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中国の知的財産権事情(その1)

2003年5月23日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
所長代理 平田 光俊

中国が、2001年12月1日に世界貿易機関(WTO)の正式加盟国になったことは、中国の巨大市場を世界に開放し、世界基準の共通ルールによる競争経済に本格参入する国家体制が、着実に整いつつあることを示すものであった。
巨大市場、豊富な労働人口、高い技術吸収力、安い人件費等の中国が持つ様々な魅力に、世界中の企業が注目し、中国進出のビッグウェーヴ現象が起こる中で、日本の企業も実に1万4千社近くが既に中国進出を果たしているという。
中国市場を巡る企業間の競争は、益々熾烈化の途を辿ることになる。その競争から抜きん出た勝ち組企業になるためには、中国における知的所有権の戦略を立てて競争に臨むことが重要であると、どの企業も認識していると思われる。
本稿では、中国の知的財産権に関わる諸々の話題を取り上げ、中国の知的財産権事情の一端を少しでも浮かび上がらせることを意図した。

1.中国特許制度の変遷
●1950年
「発明権および特許保証の暫定条例」を施行。4件の特許権と6件の発明権が認可されただけで、自然消滅。
●1963年
「発明奨励条例」を施行。発明者に発明者証と最高1万元(当時の重工業労働者基準賃金の13年分)の報奨金を与える制度。文化大革命による批判にさらされ、「発明奨励条例」の運用が停止したりする変遷は有ったが、中国内の技術開発促進手段として十分機能したと言われる。
●1978年12月
国内経済に活力を与え、中国市場を外国に開放するとの基本方針を決定(第11期第3次中国共産党全国大会)。 競争原理導入 の画期となる。
●1984年3月12日
中国特許法が可決成立 。(第6期全国人民代表大会常務委員会第2次会議)特許制度を、海外からの技術導入促進に不可欠の制度として位置付けた。

●1985年4月1日
中国特許法施行 。

中国特許法の正式名称
中華人民共和国専利法
「専利」には、発明、実用新案、意匠が含まれる。
「専利」は発明と意匠を1つの法律で保護しているアメリカ特許法の「patent」に、概念としては最も近いと言われている。

●1992年9月
中国特許法第1次改正。
●1994年1月1日
特許協力条約(PCT)の正式締約国となる。
中国国家知識産権局が、国際出願の受理官庁、国際調査機関及び国際予備審査機関となる。
●2000年8月25日
中国特許法第2次改正。
●2001年7月1日
第2次改正法施行。
●2001年12月1日
WTOに中国が143番目の加盟国として 正式加盟 。

2.中国特許法の母法 (1)
中国特許法は、日本と同様に、(旧)西ドイツ法を母法としている。
(旧)西ドイツは、国家予算で毎年20人の中国人を西ドイツに招いて特許専門家として養成を図るなど、特許制度の設立に積極的な援助を行った。
これらの(旧)西ドイツで訓練を受けた人材が、中国特許法施行当時から国家専利局(1998年に国家知識産権局に改称)等で主要なポストを占めるようになっている。

3.中国の特許出願件数等の推移 (2)
中国特許法の施行年である1985年には、14,372件の特許出願が受理された。また、2001年統計によれば、中国が受理した国内外の特許出願総件数は、20万件を超えた。このうち、11万4千余件の特許出願に対して、特許権が付与された。
また、1985年から2000年の間で、特許権を巡る訴訟事件を各級裁判所が受理した件数は、1万件にも上り、その結了率は9割に達するという。
このように、中国の特許制度による知的財産権の保護は、内外人平等の原則の下で、着実な進展を遂げているが、中国の国内産業は、予期されていたこととはいえ、外国勢に対して劣勢に立たされるという問題にも直面している。

例えば、日本の大手家電メーカーが1年間で中国に特許出願する件数は、ここ10数年来で中国から外国へ特許出願された2千件あまりの件数を遥かに上回り、2倍以上にも達している。
また、コンピュータ、医薬、生物のハイテク分野では、1994年から1998年の間に中国が受理した特許出願件数のそれぞれ70%、61%、87%を、外国出願人が占めている。
このため、中国国家知的産権局は、2002年から「特許戦略推進プロジェクト」を立ち上げ、重要な企業やハイテク企業に対し、特許制度の利用能力や特許権の保護能力を高めるための指導援助、特許戦略を担う人材の育成等を実施し始めた。

4.中国特許制度の特記事項 (3)
中国特許法の三大原則は、「権利主義(特許権の取得は発明者に固有の権利)」「先願主義」「審査主義」であり、原則のレベルでは、日本の特許法と変わらない。
ここでは、中国における特許戦略を立案する上で知っておくべき特記事項に触れておく。

(1)中国国内で完成された発明の取り扱い (3)
①中国の単位または個人は、中国国内で完成した発明を外国に特許出願する場合、先ず国務院専利行政部門(国家知識産権局の上部機関)に特許出願を行い、その 国務院専利行政部門が指定する専利代理機構 (日本の特許事務所に相当する)に手続を委任しなければならない(特20条)。
したがって、日本の現地法人が雇用した中国人従業員により完成された発明又は技術開発委託した現地法人にて完成された発明については、 中国出願を第1国出願としなければならない 。

中国特許法6条の「単位」とは
6条「…職務発明創造の特許出願権はその単位に属する。…」
「単位」には、法人,組織,団体,部門等の日本語が該当するが、どれも1対1には対応しない。中国「現代漢語辞典」では「機関,団体,又は一つの機関,団体に属する各部門」と定義されている (4) 。

※なお、国の単位または個人は、中国国内で完成した発明を外国に特許出願する場合、国務院専利行政部門の認可を受けなければならないという旧規定は、手続き簡素化を図るため、2001.7.1施行の第二次改正法で削除された。

②中国の単位または個人が特許出願権または特許権を外国人に譲渡する場合、国務院の関係主管部門の認可を受けなければならない(特10条)。

(2)発明および実用新案の特許出願併願制度 (4)
中国では、1つの発明について、発明特許出願と実用新案特許出願とを併願することが可能である。
但し、同一発明に対し、1つの特許権しか付与されない(実施細則13条1項)ので、同一出願人が同一発明について2つ以上の特許出願をしている場合、1つの特許出願を選択するように指令が発せられる。
実用新案特許出願は、予備審査によって、クレームの記載要件、明細書の公開要件、実用新案の定義適合等に拒絶理由が見つからない場合には、新規性、進歩性、実用性の特許要件を審査することなく、特許権を付与される(特40条)。
実用新案特許権が付与されるまでの所要期間は、出願日から約9〜10ヶ月と言われている。
実用新案特許権の存続期間は、 中国出願日から10年 である。

一方、発明特許出願に対して特許権が付与されるまでの所要期間は、平均すると実体審査請求後約3〜4年、電子技術分野では実体審査請求後6年以上かかることもあると言われている。
このような状況下では、「同一発明について、発明と実用新案の二つの特許出願を行い、発明特許の権利化までは、無審査で権利付与された実用新案特許権によって、発明の早期保護を図ることが、中国での発明保護の有力な方法」 (4) との意見もあり、一考に価すると思料される。

なお、方法発明,用途発明,形状が確定しない物品等は、実用新案の保護対象ではないので、留意しなければならない。
また、権利の法的安定性を担保するために、日本の技術評価書請求と同様の 調査報告書請求の制度 が、2001年施行の改正法で導入されたので、この制度の活用を併せて検討することが肝要である。
発明特許出願と実用新案特許出願相互間の 出願変更は認められていない 。

(3)外国語書面による出願日確保は不可 (5)
中国では、国家知識産権局に提出する書類を中国語で作成することを義務付けている(特許法実施細則4条)。
このため、日本のように英語の出願書類の提出によって出願日を確保することはできない。
したがって、中国語の出願書類を準備する時間的余裕が無い場合には、 PCT出願によって出願日を確保 すべきである。
また、国家知識産権局は、PCT出願の受理官庁となっており、中国語または英語で書かれたPCT出願を受理する。

(4)特許出願における補正の時期的・内容的制限
2001年7月1日から施行された第2次改正法実施細則により、特許出願における補正の時期的・内容的制限が改訂された。
最大の改訂点は、 実体審査を経た拒絶理由通知に応答する補正が、審査官の指摘したクレームについてしか行えなくなった ことである。
そのねらいは、審査の長期化防止にあるとされている。
この改訂によって被る不利益を最小限に抑えるためには、実施細則51条①に規定された「発明特許出願の実体審査移行通知書を受け取った日から3ヶ月以内」に、対応外国出願の審査結果等を考慮してクレームの十分な追加検討を行うことである。
(実施細則51条)

①発明の特許出願人は、実体審査請求時、及び国務院専利行政部門が発行した発明特許出願の実体審査移行通知書を受け取った日から3ヶ月以内に、発明特許出願を自発補正することができる。
②実用新案または意匠の出願人は、出願日から2ヶ月以内に、実用新案または意匠の出願を自発補正することができる。
③出願人は、国務院専利行政部門が発行した拒絶理由通知書を受け取った後、特許出願の補正をする場合、拒絶理由通知書の要求に従って補正しなければならない。
④特許出願書類における文字及び符号の明らかな誤りは、国務院専利行政部門が自ら補正することができる。ただし、国務院専利行政部門が補正した場合、出願人にその旨を通知しなければならない。

(5)無効審判請求は何人でも可
(特許法45条;無効宣告の請求)
国務院専利行政部門が特許権付与を公告した日から、いかなる単位または個人も、当該特許権の付与がこの法律の関連規定に違背すると認めるときに、特許再審委員会に対し当該特許権の無効宣告の請求をすることができる。
日本の場合、無効審判請求人は利害関係人に限られているのに比べて、中国では上記の規定どおり、何人でも無効審判請求人となることができるので、無効審判請求を特許戦略上の有効な武器として利用しやすい。
なお、特許法45条でいう「特許権」には、発明、実用新案、意匠の3つが含まれている。
2001年7月1日から施行された第2次改正法により、特許付与後異議申立の制度は廃止された。
(その1;以上)

[参考文献]
(1)中国特許制度の解説
佐藤文男著  発明協会
(2)中国が「知的所有権戦略」を実施してWTOに加盟
チャイナネット2002.03.15
(3)アジア諸国における知的財産権保護 アジア知的財産スーパーマニュアル
財団法人 知的財産研究所
(4)WTO加盟に向けた 改正中国特許法
小谷悦司著  発明協会
(5)中国における知的財産権の動向
−WTO加盟後の中国特許取得実務の現状と活用−
田中達也著  関西特許情報センター振興会ニュース 第12号

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