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遺伝資源へのアクセスと利益配分について

平成20年1月30日
                        特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
                               文責:弁理士 松村 一城

 気象条件や環境の異なる他国に存在する微生物や植物は、未知の性質を有するものが多く、医薬品、健康食品、工業原料の製造等への活用が期待されている。一方、1993年の生物多様性条約(Convention on Biological Diversity:CBD)発効後、遺伝資源は各国の主権の下に置かれることが明確に規定されたため、遺伝資源の利用者は原産国政府から事前の合意を取ることが必要となり、海外から遺伝資源を入手し、それを材料にして研究を行う際には、CBDに準拠した所定の手続を取る必要がある。それゆえ、係る手続を取らずに特許を取得した企業等の活動は、いわゆる「バイオパイラシー(海賊行為)」として糾弾されるおそれのある時代となっている。
 そこで、本稿では、他国への遺伝資源へのアクセスに関する概要および最近の動きについてまとめてみた。

1.アクセスに必要な要件
 アクセスは、CBDおよびボン・ガイドラインに沿って行われなければならない。ボン・ガイドラインは、生物多様性条約で規定された「遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分」を実行することを目的として採択された任意のガイドラインである。遺伝資源の提供国が、すでに国内法令や行政措置等によって遺伝資源や伝統的知識等の利用に制限をかけている場合は、そちらが優先されることになる。
 (財)バイオインダストリー協会(JBA)および経済産業省は、ボン・ガイドラインに従った「遺伝資源へのアクセスの手引き」を2005年4月に発行しており、従来不明な点が多かったアクセスの方法について価値の高い指標を提供している。また、その普及・周知を図るべく、各地でセミナーを熱心に開催している。  具体的に必要な要件は、要約すると以下のとおりである。
(1)遺伝資源へのアクセスに権限を有する国内当局への連絡
 CBD事務局のホームページで政府窓口を調べ、政府窓口から紹介された権限ある国内当局から、遺伝資源へのアクセスに必要な要件について情報を提供してもらう。最終的に、上記当局が、遺伝資源へのアクセスを承認する。
(2)事前の情報に基づく同意の取得
 遺伝資源の保有者と契約するにあたって、契約の当事者、その他法令等で定められた利害関係者(政府、原住民社会など)に、予定される活動の目的やそれに伴うリスクなどに関する十分な「事前の情報」(国によって求められる情報は異なる)を提供し、同意を得る。
(3)遺伝資源へのアクセスと利益配分に関する「相互に合意する条件」の決定
 素材移転契約に関する条件、利益の配分に関する条件等を契約当事者間で決定する。

 簡単に書くと以上のようになるが、実際には、どのレベルまで(国の同意でよいのか、地域社会や原住民社会の同意まで必要となるのか、等)が不明確であったり、何をもって「利益」と捉えるかによって意見が対立し、交渉が長引くといった問題が存在している。そして、これらの問題は企業等の他国遺伝資源へのアクセス意欲減退の原因ともなっている。
 そこで、JBAは相談窓口を設け、遺伝資源アクセスや利益配分等に関する相談サービスを実施している。医薬品、健康食品、化粧品、バイオ燃料等に関する企業・大学等から、2005年度は25件、2006年度は21件の相談が寄せられた(参考文献1)。
 また、各国によって様相の異なる遺伝資源へのアクセスを企業単独で遂行することは負担が大きいため、これをバックアップする機構の重要性が高まっている。例えば、アジア諸国と微生物遺伝資源について共同研究による生物資源開発とネットワークの構築を行っている独立行政法人製品評価技術基板機構(NITE)は、ベトナム、インドネシア、モンゴル等と新規微生物の探索・収集・日本への移転等に関する合意書を取り交わしている。
企業はNITEによって構築された枠組みを利用して植物や微生物の採集を行い、研究成果から特許取得や商品化に至った場合は、資源提供国へ収益の一部が還元されるという、CBDおよびボン・ガイドラインに沿ったアクセスおよび利益配分が行われており、様々な企業に利用されている。
このような、遺伝資源取得側と提供側の双方が利用条件や利益配分について合意でき、スムーズな遺伝資源利用を進めることが可能な枠組みが今後も多く構築されることにより、遺伝資源を適正かつ積極的に活用したビジネスの展開が図られるものと期待される。

2.国際会議における最近の動き
 ブラジルやインドを中心とした資源提供国は、遺伝資源の利用から生じる利益の適正配分を確保するための法的拘束力のある国際的枠組み(International regime)の策定を早急に行うべきであると主張しており、先進国と対立している。
 国際的枠組みの検討作業は、2010年までのできるだけ早期に終了させることとなっており、特許出願における遺伝資源の原産国開示、遺伝資源の国際的な認証制度を義務化するかどうかといった課題が引き続き議論される。なお、「遺伝資源の国際的な認証制度」とは、遺伝資源提供国が利用者に遺伝資源の使用を許可する際に発行する証明書によって、その遺伝資源が国外に出てからも追跡を可能にし、提供国側が利益の配分を確保する仕組みである。
 法的拘束力のある国際的枠組みの制定については、わが国をはじめとする先進国は、早急な制度策定に走るべきでなく、ボン・ガイドラインの確実な履行を行えば十分であると主張している。先に紹介した、CBDおよびボン・ガイドライン遵守のためのわが国の取り組みは、この主張に十分説得力を持たせるものであると思料される。
 特許出願における遺伝資源の原産国開示については、わが国は、義務化することにより、開示要件を満たさないことを理由に特許が無効にされるような危険性を出願人に課することは、遺伝資源に関する発明に対して、特許取得のインセンティブを失わせかねないとして反対の立場である。また、米国も、新たな開示要件を課しても、当該要件は適切な利益配分の達成に資するものではないとして、反対の立場である。一方、EUは、特許出願の出所開示も国際的枠組みとして考慮可能であり、出願人の知りうる範囲での出所開示義務は許容可能であるとの立場を取っている。
 特許出願における遺伝資源の原産国の開示要求は、自国の遺伝資源を使用した出願であることを明確化し、出願人から利益配分を得ることを期待して主張されているものであり、認証制度についても同様である。このように、資源提供国側の利益配分に対する関心は非常に高く、できるだけ早期に法的拘束力のある制度を制定することを求めているが、アクセスに対する過度の規制により、企業等の開発意欲が減退し、ひいては資源提供国側の利益も損なわれるということがないよう望みたい。本年(2008年)、ドイツで第9回締約国会議が開催されるため、議論の行方について注視したいと思う。

<参考文献>
1.平成18年度環境対応技術開発等(生物多様性条約に基づく遺伝資源へのアクセス促進事業)委託事業報告書、(財)バイオインダストリー協会、平成19年3月

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