トルコ

目次

トルコ関連のトピックス

    • 2023年7月8日より、特許出願手続等を含むすべてのオフィシャルフィーが50%値上げされています。
      この背景には、急速なインフレの拡大があります。このため、日本の出願人による実質的な負担額が著しく増大することはないものと考えられます(2020年には1トルコリラ=約13~18円のところ、2023年11月8日には1トルコリラ=約5.3円)。

    • 2018年4月1日より、日本国特許庁とトルコ特許商標庁は、特許審査ハイウェイ試行プログラムを実施しています
      この試行プログラムは、下記のような出願の早期権利化に利用できます。なお、試行プログラムの詳細な適用要件などにつきましては、下記リンク先をご参照下さい。
      * ①下記何れかに該当する日本出願
      * (a)パテントファミリーにトルコ出願があり、そのトルコ出願の審査において、トルコ特許商標庁が、少なくとも何れかの請求項に対して特許可能と認定している。
      * (b)パテントファミリーにPCT出願があり、そのPCT出願の国際段階において、トルコ特許商標庁が、少なくとも何れかの請求項に対して特許性ありとの見解を示している。
      * ②下記何れかに該当するトルコ出願
      * (a)パテントファミリーに日本出願があり、その日本出願の審査において、日本国特許庁が、少なくとも何れかの請求項に対して特許可能と認定している。
      * (b)パテントファミリーにPCT出願があり、そのPCT出願の国際段階において、日本国特許庁が、少なくとも何れかの請求項に対して特許性ありとの見解を示している。
      * https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/pph/japan_turkish_highway.html

  • 2017年1月10日、新産業財産権法が発効しました。特許、工業デザイン、地理的表示、および商標について大きな変更があります。

 

はじめに

米投資銀行のゴールドマン・サックス社がBRICsの次に高度成長を遂げる新興国として提唱するNEXT11に名を連ねるトルコ共和国(以下、トルコ)。

本稿では、トルコの知財情報を概説する。

 
 

 

 

トルコの概要

トルコは、西アジアのアナトリア半島(小アジア)と東ヨーロッパのバルカン半島東端の東トラキア地方を領有する、アジアとヨーロッパの2つの大州にまたがる共和国である。

トルコは、ヨーロッパ、アジア、及び中東地域の中間地点にあることから、古くより「東西文明の十字路」として栄えている。トルコの国土は日本の約2倍(約78万平方km)、人口は8,468万人(2021年)で、中東地域を代表する大国である。住民の大多数はイスラム教徒であり、政教分離による近代化を果たしたイスラム教国としても有名である。外交面では、北大西洋条約機構(NATO)加盟国として伝統的に西側の一員である。

 
 

 

 

トルコにおける特許出願の状況

トルコにおける特許出願の状況について概説する。

下記のグラフに示すように、トルコの特許出願件数は、2004年から急増しており、2010年には8000件を突破している。

なお、下記のグラフには示されていないが、2011年以降も特許出願件数は増加を続けており、2016年の特許出願件数の件数は16778件となっており、そのうち日本からトルコへの特許出願数も489件(2010年と比較して2.5倍以上)となっている

このように、トルコにおける出願件数は、年々増加しており、トルコがヨーロッパ等向けの生産拠点としてのポテンシャルを有していることから、今後も出願件数が増加していくことが予想される。

〔参考〕トルコにおける国別の出願件数の推移(グラフ)

出願件数の推移(グラフ)

 
 

 

 

トルコにおける権利取得

出願ルート

続いて、トルコにおいて発明を権利化するための方法について概説する。

トルコは、パリ条約、EPC、及びPCTに加盟している。

このため、外国人がトルコで権利取得するためには、

  • ①パリルート
  • ②PCTルート
  • ③EPCルート

の何れかのルートでトルコ特許庁(以下、TPI)に出願を行うことになる。

権利化までの流れ

特許出願を行うと、まず、方式審査が行われる。方式審査において不備が発見された場合には、拒絶理由が通知され、意見書・補正書の提出機会が与えられる。

出願書類は、わが国と同様、願書、明細書、特許請求の範囲、要約書、及び必要な図面である。出願言語はトルコ語であるが、英語、フランス語、またはドイツ語による出願書類の提出も認められており、この場合には出願日から1ヶ月以内に、追加手数料と共にトルコ語の翻訳文を提出する必要がある。

方式審査を終え、出願日から18月(優先権主張を伴う場合には優先日から18月)が経過すると、出願公開が行われ、出願内容が公報に掲載される。

ここで、トルコ出願の場合、出願日から15月以内(優先権主張を伴う場合には優先日から15月)以内に先行技術調査の請求をしなければならない点に注意が必要である。先行技術調査の請求を行わなければ出願は取り下げられたものとみなされる。

先行技術調査の請求を行うと、先行技術調査の報告書が通知され、出願人は、この通知後3月以内に実体審査の請求を行わなければならない。

実体審査の請求が行われた後、実体審査が開始される。実体審査において、特許要件を満たしていないと判断された場合には、その旨が出願人に通知され、意見書・補正書の提出機会が与えられる。

特許要件としては、我が国と同様、新規性、進歩性、産業上の利用性が要求される。また、発見や科学的な理論、計画や精神的な行動や活動に関する方法や規則等、公序良俗に反する恐れがある発明は、わが国同様、特許の対象とならない。なお、わが国では特許の対象となっているコンピュータープログラムは、トルコでは特許の対象とならない点には注意が必要である。

実体審査において、特許要件を満たしていると判断されたときには、登録査定となり、登録料納付によって特許権が付与され、登録内容が公表される。そして、出願から20年で存続期間が満了する。

実施義務について

トルコ産業財産権法には、特許発明の実施義務が規定されており、不実施の特許発明に対しては、強制実施権の供与を請求することができる旨規定されている。権利化後はこれらの規定にも留意しておくことが好ましいと考えられる。

具体的には以下の場合に、関係人は強制実施権の供与の請求が可能である、と規定されている。

●出願日または登録の公告日からの不実施

・特許付与の決定が公報に公告された後3年以内または特許出願日後4年以内のうち遅い方の満了日から、①発明の実施が開始されなかった、または、②実施のための真摯かつ実際的な取り組みがなされていない、または、③特許の実施が実施権設定の請求日に国内市場の必要性を満たす水準でなかった場合。

●実施の中断

・正当な理由なく発明の実施が連続して3年を超えて中断している場合。

 
 

 

 

トルコにおける他の出願態様

トルコには、上記通常の特許の他、「追加特許」と「秘密特許」という出願態様が存在する。また、「実用証」の出願も認められている。

以下では、これらの出願態様について概説する。

追加特許

追加特許の対象となる発明は、主特許の発明を改善発展させる発明であり、追加特許の要件は、主特許と包括的性質の主要発明概念を共有し、主特許の発明を改善発展させるものであることである。つまり、追加特許には、新規性・進歩性の要件は求められない。

追加特許の出願可能期間は、主特許の査定が出るまでである。ただし、主特許に拒絶査定が出た場合は追加特許は付与されない。

出願手続中であれば、追加特許の出願を主特許の出願に変更することができる。

秘密特許

秘密特許とは、国家の安全の観点から重要であると判断された発明に係る出願であって、国防省が出願処理を秘密裡に行うことを決定した機密指定された特許出願として登録するというものである。機密指定は国防省の請求により解除され、秘密特許は機密指定の解除日から特許出願として処理される。

実用証

実用証の保護対象は、特許と同様に「発明」であるが、方法の発明、製造方法の発明又は化学物質に関する発明については、実用証の保護対象外である。実用証の権利存続期間は出願から10年である。

実用証の登録要件は、「新規でかつ産業上の利用性を有する発明」である。日本の実用新案と同様、審査段階では、方式的要件を満たしているか否か、出願の主題が保護対象に合致しているか否かについてのみ審査される。

実用証出願は、登録査定までの期間であれば、特許出願に変更することができ、特許出願から実用証出願への変更も可能である。

 
 

 

 

トルコ 新産業財産法の発効

トルコにおいて、2017年1月10日に新産業財産法が発効し、特許、意匠、商標及び地理的表示の保護に関する規定が一つの法律に組み込まれた。新産業財産法は、2017年1月10日から効力が発生するが、旧法も、2017年1月10日より前の出願に対して適用されます。以下の項目が、今回の主な改正点である。

意匠.商標の更新申請期間の変更(更新:2018年3月27日)

トルコにおいて2017年1月10日に新産業財産法が発効したが、改正点のうち、意匠・商標の更新期間の改正については、本年(2018年)1月10日から効力が発生した。

改正前は、更新登録申請及び更新登録料納付は月末まで認められていたが、2018年1月10日以後は、実際の満了日までとなる。例えば、2008年1月18日に出願された商標の更新申請期間は、2018年1月31日までではなく、2018年1月18日までとなる。

ちなみに、商標の存続期間は出願日から10年間で、何度でも更新することができる。一方、意匠の存続期間は出願日から5年で、最大25年間更新することができる。

存続期間満了6月前から更新登録の申請ができ、存続期間満了後6月間は猶予期間となる。

意匠

① 新規性についての審査時期

従来、新規性についての審査は、方式審査の後、方式要件を具備した出願について行われていましたが、改正後は、方式審査の段階で行われるようになりました。

② 登録後異議申立期間の短縮

第三者は、公告日から6か月の間、異議申立をすることができましたが、改正後は、従来の6か月から3か月に短縮されました。

③ 非登録意匠としての保護

トルコ国内で初めて公衆に利用可能となった意匠は、非登録意匠として保護されるようになりました。当該非登録意匠と同一又は類似の意匠を実施する第三者への権利行使も可能です。保護期間は、初めて公衆に利用可能となった日から3年間です。

④ 特徴記載書

特徴記載書が、必須の提出書類ではなく任意の提出書類となりました。

商標

① 同意書制度の導入

従来、同一又は類似の商標の並存登録は認められませんでしたが、法改正により、審査時に引例とされた商標の権利者の同意書(Letter of Consent)を提出すれば、拒絶理由を解消することができるようになりました。なお、同意書は、拒絶理由が出される前にも提出することができます。

② 異議申立期間の変更

利害関係人は、出願公告日から3か月以内に異議申し立てをすることができましたが、改正により、3か月から2か月に短縮されました。なお、2017年1月10日前に出願された商標出願に対する意義申立期間は従来どおり3か月です。

③ 異議申立に対する使用証拠の要求

従来では、異議申立の根拠となっている登録商標が、登録後5年を経過している場合、出願人が異議申立人に対して、使用証拠を要求することはできませんでしたが、改正により、使用証拠を要求できるようになりました。使用証拠を提出できなかった場合、異議申立は棄却されます。

④ 不使用取消請求の提起先

従来では、不使用取消請求は裁判所に提起する必要がありましたが、改正法により、特許商標庁に提起できるようになります。なお、特許商標庁は準備のため7年以内の猶予期間が与えられており、それまでは従来どおり裁判所の管轄となります。

⑤ 色商標、音商標、動き商標

色商標、音商標、動き商標における紙媒体での再現という要件がなくなりました。

⑥ 更新期間

従来では、月末で存続期間が満了しましたが、改正法では、実際の満了日に存続期間が満了します。6か月前に更新登録の申請ができ、存続期間の満了後6か月間は猶予期間となります。なお、この規定は2018年1月10日から効力が発生します。

特許

①実体審査請求の義務化

実体審査請求を行うことが義務化された。従来、実体審査を伴う特許付与制度と、実体審査を伴わない存続期間7年の特許付与制度の何れかの手続を選択できたが、実体審査請求が義務化されたことに伴い、存続期間7年の特許付与制度は利用できなくなった。実体審査請求を伴う特許付与制度を選択しなければ、出願取下げとみなされる。

②特許権付与後の異議申立制度の新設

第三者による特許権付与後の異議申立が可能になった。申立可能期間は、特許公報発行からから6カ月以内である。

また、トルコでは第三者による情報提供も認められている。情報提供は、出願公開日から可能である。

③刑事規定の削除

商標を除く知的財産権に関して、刑事規定が存在しなくなった。このため、特許権侵害等については、民事規定のみに基づいて対応することになる。

 

 

トルコにおける商標出願について

トルコにおける商標出願件数は、1998年には19,790件であったが、2008年には74,991件に倍増している。経済成長に伴って、商標権による保護のニーズが高まっていることが伺える。なお、2009年の商標出願件数は71,604件であり、2008年と比べると減少している。

2009年の商標出願件数のうち、トルコ居住者による出願件数は59,838件であり、出願の大部分がトルコ居住者によってなされている点が、特許出願と対照的である。なお、日本からトルコへの商標出願件数は365件である。

トルコは、パリ条約及びマドリッド協定議定書に加盟しており、商標に関する法令の基本部分は先進国とほとんど変わらない。パリ条約に基づく優先権主張出願が可能であり、マドリッド議定書加盟国への出願・登録を基礎として、トルコを指定国に選択して出願することもできる。

商標出願は、方式審査及び実体審査を経て出願公開される。出願公開後3ヶ月以内が異議申立期間となっており、利害関係人であればこの期間に(付与前)異議申立が可能である。なお、利害関係人でなければ、(付与前)所見提出により、出願商標が不登録事由に該当することを主張する意見書を提出することができる。異議申立との相違は、TPIにおける手続の当事者となれるか否かである。

そして、審査の結果、欠陥がないと認められる場合、不備が補正された場合、所定期間内に異議申立がない場合、または商標登録に対する異議が最終的に拒絶された場合に、登録査定となる。トルコの商標権の存続期間は、出願から10年であり、10年ごとに更新ができる。

トルコにおける産業財産法施行規則の改正

2019年7月8日に、トルコの産業財産法施行規則の一部が改正され、登録商標の部分更新を申請する際に必要だった「公証された署名文」の提出が不要となり、手続きが簡素化された。

改正前の規則では、登録商標の部分更新の申請に関し、自然人の場合は公証された署名文またはその公証された写しを提出する必要があった。また、法人の場合は公証署名リストまたはその公証された写しを提出する必要があった。

しかし、公証を得るためには費用と時間がかかり、申請者の書類作成の負担を増加させていた。そのため、今回の改正により、以下に挙げる手続きについて、公証された署名文または公証署名リストは不要になった。

なお、弁護士または代理人を通じて申請する場合、弁護士または代理人に、これらの申請について実施する権限を明確に含む委任状を、申請書と併せてトルコ特許商標庁に提出する必要がある。

<公証された署名文等の提出が不要となった手続き>

  • 登録商標の範囲内の一部の商品・サービスに関する更新
  • 登録前の商標出願の一部または全部の取下げ
  • 登録商標の範囲内での商品またはサービスの全部または一部に対する登録商標の放棄
  • 公開された商標出願に対して提起された異議申立の撤回
  • 商標出願に関する決定に対する不服申立の撤回
  • 地理的表示所有者による登録から派生する権利または使用の管理に関する責任の放棄

※マドプロでトルコを指定した際の注意点※

トルコ特許庁の商標公報における国際登録の公告日から3ヶ月間、異議申立期間となる。

しかし【マドプロでトルコを指定した場合】は、この期間に異議申立があった際、庁から出願人及びWIPOに通知されず、異議申立の決定(first decision)後、報告される

  • ①国際登録に対する異議申立は出願人に通知されないため、国際登録に対する異議申立については、明確な応答期限はない。しかしながら、異議申立日から2~3ヶ月内を目途に、応答(意見書提出)が可能(但し、意見書の提出は義務ではない)。
  • ②意見書が提出された場合には、意見書も参照した上でfirst decisionがなされる。意見書が提出されない場合には、異議申立人の異議申立書のみを参照してfirst decisionがなされる。
  • ③なお、first decisionに不服の場合、上級機関(審判部・知的財産裁判所)による再審理を要求することができる。但し、裁判になった場合、高額な費用と1~2年の期間とを要する。

したがって、トルコ現地代理人に依頼して異議申立の有無を監視(ウォッチング)しておき、first decisionがなされる前に、異議申立に対する反論をして対処することが望ましい。

◆以上の実情に鑑み、当所では、トルコを指定した国際登録に対する異議申立の有無について、監視(ウォッチング)を承ることが可能です(別途料金要)。ウォッチングを希望される場合は、当所までご相談ください。

 

 

トルコにおける意匠出願について

意匠の保護規定

トルコの意匠制度は、産業財産法、産業財産法施行規則により規定されている。管轄官庁は、トルコ特許商標庁である。

意匠の保護対象

1 意匠の定義

「物品又はその装飾の全体又は部分の外観を構成するものとして、五感により感知される線、色彩、織り方、形状、音声、弾性、物質的その他の特徴などの様々な模様のすべてを意味する」と定義されている。

2 保護対象

「物品」は、「工業品若しくは手工業品、複合システムの部品、組物、構成物品、包装、外装、図示表象及びタイプフェイス」と定義されている。

(1) 保護対象となるもの
意匠には、工業意匠、グラフィック意匠、ファッション意匠、建築意匠等が含まれる。
・包装用容器、画像(物品の特定不要)、動的意匠。
・日本では保護対象とならない不動産、建築物、3次元画像、ホログラム、光(花火、イルミネーション等)、グラフィックシンボル、テキスタイル(物品の特定不要)、店舗等の室内レイアウト・ディスプレイ、アイコン、設計図等も保護される。

(2) 保護対象とならないもの
・コンピュータ・プログラム、半導体製品、肉眼で視認できないもの

(3) 未登録意匠の保護
2017年1月10日の産業財産法の制定により導入された。トルコ国内で初めて公衆に利用可能となった意匠は、新規性および独自性があれば、非登録意匠として保護されるようになった。当該非登録意匠と同一又は酷似する意匠を実施する第三者への権利行使も可能である。保護期間は、初めて公衆に利用可能となった日から3年間である。

意匠の保護要件

トルコの意匠法により保護を受けるためには、以下の3要件の充足が必要である。

①新規性

意匠は、出願日または優先日前に、同一の意匠が世界で公衆に入手可能(販売、使用、公表、広告、展示、その他同様の行動形態すべてを含む)でない場合、新規性を有するものとみなされる。重要でない細部においてのみ異なる意匠は、同一の意匠とみなされる(意匠法第6条)。

②独自性

意匠が実施当事者に与える総合的印象が、出願日前に世界において公開済みの意匠、又は登録意匠として庁により公告済かつ満了済でないものが当該実施当事者に与える総合的印象と比較して、顕著な相違を有する場合、当該意匠は独自性を有するとみなされる(意匠法第7条)。

③公序良俗及び一般的道徳律に反する意匠は、保護を受けることができない(意匠法第9条)。

意匠出願手続き

(1)意匠の創作者

意匠の創作者とは、意匠出願の対象を創作した者のことである。
創作者が複数いる場合は、各創作者を願書に記載する必要がある。
創作者の名前が願書に記載されていない場合には、創作者は、創作者として名前を記載することを要求することができる。
創作者は、その名前を秘密とすることを請求できる。

(2)意匠出願時に必要な書類・情報

 ・ 申請者の身元についての情報を含む申請書
 ・ 複製が可能な意匠の外観を示す図・写真
 ・ 意匠が組み込まれまたは使用される物品の名称
 ・ 創作者の名前または意匠を創作した集団の名称
 ・ 創作者から意匠を出願する権利を取得した経緯
 ・ 公開延期を請求する場合は、公開延期の請求
 ・ 代理人についての情報(代理人が任命されている場合)

意匠の公告

公告は、最長で出願日(優先日)から30カ月まで繰り延べが可能である。日本の秘密意匠制度では、登録日から最長で3年間、意匠を秘密状態とすることができるのに対し、トルコでは秘密状態とすることができる期間がそれよりもやや短くなっている点に留意が必要であろう。

意匠の異議申立て

第三者は、公告日から3か月間、異議申立ての機会が与えられる。

不登録事由

  •  1.意匠の定義に適合しない
  •  2.新規性・独自性を有しない
  •  3.先願のトルコ意匠出願と抵触
  •  4.公序良俗違反

意匠の存続期間

意匠権の存続期間は、出願日から5年であるが、最大4回、存続期間の更新を行うことができる。このため、意匠権は、最長で25年間存続させることが可能である。

提供庁としてのDASシステムの利用開始

トルコ特許商標庁は、世界知的所有権機関(WIPO)が提供する、デジタルアクセスサービス(DAS)に参加したことを発表した。2022年6月1日よりトルコにおいて、DASシステムの利用が開始されている。これにより、日本国特許庁とトルコ特許商標庁との間で、優先権書類を電子的に交換することが可能となった。

なお、現時点では、トルコ特許商標庁は、優先権書類を第二国へ提供する庁(提供庁: Depositing Office)としてのみDASシステムに参加しており、第一国から取得する庁 (取得庁:Accessing Office)としてのサービスは行っていない。

トルコにおける産業財産法施行規則の改正

2019年7月8日に、トルコの産業財産法施行規則の一部が改正され、登録意匠の部分的な更新を申請する際に必要だった「公証された署名文」の提出が不要となり、手続きが簡素化された。

改正前の規則では、上記の申請に関し、自然人の場合は公証された署名文またはその公証された写しを提出する必要があった。また、法人の場合は公証署名リストまたはその公証された写しを提出する必要があった。

しかし、公証を得るためには費用と時間がかかり、申請者の書類作成の負担を増加させていた。そのため、今回の改正により、以下に挙げる手続きについて、公証された署名文または公証署名リストは不要になった。

なお、弁護士または代理人を通じて申請する場合、弁護士または代理人に、これらの申請について実施する権限を明確に含む委任状を、申請書と併せてトルコ特許商標庁に提出する必要がある。

<公証された署名文等の提出が不要となった手続き>

  • 登録意匠の部分的な更新
  • 登録意匠の部分的または完全な放棄
  • 公開された意匠出願に対して提起された異議申立の撤回
  • 意匠出願に関する決定に対する不服申立の撤回

■ハーグ協定

  • 1)締約しているハーグ協定:ジュネーブ改正協定 (1999)
  • 2)発効日:2005 年 1 月 1 日
  • 3)締約国が行った宣言
      ・拒絶の期間を12ヶ月とする。(第 18 規則(1)(b))
      ・国際登録の効果の日(第 18 規則(1)(c)(i))
      ・国内法令に基づく最長の保護の存続期間(第 17 条(3)(c))

 

 

トルコ関連情報へのリンク

トルコ特許庁:
http://www.turkpatent.gov.tr/

諸外国・地域・機関の制度概要および法令条約等(日本国特許庁):トルコ産業財産権法の和訳が閲覧できます:
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/mokuji.html

〔コラム:日本とトルコとの関係~親日国トルコ〕

 日本とトルコとの関係は、歴史的に友好関係にあり、日本人に好感を持つトルコ人も多いと言われています。
 この友好関係の原点となったのが、1887年の小松宮彰仁親王同妃両殿下によるオスマン帝国への公式訪問と、1890年のエルトゥールル号事件です。
 エルトゥールル号事件は、上記公式訪問に対する答礼として日本に派遣されたオスマン提督らを乗せた軍艦エルトゥールル号が、その帰路、紀州・串本沖で台風により沈没した事故により乗組員587名が死亡したが、日本側官民あげての手厚い救護により69名が救助され、後に日本の巡洋艦によりトルコに送還された事件です。
 この官民あげての手厚い事後対応が、トルコ人の心を打ったとされています。
 このように歴史的に友好関係にある日本とトルコ。トルコの経済発展を背景として、数年後には、両国は経済的なパートナーとしての互いの存在感を高めているかもしれません。

 

 

 

主席 弁理士/特定侵害訴訟代理人 スペシャリスト  塩川 信和


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