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無効審判制度・異議申立制度について

2012年12月15日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
文責:藤原 敬子

1.はじめに

平成15年(2003年)の法改正では、特許付与後の異議申立制度が廃止され、従来の異議申立制度が担っていた機能を特許無効審判に包摂させ、異議申立制度は無効審判制度に吸収統合された。

平成15年法改正以降、10年足らずの間で、異議申立制度が担っていた機能を特許無効審判に吸収しきれていないことが指摘されている。その結果、特許の質の低下が懸念され、その対策という観点から、第三者による権利の見直しの機会が必要ではないかとの指摘もなされている。

本稿では、わが国の無効審判制度と異議申立制度等の変遷について説明したのち、その状況と動向について紹介したい。

2.制度の変遷

(1)無効審判制度、異議申立制度、情報提供制度

わが国では、大正10年特許法において特許付与前の異議申立制度が採用された。昭和45年法改正で、出願公開制度および審査請求制度の導入に伴い、特許審査の適格性及び迅速性向上を目的に、情報提供制度が導入された。

その後、平成6年法改正によって特許法における付与前の異議申立制度は、迅速な権利付与の点で問題があり、また、制度の国際調和の観点から、多くの主要国が採用していた特許付与後の異議申立制度に移行した。

異議申立制度は特許庁における審査の公衆による見直を目的とし、一方、無効審判は特許権を巡る当事者間の紛争解決を目的とし、それぞれ重点をおく制度として併存していた。

しかし、いずれの制度も主として当事者間の紛争解決を目的として利用されており、あえて2つの制度を併存させている意味が希薄になっているのみならず、そのような利用態様に起因する弊害が指摘されていた。

そこで平成15年法改正では、従来異議申立制度が独自に担っていた機能を無効審判制度に包摂させ、異議申立制度を無効審判制度に吸収合併するとともに、異議申立制度が有していた特許付与の見直しの機会を補うため、特許権付与後の情報提供制度が導入された。


(2)平成15年の法改正後の問題

平成15年の法改正後において、特許付与後の異議申立制度の機能を吸収することが期待されていた無効審判の件数は、平成15年の254件から平成16年の358件と約100件程度の増加にとどまり、その後利用件数は再び減少している。


無効審判制度・異議申立制度について 図1

具体的には、従前の年間約4000件(平成15年)の異議申立制度を、年間約300件の無効審判に統合したところ、無効審判は上述のように大幅に増えることなく、図1に示すように、特許付与前の情報提供が年間約4500件(平成15年)から年間約7600件(平成21年)に増加した。

つまり、無効審判制度の利用がほとんど増加せず、付与前の情報提供制度の利用が大幅に増加していることが数字に現れている。

これは、特許付与前の情報提供制度が異議申立制度に対するニーズの多くを吸収したことが示される。

なお、特許付与後の見直しの機能を期待して設定された付与後の情報提供制度は年間100件未満とほとんど利用されていない。(特許行政年次報告書より)


(特許付与前の情報提供制度)

平成15年の特許法改正で廃止された付与後異議申立制度は、特許付与前の情報提供制度に代替されたように見える。

しかし、近年の早期審査で特許審査の結果が早く確定されるようになったことに伴い、特に出願公開前に特許査定される件数は年々増えていることから、出願公開を要件の1つとする付与前の情報提供制度の機会は年々減少している。

図2に示すように、出願公開前に特許査定される件数は、法改正前の平成14年では年間約1000件、平成22年では年間約5000件以上である。(産業構造審議会 平成24年資料より)

これは、特許付与前の情報提供の機会がないまま特許が付与されるというように、情報提供の機会の減少により、第三者の知見を活用する機能が低下しつつあることを示す。


無効審判制度・異議申立制度について 図2

(企業における情報の抱え込み)

また、無効審判制度の利用が増えなかったのは、企業側から見れば、将来の紛争時に、自社が権利者から侵害として訴えられても、その時に他社等の特許権を無効化し得る資料を用いて抗弁(特許法第104条の3)をすればよく、あえて他社等に対して無効審判を請求する動機付けが見当たらないことも理由の1つである。

従来の異議申立制度においては、匿名での申立てはできなかったが、企業は個人名等で制度を利用し実質的に企業名を伏せることができた。当事者系の無効審判では、匿名性の担保が困難で、当事者系の無効審判とは匿名性の観点での捉え方が異なる。

このような状況によって、異議申立制度廃止後、無効審判の件数が伸びず、第三者の知見を活用しにくくなっている。

3.具体的な制度案の検討

権利付与を遅らすことなく、特許付与の見直しの機会が与えられ、早期に権利の安定化を図るため、新たな制度案が検討されている。その1つが、付与後異議申立制度である。

具体的な論点についてはおおよそ次の通りである。

  • 申立期間
  • 申立理由
  • 申立人適格
  • 申立単位
  • 申立人の手続への関与
  • 参加
  • 審理構造
  • 一事不再理
  • 料金

例えば、申立人に関しては、匿名性を担保することにより申立件数の増加がみこまれるのではないか、申立人が企業であるにもかかわらず、個人名で申立てるという行為も減少するのではないか等、匿名性について検討されている。

4.結び

以上、わが国の無効審判制度・異議申立制度等の変遷について紹介してきた。

付与後の異議申立制度については、平成15年法改正により特許付与後の異議申立制度を廃止した経緯を踏まえ、慎重に検討することが必要とされている。今後も上記制度の動向について注目していきたい。



■参考文献■
・平成24年度産業財産権制度問題調査研究「安定的な権利付与に向けた制度に関する調査研究」(一般財団法人知的財産研究所)
・産業財産権法の解説(平成15年)
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