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機能表現クレームの権利範囲を如何に解釈できるか―中国判例紹介
中国福建高級人民法院(2014)閩民終字第59号

2016年03月15日
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
文責:王彦慧 孫欧



1.判示事項
  • 事件番号:中国福建高級人民法院(2014)閩民終字第59号民事裁定書
  • 事件名:ビル外壁への施工方法を巡る特許紛争案
  • 判決:2014年5月5日判決言渡
  • 人民法院:福建省高級人民法院
  • 判決全文URL:http://www.pkulaw.cn/case/pfnl_1970324841419876.html?match=Exact


上訴人(原審被告):福清金輝房地産開発有限公司(以下「金輝」)

被訴人(原審原告):郭祥山(以下「郭氏」)




2.はじめに

発明の構成要素が機能により表現されているクレームは、「機能表現クレーム」と言う。中国の専利法や審査基準等において、クレームとして機能的或いは効果的表現を用いて発明を限定することは許容されている。

しかしながら、機能表現クレームの権利範囲の特定については実務上において問題となる場合が多い。本案例の場合、中国福建省高級人民法院は、次の結論を示した。

機能表現クレームの権利範囲は、クレームに限定された機能を持つすべての概念を内包するのではなく、明細書や図面に記載された当該機能に係る具体的な実施形態、およびその均等的な実施形態に限定解釈される。




3.事件の概要

(1)原審

2001年9月7日、「剛性、脆性の硬質装飾板を壁に掛ける係合固定方法」の特許を所有する郭氏が、自分の特許権が侵害されたとして、金輝を被告とし差止め訴訟を提起した。

本件特許のクレーム1は構成A1~A4を含んでいる。

A1~A3:具体的な操作工程

A4:ステンレスネジと工芸構造用強力接着剤と工芸孔との係合により、装飾板とセメント塗層と壁とを一体に接着固定する


構成A4には、ステンレスネジ等の部品による係合で接着固定を行うことが記載されているが、部品間の係合形態については記載されていない。したがって、この構成は機能的表現に該当する。本件特許の明細書および図面に対する解析および考察を経た結果、該特徴として表現された、「密接な接着固定による一体化」という技術的効果を実現する具体的な操作は、装飾板と壁及びセメント塗層とが構造用接着剤及びネジにより接着される部位の無隙間固定の実現にあると特定できる。そして実際の使用において、装飾板は、その全体が剥がれない限り、壁およびセメント塗層に対して移動することは有り得ない。

一方、被訴方法において使用される化学接着剤は、工芸孔およびパネルのスロット内にそれぞれ充填され、工芸孔に嵌入されたネジとパネルのスロット内に挿入されたT字型ハンガー材とを固定するのが主な作用である。そしてパネルと壁とは、化学接着剤を介して直接に接着されるのではなく、山型鋼及びT字型ハンガー材を介して雌ネジや雄ネジなどの金属部材を併用して連結される。


(原審の判断)

特許侵害判定においてはオールエレメント原則を適用すべきである。侵害被訴技術的考案が、対象特許における必要な全構成要素の逐一再現であれば、該被訴技術的考案が特許の保護範囲内に含まれると認定すべきである。侵害被訴施工方法と本件特許の必要な構成要素とを比較したところ、侵害被訴施工方法の構成要素は、本件特許のクレーム1で限定された必要な構成要素と対応同一、または同等なものとなり、対象特許のクレーム1の保護範囲内に含まれ、特許侵害となっている。拠って、侵害停止および損害賠償の判決を被告に下す。


(2)二審(控訴審)

金輝は不服として上訴した。福建省高級人民法院が二審の審理を行った結果、次のように認定した。本件特許のクレーム1に含まれる機能的な構成要素に対する解釈は、明細書及び図面を併せて参酌し当該特徴の内容を特定しなければならないが、一審では、特許クレームにおける機能的な構成要素に関する解釈に不当があったため、特許の保護範囲が過大となり、侵害対比に影響を及ぼした。さらに、これを踏まえ、二審法院は、比較を再度行ったところ、侵害被訴施工方法と本件特許とは同一でも同等でもなく、特許侵害とならないと認定し、一審判決を取消す判決を下すと共に、原告の訴訟請求を退ける。


具体的には、本件特許の構成要素A4は、機能的な構成要素であるために、明細書や図面に記載された該機能に係る具体的な実施形態、およびその均等的な実施形態を併せて参酌し当該構成要素の内容を特定しなければならない。二審法院による分析は次の通りである。

対象特許の明細書および図面に対する解析および考察を経た結果、該構成として表現された、「密接な接着固定による一体化」という技術的効果を実現する具体的な操作は、装飾板と壁及びセメント塗層とが構造用接着剤及びネジにより接着される部位の無隙間固定の実現にあると特定できる。実際の使用において、装飾板は、その全体が剥がれない限り、壁およびセメント塗層に対して移動することは有り得ない。

一方、侵害被訴施工方法における対応の技術的構成要素と比較したところ、化学接着剤は、工芸孔およびパネルのスロット内にそれぞれ充填され、工芸孔に嵌入された雄ネジと、パネルのスロット内に挿入されたT字型ハンガー材とを固定するのが主な機能である。そして、パネルと壁とは、化学接着剤を介して直接に接着されるのではなく、山型鋼及びT字型ハンガー材を介して雌ネジや雄ネジなどの金属部材を併用して連結される。また、これらの部材は、実際の使用において外力作用を用いて位置を微調整することが可能であり、剛力作用に起因するパネルの破損や落下を防止できるという独創的な効果を奏している。よって、侵害被訴施工方法に係る該構成要素は、本件特許の対応の構成要素とは同一なものでもなく同等なものでもないことが明らかである。




4.本判例のポイント

本件の争点は、クレーム中の機能的表現で限定された部分の権利範囲は、該機能を実現できる全ての実施形態を内包するのか、明細書に記載された、該機能を実現できる具体的な実施形態、およびその均等的な実施形態に限定解釈すべきなのか、ということにある。

専利法第五十九条第一項には、「発明または実用新案の特許保護範囲はそのクレームの内容を基準とし、明細書及び図面はクレームの内容の解釈に用いられることができる」と規定されている。これは、発明または実用新案の特許保護範囲を特定するための基本原則ともされているが、《最高人民法院による特許権侵害紛争案件に関する法律適用問題の若干の解釈》の第4条には該規定に対する細部の補足が盛り込まれている。

第4条:クレームにおいて機能または効果で表現される構成要素について、人民法院は、明細書及び図面に表された該機能または効果の具体的な実施形態、及びその均等的な実施形態を併せて参酌し、当該構成要素の内容を特定しなければならない。


本件の場合、原審では、機能的クレームの保護範囲を専利法第五十九条第一項に基づいて特定したが、二審では、機能的クレームの保護範囲を上述司法解釈第4条に基づいて特定し、即ち、明細書及び図面に表された該機能または効果に係る具体的な実施形態及びその均等的な実施形態を併せて参酌し、クレームの内容を特定している。

現在、機能的クレームの保護範囲をどのように解釈するかの基準にバラつきがあることが事実である。また、クレームにおける機能的表現で限定される部分は、明細書に具体的な実施形態が記載されていない場合にはクレームの保護範囲をどのように解釈すべきかも問題である。


本件二審法院の裁判官、蔡偉が次の意見を述べた。


  • ①クレームにおける機能的な表現で限定された構成要素は、該機能を実現できる全ての実施形態を内包するものではなく、明細書に記載された、該機能を実現できる具体的な実施形態、およびその均等的な実施形態に限定解釈すべきである。
  • ②侵害製品/方法が対象特許と同様な機能を実現し、且つ当該機能の実施形態が明細書に記載の具体的な実施形態のうちの1つと同一または同等であることが、特許権侵害の判断条件である。
  • ③クレームにおける機能的表現で限定された部分が明細書に記載されているものの、具体的な実現態様について記載されていない場合には、該クレームは、特許保護範囲が明確に記載されておらず、専利法実施細則第20条第1項の規定を満たしていないと認定してもよい。明細書に具体的な実現態様が記載されていないことにより、当業者による該発明の実施が実質不可能である場合、当該明細書は専利法第26条第3項の規定を満たさないということになる。この場合、この2ヵ条に基づいて当該特許の無効宣告を行うことができる。

したがって、機能的クレームに関しては、その機能を実現できる実施形態を、明細書中に可能な限り多く記載したほうが無難であろうと考えられる。




5.参考資料

◎中国知的財産司法保護網
http://www.chinaiprlaw.cn/index.php?id=1227(特許侵害においてどのように機能的な技術要素を正確に解釈できるか)


◎北大法宝網
中国福建高級人民法院(2014)閩民終字第59号民事裁定書
http://www.pkulaw.cn/case/pfnl_1970324841419876.html?match=Exact


以上





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