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部分意匠といわゆる部品の全体意匠との関係に関する考察

2006年4月26日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
弁理士 須賀  孝

1.テーマ
 本コラムでは、「減速機付きモーター」事件(平成15年(ネ)1119号民事訴訟事件)の高裁判決(平成15年6月30日判決)を題材にして、いわゆる部品の全体意匠と部分意匠とについて考察する。

2.いわゆる部品の全体意匠と部分意匠との関係
 ここで、部分意匠について注意すべき点は、部分意匠はあくまでも、その意匠に係る物品に関する意匠であって、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の形態と同一または類似の形態の部品に関する全体意匠とは、明確に区別しなければならない点である。
 この点当該部分と同一または類似の形態部分を含んでいれば、当該部分を含む物品との関係は問わない、いわゆる独立説と、当該部分を含む物品との関係を考慮すべきとする、いわゆる要部説と、がある。
 私見としては、以下の理由により、要部説が妥当であると考える。
 なぜなら、意匠法の目的(1条)との関係で意匠法上の物品は独立取引の対象となりうる物品であると解するべきだからである。すなわち、独立取引の対象となる物品が量産されることにより、直接産業の発達に寄与すると考えられるからである。
 そうすると、部分意匠制度は独立取引の対象とならない物品の部分の形態であっても、独創的で特徴のある部分の形態を保護するべく導入されたものであるが、そこには以下の制約がかかっていると解すべきである。すなわち、当該部分の形態はあくまでも当該部分を含み、かつ独立取引の対象となり得る物品と何らかの結びつきがなければならないという制約である。
 部分意匠の意匠権の効力が当該部分の形態のみの実施には及ばず、当該部分の形態を含む物品にかかる意匠を実施してはじめてその効力が及ぶという事もこの点から理解すれば容易に首肯できる。

3.「減速機付きモーター」事件の概要
 本件は、意匠にかかる物品を「減速機」とする意匠登録第798521号意匠の意匠権(以下、本件意匠権という。)の意匠権者が、本件意匠権に係る「減速機」と類似する「減速機」を含む「減速機付きモーター」を実施する第三者に対し、差し止め等を請求した事件の控訴審にあたる。
 本件の概要について、ポイントを掻い摘んで説明すると以下の通りである。
 本件では、第三者が実施する「減速機付きモーター」は、「減速機」を収容する第一のケーシングに、「モーター」を収容する第二のケーシングが取り付けられた構成をなし、第一のケーシングの背面形状が第二のケーシングの存在により外部から視認できないものであった。ここで、本件意匠権に係る「減速機」はやはりケーシングに収容されたものであり、その背面形状に美的特徴部分があったという事案である。

4.本判決の概要
 本件を簡単に言い換えると、いわゆる部品の全体意匠(減速機)に関する意匠権の意匠権者が当該部品と同一または類似の部品を含む完成品(減速機付きモーター)を実施する第三者に対し、差し止め等を請求したものである。
 本判決では、法上の意匠は意匠法2条1項の規定により、「視覚を通じて認識される」ものであることが要求されているため、現実の流通過程において、需要者・取引者が視認し得ない、隠れた部分の形態を考慮することはできないという理由により、差し止め等を認めなかった。
 この判決については、私も、意匠法2条1項の規定に「視覚を通じて」と明示されていることから、妥当であると考えられる。すなわち、差し止め等の対象となっている実施意匠は「減速機付きモーター」であり、これは、この態様で流通過程に置かれている(実施されている)以上、「減速機」をこの物品から切り離してまで当該部分の形態を考慮すべき必要性はないからである。言い換えれば、本件の場合「減速機」全体の形態が当該実施態様では、外部から視認できない態様であるため、「減速機」部分が独立して、意匠として実施されているとは言えないからである。

5.この判決に関する或る見解
 ところで、この判決に関し、「この判決は部分意匠制度導入以前のものであり、本件が部分意匠制度の導入された後の事件であったならば、差し止め等が認められた可能性がある。」という見解もある。
 そこで、以下この見解の妥当性について検討してみることにする。

6.当該見解の妥当性について
 この見解は一体何を根拠としているのであろうか。
 仮に、本件意匠権者が「減速機」部分の形態に関する部分意匠(物品は減速機付きモーター)の意匠権者であると仮定してみよう。
 この場合、本件部分意匠に関する願書及び添付図面等に表された意匠に基づいて当該部分意匠の登録意匠の範囲を特定することになる(法24条)。
 さて、この場合、当該隠れた部分(第一のケーシングの背面形状)の形態をどう特定するというのであろうか。
 たとえば、第一のケーシングの背面形状に関する形態が図面上で視認できるように斜視図等を使って実線で表し、その他の部分を破線で表して特定できそうにも思われる。
 しかし、このような特定方法では、全く意味がないと考えられる。なぜなら、上述したように、現実の実施態様では当該隠れた部分は結局外部から視認できない形態だからである。
 すなわち、本件の場合、部品の全体意匠であろうが、部分意匠であろうが、上記のような状況は変わりえないので、むしろ、「減速機付きモーター」についての全体意匠としても権利を取得しておくべき事案であったと思われる。
 したがって、この見解は妥当ではないと考える。

7.まとめ
 以上の検討から以下の教訓が得られる。
 すなわち、部品の意匠に関し形態の一部が完成品に組み込まれた場合に外部から視認できなくなるような態様の場合には、当該部品の全体意匠だけでなく、当該部品が組み込まれた完成品の全体意匠についても権利を取得しておくことが肝要であると考えられる。

以 上

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