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「特許制度研究会」における検討内容について(第1回会合~第3回会合)

特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
2009年6月2日
(文責:弁理士 村上 尚)


1. はじめに
 2009年1月5日付けの日本経済新聞に掲載された記事のとおり,特許法の大幅な見直しを検討する「特許制度研究会」(座長:野間口有三菱電機会長)が,これまでに,下記の日程で開催されました。
  ・第1回:2009年1月26日
  ・第2回:2009年3月27日
  ・第3回:2009年4月24日
  ・第4回:2009年5月29日
 そこで,本稿では,第3回会合までに検討された内容について紹介します。なお、第4回会合につきましては,現時点で,討議の概要が特許庁ホームページ[1]に公開されていないため,次回紹介します。


2. 特許制度研究会の検討の方向性
 特許制度研究会は,「現行特許法の制定・公布から50年の節目を迎える本年,今後の特許制度の在り方について,原点に立ち返って包括的な検討を行なう」ために設立されたものです。そして,特許制度研究会が行なう検討の方向性の柱として,(1)イノベーションを加速するわかりやすい特許制度,(2)裁判でもしっかり守られる強い特許権,(3)国際協調により世界で早期に特許が成立する枠組み,が掲げられています。具体的な検討項目は下記のとおりです。
 ・特許権の効力の見直し
 ・特許の活用促進
 ・迅速・効率的な紛争解決
 ・特許の質の向上
 ・迅速・柔軟な審査制度の構築
 ・国際的な制度調和の推進


3. 各会合での検討内容について
 第2回会合から,上述した検討項目に関する検討が行なわれています。これまでに行なわれた会合の内容を下記で紹介します。
 ただし,現在のところ,各会合では,特許制度研究会を構成する十数名の有識者による討議が行なわれている段階であり,見直しの方向性は定まっていないようです。


3.1 第2回会合:「特許権の効力の見直し」について
 第2回会合では,「特許権の効力の見直し」について討議されました。具体的には,(1)差止請求権の在り方,(2)金銭的填補の在り方(裁定通常実施権の在り方),(3)特許権の効力の例外範囲,について討議されました。


3.1.1 差止請求権の在り方について
 近年,オープンイノベーションの進展に伴い,他者から特許権の行使を受ける可能性が増していることが指摘されています。その一例として,製品に対する寄与率が非常に小さい特許を侵害した場合であっても,差止めが認められ,製品全体の生産ラインが止められてしまうといった権利行使が認容される可能性があります。このような差止請求が認容されると,イノベーションの進展に影響を及ぼす懸念があります。
 そこで,第2回会合では,イノベーションの促進の観点を踏まえて,差止請求権に何らかの制限を設けるべきか否かについて討議されました。特に,米国連邦最高裁のeBay判決(No.05-130,2006年5月15日判決)における差止めを認容する考え方について議論が交わされました。討議の概要の一部を下記に記載します。

<討議の概要>
● eBay判決における差止めを認めるかどうかの考え方(*1)は非常にバランスがとれており,イノベーション促進の観点からもそのまま日本に導入すべき。
● 日米の制度の違いは,日本は原則差止めも損害賠償も認められるのに対し,米国は権利侵害に対する救済は懲罰賠償も含み得る損害賠償が原則で,差止めは裁判官の裁量による例外的措置である点。
● eBay判決は米国における一般原則を特許権侵害に当てはめたものにすぎない。日米の制度及び実務の違い,差止めを制限した場合の悪影響を考えて慎重に判断すべき。
● 小さな企業が市場拡大・独占を目指す場合には,差止請求権が非常に大事。一方,大企業が小さな企業の特許を無視して大規模な事業活動を行った場合に,eBay判決の4要素を考慮したとして,差止請求が認められ得るのか疑問がある。
● 日本は,各国と比較して進歩性の審査基準が厳しいため,価値のない特許権による弊害は抑制されている。また,裁判において無効の抗弁が認容される場合も多く,製品に対する寄与度を勘案して損害賠償額を算出しているため,米国に比べて高額賠償が出にくいなど,特許権が強力であることの弊害は生じにくい。
● 日本において、理論的には一定の場合に権利の濫用であるとの理由(いわゆる「権利濫用法理」)により差止請求権を制限する余地はあるが、実務的には制限した場合の代替措置などバランスを取る方策を検討すべき。
● 特許権の効力として将来分の金銭的填補と差止請求はセットで考えるべき。特許権が財産権である以上,代替措置やその後に発生する損失を経済的に填補するような制度を整備しなければ,国民の財産権を保障する憲法の規定に違反することにもなり得る。

 (*1)差止めを認めるかを判断する際の考慮事項として,次の4つの要素を示した。
    1)侵害を放置した場合,権利者に回復不能の損害を与えるか
    2)損害に対する補償が,金銭賠償のみでは不適切か
    3)両当事者の辛苦を勘案して差止めによる救済が適切か
    4)差止命令を発行することが公益を害するか


3.1.2 金銭的填補の在り方,特許権の効力の例外範囲について
 その他,第2回会合では,(1)差止が制限される場合,その後に発生する損失を経済的に填補するような制度としての強制実施許諾制度,および,(2)リサーチツール(*2)等の試験・研究用途の上流技術に係る特許発明を利用した試験・研究について,特許権の効力の例外範囲を拡大すべきか否か等について討議されました。

 (*2)実験用の動物や実験装置・機器,データベースやソフトウェアなどの,研究のために必要とされるあらゆる技術をいう。


3.2 第3回会合:「特許の活用促進」について
 第3回会合では,「特許の活用促進」について討議されました。具体的には,(1)実施許諾用意制度(ライセンス・オブ・ライト制度),(2)ライセンス(通常実施権)の対抗の在り方,(3)独占的ライセンスに係る制度の在り方,(4)特許出願段階からの早期活用,について討議されました。


3.2.1 ライセンス(通常実施権)の対抗の在り方について
 日本では,登録対抗制度を採用しているため,通常実施権は,登録によって第三者に対抗することができます。そのため,未登録の場合,通常実施権者は,特許権の譲受人等から差止請求や損害賠償請求を受けるおそれがあります。
 一方,実務上,(1)数百・数千もの特許権が一括してライセンス契約の対象となることも多く,個々の通常実施権を登録することは困難であること,および,(2)ライセンス契約においては,実施の範囲に係る条件を詳細に定めることが多いところ,通常実施権を過不足なく対抗するためにその条件全てを登録することは困難であること等により,通常実施権の登録率は極めて低い状況にあることが指摘されています。
 また,特許の流通・移転が増加し,特許権等の行使主体が多様化しつつあることを鑑みると,登録が困難である通常実施権者のビジネスが不安定化するリスクがあることや,諸外国との制度調和が取れていないことが指摘されています。
 そこで,第3回会合では,現行の登録対抗制度の見直すことの是非について討議されました。特に,登録を必要としない「当然対抗制度」を導入することの是非について議論が交わされました。討議の概要の一部を下記に記載します。

<討議の概要>
● 現行の登録対抗制度は,通常実施権を登録しなければ,通常実施権者が特許権の譲受人等の第三者から差止請求等の権利行使を受け得るものだが,登録がビジネス実務上困難であるため,使いづらい。登録を必要とせずに通常実施権の存在を立証するだけで第三者に対抗可能とする当然対抗制度を導入する必要性はかなり高い。
● 当然対抗制度は,民法の一般原則との関係では特異な制度であると考えられる。しかし,特許権の取引は制度に精通する業者間で行われていることや現状の実務においてデュー・デリジェンス(*3)が実施されていること等からすれば,取引の安全を害するとは考えづらい。当然対抗制度を導入すべきではないか。
● 民法や商法といった法制度は社会経済のインフラのようなものである。必要があれば例外を設ければ良いが,その際には相応の理由が必要。当然対抗制度とするためには,以下三つのハードルがある。(1)通常実施権が特許権の譲受人等の第三者にも主張可能な権利であると考えられるか。(2)通常実施権が第三者にも主張可能な権利であるとした場合に,その主張に登録は不要と考えられるか。(3)要求すべき水準の努力を尽くしても通常実施権の存在を認識できなかった第三者に対しても,通常実施権を主張可能と考えられるか。これらのハードルを越えるためには,単に登録が困難ということだけでなく,現代の社会の状況に即した積極的な理由付けが必要。
● 民法の一般原則の例外を認めるにあたっては,特許権の譲受人とライセンシーの実務的なニーズと理論的な説明の双方を検討することが必要。理論的な説明としては,有体物を前提にする民法は,無体物に関する一般法とは必ずしも言えないのではないかという点がある。また,有体物である不動産に関する権利に民法の一般原則の例外(借地借家法等)が認められていることからすれば,無体物を前提とする通常実施権に民法の例外を設けることは可能ではないか。

 (*3)ここでは,購入予定の特許権にどのような内容の権利がどれだけ付随しているかについての調査をいう。


3.2.2 独占的ライセンスに係る制度の在り方について
 現行制度において,「独占的ライセンス」には,「専用実施権」および「独占的通常実施権」があります。 専用実施権者には,第三者対抗,差止請求権等が認められていますが,専用実施権は登録が効力発生要件になっています。そのため,登録事項(実施権者の氏名,実施の範囲等)は開示されます。
 これに対し,独占的通常実施権は,登録しなくとも効力が発生します。そのため,実施権者の氏名,実施の範囲等が開示されることはありません。しかしながら,独占的通常実施権の独占性は,当事者間での契約によるものにすぎないため,第三者に対抗することはできません。
 そこで,第3回会合では,新たな独占的ライセンスに係る制度の創設について討議されました。特に,契約により効力を発生させるものとすること等について議論が交わされました。討議の概要を下記に記載します。

<討議の概要>
● 独占的ライセンスに関するニーズは業界によって異なる。電機業界は独占性を確保するというより事業に必要な特許を利用できることを重視する傾向が強い一方で、製薬業界は利用を完全に独占することを重視する傾向が強い。そのため、製薬業界では独占的ライセンス制度の整備に対するニーズが高いといえる。
● 登録が効力発生要件とされている専用実施権制度は,日本と韓国にしかみられない特殊な制度であり,外国企業との取引において問題が生じている。専用実施権制度を廃止して,独占的な実施権と非独占的な実施権の2種に整理し,いずれも契約により効力が発生するものとすれば,外国から見てもわかりやすいのではないか。
● 不動産登記制度は,登記が問題なくできることを前提としている。一方,ライセンスに関する情報を他人に知られたくない場合があるなど,登録すること自体にマイナスの効果がある専用実施権等に関して,登録が問題なくできることを前提とした制度が妥当するのかについては,今一度考え直す必要があるだろう。
● 登録を効力発生要件とする現行の専用実施権制度は,取引安全を強く重視した制度だが,実務上の問題が多く,現代において適切な制度であるかは十分に検討の余地がある。契約により効力が発生し,第三者に対して主張する際にのみ登録が必要という制度は,民法における物権の仕組みとも一致するため,導入可能と考えられる。
● 民法の世界では,取引安全のために強い権利は外から見てわかるようにしておくべきと考えられている。知財の世界において,情報開示による権利者の不利益に対応し,独占的ライセンスの開示事項の範囲を現行の専用実施権より狭めることを検討する際には,公示システムとの折り合いをどうつけるか等の問題について十分に勘案しておく必要がある。


3.2.3 実施許諾用意制度,早期活用について
 その他に,第3回会合では,(1)英国・ドイツ等において導入されている,実施を許諾する用意がある旨を登録した特許に対して特許維持料等を減免する「実施許諾用意制度」(ライセンス・オブ・ライト制度)の導入,および,(2)出願段階からの早期活用にあたり,特許を受ける権利に係る質権を解禁する等について討議されました。


4. おわりに
 特許制度研究会での検討は,約1年間行われる予定になっています。その後,2010年に産業構造審議会で審議した上で,2011年の通常国会に特許法改正または新法を提出し,2011年の施行を目指しているようです。
 当事務所では,引き続き,特許制度研究会での検討状況を紹介していきます。


以上

(参考文献)
[1] 特許庁HP(参照日:2009.6.2),

http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/toushin/kenkyukai/tokkyoseidokenkyu.htm


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