1.ブラジル連邦共和国の概要
ブラジル連邦共和国(以下「ブラジル」と略す)は、南米大陸の約半分の領土を有しており、人口も約1億94百万人と世界第5位(2008年)の人口を擁している。また、GDPも世界第9位(2008年)とBRICsの一角として産業的にも重要な位置を占めている。
ブラジルはパリ条約の設立当初からの批准国であり、WTO協定、PCT、TRIPs協定にも加盟している(マドリッド協定議定書は締結されていない)。
ブラジルでの知的財産を保護するに関してはブラジル産業財産法が制定されており、特許(実用新案含む)、意匠および商標に係る権利取得が可能である。ブラジル産業財産法は我が国と共通する事項が多く、理解し易いだろう。
2.ブラジル産業財産権の概要
表1に各保護対象に共通する事項を示す。日本の各法域と共通する事項が多いが、大きな相違点として、実用新案の審査制度が採用されており、意匠の審査制度が採用されていない点が挙げられる。
表1
| |
発明(特許) |
実用新案(特許) |
意匠 |
商標 |
現地代理人の 必要性 |
要 |
| 出願言語 |
ポルトガル語 |
| 審査制度 |
有 |
有 |
無 |
有 |
| 審査請求 |
出願から36月 |
無 |
無 |
無 |
| 存続期間 |
出願から20年 |
出願から15年 |
出願から10年 (5年ずつ3回延長可能) |
登録から10年 (更新可能) |
| 異議申立 |
無 |
無 |
無 |
有(公開から60日) |
| 無効審判 |
有 |
| 実施/使用義務 |
3年不実施で 強制ライセンスの対象 |
無 |
無 |
5年不使用で 取消の対象 |
| 備考 |
登録前に 情報提供可能 |
登録前に 情報提供可能 |
|
先願主義 |
3.ブラジル特許出願の概要
ブラジル特許法の特許出願について、出願から特許権取得までの概要を以下に示す。
(1)特許の種類
数学的手法、抽象的概念、人的取り決め、コンピュータプログラムそれ自体、治療方法、生物のゲノム等から分離された生物材料および生物学的物質等以外が保護対象となる(上記不特許事由以外の物(医薬品含む)、方法、製造方法が対象となる)(第10条、18条)。
日本と異なり、コンピュータプログラムそれ自体は特許発明とならない点に留意すべきである。コンピュータ関連発明(コンピュータプログラムの使用を含む発明)は保護対象となる。
実用品またはその一部であり、物品の形状または構造を有する物である(第9条)。
発明出願または特許発明に関連する発明の改良または進歩を保護するために、追加証明書の出願ができる(第76条、77条)。
追加証明書は進歩性の登録要件が問われないが、発明と同じ発明概念に含まれることを要する。
(2)出願の形式
直接出願、PCT出願、外国語書面制度あり(規則4.3.1.)。
出願に際してパリ条約の優先権を主張できる(第16条)。
分割出願制度あり(第26条)。
(3)出願書類
特許出願には、以下の書類が含められる。
願書、明細書、クレーム、必要な図面、要約書(第19条)
なお、実用新案に係る特許出願の場合、図面は必須書面である(規則4.3.)
明細書等はポルトガル語による必要がある。このため、ブラジルへ直接出願またはPCT出願の国内移行の何れであっても、早期に英文明細書等を現地代理人へ送付する必要がある。
(4)出願公開
出願から18月経過後に出願公開される(第30条)。また、早期公開請求制度がある(第30条)。
日本と異なり、取下げまたは放棄された特許出願も強制的に公開される点に留意すべきである(第29条)。
(5)審査請求
日本と同様に審査請求制度がある。発明に係る特許出願が審査に付される為には、出願から36月以内に審査請求を要する(第33条)。審査請求なき場合、出願は最終的に取り下げたとみなされる。
なお、出願から36月経過後、無効処分に付された日から60日以内であれば、出願人による審査請求により無効処分が解除される。
(6)office action
日本と同様に新規性、進歩性、産業上の利用可能性(第8条,9条,11条,13条,14条,15条)および不特許事由(第10条,18条)が課せられる。
「絶対的新規性」(第11条(2))
出願後に公開された先の出願の明細書等に記載された発明は登録を受けられない(絶対的新規性)。つまり、日本国特許法29条の2のように、発明者同一または出願人同一であっても救済規定がないので注意が必要である。
審査の過程において、出願人は原出願国の関係書類に含まれるクレームの翻訳文提出を要求される場合がある。提出期間は通常60日である(規則7.1.)。
なお、ブラジルでの出願書類が原出願国での提出書類に漏れなく含まれているとの出願人の陳述書によって上記翻訳文を代替可能である。
新規性喪失の例外は12月であり、日本よりも長期間認められる(第12条)。
(7)特許権の発生
特許出願が許容された日から60日以内に手数料納付を要する(第38条)。
なお、60日を経過した場合であっても追加手数料納付による追納が可能である。
4.ブラジル商標出願の概要
(1)商標の種類
日本と同様に、文字商標、図形商標、記号商標、結合商標および立体商標に係る出願が可能である。
(2)出願の形式
通常出願の他、出願に際してパリ条約の優先権を主張できる(規則1.1.1)
一出願多区分制度なし。
(3)出願公開・審査請求
出願公開制度および審査請求制度なし。
(4)office action
外国または国際機関の紋章等;識別力のない商標;公序良俗に違反する商標;地理的表示に係る商標;他人の登録商標、などが不登録事由となっている点は日本と同様である(第124条)。
(5)異議申立制度等
異議申立制度:有り。商標権付与前の公告から60日間、申立て可能。
無効審判制度:有り。商標権登録の日から5年間、提起可能。
不使用取消制度:有り。登録日から5年経過後において請求可能。
5.参考URL
http://www.inpi.gov.br/
http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/brazil/ipl/mokuji.htm
以上