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EPC2000(EPCの改正)
平成19年02月19日
特許業務法人原謙三国際特許事務所
(文責:新 井)
1. はじめに
EPC(欧州特許条約)は、1977年に発効しました。その後、条約改正を行うべく、EPC2000が2000年11月29日に加盟国によって採択されました。EPC2000の採択時の加盟国数は20カ国でしたが、その後、加盟国が増加し、現在では31カ国となっています(EPC2000の採択以降にEPCに加盟した国は、自動的にEPC2000に加盟したことになる。)。その後、長い時間を経て、ようやくEPC2000は発効の運びとなりました(発効日: 2007年12月13日)。
2. EPC2000の主な改正内容について(内容については修正される可能性あり)
(2-1) Further Processing
通知が発行されない期限について、Further Processingを請求することが可能となります(ただし、料金の納付のみ必要であり、書面による請求は不要です。)。Further Processingを請求できない期限(不備を解消するための期限が設定されている場合)については、別途規定される予定です(EPC2000 Rule 85a(2))。
更なる手続(Further Processing)を行うことを請求する期限の起算日は、出願拒絶すべき旨、又は出願が取り下げられたとみなすべき旨の通知日、又は権利失効日となります。
なお、現行のEPC第121条によれば、所定期間内に応答をしなかった場合、当該出願を拒絶すべき旨の通知、又は当該出願が取り下げられたとみなすべき旨の通知から所定期間内(2ヶ月以内)であればFurther Processingを請求できます(書面による請求と料金の納付とが必要です。)。そのため、EPOから通知がなされない期限については、現行EPCによれば、Further Processingを請求できません。
(2-2) EPC第54条(4)およびRule 23a
現行のEPC第54条(4)およびRule 23aが削除されます。その結果、後願の指定国に関係なく、後願の出願日よりも後に公開される先願であるか否かに基づいて、先願が後願の新規性を否定しうるか否かが判断されます。ただし、同一出願人による出願であっても、また、発明者が一致していても、先願が後願の新規性を否定することに注意ください(自己抵触)。
なお、現行EPC第54条(3)および第56条には、後願の指定国が先願の指定国と一致している場合に限って、先願が後願の新規性を否定する旨、規定されています。このように後願の指定国が確定するまで、上記判断ができず、その分、審査が遅れることになっています。
(2-3) 特許付与後の特許取消、又はクレームの減縮
特許権者が先行技術の発見等のために特許権を適切に行使できない場合、特許の取消やクレームの縮減の手続がEPOに対して行えるようになります。
なお、現行EPC下においては、特許付与後は各国国内特許に移行するので、各国特許庁に対して必要な手続がそれぞれ行われます(異議申立手続を除く。)。たとえば、クレームを縮減する場合、特許権者は、各国特許庁に対してクレーム補正の手続を行う必要があります。
(2-4) 権利の回復
相当の注意をしたにもかかわらずEPOに対して期限徒過をしてしまった場合、権利の回復が行えるようになります。権利の回復は、原因となった事由の消滅から所定期間内(2ヶ月以内。ただし、期限から1年を超えない期間内)であれば書面により請求することが可能となります。
ただし、権利の回復規定は、Further Processingに係る規定が適用される期限については適用されません。優先権主張出願の期限徒過については、出願期限(優先日から12ヶ月)から2ヶ月以内に権利回復を請求できることになる予定です。年金納付期限の徒過に関する権利の回復は、原因となった事由の消滅から2ヶ月以内、ただし年金納付猶予期限(年金納付期限から6ヶ月)から1年を超えない期間内に請求することが可能となる予定です。
(2-5) 審理の拡大
EPC2000第112a条に規定の理由に該当する場合、拡大審判部による審理を求めることができるようになります。EPC2000第112a条に規定の理由として、当該案件に審判官が利害関係を有していた場合や、法律に規定される権利が存在するにもかかわらず、それが認められないで審決が行われた場合や、審判手続における手続上の瑕疵があった場合等が挙げられています。
なお、現行のEPCによれば、複数の審決において異なる判断が下されるような場合、混乱を解消するために、拡大審判部が審理を行い、統一的な判断基準が確立されます。なお、EPCにおいて、審判部による決定は最終判断となります。
(2-6) 出願要件
EPC加盟国の言語以外の言語でEP特許出願が行えるようになります。ただし、出願後1ヶ月以内に翻訳文(英語、独語、又は仏語のいずれかの言語による翻訳文)を追完する必要があります。この期間内に翻訳文を追完しない場合、EPOからの翻訳文提出指令を受領し、これに対して所定期間内(2ヶ月以内)に翻訳文を追完することも可能となる予定です。
また、EP特許出願の優先権主張の基礎となる、たとえば日本国特許出願の書誌的事項(出願国、出願日、出願番号)をEPOに通知することによって、明細書や図面等の書類を提出することなく、EP特許出願の出願日を確保することも可能となる予定です。この場合、日本国特許出願の写しと、その翻訳文(英語、独語、又は仏語のいずれかの言語による翻訳文)を出願日から2ヶ月以内に提出することが求められます。
(2-7) 優先権主張
優先権主張している場合、明細書等に欠落があっても、この欠落部分が優先権主張の基礎となる出願明細書に記載されている限り、この基礎出願の写しを提出する(基礎出願が英語、独語、又は仏語以外の言語による場合には、その翻訳文も提出する)ことによって、出願日を繰り下げることなく、欠落部分を補充できるようになります。
(2-8) 指定国の取り消し
Rule 51(4) に応答するまでであれば、指定国の取り消しを行うことが可能となります(EPC79(1))。
(2-9) 優先権証明書の翻訳文
審査または審理中に、特許性有無の判断のために優先権主張の有効性について検討することが必要であると欧州特許庁が認定した場合にのみ、優先権証明書の翻訳文の提出が求められるようになります。
なお、現行のEPCによれば、Rule 51(4) に応答するまでの所定期間内(3ヶ月以内)に、優先権証明書の翻訳文を提出する必要があります。
(2-10) 医薬第2用途発明 (EPC54(5))
EPC2000の第54条(5)において、ある特定の治療又は診断方法において使用される物質又は組成物を異なる用途において使用できる場合、特許性を有する旨、規定される予定です。これにより、医薬第2用途発明が特許可能となります。
なお、現行EPCによれば、既知の物質の医薬第2用途についてクレームする場合、スイス形式のクレームで規定する必要があります(たとえば、疾患Y治療用医薬の製造のための化合物Xの使用)。
以 上