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職務発明(法改正の動向編)

2003年7月1日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
弁理士 長谷川 和哉

オリンパス光学工業事件、日亜化学工業の青色発光ダイオード事件、味の素の人口甘味料事件など、最近、特許法第35条(職務発明規定)に関する訴訟が相次いでいる。特に争点となっているのは、「相当の対価」の額についてである。現行の特許法第35条では、従業者等は、契約により、職務発明について特許を受ける権利を使用者等に承継させた場合等は、「相当の対価」の支払を受ける権利を有する(特許法第35条第3項)とし、「相当の対価」の額は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額およびその発明がなされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない(特許法第35条第4項)と規定されている。よって現行法では、「対価請求権」を認めつつも、その「相当の対価」の額についての明確な算定基準が存在しないに等しい。

ここで、従業者等が「対価請求権」に基づき「相当の対価」を請求した場合、使用者等は、自己の貢献度を高く主張し、その「相当の対価」をなるべく低額に見積もろうする。一方従業者等は、自己の貢献度を高く主張し、「相当の対価の額」をなるべく高額に見積もろうとする。その結果、労使間でその「相当の対価」の額に開きが生じ、係争関係が成立する。このようにして前述の訴訟をはじめとする争いが、各所で起こっている。

また平成15年4月22日、最高裁第三小法廷(上田豊三裁判長)は、オリンパス光学工業事件の上告審に対し、「職務発明について特許を受ける権利を使用者に承継させた従業者は,使用者があらかじめ定める勤務規則その他の定めによる対価の額が特許法第35条第3項及び第4項所定の相当の対価の額に満たないときは,その不足額を請求することができる」との初判断を示した。このことによって、今後ますます「相当の対価」の額をめぐって従業者(元従業者)が、使用者等を相手どって訴訟を起こすことが当然予想される。

職務発明の趣旨
そもそも特許法第35条は、従業者等と使用者等の果す役割、貢献等を公平に比較考量し、両者の利害の調和を図ることによって、産業活動が円滑に行なわれ、特許法の究極目的である「産業の発達」を図ろうとする趣旨のもと規定されている。ここで、従業者等に対価請求権を認めているのは、その雇用関係からどうしても不利な立場に置かれる可能性が高い従業者等を保護するためと、従業者等の発明への意欲を増進させるためである。
しかし、今日の職務発明の置かれている現状を見ると、従業者等は、いくら大発明をしたとしてもそれが職務発明に属する場合は、その力関係から使用者の利益が偏重されると考え、発明への意欲が損なわれてしまう可能性がある。一方使用者等は、大発明を従業者等がすれば会社の利益が上がる反面、高額の対価を発明者に支払わなければならないと考え、これもまた産業活動への意欲減退を招きかねない。よって、現行では、立法趣旨を満足させる制度となっていないように思われる。従って、特許法第35条の改正は、誰の目から見ても必要であることは明白である。

各団体の特許法第35条改正に対する見解

<日本弁理士会>
日本弁理士会は、以下のような改正案を公表した(平成15年1月27日)。
特許法第35条第3項「従業者等は、契約、勤務規則その他の定により、職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ、又は使用者等のために専用実施権を設定したときは、相当の対価を受ける権利を有する。但し、使用者等と従業者等個人との個別の契約に合理性があり且つ十分な説明がなされたものであれば、この限りではない。」
以上のように現行法の基本理念を維持しつつ、「合理的かつ十分な労使間の契約」の存在という条件付で、特許法第35条第3項の適用除外を認めるというものである。とかく弱い立場に置かれがちな従業者等(発明者)の保護という職務発明規定の基本的理念を維持しつつ、その中で一部条件付ではあるが、各人の合理的な契約にゆだねるという一歩進んだ制度となっているように思われる。ただし、「合理的かつ十分な労使間の契約」の解釈については、議論すべきところがあると思われる。
<日本知的財産協会>
日本知的財産協会は、以下のような改正案を提案した(2001年12月7日)。
現行特許法第35条第3項および第4項を削除し、新しい第3項として次の趣旨の規定を新設する。
「使用者等は、あらかじめ、従業者等との契約、勤務規則その他の定により、職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ、又は使用者等のため専用実施権を設定すること、およびその場合の条件等を定めることができる。」

以上のように、現行の第3項および第4項を完全に撤廃し、職務発明の取扱いについては、会社の自主性を尊重すべきとした抜本的な改正案である。この制度によれば、魅力ある処遇制度(発明へのインセンティブ付与等を含む)を有している会社に立派な発明のできる優秀な研究者が集まるという。契約社会である米国的考え方にたった改正案であり、非常に合理的なものであると考える。ただし、日本の雇用制度が変革している現段階においては、まだまだ従業者等(発明者)が弱者になりやすいという現状があり、従業者等(発明者)の保護については、やや懸念されるところである。

特許庁の改正案
特許庁は、職務発明をめぐる課題に対応すべく、産業構造審議会の特許制度小委員会を中心に同条の見直しを検討してきた。特許庁は、先日特許法第35条(職務発明規定)の改正案をまとめた。
その中で、
・企業に特許権などを与えた社員は「相当な対価の支払を受ける権利を有する」と定めている現行規定を改めて、企業と社員は労働協約に基づいた合理的な契約を交わし、発明の報酬を双方の合意で取り決めることを原則とする。
・ただ、中小企業やベンチャー企業などで、過去に契約を結んだことがないような場合や契約に不備がある場合に限り、発明者が「相当な対価」を受ける権利を定めた現行規定を発明者保護の目的で残す。
・また現行規定は相当の対価の算定基準として「企業が受ける利益や企業の貢献度を考慮する」としただけで、明確な基準がない。対価の公正な算出には、企業側が負担したコストも反映させるべきだとして、改正案には考慮すべき企業の貢献内容を明記する。
とした。

職務発明については、労使間の個別契約を原則とし、その契約に不備がある場合等に限り、現行特許法第35条第3項を適用して発明者の保護を担保している。また「相当な対価」の額の算定基準についても、改正法では、企業の貢献内容を具体的に盛り込み、算定における疑義を低減させようとしているようである。この改正案は、前述の日本弁理士会および日本知的財産協会の改正案の長所をそれぞれ盛り込んだようなものとなっており、非常に期待できるものである。今後は、政府の知的財産戦略本部との調整を経て改正案の細部を夏までに決め、来年の通常国会に提出する予定となっている。

最後に
かかる改正法案は、あくまで職務発明についての取り扱いを原則的に会社対個人に委ねているわけであるから、これによって、職務発明、特に「相当な対価」の問題がすべて解決するというものではない。今後も各所で訴訟によって争われることは、当然避けられないであろう。しかし、これらの判例および議論の積み重ねによって、わが国における職務発明問題が早期に沈静化することを希望するととともに、職務発明制度が特許法の究極目的を達成する制度として確立されることを強く期待したい。

<参考文献>
1.職務発明制度に関する日本弁理士会の見解(2003年1月27日版)   日本弁理士会http://www.jpaa.or.jp/seimei/syokumuhatumeikenkai_20030127.htm
2.特許法第35条職務発明規定についての提言 2001年12月7日  日本知的財産協会http://www.jipa.or.jp/opinion/35.pdf
3.第16回「特許法第35条の職務発明規程を撤廃せよ」科学ジャーナリスト馬場 錬成氏    http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/colCh.cfm?i=t_baba16
4.朝日新聞 日刊 平成15年5月21日
5.工業所有権逐条解説〔第16版〕 社団法人 発明協会

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