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審決等取消訴訟について 〜最新判決例の紹介〜

2003年6月12日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
弁理士 増井義久

1. はじめに
行政処分に対して不服がある場合、行政事件訴訟法に従って出訴できる。特許庁が下した審決・取消決定(審決等)も行政処分に該当する。しかし、特許権や実用新案権に関する事件は技術的かつ専門的であること等の理由から、審決等に不服がある場合にも、行政事件訴訟法の規定をそのまま適用することが必ずしも適当でない。そのため、審決等取消訴訟制度(特許法178条、実用新案法47条)が設けられている。
そこで今回は、審決等取消訴訟の概要と、最新の判決例を紹介する。特に具体的判決例を知ることは、審決取消訴訟や審判を請求する際に参考となるであろう。

2. 制度の概要

2−1.提起の対象
現行法においては、特許異議申立による取消決定、無効審判等の審決、特許異議申立書または審判もしくは再審の請求書の却下の決定に限られる。

2−2.出訴できる者
上記提起の対象となる審判等の当事者、参加人、または、参加を申請して拒否された者に限られる。行政事件訴訟法によれば、行政処分によって権利が侵害された者は原告適格を有するが、特許権のような対世的な権利の場合、利害関係がある者の範囲が非常に広くなり、裁判渋滞をおこすおそれがある。そこで、上記のように限定されている。
また、被告は、提起の対象が取消決定および査定系審判の審決の場合には、特許庁長官であり、当事者系審判の審決の場合は、審判における相手方である。

2−3.裁判管轄
東京高等裁判所を専属管轄とする。審判等は裁判と似た手続きで行われていることや、対世的効力のある特許事件を早く解決させるため、一審級を省略している。

2−4.出訴期間
審決または決定の謄本送達の日から30日以内に出訴する必要がある。この30日の期間は不変期間である。ただし、審判長は、遠隔または交通不便の地にあるもののため、職権で付加期間を定めることができる。

2−5.審理手続
a)審理判断の対象
審決等の実体上の判断または手続上の瑕疵が違法かどうかが審理の対象である。
実体上の判断が違法であるとは、例えば、本件発明と引用発明との一致点や相違点の認定に誤りがあり、該誤りにより進歩性の判断が違法であるような場合である。なお、訴訟において、本件発明が特許されるべきかどうかは判断されるわけではなく、あくまでも、審判段階における実体上の判断の違法性が審理判断の対象である。
審判段階における手続上の瑕疵であっても、審決・決定の結論に影響を及ぼすものも審理の対象となる。手続上の瑕疵とは、例えば、特許異議申立に係る審理において取消理由について事前に特許権者に意見を聞く機会を与えないで決定を下した場合である。ただし、決定の結論に影響を及ぼすものに限られる(下記判決例ⅶ参考)。
b)審理範囲
原則として、審決の理由に示された事実に限定され、新たな事実の主張はできないとされている。

2−6.審理の終了
請求に理由があるときは、審決等を取り消す(請求を認容する)旨の判決がなされ、理由がないと認めたときには、請求を棄却する旨の判決がなされる。
審決等を取り消す旨の判決が確定したときには、その判決が特許庁を拘束する。これにより、特許庁は、同一事項に関し、同一の理由で処分することができない。特許庁審判官は、判決の趣旨に従って、さらに審理を行い、審決等を行う。
判決に不服がある場合には、最高裁判所に上告できる。

3. 最新判決例の紹介

3−1.2003年5月度判決言渡し分の統計
2003年5月度に、特許権・実用新案権に関する審決等取消訴訟の判決が言渡されたものは23件であった。該23件について、請求対象となる審決等の種類と、請求が認容されて件数を下表1に示した。

表1 2003年5月言渡分の審決等取消訴訟の件数
請求対象の審判等の種類 件数 請求が認容された件数
異議申立による取消決定 11 5(2)(注2
無効審判 認容審決 3 0
棄却審決 3 1
拒絶査定不服審判 拒絶査定不服審判 4 1
審判等の請求却下の決定 1 0
補正却下の決定(注1 1 0
23 7

注1:平成5年以前の旧法では、拒絶査定不服審判において要旨変更する補正が却下された場合に、東京高裁に補正却下不服の訴を行うことができた。本件は、平成1年にされた原出願の分割出願に係るものであり、旧法の適用を受けたものである。
注2:カッコ内の数字は、取消決定後に訂正審判を請求して、訂正が認められ、請求が認容された件数である。

3−2.判決例の紹介
上記23件の判決例のうち、個人的に興味を持った争点について紹介する。
ⅰ)平成13年(行ケ)第583号
対象:異議申立による取消決定
原告:特許第3038428号「放射線画像情報読取装置」の特許権者
被告:特許庁長官
結論:認容

本件発明は、
「(A)放射線画像が記録された放射線画像変換パネルを読み取って,複数の画素からなる画像データを得る読取手段と, (B)前記読み取った画像データを前記放射線画像の縦方向及び横方向について 同一の間引き率で間引く間引き手段 と, (C)前記間引き手段にて間引かれた画像データの頻度分布に基づいて,前記放射線画像に応じた前記画像データに対する階調処理条件を求める手段と, (D)を有すること特徴とする放射線画像情報読取装置」に関する。特許庁は、刊行物1と周知技術をもとに進歩性なしとして取消決定した。しかし、原告は①構成要素(B)と刊行物1との一致点の認定、②周知技術をもとにした相違点の判断に瑕疵があるとして出訴した。

争点①:原告の主張に対し、被告は、刊行物1には画像データを「同一の間引き率で間引くこと」が記載されていることが明らかであると主張した。
これに対し東京高裁は、刊行物1には、「2048×2048の画素からなるオリジナル画像を縮小することにより,1024×1024画素の画像を得ること」が記載されているものの、画像を縮小するには、様々な方法があり、これらは刊行物1での縮小に採用することができるとして、「刊行物1には,・・・ 同一の間引き率で間引くことが記載されていることが明らかであるということはできない 」と判断し、原告の主張を認めた。

争点②:東京高裁は、上記一致点認定の誤りに関する構成は、本発明の基本的構成であることを鑑みると、乙号各証には本発明の進歩性判断の前提となる周知慣用技術は認められないと判断した。

コメント:要するに、刊行物1には、間引く手法や、その他様々な手法により高解像度から低解像度の画像を得るという上位概念的な記載がされており、本件発明の「間引く」手法という下位概念が記載されているに等しいとはいえないと判断したこととなる。この判断は、「引用発明の認定における上位概念及び下位概念で表現された発明の取扱い」に関する特許庁の審査基準に照らしてみれば、妥当な判断であろう。

ⅱ)平成14年(行ケ)第118号
対象:無効審判の棄却審決
原告:無効審判の請求人
被告:特許第3041307号「ウィング付き収納ボックスとこれに用いるオートロック装置及びデッドボルト」の特許権者
結論:認容

本件発明は、
「【請求項1】(A)・・・・・ロック装置本体(1)と, (B)・・・・・ブラケット(40)と, (C)前記ロック装置本体(1)に 上下方向に沿って出退自在に挿通され かつ前記ブラケット(40)に引っ掛かって前記ウイング(5)の開放を阻止する突出端部を有するデッドボルト(16)と,を備えたウイング付き収納ボックスのオートロック装置において, (D)・・・・・窪み部(76)が設けられていることを特徴とするウイング付き収納ボックスのオートロック装置。
【請求項3】(E)ボックス本体(3)内のロック装置本体(1)に上下方向に沿って出退自在に挿通されており,かつ,ウイング(5)の内面(5A)に設けたブラケット(40)に引っ掛かって前記ウイング(5)の開放を阻止する突出端部を有するウイング付き収納ボックスのオートロック装置に使用するデッドボルトにおいて, (F)前記突出端部に,前記ウイング(85)の開放方向に向けて突出している 前記ブラケット(40)の掛止部(43A)に対する引っ掛かりを確実にするための窪み部(76) が設けられていることを特徴とするウイング付き収納ボックスのオートロック装置に使用するデッドボルト」 に関する。特許庁は、引用例1〜3をもとに請求項1、3に係る発明は進歩性ありとして、無効審判の請求を棄却した。しかし、原告は、①請求項1の構成要素(C)と引用例3との相違点についての判断、②請求項3の構成要素(B)と引用例3との相違点についての判断に瑕疵があるとして出訴したものである。

争点①:原告は、引用例3における係着金具に対する爪部材の動きに着目すれば、爪部材の先端部分は、係着金具の上端に対し、上下方向に移動自在に設けられているとして、請求項1の構成要素(C)と実質的に同一であると主張した。
東京高裁は、構成要素(C)の突出端部は、上下方向に沿って往復運動し,ブラケット(40)に引っ掛かるものであれば,上下方向に 直線的な 往復運動をするものに限られず、引用例3発明の爪部材も,一定の中心角の範囲内で円弧運動を行うものであるけれども,上下方向に沿って往復運動し,係着金具7に引っ掛かるものであるから,構成要素(C)と実質的に同一であると判断した。

争点②:請求項3は、引用例3をもとに進歩性がないとする原告の主張に対し、被告は、請求項3に係る発明においては、ブラケットがウィングの開放方向に突出している掛止部を備えており、掛止部(43A)のような突起が形成されていない引用例3発明の場合に比べて,有利に効果を奏すると反論した。
これに対し東京高裁は、請求項3に係る発明はデッドボルトについての発明であり、構成(F)において, 「ブラケット(40)の掛止部(43A)に対する引っ掛かりを確実にするための」との文は,「窪み部(76)」を修飾するための文 であり, 「ブラケット(40)の掛止部(43A)」を,その発明の構成要件として規定しているものではない 、と判断し、審決が,「本件発明3の・・・・・ブラケットにはウイングの開放方向に向けて突出する掛止部が設けられているのに対し、引用例3発明の・・・・・ブラケットにはウイングの開放方向に向けて突出する掛止部が設けられている点で相違する」とした判断は誤りであるとした。

ⅲ)平成14年(行ケ)第119号
対象:異議申立による取消決定
原告:特許第3132632号の特許権者
被告:特許庁長官
結論:認容

本件発明は、
「z個の外歯を有するインナーロータと,(z+1)個の内歯を有するアウターロータとからなる内接型オイルポンプロータにおいて,前記インナーロータの歯数(z:個)と,インナーロータの歯形の創成円の半径(R:mm)と,インナーロータの歯形の歯先円の直径(d1:mm)と,インナーロータの歯形の歯底円の直径(d2:mm)とが下記式 0.20≦R・z/(π・(d1+d2)/2)(式A)≦0.30 を満たすトロコイド歯形をインナーロータの外歯に用いたことを特徴とする内接型オイルポンプロータ」 に関する。特許庁は、引用例をもとに新規性がないとして、取消決定をしたが、原告は、①新規性の判断に誤りがあるとして出訴したものである。

争点①:原告の主張に対し、被告は、引用例に示されたインナーロ−タの歯数等の数値データより式Aは0.08〜0.628の範囲であることが示されており、これは本発明の条件を満たすものであり、本発明と同一であると主張した。
これに対し東京高裁は、引用例には式Aが0.08〜0.628である数値範囲が記載されているものの、この数値範囲から本発明の範囲を採用することについての記載、示唆はないとして、引用例に本発明が開示されているとはできないとし、決定の判断は誤りであるとした。また、高裁は「数値限定発明である本件発明の新規性の判断に当たっては,数値限定の技術的意義を考慮し,・・・・・格別の優れた作用効果を奏するものであるときは,新規性が肯定される」と述べ、本件明細書において0.2〜0.3の範囲内の実施例は、0.08〜0.628の範囲内でありかつ0.2〜0.3の範囲外の比較例に比べ、脈動特性が良いことが示されており、「決定は,本件発明の数値範囲の臨界的意義を何ら検討していない」とした。

コメント:上記判決例ⅰ)と同様に、引用例が広い範囲(上位概念)の記載であり、本件発明がその範囲に含まれる狭い範囲(下位概念)としても、引用例が下位概念で表現された発明を示しているとはされない、とする新規性に関する審査基準からすると妥当な判断である。また、本事件のように、数値限定に関する事件では、その数値範囲がもつ臨界的意義を明細書において明確化することが権利取得に重要なポイントである。

ⅳ)平成14年(行ケ)第373号
対象:拒絶査定不服審判の棄却審決
原告:特願平3−510089「粉末被覆組成物」の出願人
被告:特許庁長官
結論:棄却

本件発明は、
「A 着色粉末被覆組成物において,該粉末粒子は個々の粒状成分を溶融又は結合し複合体粒子とした凝集物であって,該複合体粒子は該組成物の基体への適用に関する機械的及び/又は静電気力下で分離せず,且つ該個々の粒状成分は,主たるフィルム形成性成分と,フィルム形成性成分及び非フィルム形成性成分から選択された一種類以上の他の成分とからなり,然も, B 凝集物が金属又は光沢成分,及び流動化可能なフィルム形成性成分を含む 場合には ,・・・・・ C 凝集物が二種類以上の異なった色の相容性フィルム形成性成分及び任意に非着色相容性フィルム形成性成分を含み,これらのフィルム形成性成分の各各の粒径が,粉末被覆を基体に適用して加熱し,連続的な被覆を形成した時,得られる被覆が均一な色となる位充分小さい 場合には ,・・・・・ D 上記組成物」 に関する。特許庁は、刊行物1をもとに進歩性なしとして無効審決したが、原告は、①本発明の認定、本発明と刊行物1に記載の発明との一致点・相違点の認定、および相違点についての判断に瑕疵があるとして出訴した。

争点①:原告は、構成B及び構成Cは,本願発明の従属項として規定されているものではなく,独立項として,本願発明における上位概念である「凝集物」を更に限定したものである、と主張した。
これに対し東京高裁は、本願発明は,構成B及び構成Cに規定されていない凝集物で,構成A及び構成Dに規定された「凝集物」をその発明として包含するものであることが明らかであるとし、構成A及び構成Dからなる組成物と、引用発明との対比から、本願発明に進歩性がないと判断した審決に誤りはないと判断した。

コメント:特許法36条5項には、「各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない」とされているところ、上記構成B,Cのような「・・・・・の場合には、・・・・・」という記載方法であれば、構成B,C以外の場合も構成A,Dに含まれるとする判断は妥当であると思われる。

ⅴ)平成14年(行ケ)第324号
対象:拒絶査定不服審判の棄却審決
原告:特願平11−214606「防災瓦」の出願人
被告:特許庁長官
結論:棄却

本件発明は、
「瓦本体の両側端部に葺合時重合される桟と差込部を形成した平板状の瓦であって,千鳥葺き合わせ時に,瓦本体に設けた係合凸部と係合差込部が係合する防災瓦において,瓦本体の尻側水返し上面の中央付近に,立上部と該立上部から桟側への水平部を連続した係合凸部を設けて,水返し上面と係合凸部の水平部下面の間に差込空間を設け,上記差込空間に差し込まれる係合差込部を,差込部の水返しの外側に設けたことを特徴とする防災瓦」
に関する。特許庁は、引用発明との対比により、進歩性なしとして、拒絶査定不服審判の請求を棄却したが、原告は、引用発明の認定、①引用発明との相違点の判断、に瑕疵があるとして出訴した。

争点①:原告は、出願当時の当業者にとっては,係止突起のある防災瓦を製造するために,引用発明のように尻切欠部の存在は避けることができず,尻切欠部がない本発明に係る防災瓦を製造することができるとは考え及びもしなかったことであり、本発明はこのような防災瓦の製造上の問題を解決したことにより成されたものである、と主張した。
これに対し東京高裁は、尻切欠部を設けることによる不都合は自明であり、これを設けることなく目的が達成できるならば,そのようにしたいということは当業者として当然考えることであるとし、尻切欠部を設けずに係合凸部を形成するという構成自体は容易に想到できると判断した。したがって、請求の範囲に記載事項が構成のものにとどまる限り、進歩性は認められないとした。
また、裁判所は、次のようにも述べている。「本願発明1の構成の防災瓦を製造する方法については,これを特定する事項を特許請求の範囲に記載することにより,・・・特許出願がされていれば,これについては,この点についての公知技術を調査するなどした上で,その進歩性を判断することになる。」

コメント:本事件は、発明が解決しようとする課題を解決する手段と、特許請求の範囲に記載された事項との不一致が招いた事件であるといえる。つまり、発明の特徴点として本来記載すべき事項が欠落していたことによる。本判決文を読むにあたり、先行技術との関係による本願発明の特徴点の十分な把握と、それを特許請求の範囲に反映させることの基本原則の重要性を再認識させられた。

ⅵ)平成13年(行ケ)469号
対象:異議申立による取消決定
原告:実用新案登録第2604241号の実用新案権者
被告:特許庁長官
結論:棄却

本件考案は、
「内部に粘性液体が封入された容器本体と蓋部とから構成される熱可塑性樹脂製密閉容器から少なくとも構成された粘性液体封入ダンパーであって,該密閉容器本体と蓋部は熱融着されており, 該蓋部に,熱可塑性樹脂からなり固定部材の空間に押し込むだけで 嵌着する 係合部を備えた装着部が一体に設けられていることを特徴とする粘性液体封入ダンパー」
に関する。特許庁は、刊行物1,2をもとにきわめて容易に想到できるとして取消決定したが、原告は、①刊行物1との一致点の認定、刊行物1との相違点の認定に瑕疵があるとして出訴した。

争点①:原告は、本件考案の「嵌着」は強固に固着できる形態を表し、刊行物1のゴム製のダンパーのような簡単に外れるようなものではない、と主張した。
これに対し東京高裁は、「嵌着」なる語が使用されている他の実用新案公報3件においては、単に「はめて取り付ける」意味で使用されているとして、原告の主張する意味では通常使用されていないとした。さらに、本件明細書において、「嵌着」の語は、「固定」「固着」と特に区別なく使用されているとし、原告の主張は採用できないと判断した。

コメント:特許発明の認定は、特許請求の範囲の記載に基づいて行われるが、この場合、明細書や図面の記載、並びに出願時の技術常識を考慮して特許請求の範囲に記載された用語の意義が解釈される(特許法70条)。本判決においても、用語「嵌着」の意義の解釈が、同手法によって行われており、上記判断がなされている。

ⅶ)平成13年(行ケ)301号
対象:異議申立による取消決定
原告:特許第2792373号の特許権者
被告:特許庁長官
結論:棄却

特許庁は、発明の名称を「非水電解液二次電池」とする本件発明は刊行物1,2をもとに進歩性がないとして取消決定をしたが、原告は、刊行物1との一致点・相違点の認定および相違点3についての判断に誤りがあることに加えて、①手続上の瑕疵があるとして出訴した。

争点①:原告は、決定の相違点3の認定及びこれに対する判断は、訂正拒絶理由通知書及び取消理由通知書に示されておらず、原告はこれに対する意見等をする機会が与えられていないものであるから、手続上瑕疵があると判断した。
これに対し東京高裁は、相違点3に関する認定および判断は、上記通知書に記載されていないことを認めたうえで、該手続上の瑕疵は決定の結論に影響しないとして原告の主張を退けた。その根拠として、相違点3自体は訂正拒絶理由通知書に対する原告の意見書内の主張に基づくものであること、相違点3は周知の事項から容易に想到できるものであり、該周知の事項は当業者であれば当然知っていること、原告は該周知性について争っていないことから、原告に不意打ちを与えたとはいえないとしている。

4. 最後に
上記のように、審決等取消訴訟の具体的判決例のなかには、権利取得・維持のための明細書の記載方法、審判等での対応のための参考となることが多い。
そこで、今後とも定期的に本コラムにて、最新の判決例を紹介していければと思う。

以上

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