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職務発明(法制度編)

2003年7月1日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(文責:本山)

オリンパス職務発明判決(2001年5月23日の東京高裁判決)や、青色LED職務発明訴訟(原告:中村修二、被告:日亜化学工業株式会社)を契機として、昨今、職務発明制度に対する関心が高まってきている。以下に、職務発明と法制度について簡単に説明する。

1.特許法での規定
職務発明について、特許法第35条には、
『1 使用者、法人、国又は地方公共団体(以下「使用者等」という。)は、従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」という。)がその性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明(以下「職務発明」という。)について特許を受けたとき、又は職務発明について特許を受ける権利を継承した者がその発明について特許を受けたときは、その特許権について通常実施権を有する。
2 従業者等がした発明については、その発明が職務発明である場合を除き、あらかじめ使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を継承させ又は使用者等のため専用実施権を設定することを定めた契約、勤務規則その他の定の条項は、無効とする。
3 従業者等は、契約、勤務規則その他の定により、職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を継承させ、又は使用者等のため専用実施権を設定したときは、相当の対価の支払を受ける権利を有する。
4 前項の対価の額は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない。』と規定されている。

1−1.従業者等がした発明とは
従業者等がした発明には、業務発明、職務発明、自由発明がある。業務発明は、使用者等の業務範囲に属する発明である。職務発明は、業務発明の範疇に含まれるものであり、業務発明のうち、その発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明である。自由発明は、使用者等の業務範囲に属しない発明である。

1−2.職務発明の概念
工業所有権法逐条解説(特許庁編)では、職務発明の範囲を、
「具体的な例をもって示すと、現行法においては同一企業内において職務を変わった場合、転任前の職務に属する発明を転任後にした場合も職務発明に属することになる。なお、職務発明は同一企業内の場合に限られ、甲会社の時代の職務上の経験にもとづいて乙会社へ転任後発明したとしても、それは「その使用者等における」ということにならないので職務発明には該当しない。またここにいう「職務に属する発明」とは、必ずしも発明をすることを職務とする場合に限らないが、自動車の運転手が自動車の部品について発明したような場合まで含める趣旨ではない。すなわち、ここにいう職務に属するという場合の職務は、ある程度発明活動に関連をもった職務に限られる。このような職務発明について従業者等が特許を受けたときは、使用者等がその特許権について通常実施権を有するとしたのは、両者の間の衡平ということを考えたものにほかならない。すなわち、職務発明がされるまでには、使用者等も直接間接にその完成に貢献していることを参酌したものである。」と説明している。

ここで「職務」とは、或る程度、発明活動に関連がある職務(過去または現在、携わっている仕事や研究テーマ)に限られてはいるものの、使用者等から具体的に指示された職務だけに限られるものではない。
「従業者が当該発明をすることをその本来の職務と明示されておらず、自発的に研究テーマを見つけて発明を完成した場合であっても、その従業者の本来の職務内容から客観的に見て、その従業者がそのような発明を試みそれを完成するように努力することが使用者との関係で一般的に予定され期待されており、かつ、その発明の完成を容易にするため、使用者が従業者に対し便宜を供与しその研究開発を援助するなど、使用者が発明完成に寄与している」場合も、職務発明に含まれるとの判決が出されている(大阪地裁判決、平成6年4月28日)。

また、「職務」とは、「発明の完成を直接の目的とするものに限らず、結果からみて発明の過程となりこれを完成させるに至った思索的活動が、当該従業者等の地位、職種、職務上の経験や、使用者等がその発明完成過程に関与した程度等の諸般の事情に照らし、使用者等との関係で当該従業者等の義務とされる行為の中に予定され期待されている場合をも含むものと解するのが相当である。」とした判決もある(東京地裁判決 平成3年11月25日)。

1−3.職務発明制度の趣旨
特許を受ける権利はもともと自然人である発明者に帰属する(29条1項柱書)。しかしながら、職務発明がなされるに至るまでには、使用者も研究費の支出や研究場所・資材の提供等、直接的・間接的(例えば、給与の支払等)に、その完成に貢献している。それゆえ、発明から生じる権利や利益は、発明者が独占できるものではなく、労使間で公平に分配する必要がある。
ところが、発明から生じる権利や利益の分配を労使間の自由な取り決めに任せると、両者の力関係によってその配分が左右されるため不公平が生じる(多くの場合、発明者側に不利となる)。それゆえ、特許制度の目的が達成できないことになるおそれがある。

職務発明制度は、上記の不都合を解消し、従業員等がした発明についての取り扱い、特に、特許を受ける権利の帰属関係を規定することによって、労使間(従業者と使用者との間)の公平を図ろうとするものである。つまり、職務発明がなされる際の発明者と企業との貢献度を考慮して、両者間での公平を図るものである。

2.発明の完成時期
発明者が会社を退職した後、或いは他の会社に転職した後に特許出願された場合には、その発明が職務発明であるか否か、また、職務発明である場合には、転職前の会社の職務発明か、転職後の会社の職務発明であるかの判断は微妙である。
会社を転職した後、転職前の会社で培われた職務上の経験等に基づいて発明をした場合は、特許出願されたときに使用者が異なっているので「その使用者等における」ということにはならない。従って、職務発明には該当しない。
しかしながら、発明者が会社を退職した後、或いは他の会社に転職した後、僅かな期間しか経ないで特許出願された場合には、その発明の完成の時期が問題となる。特許出願された発明が前の会社の在職中に完成された職務発明であるとされた判決(大阪地裁判決 昭和54年5月18日)や、退職してから24日後に特許出願されていることから、退職の時点でその発明が完成していたものと推認するのが相当であるとして職務発明であると認定した判決(名古屋地裁判決 平成5年5月28日)がある。

3.使用者が受ける利益
職務発明にかかる特許権について、通常実施権(無償)を有する(35条1項)。この通常実施権は、登録をしなくても特許権に対抗することができる(99条2項)。その他に、当該特許権の放棄の承諾件を有する(97条1項)、当該特許に関して訂正審判(訂正請求を含む)を請求することに関しての承諾件を有する(127条、120条の4第3項、134条5項)、職務発明については、予約継承について優先的地位を有する(35条2項)

4.従業者が受ける利益
発明をしたことによって生ずる特許を受ける権利はもともと自然人である発明者に帰属する(29条1項柱書)。それゆえ、従業者等は、契約、勤務規則その他の定により、職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を継承させ、又は使用者等のため専用実施権を設定したときは、相当の対価の支払を受ける権利を有する(35条3項)。また、対価の額は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない(35条4項)。

4−1.対価の額
現在多くの企業では、従業者等に勤務規則(就業規則)やその他の定によって、職務発明については特許出願前に会社に譲渡する(譲渡書に署名する)ことを原則としている。一方、従業者には、勤務規則等とは別個に定められた職務発明規定等の規定に基づいて、特許出願時や特許権登録時、特許権収入の取得時等に、それぞれに対する報償金や補償金を支払うという取り扱いをしている。
つまり、多くの企業は、画一的かつ公平な事務処理を行うとの理由(発明の内容に関わらず、多くの従業者を横並びに扱う日本人的感覚)から、或いは、特許を受ける権利が出願から特許登録されるまでに時間を要し、かつ、承継時の時点で相当の対価を算出する(予測する)のが困難であるとの理由から、予め定められた社内規定により、職務発明に係る特許権等の承継等に対する相当の対価について、出願補償、登録補償、実績補償等に分ける等して、その算定基準や支払時期等を定めている(単純に「出願手当」等の手当扱いにしている企業もある)。
しかしながら、特許法35条3・4項は強行規定(法令中の規定で当事者の意思の如何を顧慮することなく無条件に適用されるもの)と解される。それゆえ、社内規定に基づいて職務発明の譲渡に対して報償金や補償金が支払われ、かつ、それを異議無く従業者が受け取っていた場合であっても、その報償金や補償金の金額が相当の対価の額に満たないものであると判断すれば、従業者は使用者に対して不足額を請求することができる。対価の支払請求権は、特許を受ける権利を使用者に継承させた際に発生する。

オリンパス職務発明判決に照らし合わせると、特に実績補償の扱いに関しては、現実的には(発明によって受ける利益の額が多い場合)、殆どの企業の社内規定が特許法の規定に反していると考えられる。そこで、一部の企業では、本格的な実績補償制度の確立を図るべく、さまざまな試みに取り組んでいる。例えば、実際に新製品・新商品の売上や利益に対する特許発明の貢献度を評価し、その特許発明に関わった発明者全員に対して、会社の利益取得額に基づいた補償金を支払うという制度を導入している企業もある。
尚、公的研究機関に属する発明者の職務発明に関しては、2002年2月に、これまで六百万円を支払限度額としていた「国家公務員の職務発明等に対する補償金支払要領」(特許庁長官通達)が改訂(廃止)された。また、2002年5月には、国立大学教官の職務発明に対する対価支払規定の見直しが報告された。

5.職務発明規定の見直し
経団連の報告書「知的財産を核にした産業競争力の強化に関する考え方について」(2001年1月22日)では、「企業自らがより良い人材を集めるべく、研究者等への(報償金以外の)インセンティブ(給与、表彰、昇進、研究者名を冠する研究所の設立、ストックオプションの付与等)を高めるよう努めるとともに、職務発明の扱いについては、従業者が弱者という認識のもとに、発明の対価の額を法律で補償する方式から、企業が発明報償金の扱いを含めた処遇を提示し、研究者等との間で合意を得ることを前提に、両者の取り決めを尊重する方式に、考え方を改めていくべきである。」としている。また、日本知的財産協会の「特許法第35条職務発明規定についての提言」(2001年12月6日)では、現行特許法第35条3項(実績補償規定)の削除が提案されており、提案理由として、「職務発明の会社への帰属の要否、補償の要否、補償の額等の事項は、会社と従業員の自由な契約に任せるべきである。」、「会社の得た利益、会社の貢献度を具体的事業や会社の置かれた経営環境、会社の技術資産、研究設備投資、研究者以外の貢献度と無関係に評価することは合理的でない。」、「そもそも、発明の帰属や補償に関する事項を法律で強制的に規制する時代ではない。」と主張されている。
また、経済産業省の「産業競争力と知的財産を考える委員会」における2002年6月5日の最終報告では、2002年度中に企業の実態、発明者の意識等を調査し、産業競争力強化の観点から特許法改正の是非等について検討を加え、2003年度中に結論を得るとしている。

6.結語
職務発明制度に対する関心の高まりとともに、発明者と企業との間で「相当の対価の支払い」を巡る裁判が争われることが多くなってきている。法制度の見直しもさることながら、発明者および企業の双方にとって不幸な結果を招かないよう、特に企業側は、本格的な実績補償制度の確立を図るための早急な対応が必要である。

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