イラン

 

 

概要

基礎的情報

(上図は外務省ホームページより抜粋)

イラン・イスラム共和国は、西アジア・中東のペルシア湾に面したイスラム共和制の国家です。北にアゼルバイジャン、アルメニア、トルクメニスタン、東にパキスタン、アフガニスタン、西にトルコ、イラクと境を接し、ペルシア湾を挟んでクウェート、サウジアラビア、バーレーン、カタール、アラブ首長国連邦に面しています。

国土面積 約165万平方キロメートル(日本の約4.4倍)
人口 約7840万人(2014年推定値、大部分がペルシア人)
首都 テヘラン(約680万人が居住)
言語 ペルシア語
宗教 イスラム教(国民の90%がシーア派)
通貨 イラン・リヤル

 

経済

イランは、輸出産品の95%をエネルギー資源(石油、天然ガス、メタノールなど)に依存しています。その他、ピスタチオや羊毛絨毯などが輸出されていますが、輸出額合計に占める割合は高くありません。主な輸出先は隣国のイラク、アラブ首長国連邦に加え、中国、インド、アフガニスタンの占める割合が大きくなっています。日本への対輸出額は全体の2%(14位)に過ぎません。なお、イランは日本にとって第3位の原油供給国ですが、2003年以降その輸入量は減少しています。

一方、イランはガソリン、鉄鋼原料、小麦・コメなど、製油済み燃料、食料品、機械類を多く輸入しています。主な輸入元は隣国のアラブ首長国連邦、EUのドイツに加えて、中国、韓国などのアジア新興国の占める割合が大きくなっています。日本からは一般機械、輸送機械(自動車など)、鉄鋼などを輸入していますが、未だ全体に占める割合は3%(11位)に過ぎません。新たな新興国市場として、潜在的な成長が期待できると言えます。

 

<国別の輸出統計(棒グラフ縦軸の単位は100万ドル)・ジェトロ統計資料から作成>

 

<国別の輸入統計(棒グラフ縦軸の単位は100万ドル)・ジェトロ統計資料から作成>

 

産業財産権法の概要

制定されている法律

2008年に新しく「特許・工業意匠・商標登録法(Patents, Industrial Designs and Trademarks Registration Act)」が制定されており、日本と同様に発明、実用新案、工業意匠、商標に対して保護が与えられます。これらは産業財産庁に出願を行います。なお、国を代表して産業財産権を管轄するのは、その上部機関である国家証書・財産登録機構です。

著作権に関する法律として、1970年の「著者・作曲家・芸術家の権利を保護する法律(Act for Protection of Authors, Composers and Artists Rights)」及び1973年の「書籍・定期刊行物・音楽作品の翻訳と複製にかかる法律(Translation and Reproduction of Books, Periodical and Phonograms Act)」の2つの法律が存在します。なお、新著作権法が2016年に制定・施行される予定とされています。なお、著作権に関しては、文化イスラム指導省が登録機関となっています。

模倣の現状と保護の内容

同一または類似の商標を付した模倣品を外国(主に中国)へ発注し、自由貿易区(FTZ)経由で輸入する事例が多発しています。

こうした産業財産権を侵害する模倣行為に対しては、民事的・刑事的な救済措置(刑罰・罰金・賠償)が認められています。

特に、コンピュータソフトウェアの模倣に関しては、科学技術省に訴える方法があります。

国際条約等への加盟状況

工業所有権の保護のためのパリ条約に加盟しているため、外国での特許出願に基づいて、パリ条約上の優先権を主張した出願を行うことができます。

また、マドリッド協定および同議定書に批准しているため、国際商標登録出願を行うことができます。

イランはWTOに加盟していないため、TRIPS協定の適用はありません。また、商標法条約にも加盟していません。
※ニース協定が、2018年7月12日にイランで発効しました。
※ロカルノ協定が、2018年7月12日にイランで発効しました。

その他、ベルヌ条約(著作権)とローマ条約(実演家の権利)にも加盟していませんが、新著作権法の制定・施行に向け、これらの条約への加盟手続も進められているとの情報があります。

 

 

 

特許・実用新案

存続期間

特許権の存続期間は、日本と同様に出願日から20年です。

特許出願および特許権を有効に維持するためには、実施規則で定められる年金の支払いが必要です。日本と同様の方法・期間で、割増料金の支払いによる追納が認められますが、その期間を過ぎると特許出願は取り下げ、特許権は放棄されたものとみなされます。

在外者が出願人である場合、イラン国内に住所または居所を有する法的代理人が上記維持の手続きを行う必要があります。

特許要件

以下の特許要件を具備することが必要とされています。

新規性(世界公知)
進歩性(新規な革新を含むもの)
産業上の利用可能性

不登録事由

以下に該当するものは特許されません。

発見、科学理論、数学的方法、芸術作品、ビジネス方法
人または動物の疾病の治療・診断の方法
遺伝資源等を生成するための生物学的プロセス
イスラム法、公序良俗に反して商業的利用されるもの

出願

出願には、日本と同様に、次の書類を提出する必要があります。

特許出願であることの表示(願書)
明細書
特許請求の範囲
必要な図面
要約書

外国人がイランへ出願するに際しては、外国での出願を基礎とするパリ条約上の優先権を主張した出願を行うことが通常と考えられますが、この場合は基礎出願された国の担当官庁(日本では特許庁)の認証を得た出願の謄本を提出する必要があります。

イランでは出願公開の制度が存在しません。むしろ、特許出願の開示は厳しく禁止されており、登録前に発明の内容が官報等で公示されることはありません。

特許出願は、イランの産業財産庁の特許課で審査され、拒絶理由に該当しなければ、約2ヶ月で特許権が発行されます。

いわゆる「輸入特許」は2008年に制定された新法において廃止されました。

拒絶査定への対応、および裁判所における無効請求

特許出願が拒絶査定を受けた場合、知的財産権部に不服申立を行うことができます。これに対する決定は、およそ2、3ヶ月でなされます。

利害関係人は、裁判所に特許権の無効を申し立てることができます。

 

 

 

工業意匠

2008年に制定された新法において初めて導入された制度のため、現在のところ実施規則に関する情報が少なく、登録のための手続きなどの具体的な詳細が未だ明らかでありません。

意匠の存続期間は、出願日から5年であり、その後5年の期間で2回延長することができるとされています。

方式審査、基礎的要件審査が行われるのみであり、実体審査は行われません。

 

 

商標

商標の種類

以下の種類の商標が認められます。

平面商標(通常の商標)
立体商標
団体商標
色彩商標

なお、匂い及び音(サウンド)は商標として登録対象とはなりません。
商号(トレードネーム:「自然人あるいは法人を特定あるいは識別する名前あるいは名称」)やスローガンが商標の保護対象として認められています。
また、防護標章制度は存在しません。

※イランでの商標のより広範な保護のために、ペルシャ語/ペルシャ語音訳での商標の登録と保護が常に推奨される。

必要書類

法改正により、出願および異議申立において、イランの領事認証を受けた商業登記簿等の提出が必要とされました。これまでは領事認証について厳格に運用されていませんでしたが、この法改正により、出願または異議申立の申請から60日以内にイランの領事認証を受けた商業登記簿等の提出が必要となります(ただし、申請時にコピーの提出が必要とされています)。また、この期限は2ケ月の延長が可能とのことです。

存続期間

商標の存続期間は、日本と同様に出願日から10年であり、更新登録によりさらに10年の延長が可能です。ただし、年金の分割納付制度は存在しません。

日本と同様に、割増料金を伴う追納が認められています。

登録要件・不登録事由

日本の商標法第3条第1項および第4条第1項と、ほとんど同様の登録要件・不登録事由が規定されています。すなわち、自他商品識別力を有すること、出所混同を生じさせないこと、公序良俗・イスラム法に反しないこと等です。具体的には下記のような商標が登録を認められない商標とされています。

  • ①他者に属するものから自らの商品又は役務を識別することができない非特徴的な標章
  • ②公の秩序と道徳に反すると考えられる標章
  • ③商品または役務の原産地あるいはそれらの性質、品質、数量または特徴に関して、需要者または貿易センターに誤解を与える可能性がある標章
  • ④その国や組織の所管官庁が許可なく、国際条約に組み込まれた州・政府機関により利用されている旗その他の紋章、名称や略語もしくは名前のイニシャル、または任意の国で採択された公式の標識や証明の要素と同一あるいはこれの模倣もしくはこれらを含む標章
  • ⑤他の人による同一又は類似の商品・役務について、イランにおける周知商標と同一あるいはそれと紛らわしいか、もしくはその翻訳を構成する標章
  • ⑥識別可能な商品・役務について、登録された標章または周知商標と同一または類似であって、周知商標の所有者に関連があるという間違いを発生させる可能性があり、周知商標の所有者の利益を損なう可能性がある標章
  • ⑦同じ商品または役務に関して、あるいはその類似性により誤解を起こすか混乱を起こす可能性のある商品・役務に関して、別の所有者により先行登録された商標と同一の標章
  • ⑧アルコール飲料を指定商品とする標章
  • ⑨女性の形から構成され、イスラム法、公共政策と道徳に反すると考えられうる標章

※第33類に属する商品「アルコール飲料」を指定する商標登録出願は、イスラム法に反するとして厳しく禁じられています。また、ビールはアルコール飲料とみなされるため、ビールを含む第32類の商品(例えば、ミネラルウォーター)を指定して出願する場合、ビール製造に携わっていない旨の宣誓供述書の提出が必要です。

出願

※ニース協定が、2018年7月12日にイランで発効しました。

在外者による商標登録出願では、出願人の本国にあるイラン領事館が認証した、出願人からイランの法律専門家等への委任状を提出する必要があります。

登録前の異議申立制度(日本では廃止)が規定されている関係で、出願から登録証の発行まで3ヶ月を要します。

パリ条約上の優先権を主張する商標登録出願についての規定が存在しません。

その他、出願分割・変更は認められていません。

2021年3月15日よりイラン・イスラム共和国がMadrid e-Filingコミュニティに加盟、IPCのウェブサイトから国際出願をオンラインで申請できるようになった(WIPOホームページ参照)。

登録商標の取り消し

裁判所に対して、登録要件を具備しないことによる登録無効の申し立てを行うことができます。

日本と同様の不使用取消に関する申し立てが認められています(いわゆる「駆け込み使用の禁止」、「不使用についての正当理由の抗弁」も含む)。

 

 

著作権

著作者とは、作家、作曲家、芸術家を指します。

著作物とは、著作者の知識に基づく、独自性あるいは芸術性のある(その手段は問わない)作品を指します。

著作者が有する権利

出版、放送、実演並びに公表に関する排他的権利
著作物及び著者名から生じる経済的あるいは知的な利益を享受する権利
  「知的な権利」については、譲渡不可とされており、我が国における著作者人格権に類するものと考えられます。

保護対象

最初にイランで発行、頒布、実演された作品で、かつイランでの発行、頒布あるいは実演前に他の国で発行、頒布あるいは実演されていないもの
ベルヌ条約に加盟していない現状では、例えばわが国で最初に発行された著作物をイラン国内に輸出し販売したとしてもイラン国内での著作権の保護は受けることはできません。

 

 

イランに関する資料

  • ※特許協力条約(PCT)に加盟
    イランは148番目のPCT締約国となりました。
    2013年10月4日以降に出願された国際出願は、自動的にイランの指定を含みます。また、2013年10月4日以降に出願された国際出願に関する予備審査請求は自動的にイランの選択を含むことになります。 さらに、イランの国民及び居住者もPCTに基づく国際出願が可能となります。
    (PCT NEWSLETTER 2013年7月号を参照)
  • ※特許情報のデータベースについて(更新2016年4月11日)
    イランでは最近までオンラインのデータベースはありませんでした。
    唯一「Iranian Official Journal」に特許情報が掲載されるが、企業登録や商標登録、遺言など特許情報以外の情報が掲載されており、特許情報を的確に抽出することは困難です。さらに、ペルシア語のみの掲載であり、IPCが掲載されていない等情報の不足もあります。なお、イラン特許庁内にはイラン特許検索データベースが用意されているが、審査官以外が利用することはできません。
  • ※特許検索Webサイトについて(更新2016年10月5日)
    イラン特許庁はトライアルバージョンですいが一般にアクセス可能な特許検索Webサイトの提供を開始しました。
    「注意点」
    ・ペルシア語のインターフェースのみ、英語版はなし。
    ・全文明細書へのリンクも用意されているが、ほとんどの特許でそのリンクは有効にはなっていない。
    ・特許情報の収録が限定的である。(直近2年程度の特許情報のみ収録)
    ※情報の科学と技術66巻1号を参照しました。
  • ※職務発明について(更新2016年12月5日)
    イラン特許庁はトライアルバージョンですいが一般にアクセス可能な特許検索Webサイトの提供を開始しました。
    「注意点」
    ・ペルシア語のインターフェースのみ、英語版はなし。
    ・全文明細書へのリンクも用意されているが、ほとんどの特許でそのリンクは有効にはなっていない。
    ・特許情報の収録が限定的である。(直近2年程度の特許情報のみ収録)
    ※情報の科学と技術66巻1号を参照しました。
  • ※特許出願状況について(更新2017年3月15日)
    イラン特許出願件数(WIPO IP Statistics Data Center)より以下のようになります。
    2006年ころより内国人の出願件数が急激に増加しています。
  • ※イランが取引を禁止している国(更新2017年7月1日)
    イスラエルとの如何なる商業上の取引も禁止されている(輸出入規制法施行規則第9条)。これは、直接的・間接的を問わないため、原材料や部品がイスラエルからイランに輸入される場合のみならず、日本からの部品がイスラエル経由でイランに輸入される場合も適用される。 さらに、イランに輸入される製品を製造した会社のオーナがイスラエル人であっても同様である。
  • ※外国の著作物も法に基づく保護を受けることができるか(更新2017年9月27日)
    イランは、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約の加盟国ではない。したがって、外国の著作権はイランでは保護されない。しかしながら、外国人がイラン・イスラム共和国で創作した美術的、文学的及び技術的著作物であれば、その権利が著作権を規律する国内法により保護される。その際に、「著作者作曲家美術家権利保護法」の第22条「著作物がイランで初めて印刷、流通又は上演され、それまで他の国で印刷、流通又は上演されていない場合に限り、その著作者の経済的権利が本法により保護される」と明記しているように、その著作物が独創的かつイランで初めて制作されることが条件となる。
    文学的及び美術的著作物は創作され次第著作権保護の対象となり、その保護が登録の有無によらない点に注意したい。
    文学的及び美術的著作物の登録は任意であるものの、登録証は公的な証書であると考えられているため、裁判所や公的機関では証書が要求される点に注意したい。
    著作権は、かつては著作者や作曲家の死後30年間存続するとされていたものの、その後、著作者作曲家美術家権利保護法の第12条を2010年に改正したことでこの期間が50年に延長された。しかしながら、映画の著作物、写真及び法人に属する著作物の著作権の存続期間は30年である。著作権は譲渡が可能であるが、著作者の人格権は移転できない点にも注意したい。

    独立行政法人 日本貿易振興機構
    「イランにおける模倣品対策の制度及び運用状況に関する調査」より

  • ※優先権の回復手続きに関する注意点(PCT)(更新2018年5月1日)
    国際出願の優先権主張期限を徒過して出願された場合、一定条件のもと優先権回復手続きを行うことができる。イランで回復されるためには、期限徒過に関し「相当の注意」を払っていたことが必要である。イラン受理官庁に認められれば優先権が回復する。
    なお、「相当な注意」を払ったという基準は、合理的に注意深く行動する出願人であればとったであろうあらゆる手段をとっていた場合にのみ満たされる。
    一般に、国際出願を提出する期限を遵守するために出願人があらゆる予防策を講じてきたことを証明しただけでは不十分である。むしろ、出願人は問題となっている特定の出願に関し、あらゆる「相当な注意」を払ったことを示さなければならない。従って基準を満たすことは容易ではないと思われる。

    PCT受理官庁ガイドライン(166J~166M)より引用

  • ※ニース協定及びロカルノ協定へ加盟(更新2018年10月17日)
    2018年4月12日、イランは「標章の登録のための商品及びサービスの国際分類に関するニース協定」に加盟した。また、同日、「工業意匠の分類を制定するロカルノ協定」を批准した。両協定のイランでの発効日は、2018年7月12日である。
  • ※営業秘密について(更新2018年12月28日)
    特許工業意匠商標法に営秘密の規定は存在しないが、2003年電子商取引法の第2章に営業秘密保護に関する規定が置かれている。同法第64条は、電子取引における適法かつ公正な競争保護のため、営業秘密の違法な取得及び第三者への開示は犯罪行為とみなすと規定している。ここで保護される営業秘密は、電子的な媒体での営業秘密を対象とし、「情報、方式、パターン、ソフトウェアプログラム、手段と方法、技術と手順、非公開の文書、ビジネス及び取引方法と手順、戦略、計画、財務情報、顧客リスト、ビジネスプロジェクトなどで、財産的価値を有するもの」で、それらが「一般には入手できない状態でかつその保護のために適切な努力がなされている」ことが条件となっている(同法第65条)。
    競合、利益享受あるいは営業秘密の開示を禁止する雇用契約違反によりビジネス、産業、経済又はサービス企業に損害を与えるために、電子的手段により営業秘密の違法な取得と第三者への開示を行った者は、6ヶ月~2.5年の懲役若しくは5,000万リアル(約20万円)の罰金が科せられる(同法第75条)。

    「イランビジネス関連法にかかわる調査」より引用

  • ※侵害に対する救済について(更新2019年9月11日)
    知的財産侵害行為に対しては、民事・刑事の救済が与えられる。また、暫定措置も可能である。民事訴訟については、テヘランの民事裁判所特別法廷で扱われている。刑事事件についてはテヘラン検察庁で審理がされる。
    なお、イランには知財専門の裁判官は9名いる。内6名が民事裁判所で、3名が刑事裁判所である。
    経済制裁のため国外からの製品流入が限られており、 知財類似問題が表面化していないが、イランには多くの知財侵害品が流通している。海外との取引拡大に伴い、侵害品が増加することが予想される。そのため、 効果的・効率的なエンフォースメントの仕組みが求められ、法整備、知的財産センターの機能充実、税関や警察とのコラボレーション教育啓蒙等が必要になるが、何れも十分とはいえない。
    前述したように、イランでの侵害対応は司法を通して行うのが一般的で日本や米国等の先進国と同じである。しかし司法での解決は時間を要すること(1年程度)司法制度も不透明であること、既に市場に溢れている侵害品の排除という点から見れば、効率的・ 効果的な対応であるとはいい難い。

    「イランビジネス関連法にかかわる調査」より引用

  • ※実用新案について(更新2019年11月28日)
    イラン特許工業意匠商標法に実用新案制度に関する規定は存在しない。しかし、規定がないから保護されないという訳ではない。実用新案に該当する考案や発明であっても、通常の特許出願を行えば特許が付与される可能性がある。つまり、これは実体審査の内容によるが、場合によっては特許にならない実用新案のような発明であっても、現状のイランでは特許として登録されてしまう懸念がある。

    「イランビジネス関連法にかかわる調査」より引用

  • ※年度別出願件数及び登録件数(更新2020年9月11日)
統計データ 出願件数 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
特許 全数 0 15,632 16,259 12,823 12,147
(内外国出願) 0 702 995 915 578
(内日本から) 0 30 42 40 40
(内PCTルート) 71 61 88 176 186
意匠 全数 0 15,979 17,978 14,774 17,622
(内外国出願) 0 168 160 164 133
(内日本から) 0 7 7 8 5
商標 全数 2,907 57,048 109,682 111,713 129,785
(内外国出願) 0 1,439 8,467 6,203 5,064
(内日本から) 80 130 363 243 70
登録件数 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
特許 全数 0 3,268 4,151 3,367 2,769
(内外国出願) 0 157 483 374 285
(内日本から) 0 29 32 22 9
(内PCTルート) 21        
意匠 全数 0 5,126 5,687 5,520 6,023
(内外国出願) 0 35 82 79 76
(内日本から) 0 0 5 8 0
商標 全数 3,958 28,288 33,890 34,223 33,608
(内外国出願)   1,889 1,733 1,259 4,541
(内日本から) 141 214 210 175 149

(出典): WIPO IP Statistics

  • ※日・イラン投資協定(更新2021年1月12日)
    日本からイランへの投資は、これまでもイラン国内法によって保護を受けることができた。しかし、保護を受けるにはイラン政府が承認・発行する投資ライセンスの取得が必要で、取得要件として「イランの雇用機会増大に寄与すること」「国内投資による生産を阻害しないこと」などが求められていた。同投資協定により日本の投資家は、投資ライセンスを取得をせずに投資保護を受けられることとなる。

    日・イラン投資協定には「知的財産保護」条項が入っていることが特徴的である。
    イランはWTO非加盟国で、WTO協定の一部である知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)にも加盟していないため、何らかの法的措置を講じるためには、イランで知的財産権を有している必要がある。
    本協定で知的財産保護の枠組みができたことにより、イランでの知的財産保護の進展が期待できる。
    また「紛争処理」条項によって、紛争が起こった場合には国際仲裁手続きが利用できることとなった。実際に国際仲裁を申し立てることは、手間やコストの面で難しい側面もあるが、知的財産分野のみならず契約違反などで紛争が起きた際には活用できるだろう。

    「JETROビジネス短信」より引用

  • ※直近の国際出願(PCT出願)件数(更新2021年9月22日)
    2017年… 88件
    2018年… 176件
    2019年… 225件
    2020年… 269件
    特許行政年次報告書2021年版より
  • ※実用新案について(更新2022年9月26日)
    イラン特許工業意匠商標法に実用新案制度に関する規定は存在しない。
    しかし、規定がないから保護されないという訳ではない。
    実用新案に該当する考案や発明であっても、通常の特許出願を行えば特許が付与される可能性がある。
    つまり、これは実体審査の内容によるが、場合によっては特許にならない実用新案のような発明であっても、現状のイランではでは特許として登録されてしまう懸念がある。
    (イランでの特許等の実体審査の内容は不明)
    「イランビジネス関連法に関わる調査 平成27年」より引用

 

 

 

秘書管理部 第3国内業務管理室室長 弁理士 スペシャリスト  川人 正典


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