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米 国 特 許 施 行 規 則 改 定
特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
平成16年12月20日
(文責:新 井)
1.はじめに
米国特許庁は21世紀戦略計画を推進していく上で施行規則に対して一部改定し、その最終改定版を去る2004年9月21日に公開しました。
実務上の影響が大きい事項について以下に説明します。
2.Incorporation by Reference (37CFR§1.57(a)) (施行日:2004年9月21日)
改定事項のうち我々の実務に関係の深いものとして、Incorporation by Referenceに係る改定があります。本改定は、米国出願において明細書のあるページ或いは図面の一部をUSPTOに提出しそこなったという不注意による(inadvertent)ミスを補正により治癒可能とすることを目的とするものです。本改定規則の対象となるのは、2004年9月21日以降の米国出願です。
上記改定規則の内容によれば、米国特許出願時に、基礎出願の優先権を主張しておくだけで、この基礎出願の内容が上記米国出願中に組み入れたとみなされます。したがって、従前のように、基礎出願の内容を米国出願中に組み入れる旨のIncorporation by Referenceの記載をする必要がありません。
なお、基礎出願の内容を Incorporation by Referenceにより組み入れる旨を米国特許明細書中に記載しなくても、出願時に優先権主張を行うだけで、基礎出願の内容は米国出願に組み込まれるとみなされますが、USPTOは、今後もincorporation by reference記載を米国特許明細書中に記載することを推奨しています。
また、出願人が米国出願明細書において意図的に基礎出願の内容の一部を削除している場合、優先権主張を行っていたとしても、審査官によるmissing partの指摘に対して応答しないことによって、上記意図的な削除を維持することが可能となります。
本規則下で基礎出願に基づいて補正を行う場合、基礎出願が英語で記載されている時にはこの基礎出願の写しを提出することが必要であり、基礎出願が非英語言語で記載されている時にはこの基礎出願の英訳文を提出すること、及び、基礎出願における補充箇所を特定することが必要です( 37CFR§1.57(a)(1)(i),(ii),(iii))
3.Supplemental Amendment (37CFR§1.111) (施行日:2004年10月21日)
実務に関係の深い他の改定事項として、Supplemental Amendmentに係るものがあります。
従前は、Office Actionに応答した後であって、審査官が本件を再考する前であれば、Supplemental Amendmentの提出が認められていました。
これに対して、2004年10月21日以降は、一旦応答してしまうと、自由にSupplemental Amendmentを提出することは認められなくなりました。Supplemental Amendmentをファイルするには、事前に、”Request for Suspension of Action”(37CFR§1.103(a)/(c))をファイルし、許可を求めることが必要です。
サンプル1
非自明性に係る拒絶理由を受け、これに対して実験を行って追試データを追完したい場合、OAに対して応答書を一旦ファイルした後、37CFR§1.103(a)に基づいて、その理由と共に”Request for Suspension of Action”をファイルし、許可を得る必要があります。ただし、許可された審査中断の期間内に上記追完を行わなければならない。
サンプル2
Final OA を受領し、これに対して応答書とRCEをファイルする場合であって、応答書の内容を充実させるためにSupplemental Amendmentをファイルしたい場合、応答書とRCEのファイルに加えて37CFR§1.103(a) に基づいて、その理由と共に”Request for Suspension of Action”をファイルし、許可を得る必要があります。ただし、許可された審査中断の期間内に上記追完を行わなければなりません。
なお、Supplemental Amendmentが次①~⑥に該当する場合、USPTOは裁量により受理します。
1クレームをキャンセルする場合
2審査官の示唆に応じる場合
3出願を許可にするような補正を行う場合
4USPTOの要求事項に従う場合
5たとえばタイプミス等の形式上の軽微な補正を行う場合
6審判手続における争点を簡素化する場合
4.Requirements for Information (37CFR§1.105) (施行日:2004年10月21日)
改定後の37CFR§1.105の規定によれば、本件出願に関し不明な点があれば、審査官はOA時に出願人に対して技術(或いは事実関連)情報の開示を要求することがきるようになりました(2004年10月21日施行)。
§1.105(a)(1)(viii)によれば、関連技術、明細書の開示事項、及び/又はクレームの要旨に関し、出願人が知る技術情報、及び特許性に関する事実情報、並びに、各事項に関する審査官の理解が適切か否かに関する事実情報等は、審査官が出願人に対して開示要求できる上記技術情報として例示されています。
§1.105(a)(3)によれば、審査官が出願人に対して技術(或いは事実関係)情報を要求する場合として次の3つの場合が挙げられています。
1技術情報に関する開示要求を行う場合
2出願人の事実関係知識に対する質問を行う場合
3審査官の記載に同意するか否かの質問を行う場合
§1.105(a)(4)によれば、出願人が上記質問及び情報開示要求に対して回答できない場合(技術情報を有していない場合)、または即答できない場合、その旨の回答を行うことによって、審査官の要求に完全に応答したことになる旨、規定されています。
出願人サイドで相当な努力をしたにもかかわらず審査官の要求に応じることができない場合、その旨の応答をすることが認められていますが、このような回答は、後日、出願人に不利な結果をもたらすことになる可能性があることに留意ください。
たとえば、§112条の第6パラグラフに基づいてクレームの用語の範囲を解釈する場合、クレームされた機能を実現する構成を明細書で特定することが必要ですが、審査官が、クレームの機能表現に対応する構成が明細書中において不明瞭である判断し、それを明瞭にすべく出願人に問い合わせたが明瞭な回答が得られなかった場合、§112条、第1又は第2パラグラフに基づく拒絶を審査官は行うことになります(56512 Federal Register/Vol. 69 No. 182/Tuesday, Sep 21, 2004/Rules and Regulations)。
5.Preliminary Amendment (37CFR§1.115) (施行日:2004年9月21日)
更に他の改定事項としてPreliminary Amendmentに係るものがあります。
§1.115(a)の規定する Preliminary Amendmentとは、First OA の送達日の前に特許庁に受理される補正書を意味します。上記補正書が出願と同日に提出される場合には、補正書の内容は出願時の開示内容と見なされます(§1.115(a)(1))が、出願日以降に受理された補正書は原明細書(出願時の明細書)の開示内容とは見なされません(§1.115(a)(2))。
§1.115(b)(1)によれば、クレーム全てをキャンセルしながらも新規のクレームを有しない予備補正書は受理されない旨、規定されています。
§1.115(b)(2)(i), (ii)には、Preliminary Amendmentが不受理となる場合として次の場合が例示されています。すなわち、不受理か否かは、First OA を準備することに対してどの程度の妨げとなるかに依存して決定されます。具体的には、Preliminary Amendmentがファイルされた時点におけるOA準備の進み具合、及びPreliminary Amendmentの内容が考慮されて、上記不受理か否かが決定されます。
§1.115(b)(3)(i), (ii), (iii)は、Preliminary Amendmentが必ず受理される場合を規定しています。すなわち、次の場合には、Preliminary Amendmentは確実に受理されます。
(a)出願後3ヶ月以内に提出される場合
(b)継続出願手続を行った日にファイルされる場合
(c)PCT出願の国内移行日より3ヶ月以内に提出される場合
以 上