログラムを記録した記録媒体)」が特許の対象とされた。
「プログラムを記録した媒体」に関しては、
・「物」のカテゴリーの発明として、特許請求の範囲に記載することができる
・発明か否かの判断は、一般のソフトウェア関連発明と同様に行う
・請求項に「媒体」への記録という限定が追加されたとしても、これのみをもって請求項に係る発明の進歩性は肯定されない
② 2000年 CS発明の審査基準の改訂(12月28日公表)
CS発明の審査基準の改訂に伴い、BM発明に関する記述が明確化された。
・媒体に記録されていない「コンピュータ・プログラム」を、「物の発明」として取扱う
・ハードウェアとソフトウェアを一体として用い、あるアイデアを具体的に実現しようとする場合には、そのソフトウェアの創作は、特許法上の「発明」に該当する
・個別のビジネス分野とコンピュータ技術分野の双方の知識を備えた者が、容易に思いつくものは進歩性を有しない

6.審査における判断手法

(1)代表的な特許要件
特許出願の審査の過程においては、その出願が種々の要件の少なくとも一つを満たしていないときは拒絶がなされ、拒絶の理由が発見されないときには特許が付与される(特許法第49条、第51条)。この種々の要件のうち代表的なものとして、次の三つが挙げられる。
・特許法第2条に定義される「発明」であること(特許法第29条第1項柱書)
・明細書の記載要件を満たしていること(特許法第36条)
・新規性・進歩性があること(特許法第29条)

(2)「発明」であること
①「発明」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」を指す。
BM発明においては、ビジネスアイデアを創作した点ではなく、ビジネスアイデアをコンピュータ上で具体的に実現した点に「発明」としての創作性を見出すことができる。よって、ハードウェアと何の関係もないビジネス方法は特許されない。
②これをCS発明(BM発明を含む)に即してみると、「ソフトウェアによる情報処理がハードウェアを用いて具体的に実現されたもの」は、「(自然法則を利用したハードウェアの動作によりアイデアの実現を図っているという意味で)自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当する。
③言い替えると、あるアイデアを実現する場合に、ハードウェアたる新たな専用装置等を創作しなくても、ソフトウェアを工夫して、汎用コンピュータや既存のネットワーク・システムとそのソフトウェアとを用いて、あるアイデアを実現しうる専用装置等を創作したのと同様の結果が得られれば、そのソフトウェアの開発は「自然法則を利用した技術的思想の創作」に当たる。
④一方、あるアイデアの実現が、「経済法則」、「人為的取決め」、「数学上の公式」、「人間の精神活動」、「情報の単なる提示」に過ぎない場合は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しない。
⑤以上は、コンピュータを利用したBM発明についても同様である。ただし、コンピュータを使用したビジネス方法が、全て「自然法則を利用した技術的思想の創作」として特許法上の「発明」になるわけではない。例えば、「郵便のダイレクトメールによる通信販売」は、通常、「人為的取決め」に当たり、「発明」には該当しないものと考えられる。このケースにおいて、仮に「郵便」を「電子メール」に置き換えたとしても、それだけであれば、本質は変わらず、やはり「人為的取決め」に当たる。
⑥特許にならない事例(特許法上の「発明」該当しないもの)
・ビジネス方法自体
・コンピュータ等を単に道具として使用してビジネスを行うようにしたもの
・ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されていないもの

(3)記載要件

①発明の詳細な説明は、CS発明の分野における通常の技術的手段を用い、通常の創作能力を発揮できる者が、特許請求の範囲以外の明細書及び図面に記載した事項と出願時の技術常識とに基づき、請求項に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載しなければならない。
②BM発明の場合、発明の詳細な説明には、あるビジネス分野の用途に適したデータ処理システムを作ることができ、かつ、使用できる程度に、どのようにコンピュータのハードウェアやソフトウェアが構成されているかを記載する。ビジネスアイデアだけを詳細に説明するだけでは明確かつ十分に記載したとはいえない。
③特許にならない事例(明細書の記載が不備なもの)
・ビジネス方法がコンピュータ上でどのように実現されるのかが不明確なもの
・コンピュータの動作方法であることが明確でないもの(人が行うビジネス方法なのか、コンピュータの動作方法なのか不明確なもの)

(4)新規性・進歩性

①「発明(=自然法則を利用した技術的思想の創作)」として認められたとしても、「新規性」「進歩性」が認められなければ、特許は成立しない。

②特許法は、知的創造活動の成果について、情報の開示と引き換えに独占的権利を設定し、これによりこれらの活動を促進し、産業の発達に寄与することを目的としている。
この目的に照らし、まず、特許を受けようとする発明が特許出願前に既に公知であったか否かが問題となる(新規性)。具体的には、特許出願以前に「公然と知られた発明」「公然実施された発明」「刊行物・インターネットにおいて公開された発明」であれば、公知のものとして新規性が否定される。

③データ内容(コンテンツ)のみに特徴がある場合は新規性が否定される。すなわち、記録媒体等に記録されたコンテンツのみが新しいだけの発明では、新規性がないため特許を受けることができない。

④そして、新規性が認められた場合でも、一般の者(いわば「素人」)はもちろん、「当業者」でさえ先行事例から容易に思いつくことができないレベルのものであることが求められる(進歩性)。
BM発明における「当業者」としては、その特定分野に関する技術常識や一般常識(顕著な事実を含む)と、コンピュータ技術分野の技術常識(例えばシステム化技術)を有し、研究、開発のための通常の技術的手段を用いることができ、設計変更などの通常の創作能力を発揮でき、かつ、その発明の属する技術分野(特定分野とコンピュータ技術分野)の出願時の技術水準にあるもののすべてを自らの知識とすることができる者が想定されている。すなわち、「当業者」は、当該ビジネス分野に関する常識とコンピュータ分野の技術常識の双方を有している。
よって、BM発明の進歩性が認められるか否かを判断するに当たっては、「仮に双方の分野の知識を有していたとしても、容易にその発明をなし得なかったか。」が問題となる。なお、公知のビジネス手法の組合せや分野の転用の困難性については、システム設計上の観点から評価される。

⑤当業者の通常の創作能力の発揮に当たる例
(ⅰ)他の特定分野への適用
特定分野に関するCS発明に用いられている手順又は手段は、適用分野に関わらず機能又は作用が共通していることが多い。このような場合、ある特定分野に関するCS発明の手順又は手段を別の特定分野に適用しようとすることは、当業者の通常の創作能力の発揮に当たる。
(ⅱ)周知慣用手段の付加又は均等手段による置換
システムの構成要素として通常用いられるもの(周知慣用手段)を付加したり、システムの構成要素の一部を均等手段に置換しようとすることは、当業者の通常の創作能力の発揮に当たる。
(ⅲ)ハードウェアで行っている機能のソフトウェア化
回路などのハードウェアで行っている機能をソフトウェアで実現しようとすることは、当業者の通常の創作能力の発揮に当たる。
(ⅳ)人間が行っている業務のシステム化
特定分野において人間が行っている業務をシステム化し、コンピュータにより実現することは、通常のシステム分析手法及びシステム設計手法を用いた日常的作業で可能な程度のことであれば、当業者の通常の創作能力の発揮に当たる。
(ⅴ)公知の事象をコンピュータ仮想空間上で再現すること
公知の事象を、コンピュータ仮想空間上で再現することは、通常のシステム分析手法及びシステム設計手法を用いた日常的作業で可能な程度のことであれば、当業者の通常の創作能力の発揮に当たる。
(ⅵ)公知の事実又は慣習に基づく設計上の変更
発明と引用発明との相違点が公知の事実又は慣習に基づくものである場合、本来当業者が適宜取決めるべき性格のものであって、かつ組み合わせに技術的な阻害要因がないときには、その相違点は当業者が必要に応じて定める設計上の変更に過ぎず、当業者の通常の創作能力の発揮に当たる。

⑥このように、 (a)公知の情報処理システムから容易に発明をすることができたもの、(b)公知のビジネス方法から容易に発明をすることができたもの、(c)公知のビジネス方法又は公知の情報処理システムを単に寄せ集めたものは、特許にならない。表で「△」が付されている全てのケースにおいて、進歩性が認められる可能性がある。

実現しようとするアイデア
(ビジネス方法)
公知である 公知でない
ITによる具体化方法 公知である ×
公知でない

⑦進歩性を判断するに当たっては、その発明を全体としてとらえる。このため、例えば、あるビジネス上のアイデアを実現するためのシステム化技術自体は公知の技術の組合せであったとしても、全体として進歩性が認められる可能性は否定できない。すなわち、「そのようなアイデアをこのような方法で実現すること」が、全体としてみて、当業者であっても容易に思いつかないような独創的なものであれば、部分的に公知のものが含まれていたとしても、進歩性が認められ得る。
したがって、一見して技術的には当たり前に見え、特許性がないと思われる場合であっても、ビジネスプロセスを含め種々の観点からアプローチすることが肝要である。例えば、次の点を検討する。
「ビジネス自体が新しい」;ビジネス自体が存在しなかった。
・「ビジネスのプロセスが新しい」;ベースとなるビジネスは存在したが、そのやり方(プロセス)を改善した。
・「新しいインフラを導入した」

7. (参考)BM発明出願における請求項の立て方

(1)特許請求の範囲には、可能な限り広い権利範囲を持つ概念的な請求項と、実際に保護したいビジネス態様の請求項と、利用態様や取引態様などの考えつくあらゆる態様の請求項とを、ソフトウェア自体、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせを明確にして記載する。

具体的には、以下のような請求項を記載する。
・権利一体の原則により、サーバコンピュータに限定した請求項や、クライアントコンピュータに限定した請求項
・特徴部分に特化した請求項(侵害訴追に有利)と、システム全体の請求項(ライセンス交渉に有利)
・利益を得る部分(サービス、仲介、販売等)を明確にした請求項
・ビジネス分野を特定しない請求項
・将来の審査基準や運用指針の改訂を考慮したチャレンジクレーム
・米国出願としては、ハードウェア資源の用い方に関する無用な限定を除いたクレーム

(2)発明がアイデアレベルでなく実施形態、商品形態が確定している場合には、それらに合わせた請求項(ピクチャークレーム)を追加して、権利取得および保護を確実にする。
実施形態の周辺分野、および将来の展開を伴う関連分野をカバーして、抜けのない請求項群を作成することで、ピクチャークレームの回りの権利範囲を強化する。ピクチャークレームに対応した実施例も充実させておくことが望ましい。これにより将来の補正への対応が容易になる。

8.参考文献
(1)特許庁「「特許・実用新案審査基準」の改訂について」
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shinsa/tt1212-045.htm
(2)特許庁「ビジネス方法の特許に関するQ&A」
http://www.jpo.go.jp/toiawase/faq/tt1210-037_qanda.htm
(3)特許庁「特許にならないビジネス関連発明の事例集」
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/bijinesu/tt1303-090_kouhyo.htm
(4)井上正「審査実務から見たビジネス関連発明」知財管理Vol.51(2001)、No.12、1851〜1861頁
(5)香島拓也「バイオインフォマティクス特許」経済産業調査会
(6)PIPA日本部会第一委員会「ビジネス方法特許の上手い取り方」知財管理Vol.51(2001)、No.1、55〜74頁
(7)「特集《ソフトウェア・ビジネスモデル》」パテントVol.55(2002)、No.2、4〜37頁
(8)日本弁理士会研修所実務総合研究部編「弁理士が教えるビジネスモデル特許の本当の知識21世紀バージョン」、東京書籍発明届出書の書き方が記載されています。
(9)古谷栄男他「知って得するソフトウェア特許・著作権」アスキー発明届出書の書き方が「かな漢字変換」を例にして記載されています。
(10)日本感性工学会・IP研究会「ビジネスモデル特許」経済産業調査会
(11)(財)ソフトウェア情報センタービジネス特許調査委員会編「日米ビジネスモデル特許272」日刊工業新聞社

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