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明細書、特許請求の範囲又は図面の補正に関する事例の新旧比較

2003年11月10日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
所長代理  平田 光俊

1.はじめに
明細書、特許請求の範囲又は図面の補正に関する新しい審査基準が、 平成6年1月1日以降 の国内出願日または国際出願日の特許出願に適用され、2003年10月22日から運用されることになった。
新しい審査基準では、「当初明細書等に記載した事項」とは、「当初明細書等に明示的に記載された事項」だけではなく、明示的な記載がなくても、「当初明細書等の記載から 自明な事項 」も含む、との考え方が導入され、「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項から当業者が直接的かつ一義的に導き出せる事項」という旧審査基準の考え方は払拭された。

では、補正の制限がどの程度緩和され、旧審査基準では認められなかったが、新審査基準では認められるようになった補正の事例には、どのようなものがあるかについて、簡単な分析を行った。

2.新旧事例の対比結果
審査基準とともに公表された事例集(明細書、特許請求の範囲、又は図面に関する事例集)には、添付の 表1 に示すとおり、補正の類型として「上位概念化・下位概念化」「マーカッシュ形式のクレーム」「数値限定」など11類型が挙げられている。

この内、新旧の補正が認められる事例(○)の数と、認められない事例(×)の数とを対比してみて、補正の制限が緩和された傾向が明確に窺える類型は、 「図面に基づく補正」および「図面の補正」の2類型 である。

特に、「図面の補正」について、全く同一事例( 添付資料1 ) が、旧審査基準では×に対し、新審査基準では○という正反対の判断がなされている。
その他の類型については、補正が認められる事例/認められない事例の各数において、新旧で顕著な差が現れていない。

また、 上記の「図面の補正」における事例1件の他に、全く同一事例で、新旧の判断が正反対になったものは無かった。
さらに、例えば「構成の補正」において旧審査基準で×と判断された6つの事例が、同一の補正内容で新審査基準でも×と判断され、緩和の傾向が全く窺えない。

3.補正の原則
このことからも、制限緩和の程度は僅かなので、補正が不適法と判断され、拒絶理由、異議理由および無効理由を内包するリスクを絶対に回避するために、当事務所で定めている 補正の原則(出願当初明細書、特許請求の範囲または図面中の 言葉 をそのまま用いて補正すること)を厳守すること が、今後とも重要であると断言できる。

4.新審査基準の基本的な考え方
新審査基準における補正の基本的な考え方をそのまま抜粋して以下に示す(下線は筆者による)。

(1) 「当初明細書等に記載した事項」の範囲を超える内容を含む補正(新規事項を含む補正)は、許されない。
(2) 「当初明細書等に記載した事項」とは、「当初明細書等に明示的に記載された事項」だけではなく、 明示的な記載がなくても 、「当初明細書等の記載から 自明な事項 」も含む。
(3) 補正された事項が、「当初明細書等の記載から自明な事項」といえるためには、当初明細書等に記載がなくても、これに接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、その意味であることが明らかであって、 その事項がそこに記載されているのと同然であると理解する事項 でなければならない(注1)。
(4) 周知・慣用技術についても、その技術自体が周知・慣用技術であるということだけでは、これを追加する補正は許されず、補正ができるのは、当初明細書等の記載から自明な事項といえる場合、すなわち、当初明細書等に接した当業者が、 その事項がそこに記載されているのと同然 であると理解する場合に限られる。
(5) 当業者からみて、当初明細書等の複数の記載(例えば、発明が解決しようとする課題についての記載と発明の具体例の記載、明細書の記載と図面の記載)から自明な事項といえる場合もある。

(注1)
本審査基準で用いている「自明」は、裁判例などにおいて用いられている意味内容と同様の通常の日本語としての「何らの証明を要せず、それ自身ですでに明白なこと(例えば、広辞苑第五版)」の意味で用いている。
上記のとおり、新審査基準の基本的な考え方によれば、「当初明細書等の記載から自明な事項」とは、当初明細書等に記載がなくても、下記①②の要件をともに充たす事項として規定されている。

① 自明な事項に接した当業者が、出願時の技術常識に照らして、 その意味であることが明らか であると理解する事項
② 自明な事項に接した当業者が、出願時の技術常識に照らして、 そこに記載されているのと同然 であると理解する事項
特に、②の要件が、今回の補正の制限緩和を小幅にとどめた、狙いどおりの重石(おもし)として働いていると考えられる。

5.補正の類型別留意事項
次に、新審査基準によって補正が認められるためのより具体的な要件を、新審査基準中の説明を借用しながら、補正の類型別に示す。
以下に示す要件は、 補正を行おうとするときの判断基準 でもあり、また、補正が適法であることを 意見書で述べる場合のポイント でもある。

(1) クレームの構成要素削除による上位概念化
ⅰ.削除する事項が、 本来的に技術上の意義を有さない ものであって、この補正により 新たな技術上の意義が追加されない ことが明らかであること。
または、
ⅱ.削除する事項が、 任意の付加的事項 であることが明細書等の記載から自明(記載されているも同然)であること( 添付資料2 ) 。

(2) マーカッシュ形式のクレーム
マーカッシュ形式などの択一形式で記載された請求項において、 一部の選択肢を削除する 補正は、 残った発明特定事項 で特定されるものが、 当初明細書等に記載した事項の範囲内 のものであること。
例えば、当初明細書等に複数の選択肢を有する置換基の組み合わせの形で化学物質群が記載されていた場合、実施例等で記載されていた「単一の化学物質」に対応する特定の選択肢の組み合わせからなる化学物質(群)の記載のみを請求項に残す補正は、許される。

(3) 数値限定のクレーム
請求項に記載された数値範囲を変更して新たな数値範囲とする場合、新たな数値範囲の最小値および/または最大値が当初明細書等に記載されており、かつ、補正後の数値範囲が当初明細書等に記載された数値範囲に含まれていること( 添付資料3 ) 。

(4)先行技術文献の内容の追加
発明の詳細な説明の【背景技術】の欄に先行技術文献情報を追加する場合に、 当該文献に記載された内容を併せて【背景技術】の欄に追加する補正 は、通常、第三者が不測の不利益を受けることがないので、許される。
しかし、以下の補正は許されない( 添付資料4 ) 。
ⅰ.出願に係る 発明との対比 の追加
ⅱ. 発明の評価に関する情報 の追加
ⅲ. 発明の実施に関する情報 の追加
ⅳ. 特許法第36条第4項第1号の不備の解消を図る補正

(5)具体例の追加
一般に、発明の具体例を追加したり、材料を追加したりすることは、当初明細書等に記載した事項の範囲を超えた補正となり 許されない 。
例えば、当初明細書等において、特定の弾性支持体を開示することなく、弾性支持体を備えた装置が記載されていた場合において、「弾性支持体としてつるまきバネを使用することができる」という情報を追加することはできない。

(6)発明の効果の追加
当初明細書等に発明の構造や 作用・機能が明示 的に記載されており、 この記載から当該効果が自明 な事項であること( 添付資料5 ) 。
しかし、発明の効果を追加する補正は、当初明細書等に記載された範囲を超えた補正となりやすいので、十分留意する(新規事項追加の旧事例として 添付資料6 ) 。

(7) 不整合記載の解消/明りょうでない記載の補正
明細書等の中に矛盾する二以上の記載がある場合であって、そのうちのいずれが正しいかが、当初明細書等の記載から、当業者にとって明らかであること。この場合は、当該正しい記載に整合させる補正が許される。
また、それ自体では明りょうでない記載であっても、その本来の意味が、当初明細書等の記載から、当業者にとって明らかであること。この場合は、これを明りょう化する補正が許される。

(8) 図面の補正
当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであること。
しかし、補正後の図面は、一般に、当初明細書等に記載した事項を超える内容を含むことが多いことに留意すべきである。

6.補正に際し出願人に求められること
出願人は、補正をしようとするとき、手続き上、以下の点が求められる。
ⅰ.下線を施すことより補正箇所を明示すること。
ⅱ.自発補正の場合、 上申書 において、補正の根拠となった当初明細書等の記載箇所を示した上で、補正が当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであることを説明する。
ⅲ.拒絶理由通知に対応する補正の場合、意見書において、補正の根拠となった当初明細書等の記載箇所を示した上で、補正が当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであることを説明する。
※一応、参考になると思われる事例を抜粋して添付しましたが、各事例に付された補正が認められる理由を拡大解釈しないように、十分ご留意下さい。

以上

【表1】
No. 類型 ○の事例数 ×の事例数
上位概念化・下位概念化
マーカッシュ形式のクレーム
数値限定
除くクレーム
効果の補正
構成の補正
作用の補正
図面に基づく補正
図面の補正
10 誤記の訂正
11 文献の引用に基づく補正

資料1、新

資料1、旧

資料2、1ページ目

資料2、2ページ目

資料3

資料4

資料5

資料6

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