知財コラム
CONTENTS
CONTACT

特許業務法人
HARAKENZO
WORLD PATENT & TRADEMARK


大阪本部    

〒530-0041
大阪市北区天神橋2丁目北
2番6号  大和南森町ビル
TEL:06-6351-4384(代表)
FAX:06-6351-5664(代表)
E-Mail:

東京本部    

〒105-6121
東京都港区浜松町2-4-1
世界貿易センタービル21 階
TEL:03-3433-5810(代表)
FAX:03-3433-5281(代表)
E-Mail:

広島事務所 

〒730-0032
広島市中区立町2-23
野村不動産広島ビル4 階
TEL:082-545-3680(代表)
FAX:082-243-4130(代表)
E-Mail:


上記トレードマークの背景地図は、1991年当時の特許登録件数を陸地の大きさと形状に擬態化して、地図状に表現したものです。

プライバシーポリシー


サイトマップ
知財コラム
知財教室のバナー
コラムインデックスへ

特許出願を今後の研究開発に活用するための発明開示書の作成方法

2012年11月30日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
文責:藤田肇

〔はじめに〕

私は、大学・民間企業において、長らく学術研究・技術開発に携わってきました。弊所において弁理士として出願代理業務(特に特許明細書の作成)に携わるようになってから、もし研究者・技術者だった時代に特許明細書(発明開示書)を書く技術があれば、より優れた技術を開発できていたかもしれないと、当時を振り返ることがあります。特許明細書は、「特許権」という独占排他権を規定する権利書であると同時に、従来技術に対する貢献を明示する技術資料でもあるため、明細書を整えることによって「発明」(開発された技術)の本質がクリアになり、今後の技術開発のための指針を明確にすることができるからです。

本コラムでは、主に「発明」を創作する研究者・技術者の方々を対象に、「特許出願を今後の研究開発に活用するための発明開示書の作成方法」を解説いたします。

〔明細書・発明開示書の基本構成〕

特許明細書は、「三極共通出願様式」と呼ばれるフォーマットに則って記載されます。発明を最も効果的に表現できる洗練されたフォーマットとして、日本国特許庁・米国特許商標庁・欧州特許庁(三極)において共通に採用されています。そのため、発明開示書もこのフォーマットに則って記載することにより、発明の内容を最も適切に説明することができます

このフォーマットは、 (1)背景・先行技術の紹介 (2)解決しようとする課題(発明の目的) (3)課題を解決するための手段(発明のオリジナリティ) (4)実現される効果(発明の価値) の4部で構成されています。ここで注意すべきことは、それぞれの構成の関係性が重要であることです。そのため、発明開示書においても、上記(1)~(4)の関係性を意識することにより、内容を充実させることができます

以下で、発明開示書の内容を充実させるために意識すべき上記関係性を、順番に説明いたします。

〔基本構成の関係性〕

(1)背景・先行技術の紹介

この構成では、①発明が属する技術分野において従来から認識されていた課題と、②その課題を解決するために先行技術が採用してきたアプローチとをレビューします。

後で説明するように、「背景・先行技術」と「解決しようとする課題」とは因果関係(先行技術において欠点を生じる理由)があるため、その因果関係を明確にするという点で、先行技術をレビューすることは重要です。

また、発明の新規性・進歩性は先行技術との比較によって決まるため、発明と先行技術との差が明確になるように、先行技術を紹介することも重要です。


(2)解決しようとする課題(発明の目的)

この構成では、①「背景・先行技術の紹介」に記載された先行技術によっては解決できない課題であって、②新しい発明になら解決できる課題を特定します。

すなわち、ある課題が先行技術でも解決できるのであれば、「そもそも新しい発明など必要ないのではないか」と発明の意義そのものを疑われかねないため、①「なぜ先行技術ではその課題を解決できなかったのか」(先行技術において欠点を生じる理由)という因果関係を明らかにした上で、②この発明にならその課題を解決できると宣言する、という2段構えで論旨を組み立てることが重要です。


(3)課題を解決するための手段(発明のオリジナリティ)

この構成では、①「背景・先行技術の紹介」に記載された先行技術との相違(オリジナリティ)であって、②「解決しようとする課題」に記載された課題を解決するために必要十分な要素を特定します。

その上で、「なぜこの発明がもつそのオリジナリティ(必要十分な要素)によって、その課題を解決できるのか」の理由付けを行います。そのオリジナリティによって確かに課題を解決できると理屈を理解できなければ、以下の「実現される効果」も説得力を失うからです。また、発明開示書(実施の形態)においては、オリジナリティ(解決手段)をクローズアップして詳細かつ具体的に記載することが望ましいと考えます。


下図は、先行技術と発明との相違を模式的に表現した図です。「課題を解決するための手段」には、「先行技術と真に異なるのはどの部分か?」を追求することによって、この相違のみを抽出して記載することが重要です。



(4)実現される効果(発明の価値)

この構成では、「課題を解決するための手段」に記載された手段を根拠にして達成される効果(価値)を主張します。

ただし、発明の効果とは、「解決しようとする課題」で掲げた課題を「解決できる」ということ自体に他ならないため、常に「解決しようとする課題」に記載された課題の裏返しを主張することになります。例えば、「ユーザの利便性を改善すること」を課題として掲げる発明であれば、その効果は必ず「ユーザの利便性を改善できる」になります。


下図は、上記(1)~(4)の構成の関係性を示す模式図です。この関係性を満足するように意識して発明開示書を書くことにより、内容を充実させることができます




〔特許出願を研究開発に生かすことについて〕

研究開発を進める過程で「自分はそもそも何をしたかったのか/何をすべきなのか」を、開発者本人が見失うことがあります。つまり、先行技術では解決不可能だった課題を「オリジナリティ」あふれるアプローチで解決することにより、「新しい価値」を提供すること(それこそ「発明」と呼べるものです)を追求していたはずが、さまざまな事情の中で忙しく開発業務に没頭していると、当初の目的を見失ったまま、うまくいかなくなることがあります(恥ずかしながら、私は常にそうでした)。

そんなとき、「特許出願のための発明開示書」という形で、他人に分かりやすく発明(これまでの開発履歴)を説明することは重要と考えます。「発明開示書を書く」というプロセスは、いわゆる「PDCAサイクル」における「C(点検・評価)」に相当するものですから、「いまの方向性で開発の最終目的は達成されるか」を開発の過程で随時チェックでき、長期的な視点に立って軌道修正を図るきっかけを得ることができるためです。

ただし、単に文書化すればよいというわけではなく、自身で振り返ることができるように、やはりポイントを押さえて書く必要はあります。ポイントが明確になることによってのみ、例えば「この技術の真のオリジナリティは何か?」、「本当に課題は解決されるのか?」といった技術上の意義などを、正確に振り返ることができるからです。

そのため、三極共通出願様式のフォーマットに則って、それぞれの構成の関係性を明確にしながら発明開示書を記載することによって、発明の内容や開発の過程をクリアにし、今後の研究開発につなげていくことが望ましいのではないかと考えます。


上記拙文によって研究開発が少しでも円滑に進むことにより、弊所クライアントをはじめとする発明者の皆さまのお役に立てることを、弁理士として心から願っております。

コラムインデックスへ
このページのトップへ