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米国特許法101条を巡る判例とAlice事件の影響について(1)

2015年3月27日
特許業務法人
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
文責:岡部

2014年6月19日、米連邦最高裁は、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)が2013年5月10日に大法廷(en banc)で示したAlice Corporation Pty. Ltd. v. CLS Bank International事件(以下、Alice事件)において、Alice社の特許は保護適格性を有さない、としたCAFCの判決を支持する判決を下した。

Alice事件を受けて、USPTOは、2014年6月25日、Alice Preliminary Examination Instructionsを公表した。これにより、これまで異なる分析手法が適用されていた、抽象的アイデアに関連するクレームや、物と方法のクレームについて、今後は同じ分析方法=新ガイドラインの分析方法が適用されることになる。さらに、USPTOは、2014年12月16日付で暫定的な審査手引の改訂版(2014 Interim Guidance on Patent Subject Matter Eligibility)を官報で公示し、2014年12月16日以降の審査に既に適用している。さらに、USPTOは、2015年1月27日に、USPTOは、コンピュータ関連発明に関し、特許可能な発明主題のExamples(Examples: Abstract Ideas)を公開した。これにより、USPTOは、全ての重要な分野において特許可能な発明主題をどのように解釈するかを明確にした。

本コラムでは、「米国特許法101条を巡る判例とAlice事件の影響について」を2回に分けて考察する。前半は、「米国特許法101条を巡る判例(Alice事件まで)」を説明する。


  • 35U.S.C. §101

    "Whoever invents or discovers any new and useful process, machine, manufacture, or composition of matter, or any new and useful improvement thereof, may obtain a patent therefore, subject to the conditions and requirements of this title"


    新規かつ有用な方法,機械,製造物若しくは組成物,又はそれについての新規かつ有用な改良を発明又は発見した者は,本法の定める条件及び要件に従って,それについての特許を取得することができる。




1.特許の対象

(1)保護対象
  • (A)プロセス、(B)機械(machine)、(C)生産物(manufacture)、(D)組成物(composition of matter)、(E)これらの改良
  • (A)は行為(action)を定義。(B)~(D)は物(things)を定義しており、(A)のプロセスと対比して、プロダクト(product)として纏めて扱われる。
  • 抽象的概念(abstract idea)、自然法則(laws of nature)、自然現象(natural phenomena)は、保護対象に含まれず(MPEP§2106)。
  • 抽象的概念については、実用的な用途(practical application)を示さないものには特許を付与すべきではなく、自然法則および自然現象については公的見地から先に占有(preemption)すべきではない、との理由。


(a)生物関連発明 (living subject matter)
  • 発明が生物(living matter)を含むか否かは特許性に関係なく、その生物が人間の介在により生じたものであれば保護対象になる(MPEP§2105)。
  • 従って、遺伝子工学により生産された微生物も保護対象になりえる(Diamond v. Chakrabarty, 447 U.S.303,206USPQ193(1980))。
  • 自然界に存在しない人間以外の多細胞生物は、動物も含めて、保護対象と考える旨の通告がUSPTOから発行されている(1077 O.G.24, April 21, 1987)。
(b)コンピュータ関連発明 (computer-related inventions)
  • 言語のような形式で記述されたもの(descriptive material)は保護対象とならない。
  • 但し、そのようなものでも、コンピュータの構成要素として機能するデータ構造やコンピュータプログラムといった機能的なものが記録媒体に記録された場合には、通常は保護対象となる。
  • 一方、記録媒体に記録されたものとしてクレームされていないデータ構造は保護対象とならない。また、コンピュータリストとしてクレームされたコンピュータプログラムは、物にも行為にも該当しないため、保護対象とならない。
(c)ビジネス方法 (business method)
  • State Street Bank事件までは、ビジネス方法は保護対象とならないと信じられていた。
  • しかし、このState Street Bank判決では、ビジネス方法であるという理由で保護対象から除外されることはない旨が明確にされ、有用、具体的かつ有形の結果(useful, concrete, and tangible result)を生み出すものであれば保護対象になりうることが明らかにされた。



2.101条に関連する主要な判決

(1) Diamond v. Chakrabarty, 447 U.S.303,206USPQ193(1980)

Chakrabarty判決(Diamond v. Chakrabarty, 447 U.S.303,206USPQ193(1980)は、最初に生物を保護対象として認めた判決として広く知られている。

このChakrabarty最高裁判決では、特許法制定時の委員会報告書を引用して、「人間により作られたものであって太陽の下にある全てのものが保護対象に含まれる("include anything under the sun that is made by man")」との意見が付帯された。

また、CAFCは、この判決をもとに、その後のState Street事件でビジネス方法が特許になるとの判決を下した。



(2) Diamond v. Diehr (U.S. Supreme Court, 1981 450 U.S.175)

コンピュータを用いたゴムの加硫成型方法に関する発明であって、クレームの一部にコンピュータの計算式が含まれていた(In(v)=CZ+x)。

USPTO(審査官、審判、インターフェアランス部)は、101条で拒絶。CCPAは特許対象と判決。その後、最高裁判所に上訴されたケース。

最高裁判所は次のように判決している。「クレームが単に数学方程式、コンピュータプログラム、あるいは、コンピュータを含むからといって特許対象外となるものではない。・・・(本発明において、)もし、プロセスに組み込まれているコンピュータの使用が著しく過加硫や疎加硫を減少させる可能性があれば、プロセス全体として特許対象となる。

つまり、「抽象的なアイデア、自然法則、あるいは、数学的公式は特許対象ではないが、自然法則や数学的法則を公知の構造やプロセスに応用することは特許の保護対象となる。」

本判決後、コンピュータ、ソフトウェア、遺伝子配列にも特許付与される潮流ができた。



(3) State Street Bank & Trustst Co. v. Signature Financial Group, Inc, 149 F.3d 1368, 47USPQ2d 1596(Fed. Cir.1998

本件は、ビジネス発明が特許対象となることが明確になった判例。

本発明は、複数の投資信託の投資資産を、パートナーシップである単一のポートフォリオにプールして、資産運用管理者に資産管理費用の削減とパートナーシップの税法上の利点を提供するシステムに関する。

「ビジネス発明であっても、有用、具体的かつ有形の結果(useful, concrete, and tangible result)を生み出すものであれば保護対象になりうる。」



(4) Bilski v. Kappos (U.S.Supreme Court, 2010)

本件では、ビジネス方法が特許法101条に規定される特許対象のプロセスに該当するか否かを判断するテストが争点となった。

発明はビジネス関連特許に関し、クレームは、商品売買に伴うリスクの防止に関する。

CAFCは、2009年のBilskiケースにおいて、「有用な、具体的な、かつ、実体的な結果テスト」を廃止し、「機械/あるいは変換テスト」を採用した。しかしながら、最高裁は、2010年、"machine or transformation test"(特定の機械または装置と結びついているか、または特定の対象物を異なる状態もしくは物に変化させるものであるか否か)は唯一のテストではなく、米国特許法第273条(b)(1)を根拠にビジネス方法自体の特許性が否定されるわけではなく、他の基準に基づいて判断することができると判示した。

Bilski以降、101条の問題が注目され始めた。

なお、ビジネス方法発明以外にもプロセス発明が米国特許法第101条の規定を充足する発明法定主題に該当するか否かが法廷で争われており、その代表的な一つが、Mayo v. Prometheus事件である。



(5). Alice V. CLS Bank (134 S,Ct.2347, June 19, 2014)(Alice事件)

米国最高裁判所は、「抽象概念を対象とするものであり特許適格性がない」との理由でAliceの特許を無効とした。

Aliceの特許(USP 5,970,479)の対象は、信頼できる第三者を使って当事者間の債務を決済することにより決済リスク(settlement risk)を排除する、コンピュータ化された債務取引プラットフォームである。

(A) 「“apply it with a computer”と付け足して抽象概念を記載しても不十分である。一般に単に汎用コンピュータへ実装した発明のクレームは、抽象概念そのものを独占するクレームであり、そのような実装は追加的な特徴にならない。」

(B) システムクレームおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体クレーム:「これらのクレームにも上記の判断ステップが当てはまる。“具体的なハードウェア”がクレームに記載されているが、そのハードウェアはほぼすべてのコンピュータが有する純粋に汎用的な部品で構成されている。クレームに記載されたどのハードウェアも、クレームされた方法と特定の技術環境との単なる結びつき、すなわちコンピュータを介した実施を超えて、意味のある限定をもたらすものではない。」

(C) 「システムクレームも本質的には方法クレームと異ならない。方法クレームには汎用コンピュータにより実施される抽象概念が記載されており、システムクレームにはその抽象概念を実施する汎用コンピュータの一部の部品が記載されている。特許適格性をクレーム起草者の技(手腕)だけに頼って判断し特許法第101条を解釈することに対し、最高裁判所は長らく警鐘を鳴らしてきた。」

(D) 「申立人のシステムクレームおよび記録媒体クレームはその根底にある抽象概念にいかなる実体も追加しないため、これらのクレームもまた、第101条により特許適格性を有しない。」

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