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工業所有権関係 中国国家行政機関訪問研修レポート

2002年7月9日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
弁理士 金子一郎

Ⅰ.はじめに
2002年6月4日〜8日の5日間、財団法人経済産業調査会により主催された中国国家行政機関訪問研修へ参加し、知的財産権の付与および保護を担当している中国国家行政機関を訪問する機会を得た。今回の研修は、私にとって初めての中国であったが、その印象は急速な発展途上の活気に満ちた国というものであった。
12億以上の人口を有する中国は日米欧等の企業にとって重要な市場であり、今後の経済発展を考慮するとその重要性はさらに大きくなるものと予測される。その一方で、各企業の中国市場への製品投入に際しては、製品に関する技術および製品に化体した信用を特許権や商標権によって効果的に保護することも非常に重要な問題であろう。
今回の訪問した中国国家行政機関において、実務担当者からの説明を受けたり質疑応答をしたりすることにより、知的財産権の付与および保護に対する実務担当者の姿勢を感じることができた。この点において、今回の研修は非常に有意義なものであったといえる。以下に、今回の研修で訪問した中国国家行政機関において、担当者からなされた説明および質疑応答の内容について簡単に報告する。

Ⅱ.国家知識産権局
国家知識産権局は、特許出願の審査、特許権権付与等を担当する日本の特許庁に相当する機関である。

(1)質疑応答の概要(時間の関係上、日本側の研修参加者からの質問に対して中国側の担当者が回答するという形で説明が進められた)
・Q1.審査促進への取り組みとしては、どのようなことがなされているか。
・A1.近年の出願件数の急増により審理が遅延しており、特に、通信、半導体および薬品の分野では、審査に長期間を要している。電子出願については、現在検討中ですが、実施には時間を要する見込みである。
・Q2.拒絶査定不服審判の成功率はどのくらいか。
・A2.資料がないため正確な数字は分からないが、成功率は低い(高くない)という印象をもっている。
・Q3.審査官は、どのようなデータベースを利用して審査を行っているのか。
・A3.PCTの基準を満たすデータベースを用いており、主にEPCのデータベースを利用している。
・Q4.面接審理は有効か。
・A4.有効である。
・Q5.施行規則で出願人の自発補正が第1回拒絶理由の対応時に制限されているが、改正の予定は。
・A5.審理促進の観点から必要な規則であり、改正の予定はない。
・Q6.対応外国出願の審査結果を報告することは中国における審査の促進につながるか。
・A6.現在提出の義務はないが審理促進の観点から提出することが好ましいといえる。
・Q7.特許庁の審査官の数は現在何人か。
・A7.現在、審査官は500人であり、今後は1200人を目標にして300人/年で増員する予定である。
・A8.中国の審査の基準は日本と米国のどちらに近いといえるか。
・A8.中国の審査官は審査指針に沿って審査を行っており、日本あるいは米国の審査との厳しさと比較を行うことはできない。また、登録率に関する資料も手元にないので、日米中の登録率を比較することもできない。

Ⅲ.上海市工商行政管理局
上海市知識産権局は、上海市全域を管轄範囲とし、商標、不正競争、広告等を担当する工商行政管理部門である。

(1)説明の概要
①担当業務について
・上海市工商行政管理局では商標、不正競争、広告等を取り扱っている。
・各種広告活動、研修会なども実施している。
・2000年10月には模倣品を防止するための署名活動を行った。
・2001年には9000ヶ所の検査を行った。
・模倣品の対策の80%以上は流通過程において行っている。
・当局に登録されている商標の数は937件である。
・ここ数年の上海発展に対して当局が果たした役割は非常に大きい。
②上海の現状について
・現在、上海では536件の投資プロジェクトがある。また、多くの国際企業が上海にオフィスを構えている。
・上海への投資総額は126億人民元(約2000億円)である。
・当局の各種活動の成果として、現在上海企業の間では他社の商標を尊重する気運が高まっている。
・上海は知的財産権の保護環境が良好であり投資に適している。
③模倣品の取り締まり等について
・1999〜2001年の偽物事件は約2000件、罰金総額2300万人民元、没収約1000件、うち11人に対しては刑事責任も追及した。
・1999〜2001年の偽物事件のうち渉外事件は281件であった。
・模倣品に対しては、消費者管理センターに訴えることも可能である。
・各企業には仕入れた商品が本物か偽物かを判断する義務が課されている。
・偽物を販売した場合、販売者は購入者に対して購入代金の2倍を返金する規則になっている。
・2003年から偽物を判断するソフトを導入する予定である。

(2)質疑応答の概要
・Q1.商標の類否判断は工商行政管理局が行っているのか。
・A1.工商行政管理局の事件を取り扱う部門がそれぞれの判断で行っている。

(3)その他
上海市内には至る所に著名商標の広告看板が設けられており、商標保護に対する積極的な姿勢は感じられた。ただし、依然と、模倣品は市内の至る所で販売されているようではある。

Ⅳ.上海市知識産権局
上海市知識産権局は、上海市全域を管轄範囲とする専利工作管理部門であり、特許権侵害行為を認定すること、および侵害と認めた場合に侵害行為の停止を命じることについての権限を有している。但し、専利工作部門には強制執行の権限はなく、人民法院に強制執行を要請する必要がある。
また、当事者の請求に応じて、特許権侵害の賠償額について調停を行う権限も有している。当事者は、調停が成立しなかった場合、人民法院に提訴することができる。

(1)説明の概要
・中国では、特許権に関する紛争を解決するには、行政ルートと司法ルートの2つのルートがあり、上海市知識産権局は行政ルートを担当する。

(2)質疑応答の概要
・Q.2001年に処理した事件の数は。
・A.47件であった。

(3)その他
・特許に関する事件の解決手段として、行政ルートを選択した場合の一般的な特徴は、①審理し、決定を下すのが早い。②経済的である。③当該機関の官員には科学的バックグランドがあり、特許代理人経験者もいる。④自らの決定を執行できない(人民法院に執行を申し立てる必要がある)ということである。

Ⅴ.北京市知識産権局
北京市知識産権局は、北京市全域を管轄範囲とする専利工作管理部門である。

(1)説明の概要
・行政ルートによる解決のメリットは、手続き簡単、早期解決(通常2、3日)が可能という点である。
・当局には紛争の調停および模造品取り締りの権能がある。
・1985年の設立後、357件の紛争を処理しており335件が決案している。
・上記決案件の内訳は、侵害事件154件、権利帰属事件209件、発明者認定4件である。
・1995年以降、特許件に関する虚偽表示の取り締まりを行っている。
・具体的には、北京市の百貨店と協力して虚偽表示品の流通ルートの解明等を行っている。
・模倣品を取り扱わない店の認定、認定証の表示許可も行っている。
・これまでに43件の虚偽表示を取り締った実績があり、現在、虚偽表示は減少傾向にある。
・特許件詐称調査の結果、1998年は40%であった詐称率が、2001年には5.4%にまで減少している。

(2)質疑応答の概要
・Q1.紛争処理した367件中、特許権、実用新案権、意匠件の内訳は。
・A1.特許権60件(内52件が権利帰属に関するもの)、実用新案件270件、意匠件31件である。
・Q2.特許権の紛争において権利帰属事件が多い理由は。
・A2.北京には大学や国の研究機関が多く、また人材の流動性も高いためと考える。
・Q3.職務発明の補償額の算定基準は。
・A3.特許法の規定に基づいて算定するが、特許権を用いた製品に関する収益も参考とする。
・Q4.当局の決定に対する不服申立はどのくらいか。
・A4.1985年の設立後結審した335件のうち16件であった。

Ⅵ.上海市高級人民法院
上海市高級人民法院は、最高人民法院、高級人民法院、中級人民法院、基層人民法院という四種類の人民法院のうち、省、自治区、直轄市にそれぞれ1つ設けられている高級人民法院であり、上海市全域を管轄範囲としている。

(1)説明の概要
・上海市高級人民法院には5つの審判廷がある。
・知的財産権の訴訟は民事訴訟であるから、2審終審性である。
・1年で当法院で取り扱う訴訟の数は、約300〜400件である(1998・99年は約350件、2000・01年はいずれも400件を超えた)。
・近年、海外企業の関わる訴訟が増加している。
・日本企業の関わったこれまでの事件は全て著作権に関する事件であり、当法院では特許権に関する事件を扱ったことはない。

(2)質疑応答の概要
・Q1.渉外事件の審理期間の目安はどのくらいか。
・A1.1年を目安としているが、個別の事件ごとに異なるものである。
・Q2.知的財産権に関する第一審の管轄はどこか
・A2.原則として中級人民法院の管轄であるが、訴額が一定以上の場合には高級人民法院が第一審を管轄する(渉外事件:8000万人民元以上、当事者双方中国人:1億人民元以上)
・Q3.仮処分の申立は実際になされているのか。また、その場合の担保金の額はいくらか。
・A3.商標事件で仮処分の実績があり、実際になされているといえる。この場合、対象品相当額の担保金が必要であり、訴訟が長期化すると担保金の追加が要求されることもある。
・Q4.当局で出された損害賠償金の最高額はいくらか。
・A4.損害賠償金をニ百数十万人民元とする判決がある(請求額は五千万人民元であった)。
・Q5.裁判において均等論の適用はあるのか。
・A5.補助的に利用することがある。
・Q6.判決が出されても執行されないことも多いと聞くがどうか。
・A6.侵害行為をしている会社の多くが損害賠償金を支払う能力がない場合が多いという実情がある。この場合、敗訴者の口座の凍結、財産の閉鎖等を行うが、財産がゼロの場合は賠償金の支払いを執行することはできない。なお、将来的な侵害を防止するために関連会社の調査なども行う。
・Q7.判決の執行は、裁判官のみが行うのか、それとも弁護士も同行するのか。
・A7.執行員(裁判官ではない)が行い、この際弁護士の同行は許されない。
・Q8.裁判事件における、実用新案権および意匠権の割合はどのくらいか。
・A8.両者の合計で70%以上である。
・Q9.発明者確認の裁判では、どのような人が当事者となるのか。
・Q9.出願に係る発明が職務発明に該当するか否かが争われ、発明者と単位との争いとなる。

(3)その他
・特許に関する事件の解決手段として司法ルートを選択した場合の一般的な特徴は、①審理し、判決を下すのが比較的遅い。一審は6月以内、二審は3月以内に判決を下さなければならないとされているが、実際には1年以上を要するケースもある。②コストが高い。③裁判官は、通常、法学系の知識を有する者であり、科学的バックグラウンドをもたない。④その決定を執行する強大な権限を有しているということである。
また、1985年〜1998年に、人民法院が取り扱った特許事件の件数は5,346件であり、特許管理機関が取り扱った件数は4,893件よりもやや多いものであったが、近年、人民法院を利用する割合が急激に増大している(AIPPI(1999)Vol.44 No.9)。

Ⅶ.上海市質量技術監督局
上海市質量技術監督局は、上海市全域を管轄範囲とし、市場に流通している物が一定の基準を満たすものであるか否の取り締りを担当する機関である。

(1)説明の概要
・当局は、知的財産権に関わる製品の品質に関して管理を行っている。
・問題となるのは品質であって、偽造品であるか否かではない。

(2)質疑応答の概要
・Q1.当機関は、商標権を侵害した偽造品について商標を消して市場に再度流通させるための検査を担当しているが、この検査の際の再度流通させるか否かを判断する基準は。
・A1.担当しているが、基準は国家機密であり公表できない。
・Q2.生産者の名前と住所が記載されていない製品は取り締まりの対象となるのか。
・A2.取り締まりの対象となる。
・Q3.販売者のみでなく生産源まで遡って取締りを行っているか。
・A3.生産源まで取り締まるべく努力をしている。
・Q4.どの程度の情報を提供すれば実際に調査してくれるのか。
・A4.告発があれば全て調査する。
・Q5.偽物追放の啓蒙活動を担当する部門はどこか。
・A5.商標は工商行政管理局が、技術は質量技術監督局が担当する。

Ⅷ.連想
連想は中国のPCメーカーである。

(1)説明の概要
・2001年度は300件の特許出願を行った。
・職務発明の報奨金は、5000人民元/件である(1人民元=約16円、北京の所得水準が日本の1/5〜1/10であることを考慮するとかなりの高額)

(2)質疑応答の概要
・Q1.特許費用についての費用対効果の評価指標としては、どのようなものを用いているか。
・A1.(具体的な評価指標に関する明確な答えはなされなかった。)
・Q2.技術調査のデータベースとしてはどこの国のものを使っているか。
・A2.7カ国のデータベースを用いている(日本、EP、USなど)。
・Q3.特許調査教育はどのようにして行っているのか。
・A3.新入社員の必須の技能の一つとして位置づけており、毎年一定の社員に対して行っている。
・Q4.知財部の担当者の数は?
・A4.正確な数字は把握していないが、各部署に知財管理担当者がいるので、数十名程度である。
・Q5.給与水準はどのくらいか。
・A5.社外秘であるため答えられないが、高水準といえる。

以 上

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