知財コラム
CONTENTS
CONTACT

特許業務法人
HARAKENZO
WORLD PATENT & TRADEMARK


大阪本部    

〒530-0041
大阪市北区天神橋2丁目北
2番6号  大和南森町ビル
TEL:06-6351-4384(代表)
FAX:06-6351-5664(代表)
E-Mail:

東京本部    

〒105-6121
東京都港区浜松町2-4-1
世界貿易センタービル21 階
TEL:03-3433-5810(代表)
FAX:03-3433-5281(代表)
E-Mail:

広島事務所 

〒730-0032
広島市中区立町2-23
野村不動産広島ビル4 階
TEL:082-545-3680(代表)
FAX:082-243-4130(代表)
E-Mail:


上記トレードマークの背景地図は、1991年当時の特許登録件数を陸地の大きさと形状に擬態化して、地図状に表現したものです。

プライバシーポリシー


サイトマップ
知財コラム
知財教室のバナー
コラムインデックスへ

CS関連発明をめぐる状況と動向について

2011年2月4日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
山本 英明

1.はじめに

コンピュータ・ソフトウエア(CS)関連発明を審査するためのCS審査基準が導入された2000年の審査基準の改訂以降、10年以上が経過し、実務上でも、判例上でも事案の蓄積が進んできた。CS関連発明をめぐる状況と動向はどのように変化してきただろうか?

本稿では、わが国の特許制度におけるCS関連発明の取り扱いについて説明したのち、その状況と動向について紹介したい。



2.特許制度におけるCS関連発明の取り扱い

特許法で、発明が特許されるためには発明該当性(29条1項柱書)、産業上の利用可能性(29条1項柱書)、新規性(29条1項)、進歩性(29条2項)、記載要件(36条)といった要件を満たす必要がある。

このような特許要件の審査は、特許庁が開示している審査基準に沿って進められる。CS関連発明の出願の審査においては、一般的な審査基準(以下、一般審査基準と称する)に加えて、コンピュータ・ソフトウエア関連発明の審査基準(以下、CS審査基準と称する)が適用される。よって、IT関連の出願を行う場合、このような審査基準の適用があることを意識する必要がある。なお、CS審査基準は、2000年における審査基準改訂により導入されたものである。

CS審査基準では、発明該当性、記載要件、進歩性のそれぞれについて、CS関連発明特有の判断基準を示しているが、CS関連発明の審査上で特に問題となるのは、「発明該当性」であろう。

以下では、「発明該当性」について少し掘り下げる。特許法上、発明該当性の要件として、「発明」は、「自然法則を利用した技術的思想の創作(2条)」であることが要請されている。

この「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるか否かの要件判断が、一般審査基準と、CS審査基準とにおいてそれぞれ次のように規定されている。

まず、一般審査基準では、『自然法則以外の法則(例えば、経済法則)、人為的な取決め(例えば、ゲームのルールそれ自体)、数学上の公式、人間の精神活動に当たるとき、あるいはこれらのみを利用しているとき(例えば、ビジネスを行う方法それ自体)は、その発明は、自然法則を利用したものとはいえず、「発明」に該当しない』としている。

一方、CS審査基準では、『ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されている』ときCS関連発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるとしている。

このように、CS審査基準では、「発明該当性」について特別の扱いをすることが規定されている。より具体的に説明すると、次のとおりである。

通常の審査基準では、コンピュータを用いない純粋なビジネス方法(BM関連発明)やゲームを行う方法そのものの発明は、法上の「発明」と認められない。これに対して、ビジネス用コンピュータ・ソフトウエアやゲーム用コンピュータ・ソフトウエアという形態をとれば、CS関連発明に該当し、CS審査基準が適用されて「発明」と認められる可能性があるということである。言い換えれば、BM関連発明は、コンピュータを用いたCS関連発明の形態をとることで特許法上の「発明」として認められる可能性があるということである。

なお、(a)機器等に対する制御又は制御に伴う処理を具体的に行うもの、又は、(b)対象の物理的性質又は技術的性質に基づく情報処理を具体的に行うものについては、基本的に「発明」と認められる。ソフトウェア関連発明に特有の判断、取扱いが必要でないためであり、これは、一般審査基準に照らしてみても「発明」だからである。



3.状況と動向

状況と動向について、主要な判例に基づき説明する。ここで、取り上げる主要な判例は、特許庁HPにて入手できる「コンピュータ・ソフトウエア関連およびビジネス分野等における保護の在り方に関する調査研究報告書」を参考にしている。この研究報告書では、CS関連発明および純粋なビジネスメソッド(以下、BMと略称する)関連発明について、それぞれ近年の主要な判例の分析が掲載されている。

上記研究報告書に従って、CS関連発明についての判例から把握できる状況および動向を以下に紹介する。


  • 〔CS関連発明の判例の動向〕

上記研究報告書では、24件の判例について取り上げられている。コンピュータを用いるBM関連発明もここに含まれる。

各判例で争われた争点を集計すると次のとおりである。なお、1件の判例について2以上の争点がある場合もあり、例えば、発明該当性については肯定的だが、進歩性については否定的に判決されたものがある((20)知財高判平成20 年8 月28 日平成19 年(行ケ)10327 号〔インターネット通信販売〕等)。また、上記判例には、拒絶審判に対する審決取消訴訟と、無効審判に対する審決取消訴訟とが含まれる。


  • <<争点>>
     発明該当性:5件
     進歩性:18件
     明確性:2件
     実施可能要件:1件

  • (1)発明該当性
    5件のうち、2件において「発明該当性」を肯定する見解が示されている。この2件という数字は、件数にしてみれば少ないようにも思える。しかし、時系列的に見てみると、直近の2件について、「発明該当性」を肯定する見解が示されていることは注目すべきであろう。また、裁判例を詳細にみれば、「発明該当性」の要件に違反しているといって形式的に門前払いするのではなく、できるだけ進歩性等の実体を判断するという傾向も見受けられる。
    結論として、近年の傾向としては、肯定的な見解が得られやすくなっているといえよう。特に、上記研究報告書では、『近時、人の精神活動が含まれているという理由のみで発明該当性が否定されることはなく、自然法則の利用の有無は全体として判断される』と報告している。
    また、判例について検討する場合、特許庁のCS審査基準を、裁判所が支持するか否かという点は注目すべきポイントの一つであるが、上記研究報告書では、『裁判例は、概ね審査基準の考え方を支持しているように見受けられる』点を報告している。
    なお、上記研究報告書では、純粋BM関連発明についても、「発明該当性」についての報告がある。上記研究報告書では、判例数が少ないとしながらも、純粋BM関連発明について、4件の判例が紹介されている。4件すべての判例において、「発明該当性(1件は考案該当性)」が争点となっており、直近の2件については、「発明該当性」を肯定する見解が示されている。
    よって、上記研究報告書では、純粋BM関連発明についても、CS関連発明と同じような流れが定着するならば、『発明該当性の解釈が多少緩和される』傾向にあると考えられると報告している。

  • (2)進歩性
    18件のうち、14件が進歩性について否定的であった。肯定的な見解が示されているのは、「進歩性を否定しなかった無効審判請求不成立審決を維持」したものがほとんどである(3件)。進歩性要件に関しては、審決の判断が覆るケースが非常に少ないといえる。

  • (3)明確性、実施可能要件
     全般的に否定的なものが多いが、上述の「発明該当性」の場合と同様、形式的に門前払いするケースは少ない傾向にある。


4.結び

以上、わが国のCS関連発明をめぐる状況と動向について紹介してきた。2000年の審査基準改訂当初は、厳格な運用がなされてきた印象があったCS審査基準の発明該当性の要件についても、事例の蓄積とともに、徐々に緩い運用になりつつあることを示してきた。

その一方で、昨今、外国出願も増えており、諸外国との法制度についても目を向ける必要があるだろう。外国出願することが予定されている場合には、「発明該当性」については、十分に検討しておきたいところである。また、諸外国への出願の対応においても、わが国における実務・判例が、参考となる場合もあるかもしれない。今後も国内外の動向について注視する必要があるだろう。

以 上



<<参考文献>>
1.特許庁「特許・実用新案 審査基準」
2.特許庁「コンピュータ・ソフトウエア関連およびビジネス分野等における保護の在り方に関する調査研究報告書」(2011年1月21日・特許庁HP掲載)
3.パテント2010 Vol. 63 No. 14 「ソフトウェア関連発明の知財高裁判決分析(発明成立性)」
4.特許庁「ビジネス関連発明の主な判決事例集」(2008 年3月26日・特許庁HP掲載)

コラムインデックスへ
このページのトップへ