ベトナムの概要
(1)一般事情および経済
- ①面積:329,241平方キロメートル(日本の約85%)
- ②人口:約8,579万人(2009年4月1日時点国勢調査)
- ③首都:ハノイ
- ④言語:ベトナム語
- ⑤宗教:仏教、カトリック、カオダイ教ほか
- ⑥主要産業:農林水産業、鉱業、軽工業
- ⑦GDP(2010年):1,981兆ドン(約1,015億米ドル)
- ⑧一人当たりGDP(2010年):1,168米ドル
- ⑨輸出額(2010年):716億ドル
主要輸出品目 :縫製品、履物、水産物、原油等
主要輸出相手国:米国、日本、中国、スイス、オーストラリア
- ⑩輸入額(2010年):840億ドル
- 主要輸入品目 :機械機器(同部品)、鉄鋼、石油、布等
- 主要輸入相手国:中国、日本、韓国、台湾、タイ
(2)現行ベトナム知的財産法について
1996 年7月1日に施行された民法の中に工業所有権に関する規定が含まれ、従来の法律や規則を改め工業所有権法に改正された。
その後知的財産権に関する規則が民法から独立し、知的財産法として2006 年7月1日に施行された。現行法は2009年6月19日の法改正により2010年1月1日に施行されている。
加盟している主な国際条約はパリ条約 (Paris Convention 1949.3.8効力発生)、世界知的所有権機関を設立する条約(WIPO条約, 1976.7.2効力発生)、特許協力条約(PCT, 1993.3.10効力発生)、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(Trips協定, 2007.1.11効力発生)、標章の国際登録に関するマドリッド協定(マドリッド協定, 2006.7.11効力発生)。
(3)ベトナムの現状
2007年1月WTOに加盟以降、BRICsに続く新興国グループVISTAの一つとして、将来の発展が期待されている。また、賃金が中国の3分の1程度のため、ネクストチャイナとしても注目され、先進国の企業が生産拠点を中国から移し始めている。
知的財産面でもWTO加盟に備えて制度が整備されてきた。主な知財関連の国際条約にも加盟しており、ASEAN諸国の中でも際立って積極的であるといえる。
近年、イノベーションを実践する製造業が発展する兆しがあり、知的財産関連の出願数も増加している。
特許制度情報
1.出願から特許まで
手続言語
手続言語:ベトナム語(省令7.2b(ⅱ))
出願から特許まで
特許を受けるためには、発明が不特許事由に該当せず、且つ新規(New)で、進歩性(Inventive Progress) を有し、産業上利用性 (Industrial Applicability) を有していなければならない。
次のものは、発明として特許を受けることができない。
① 発見,科学的理論,数学的方法
② 精神活動の実行,飼育動物の訓練,ゲーム,事業遂行を行うための計画,企画,規則又は方法,コンピュータ・プログラム
③ 情報の提示
④ 審美的特徴のみの解決
⑤ 植物品種,動物品種
⑥ 植物及び動物の生産のための本質的に生物学的性質の方法であって,微生物学的方法以外のもの
⑦ ヒト又は動物のための疾病予防,診断及び治療
発明は,それが発明登録出願の出願日前,若しくは該当する場合は優先日前に,ベトナム国内又は国外において,使用により又は書面若しくは口頭での説明その他何らかの形態の手段により,公然と開示されていないときは,新規であるとみなされる。(60条(1))
なお、発明を守秘義務のある者にのみ知られた場合、発明は新規性を喪失しない。(60条(2))
(新規性喪失の例外)
発明が新規性を喪失した場合においても、以下の場合には公知となった日から6ヶ月以内に出願された場合には、喪失しなかったものとみなされる。(60条(3))
① 発明が、特許受ける権利を有する者の意に反して公知になった場合。
② 発明が、特許を受ける権利を有する者の研究集会において発表することにより公知となった場合。
③ 発明が、特許を受ける権利を有する者によりベトナム国内博覧会又は公に認められた国際博覧会において展示された場合。
発明が、出願日(又は優先日)前の国内又は外国において既に公表されている発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができなかった場合には、その発明は進歩性を有する。
発明が、同一物を大量生産することができ、又は反復継続的に同一の結果を達成することができる場合には、その発明は産業上利用可能性を有する。
① 出願は方式審査され、要件を満たしていない場合、受理拒絶の予定を出願人に通知(応答期間は1ヶ月以内)される。(省令13.6 a))
② 出願は、原則出願日(又は優先日)から19ヶ月後に公開される(PCT国内移行の場合、出願が適法なものとして受理された日から2ヶ月以内に公開される。)(省令14.2 (ⅰ)(ⅱ))。
④ 審査請求制度が採用されているため、出願人は出願日又は優先日から42ヶ月以内に、審査請求をしなければならない。(省令25.1(ⅱ))
⑤ 審査官が出願を審査した結果、特許要件を満たしていないと判断した場合には、応答期限を指定して拒絶理由を通知する。この拒絶理由通知に対して、出願人は2ヶ月以内に意見書や明細書等の補正書を提出することができる。(省令15.7(ⅰ))
出願人は、省令の規則9.2の規定に基づき、上記の期間の延長を請求することができる。審査官の審査結果に対し、出願人は審判請求をすることもできる。
⑥ 審査の結果特許要件を満たしていると判断した場合には、特許を付与すべき旨の決定をおこなう。この決定に対して必要な料金が納付された場合、特許が登録原簿に登録される。その後、特許権者に特許証が発行される。保護期間は出願日から20年。
⑦ 補正又は申請書の明細書に記述した内容を超えて、保護範囲(数量)を拡張したり、申請書に記述する対象の本質を変えることは認められない。(省令17.1(c))
⑩ 特許出願を実用新案出願に変更することは認められる(17.3a)。
⑫ 対応外国出願の情報提出について
出願人は、対応外国出願に関する情報をベトナム国家工業所有権庁に提出することができる。対応外国出願の審査結果を提出することによって、審査を促進することが可能。提出書類は、は以下のとおりです。
a)対応外国出願において発行されたサーチ結果及び審査結果の写し
b)対応外国出願の許可された明細書(特許公報又は登録公報の写し)
c)当該発明の技術内容について対応外国特許庁により発行された書類の写し
優先日から31 ヶ月以内に国際出願時の明細書等の翻訳文を提出する必要がある。(省令27.4a)
(i) 出願日(PCT 出願経由ベトナム出願の場合は、国際出願日)から20 年間。
(ii) 年金:登録後1年目から納付する必要がある。
実用新案(Utility Solution)制度情報
実用新案に関する独立した法律はなく、特許等と共に知的財産法((Law on Industrial Property)の中で規定されています。保護対象は特許と同様(日本の実用新案法と違い、物品等に限定されずに方法も保護対象)。特許出願の規定が実用新案出願にも適用される。
(特許と実用新案の相違点)
特許の場合は、新規性、進歩性、及び産業上利用性の要件が要求されるのに対し、 実用新案の場合は、新規性及び産業上利用性の要件のみ要求され、進歩性の要件は要求されない。
出願日(又は優先日)から36 ヶ月以内。
(特許の場合は、出願日(又は優先日)から42 ヶ月以内。)
出願日から10 年
(特許の場合は、出願日から20 年)
商標制度情報
1.国際分類の採用
2.一出願多区分を採用
3.2006年7月11日付でマドリッドプロトコルに加入
4.出願時に必要な書類・情報
(1)願書
願書に記載する情報は、以下の通り
- 出願人の名称・住所・代表者氏名
- 指定商品/役務とその分類(ベトナム語で明示しなければならない)
(2)商標見本
出願商標が外国語の単語または語句である場合は、ベトナム語の翻訳や音訳を付さなければならない。
(3)委任状
公証・認証不要
5.出願審査のながれ
方式に不備がなければ、出願受理日から2ヶ月以内に出願内容が公開される。実体審査の期間は、出願公開日から9ヶ月。
審査官より拒絶理由が通知された場合には、出願人は意見書・補正書の提出が可能である。
ベトナム商標制度
≪出願~登録までのフローチャート≫
6.存続期間
商標登録出願の日から10年
7.商標権の存続期間更新
10年毎の更新が可能。
更新手続は、存続期間満了日の6ヶ月前までに行わなければならない。
更新手続時、商標登録証の原本を提出する必要がある。
8.登録商標の使用義務
登録商標がベトナム国内で継続して5年以上にわたってその指定商品/役務について使用されていないときは、第三者は請求によりその商標登録を取り消すことができる。
9.コンセント制を採用
商標法上に規定はないが、実務上、コンセント制を採用している。異議申立の審理等において、同意書を提出することができる。ただし、コンセントの採否は担当審査官の裁量に委ねられている。
意匠制度情報
1.保護対象
(1)定義:形状、線、サイズ、色彩またはこれらの組み合わせによる製品の外観
(色彩は意匠の形態特徴を表す一要素として取り扱われる)
(2)登録要件
- 新規であること(世界主義を採用)
- 創作的であること
- 産業上の利用可能性があること
(3)その他
※一意匠一出願
※部分意匠制度あり
2.出願時に必要な書類・情報
※手続言語:ベトナム語
(1)願書
願書に記載する情報は、出願人の名称・創作者の氏名・優先権主張の有無、物品の名称等
(2)意匠の説明書(クレーム) ※必須
- 公知の意匠との相違点を明示しなければならない
- 意匠の内容を表わす特徴を明示しなれければならない(例:物品の全部または一部が透明の場合はその旨を記載)
- 変形から構成される意匠の場合は、これらの変形を十分に明示しなければならない
- 意匠が組物に係る場合には、組物を構成する各製品の特徴を明示しなければならない
(3)意匠の一揃いの写真または図面
- 6面図と斜視図
- 5部提出する
- 図面等の代わりに見本・ひな形を提出することは認められていない
(4)委任状
包括委任状制度あり
3.審査
(1)出願審査のながれ
方式審査の後、実体的な審査が行われる(審査請求不要)。方式上有効であるとして受理された日から2ヶ月以内に出願内容が公開される。
審査官より拒絶理由が通知された場合には、出願人は意見書・補正書の提出が可能である。
ベトナム意匠制度
≪出願~登録までのフローチャート≫
(2)不登録理由
- 物品の機能にのみ基づく物品の外観
- 公共のまたは工業上の建造物の外観
- 製品の使用中に見えないもの
(3)新規性喪失の例外規定
以下に該当する意匠は、新規性を欠くとはみなされない。
ただし、公開または展示の日から6月以内に出願されることを条件とする。
- 創作者または譲受人の許可なしに、他人により公開された場合
- 創作者または譲受人により、学術的発表の形態で公開された場合
- 創作者または譲受人により、ベトナム国内博覧会又は公式若しくは公認の国際博覧会において展示された場合
4.存続期間
出願日から5年
(2回更新可/最長15年)
5.権利範囲
- 意匠権者は、登録意匠および類似意匠について排他的権利を有する。
- 使用権の設定はベトナム特許庁に登録を要する(第三者対抗要件)。ただし、未登録でも当事者間では有効。
模倣品対策
●模倣品・海賊版の出現状況
深刻な模倣品の問題に直面している。
侵害品の数と範囲が増加しており、また、印刷技術の進歩等によって侵害の方法がより巧妙になっている。発生源については、模倣品・海賊版の相当数は密輸入されるものであり、中国との北部国境において最も活発な密輸活動が報告されている。
●対策
侵害品の流通をストップさせることが最終目標である場合には、行政措置がもっとも効果的であるケースが多い。
具体的には:
- 警告
- 罰金(最高500,000,000VND=約180万円)
- 模倣品および製造装置の没収
- 虚偽情報の強制修正
- 侵害要素の強制的な除去
迅速性に欠けるため、主に損害賠償請求の手段と考えられている(侵害品の問題を訴訟で解決するという方法は未だ定着していない)。
ベトナムでは知的財産関連の判例の数が少ないうえに判例の公開が十分でないため、裁判所の判断傾向を把握するのが困難。
権利者は、ベトナム国境を越えて輸出入される商品の通関の監視および差し止めを税関に請求できる。ただし、権利者は侵害の主張が誤っていた場合の税関の懸念を緩和するため、侵害疑義物品に知的財産権の侵害があることを示す予備的な証拠を集めて提出し、その主張に誤りがあった場合には賠償金の支払責任を引き受けなければならない。
侵害行為によって社会に深刻な影響を与えられた場合や再犯の場合には、刑事訴訟が実施される。
権利者の請求は、刑事訴訟の必要条件ではない。ただし、権利者は侵害の事実を示す一応の証拠を添えて所管当局に告訴状を提出できる。所管当局は、この証拠を予備的証拠として捜査・検証をおこなう。
刑事罰の対象となった場合でも、権利者は損害賠償を請求可能(…民事裁判所に請求を提出しなければならない)。
- 権利保有者が主導的に所管当局と緊密に協力し、侵害者に対してエンフォースメント措置をとることが重要
●将来に向けて解決すべき課題
司法制度が未発達
行政手続の透明性・公平性に対する不信(汚職の問題が深刻)
国民への知財教育が不十分
≪ 解 決 策 ≫
- 法制度の構築
- 手続の透明性の確保
- 表現の自由の確保
- 国民への啓蒙活動
↓
4.ベトナムに関する資料
ベトナム特許庁
http://www.noip.gov.vn/
知的財産法・産業財産権に関する政令・権利保護と知財管理に関する政令・ 産業財産権の行政罰に関する政令・ 産業財産権に関する省令・ベトナム知的財産法の日本語訳は日本特許庁HPの下記URLからダウンロードできます。
http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/mokuji.htm
ベトナムの産業財産権制度およびベトナム侵害対策概要ミニガイドは下記URLからダウンロードできます。
http://www.iprsupport-jpo.jp/soudan/miniguide/miniguide.html