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US Case Brief(10) 実施可能要件は商業的具現化を必要としないことが示された判例
原謙三国際特許事務所
平成16年06月14日
(文責:新 井)
実施可能要件は商業的具現化を必要としないことが示された判例
(CFMT, Inc v. YieldUP Int’l Corp., No. 01-1452 (Fed. Cir. Nov. 12, 2003))
1.簡単な経過説明
(a) CFMT は、自社の所有する特許権(USPN. 4,778,532 及び USPN. 4,917,123)をYieldUP が侵害しているとして地裁へ提訴した。上記2つの特許は、半導体ウェハの清浄を行うためのクローズド・システムに係るものであり、従来のオープン・システムを改良したものである。発明者は、TIのために、クレーム発明を実施したマシンを据え付けた。当初、このマシンは、TIの商業的清浄度の規格に適合しなかった。このような不具合は、USPN. 4,778,532 の審査過程においてUSPTOに開示されなかった。その後、不具合は解消され、CFMT は、この改良発明について特許出願を行い、これが USPN. 4,911,761 として特許発行された。
(b) YieldUP は、略式裁判申立において、『上記2つの特許が、TIの規格を満足するように商業的に実施できなかったので、特許法の実施可能要件に違反し、それゆえ無効である。また、CFMT は、重要な情報をUSPTOに開示しなかったので、上記2つの特許に基づいて権利行使をすることができない。』旨を開陳し、その言い分が認められた。
(c) これを不服とし、CFMT はCAFCに控訴した。CAFC は、地裁に差し戻す判決を下した。なぜなら、地裁は、違法にも、特許において実施が商業的規格を満足させ得るように開示されていなければならないことを要求していたからである。実施可能要件は、発明者に、商業市場において成功するための高度な規格を満足することを要求していない。上記2つの特許は、単に、汚染要因物を取り除くことを要求しているに過ぎず、或る特定レベルまで汚染要因物を取り除くことを要求するものではない。なぜなら、クレーム中に、そのような洗浄度の規格が文言されていないからである。記録にある証拠によれば、油脂汚れが取り除かれたことが示されている。また、TIの商業仕様を満足させるためにTIで行われた長期にわたる実験は、実施不可能であることを示していなかった。
(d) 特許明細書は、”production documents”ではない。裁判所は、実施可能の判断基準日を出願日としており、出願後の進展を考慮しない。『半導体ウェハの洗浄』というクレームされたゴールを満足する場合に、『洗浄』は意味のあるものとなる。改良特許における更なる創作作業だけに基づいて実施不可能を明らかにすることはできない。
(e) CAFC は、更に、上記不公正行為(CFMTは重要な情報をUSPTOに開示しなかったこと)に係る地裁の認定を破棄した。なぜなら、地裁は、TIのデータが非常に重要であると誤認したからである。また、地裁は、審査過程における発明者のコメントや遺漏に基づいて、誤って推断した。地裁は、出願人が重要な虚偽の陳述を行ったとの認定において明らかに過ちを犯した。なぜなら、上記陳述は、不正確ではなく、虚偽の陳述の水準に達しておらず、しかもそれほど重要ではなかったからである。加えて、TIのデータは、クレーム発明の権利範囲に関し、取るに足らない妥当性を有しているのみである。TIの商業的データは、実施可能に係る法定規格を反映したものではない。このように、TIのデータは、重要ではなく、地裁は推断のための根拠を有していなかった。
2.結論
CAFC は、地裁の判決を破棄し、次の①及び②に基づいて本件を差し戻した。
① 地裁は、特許無効の認定において、実施可能要件に係る法律の適用を誤った。したがって、判決のその部分については撤回する。当業者が必要以上の実験をすることなくある洗浄レベルに到達できるか否かについて、重要事実に係る真の争点があるか否かを決定すべきである。
② 地裁は、出願人が不公正行為に関与したと結論する際に裁量権を乱用した。
以 上