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基本特許を巡る ~緑色蛍光タンパク質(GFP)編~

2009年10月13日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
弁理士 藤田 けんじろう

 今年もまたノーベル賞の季節がやってきました。昨年のノーベル化学賞は、オワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)関連であったことは未だ記憶に新しいところです。
 近年のバイオテクノロジー分野の研究の進展は日々目覚しく、まさに分刻みで重要な成果が発表されているといっても過言ではないと思います。しかし、今から少し振り返って、1980年代から1990年代の前半は、今みるとごく当たり前のように思えるしかし極めて重要な技術が多数特許出願され、権利化されています。
 例えば、上記したGFPは、バイオテクノロジー分野の研究者であれば誰しもが一度ならず使用経験のある技術ではないかと思われます。GFPに関連する特許も多数権利化されていますが、その基本特許がどのようになっているかについては余り知られていないように思います。

 GFPは1960年代に単離され(文献1)、またその遺伝子は1990年代の前半に単離され(文献2)、それぞれ公開されています。
※文献1: Shimomura, O., Johnson, F. H., Saiga, Y., (1962) J. Cell. Comp. Physiol., 59:223.
※文献2: Prasher, D. C., Eckenrode, V. K., Ward, W. W., Prendergast, F. G., and Cormier, M. J., (1992), Gene, 111:229.

調べる限りにおいて、GFP及びそれをコードする遺伝子自体に、現在有効な特許権は存在しておりません。一方、GFPを改変した改変タンパク質及びそれをコードする遺伝子は多数開発され、特許も多数権利化されていることは良く知られたとおりですが、これらはGFPの改良発明と捉えるべきものでしょう。

 ところで、米国特許5491084号という特許権が存在し、現在もその権利が存続しております。この特許権のクレーム1に係る発明は以下に示すとおりのものです。
 Claim 1. 「A host cell comprising a DNA molecule having a regulatory element from a gene, other than a gene encoding an Aequorea victoria green-fluorescent protein operatively linked to a DNA sequence encoding the fluorescent Aequorea victoria green-fluorescent protein.」
※ Aequorea Victoria=オワンクラゲ

 つまり、米国特許5491084号は、「オワンクラゲGFP遺伝子と所定の制御因子(当該GFP遺伝子のプロモーター以外のプロモーター等)とを連結したDNA分子を含む、宿主細胞」をその特許権の対象とするものです。

 すなわち、今日、研究ツールとして汎用されている野生型GFP及びその遺伝子自体には特許権による直接的な保護は無いものの、GFP遺伝子を用いて細胞の形質転換を行う行為は、米国では本特許権により実質的な保護が図られていると考えてよいと思われます。現在、GFPの用途は、宿主細胞内でマーカーとして用いることがほとんどであると考えられますので、上記米国特許はまさにGFPの基本特許の一つと呼ぶにふさわしいものだと思われます。

 米国特許5491084号の出願日(優先日)は1993年9月10日であり、GFP遺伝子が公開された後のことです(上記文献2)。そして、2度の拒絶理由通知への応答を経た後、1996年2月13日付で特許権が付与されています。権利化が容易ならざる状況下であったと思われますが、本件が権利化に至ったポイントは幾つか考えられます。まず、1)米国特許5491084号は、オワンクラゲ体内での発光に必須なイクオリンタンパク質を用いず、紫外線による人工的な励起にてGFPを発光させることを提示しています。2)また、米国特許5491084号では、GFPが細胞毒性を示さず発光をするというユニークな特性を利用して、マーカーとしての新たな用途を提示しています。3)さらに、異種細胞での発現が容易ではなかったGFPを、2種類の宿主細胞で発現させることに成功しています。
 しかし、近年のバイオテクノロジー分野の研究の進展を振り返ると、一見するだけでは既知遺伝子を異種細胞で発現させただけとも見える米国特許5491084号が、GFPタンパク質の単離から四十数年を経た現在でも存続していることは、驚きに値することのように感じます。

 なお、米国特許5491084号の発明者らは、改変型のGFPを用いた細胞の形質転換にかかる同様の発明もなしており、この発明は、米国特許6,146,826号として、別途、権利化されています。

以 上

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