知財コラム
CONTENTS
CONTACT

特許業務法人
HARAKENZO
WORLD PATENT & TRADEMARK


大阪本部    

〒530-0041
大阪市北区天神橋2丁目北
2番6号  大和南森町ビル
TEL:06-6351-4384(代表)
FAX:06-6351-5664(代表)
E-Mail:

東京本部    

〒105-6121
東京都港区浜松町2-4-1
世界貿易センタービル21 階
TEL:03-3433-5810(代表)
FAX:03-3433-5281(代表)
E-Mail:

広島事務所 

〒730-0032
広島市中区立町2-23
野村不動産広島ビル4 階
TEL:082-545-3680(代表)
FAX:082-243-4130(代表)
E-Mail:


上記トレードマークの背景地図は、1991年当時の特許登録件数を陸地の大きさと形状に擬態化して、地図状に表現したものです。

プライバシーポリシー


サイトマップ
知財コラム
知財教室のバナー
コラムインデックスへ

PCT出願の新しい形

2003年11月6日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
河野 吾矢子

はじめに
PCT出願とは、1つの出願を提出することにより同時に多数の国における発明の保護を図ることのできる(出願日を確保する)システムであり、国際的な特許保護を得るための有利なルートを提供する。
統一された方式、一元化された国際公開、国際調査報告・国際予備審査報告の発行などがその特徴であり、パリルートと比較しても例えば次のようなメリットがある。

① パリルートでは優先日から12ヶ月以内に各国の方式と言語の出願書類を準備しなければならないのに対し、PCT出願では優先日から12ヶ月以内に1の言語(例えば日本語)による1つの出願を行えば出願日を確保することができ、最終的な出願国を決定し各国の言語の翻訳文を準備する時期を優先日から30ヶ月まで延長できるという期限的なメリット。
② PCT出願では、国際調査報告・国際予備審査報告などの内容を踏まえて、特許性のない出願については各国への手続を行わない、あるいは、国を絞り込んで手続きすることができるので、不要な翻訳作成・現地での手続にかかる費用を削減できるというコスト上のメリット。
以上のように、複数の国での特許保護を得ることを希望する出願人にとっては、簡略かつ費用効率のいい手段となっており、また、PCT加盟国の特許庁にとっても国内段階に移行された出願に対する特許付与の判断に際し、上記国際調査報告・国際予備審査報告は非常に有用なものとなっている。

実際、この制度の利用状況をみてみると1978年のスタート以来順調に増加しており、2002年の出願件数は全世界で114,048件、これは、前年比9.7%の増加となっている。
PCTの加盟国も年々増加しており(現在、世界122カ国が加盟)、より多数の国での権利保護が可能となりつつある。
日本に目を転じると、日本国籍の出願人によるPCT出願は、2002年度は全体の11.9%(2002年)であり、米国・ドイツに次いで世界第3位であった。そして、2003年上半期ではドイツを抜いて世界第2位となっているとのことである。

このことから、日本を含め、全世界的にPCT出願手続きが非常に有効なものとして認められ実際に活用されていることが窺われる。
この制度は1970年に締結された特許協力条約に基づくものであるが、制度のさらなる合理化・簡素化をめざし、条約や規則の改正を伴う制度改革が積極的にすすめられてきた。

現在、このように、PCT出願が広く利用されている背景には、より有効な制度とするための改善の積み重ねがあったことは間違いない。
PCTの制度改革(PCTリフォーム)は引き続きすすめられており、最近では、2002年10月に開催されたPCT同盟総会において数々の規則改正が採択された。
今回の規則改正の主眼は、(1)特許法条約(PLT)との整合性の確保、(2)手続の簡素化と重複の排除、であり、主に下記の6点がとりあげられた。

(1)拡張された国際調査および国際予備審査制度の導入
(EISPE: Enhanced international search and preliminary examination)
(2)指定制度の概念と運用:国際出願時に国の指定を不要とし、PCT締約国すべてが指定されたものとみなす
(3)PCTの要件のPLTとの整合
(4)国際公開のための翻訳
(5)電子出願の手数料減額(PCT−EASY出願と同額)
(6)カナダ特許庁のISA/IPEAとしての任命
上記のうち、特に日本から外国への出願において重要と思われる(1)、(2)、(3)について、以下、具体的にみていく。

(1)拡張された国際調査および国際予備審査制度の導入
改正規則 :PCT規則43など
導入時期 :2004年1月1日(同日以降の国際出願日を持つ国際出願に適用される)
目的 :国際調査と国際予備審査をさらに合理化、効率化させる
内容:すべての国際出願に対して「国際調査報告」と同時に、現行国際予備審査の段階(PCT第II章手続)で作成される見解書に相当する「国際調査見解書」(ISO)が作成される。これにより、先行技術調査とともに、出願にかかる発明の新規性、進歩性、産業上の利用可能性に関する審査官の見解が必ず示されるようになるため、出願人は、この審査官の見解の内容を踏まえ、反駁あるいは補正の必要性の有無を検討した上で、国際予備審査を請求するか否かを決定できる。
「国際調査見解書」が発行されてから後の手続きの流れを、国際予備審査を請求する場合としない場合にわけて下記に示す。

出願人が国際予備審査を請求しない場合
国際調査機関作成の「国際調査見解書」を受領
→出願人は国際事務局(以下、IB)に非公式にコメントを提出可能
→IBが「国際調査見解書」を「特許性に関する国際予備報告(第I章)」に作りかえる
→「特許性に関する国際予備報告(第I章)」と出願人のコメントは指定官庁に送られ、優先日から30ヶ月経過後閲覧可能となる。(公開はされない)

出願人が国際予備審査を請求する場合
国際調査機関作成の「国際調査見解書」を受領
→国際予備審査請求
→「国際調査見解書」に対する抗弁(答弁書)、34条補正を適宜提出(通常、国際予備審査請求時)
→(例外的に2回目の見解書→出願人の答弁・補正の機会)
→国際予備審査機関(以下、IPEA)が「特許性に関する国際予備報告(第II章)」(=現行の国際予備審査報告)を作成
→「特許性に関する国際予備報告(第II章)」は選択官庁に送付され、優先日から30ヶ月を経過後閲覧可能となる。要望があれば選択官庁のかわりにIBが公に。

留意事項 :
①「国際調査見解書」は、現在の見解書と同様に予備的、かつ拘束力のない審査官の見解である。
②国際予備審査を請求する場合、「国際調査見解書」がIPEAの「第1回見解書」とみなされる。(IPEAは特定の「国際調査見解書」を受け入れないことを決定することも可能)
③「国際調査報告」は公開されるが、「国際調査見解書」は公開されない。
④予備審査請求期限が設定される。「国際調査報告」および「国際調査見解書」の発出後3ヶ月または優先日から22ヶ月のいずれか遅いほう。(なお、22条改正を留保している国への移行期限の延長のためには優先日から19ヶ月までに予備審査請求しなければならない)

(2)指定制度の概念と運用
改正規則 :PCT規則4.9
導入時期 :2004年1月1日
目的 :国際出願時に起こる指定国のチェック(記載)の誤りやチェック(記載)洩れ等、書類作成上のミスを軽減すること。および、国際段階においては国際出願が持つ可能性を最大限に保ちながら、最終的な決定は国内段階移行時に行う、という国際出願の位置づけをより強くする。
内容 :現在、国際出願時に、後に国内手続に係属させたいPCT締約国を具体的にいくつか決定し、願書において「指定国」として各々をチェック(記載)しているが、そのチェック(記載)の手続を全面的に廃止し、国際出願はすべてのPCT締約国を指定するものとみなす(=みなし全指定)。これにより、国際出願は国際出願日の時点で有効な指定国すべてを指定していることとなり、そのいずれの国に対しても国内移行期限までに国内移行の手続をとることができる。さらに、現在、願書において「指定国」のチェックとともに行っている「保護の種類」(例えば、特許か実用か、国内特許か広域特許かなど)の特定についても、改正規則が発効した後は出願時の特定を要せず、のちに国内移行する時点でその国が認める保護の種類を特定することとなる。

留意事項 :
①すべての国際出願が自動的に日本国を指定国として指定("自己指定")したことになる。→日本出願を基礎とする場合、日本国を指定国とする国際出願を行うことにより先の出願はみなし取り下げとなるため、次のa)またはb)いずれかの対応が必要となる。a)先の出願の内容を盛り込んだ明細書を作成し、日本への移行を行う。b)日本の指定を取り下げる。(先の出願から15ヶ月まで、したがって、優先権主張期限が迫った時点での国際出願については、実質的には、出願と同時に取り下げることがのぞましい。)

②すべての国際出願が自動的に米国を指定国として指定したことになる。→米国においては発明者が出願人でなければならないため、現行制度では、米国を指定国とする国際出願については、願書に出願人たるすべての発明者の「氏名」「あて名」「国籍」を記載すること、および、すべての発明者による願書への署名(または捺印、代理人による手続きの場合、委任状への署名または捺印)が必要であった。すべての出願にこの要件が課されることとなると、特に、米国を指定国とすることを希望しない出願についての出願人の負担が非常に大きくなるため、「みなし全指定」に伴い、出願人の表示、署名要件が大幅に簡略化される。つまり、すべての出願人(発明者を含む)の「氏名」を願書に記載しなければならないが、「あて名」「国籍」の表示は、その国際出願を受理する受理官庁に出願する資格を有する者1名のみの記載があればよい。また、署名についても、出願人のうち1名の署名(または捺印)があればよい。なお、委任状に関し、願書への署名に準じて出願人のうち1名の署名(または捺印)があればよいか否かについては、現在のところ、特許庁の見解が示されていない。

③出願の際に支払っていた「指定手数料」(指定国1カ国あたり11,600円。ただし、最上限額58,000円=5指定国分)が廃止される。現在の「基本手数料」(1出願あたり54,000円と国際出願書類の枚数30枚を超える1枚ごとに1,200円)と「指定手数料」を合体させた新たな「国際出願手数料」が導入される(650スイスフランと国際出願書類の枚数30枚を超える1枚ごとに15スイスフラン、日本円での設定は未定)。

④国際予備審査請求の際の「選択」についても包括的な取り扱いとなる。(2004年1月1日以降に提出される国際予備審査請求に適用)

PCTの要件のPLTとの整合
目的:特許法条約(PLT)に準拠した「出願人にやさしい(ユーザーフレンドリー)規定」を国際出願においても具体的に打ち出す。
1.国内移行期限の徒過についての権利回復制度
改正規則 :PCT規則49.6
導入時期 :2003年1月1日※移行期限が同日以降に切れる場合も適用
内容 :国内段階への移行に必要な所定の手続要件(PCT第22条手続)をやむを得ない事情により遵守できずに国内移行期限(優先日から30ヶ月)徒過した場合、出願人が申請する事情を官庁が妥当と認めれば、喪失した国際出願の権利を回復させる。

留意事項 :
①「やむを得ない事情」とは、「期間が遵守されなかったことが故意でないと認めるとき」又は「状況により必要とされる相当な注意を払ったにもかかわらず期間が遵守されなかつたものであると認めるとき」のいずれかの基準に該当する場合である。この基準のいずれに該当すべきかは各指定官庁がひとつの基準を選んで国内法令に規定することになっており、さらに、それぞれの基準の解釈と回復の要件も各国の国内法令に従うことになるので、各国の基準、解釈および要件を確認する必要がある。

②日本を含む複数の国において、その国の国内法令がこの規則改正に対応するまでの間、経過規定を適用し、この改正がその国において効力を持つことを先送りしている。(経過規定を適用している国については、WIPOホームページを参照( http://www.wipo.int/pct/en/texts/pdf/rule_49_6.pdf ))

2.デジタルライブラリーからの優先権書類の取得
改正規則 :PCT規則17
導入時期 :2004年1月1日
内容 :優先権主張を伴う国際出願において、優先権書類の提出は、a)出願人が優先権書類を取り寄せ、受理官庁に提出する、b)願書において受理官庁に送付請求を行う、のいずれかによっていたが、c)願書において受理官庁あるいは国際事務局がデジタルライブラリーから優先権書類を取得することを請求する、ことが可能となる。

むすび
上記のように、現在、国際出願は大きな変革のときを迎えている。新たな制度を十分活用し出願人の有効な権利取得に貢献していきたい。また、PCT出願が、今後もさまざまな改善を重ね、さらに出願人にやさしい制度となっていくことを期待する。

コラムインデックスへ
このページのトップへ