特許事務所 USA支援室
CONTENTS
CONTACT

特許業務法人
HARAKENZO
WORLD PATENT & TRADEMARK


大阪本部    

〒530-0041
大阪市北区天神橋2-北2-6
大和南森町ビル
TEL:06-6351-4384(代表)
FAX:06-6351-5664(代表)
E-Mail:

東京本部    

〒105-6121
東京都港区浜松町2-4-1
世界貿易センタービル21 階
TEL:03-3433-5810(代表)
FAX:03-3433-5281(代表)
E-Mail:

広島事務所 

〒730-0032
広島市中区立町2-23
野村不動産広島ビル4 階
TEL:082-545-3680(代表)
FAX:082-243-4130(代表)
E-Mail:

2018年3月1日開設
名古屋事務所

〒453-6109
名古屋市中村区平池町4-60-12
グローバルゲート9 階
TEL:052-589-2581(代表)
FAX:052-589-2582(代表)
E-Mail:


上記トレードマークの背景地図は、1991年当時の特許登録件数を陸地の大きさと形状に擬態化して、地図状に表現したものです。

プライバシーポリシー


USA支援室
USA知財情報 特許事務所 USA知財情報
室長(特許担当者)  岡部 泰隆 (大阪在籍)
意匠・商標担当者  石黒 智晴 (東京在籍)
大阪本部TEL
大阪本部FAX
東京本部TEL
東京本部FAX
E-mail
: 06 - 6351 - 4384
: 06 - 6351 - 5664
: 03 - 3433 - 5810
: 03 - 3433 - 5281

米国記述要件違反に係るCAFCの大法廷審理判決

特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
平成22年03月29日
(文責:新 井)

1.はじめに
ARIAD PHARMACEUTICALS, INC.(原告、特許権者)は、米国特許U.S. Patent 6,410,516(licensed from Massachusetts Institute of Technology (MIT), Harvard, and the Whitehead Institute)のクレーム80, 95, 144, 及び145発明をELI LILLY AND COMPANY(被告)が侵害しているとの理由で提訴しました。
これに対し、ELI LILLY AND COMPANY は、クレーム80(*1), 95, 144, 及び145発明が、記述要件(§112 条の第1パラグラフ(*2):Written Description Requirement)を満たしていないので無効である旨を反論しました。
これを受けて、CAFCは、2009年4月3日に、クレーム80, 95, 144, 及び145発明が、広すぎて当初明細書に開示の記載によってサポートされていないので、記述要件を満たしていない旨を判示しました(2008-1248 (United States Court of Appeals for the Federal Circuit 2009-04-03))。


2.大法廷審理(*3)の申立
2009年8月21日に、ARIAD PHARMACEUTICALS, INC.が上記CAFCの2009年4月3日付判決に対して2009年6月に記述要件に関して申し立てていた大法廷審理を認める旨の指令(en banc order)が出されました(Ariad Pharmaceuticals, MIT, and Harvard v. Eli Lilly (Fed. Cir. 2009) (en banc) )。

ARIAD PHARMACEUTICALS, INC.は、次の2つの事項を大法廷審理における争点として挙げています。

(i) 35 U.S.C. § 112, paragraph 1に含まれる記述要件は、同パラグラフの実施可能要件(*4)から分離したものであるのか否か(実施可能要件とは別の要件を明細書の開示に対して付加するものか)?
(ii) もし、制定法において記述要件が実施可能要件から分離したものであるのであれば、記述要件の適用範囲および趣旨は何か?


3.大法廷審理判決
2010年3月22日に、争点の記述要件に対し、大法廷審理判決をCAFCは下しました*5 。これによれば、記述要件に対する従来の解釈を踏襲したものとなっています。

(3-1.) 法的解釈および支持する考え方をなす根拠について
CAFCは、35 U.S.C. § 112, paragraph 1において別個独立の3要件(記述要件、実施可能要件、最良実施態様(ベストモード)要件))を認識した解釈を採用しています。記述要件を支持する考え方の根拠として次の3点を挙げています。

(a) 特許査定プロセスにおける代償のための必要性(特許権者は、裁判官および公衆が発明を理解でき且つ特許権者の排他的独占権を設定できるように、発明を十分に開示しなければならない。)
(b) inventing communityの確立されている期待
(c) 実際の発明、および「発明という困難な仕事を実際に成し遂げた人(すなわち、クレームに記載の全ての特徴を備えた完全且つ最終の発明を着想し、その努力の成果を公衆に開示する人)」)に報いることの促進。


(3-2.) 記述要件テストとその範囲
CAFCは、従前の記述要件テストを肯定しています。
すなわち、「特許明細書には、発明者の発明を当業者が明瞭に認識できるように記載されていなければならず、また、記述要件としての十分性の基準は、依拠する出願当初明細書の開示が、出願の時点でクレーム発明の主題が発明者によって「所有」されていたことを合理的に伝えるものであるか否かである。」旨が確認されました。

CAFCは、記述要件テストが、技術分野に関係なく、どの技術分野についても適用され、すべての発明に対してそれらの審査段階において適用されるものである旨を判示しています。また、上記「所有」は明細書において示されていなければならず、上記記述要件テストは、当業者の立場から明細書の隅々まで客観的に調査されることを求めています。この客観的調査に基づいて、当業者にとって理解できるように発明が明細書中に記載されていなければならず、発明者は実際に発明したクレーム発明を明細書中に示さなければならない旨が判示されています。

また、今回の大法廷審理判決において、CAFCは次のことを明瞭にしています。

・ 記述要件は、複数の例または実際の実施を求めているのではない。明確な方法でクレーム発明を特定する推定実施は記述要件を充足できるのに対し、発明を単に明らかにする記載は記述要件を充足するものではない。
・ 記述要件を充足するか否かは事実上の問題である。

以 上




*1 Claim 80. A method for modifying effects of external influences on a eukaryotic cell, which external influences induce NF-KB-mediated intracellular signaling, the method comprising altering NF-KB activity in the cells such that NF-KB-mediated effects of external influences are modified, wherein NF-KB activity in the cell is reduced, wherein
reducing NF-KB activity comprises reducing binding of NF-KB to NF-KB recognition sites on genes which are transcriptionally regulated

*2 出願人が発明したという情報を明確に伝え、公衆がその発明に関する情報を入手できるようにするために、記述要件が規定されています。出願当初の明細書中に記載のない事項を出願後にクレームに追加する補正は、この112条第1段落違反として拒絶されます(MPEP § 2163.06)。この記述要件を満たすか否かは、その記述が当業者にとって、クレームされた発明を明確に認識させるものであるか否かによって通常決定されます(MPEP § 2163.02)。なお、記述要件は、出願時の当業者を基準として判断されます(MPEP § 2163, I.B.)。

*3 大法廷(en banc)
 米国の連邦控訴裁判所では、通常は三名でpanel(裁判体)を構成するが、必要に応じて、その裁判所の裁判官の全員で法廷を構成して事案を処理することがあります。これがen bancと呼ばれる手続です。連邦控訴裁判所では、en bancは、その裁判所の過半数の裁判官が求めた場合に行われます(28 U.S.C. 46(c))。これを決めるための手順には、それぞれの連邦控訴裁判所で違いがあります。
 米国連邦控訴裁判所の中でも、1982年に新設されたCourt of Appeals for the Federal Circuit (CAFC)は、全米の特許法等についての判例を統一することを設立目的の一つとしています。CAFCでは、各ケースについて、公にされる前に裁判所内で10日間回覧されます。担当裁判体の裁判官以外の裁判官は、この期間中に異論を挟むことができ、場合によっては en bancの手続きを求めることができます。

*4 クレーム発明が当業者にとって製造又は使用できるものであることを要求するものであり、発明が有意な方法で公衆に伝達されることを保証するものです(MPEP § 2164)。実施可能要件を満たしているか否かは、クレーム発明を実施するのに当業者にとって過度な実験を強いるか否かによって通常決定されます(MPEP § 2164.01)。なお、実施可能要件は、出願時の当業者を基準として判断されます(MPEP § 2164.05(a)、(b))。実施可能要件に違反する場合として、(i) 構成要素が一つしかないクレーム(single means claim)が存在する場合、(ii) 動作しない実施例がクレームの範囲に含まれている場合、(iii) 明細書中で必須(critical)とされている特徴がクレームに記載されていない場合等があります(MPEP § 2164.08)。

*5 LINK: http://www.cafc.uscourts.gov/opinions/08-1248.pdf

このページのトップへ