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US Case Brief(16) 当業者に容易に知ることができたであろう情報の省略が故意によるものでなければ、ベスト・モード開示要件違反とならないことが示された判例
原謙三国際特許事務所
平成16年08月30日
(文責:新 井)
当業者に容易に知ることができたであろう情報の省略が故意によるものでなければ、ベスト・モード開示要件違反とならないことが示された判例
High Concrete Structures, Inc. v. New Enter. Stone & Lime Co., No. 03-1477 (Fed. Cir. July 29, 2004)
1.簡単な経過説明
(a) High Concrete Structures, Inc.
("High Concrete") は、米国特許U.S. P.N. 5,947,665 ("665 patent")を所有している。この特許発明は、方向を調節することによってコンクリート構造物等の重く嵩高い貨物の輸送をスムーズに行うための装置に係る。
上記コンクリート構造物は、一般に、トラックの床に横にして輸送される。この場合、上記構造物の幅が広いために、これを輸送するトラックは特大サイズの積載物を運搬するものが必要となる。
これに対して、
"665 patent"の発明によれば、或る角度で傾斜したフレーム上で貨物が積載されて輸送される。これにより、貨物の実効的な幅を小さくすることが可能となり、輸送の際、特大サイズのトラックの使用が不要となる。
"665 patent"の特許明細書中には、上記フレーム上に上記コンクリート構造物を積載し、これを
輸送角度に回転する際にクレーンが使用されることが開示されていない。
特許明細書中には、重機を使用せずに、マニュアルで貨物をフレーム上で輸送角度に回転し得ることが開示されているのみである。
(b) "665 patent"を侵害しているとの理由で地裁に提訴された New Enterprise Stone & Lime Co. ("New Enterprise") は、summary judgmentの申し立てを行い、
クレーム発明を実施するベスト・モード(すなわち、貨物をフレーム上に積載して輸送位置に回転する際にクレーンを使用すること)を開示していないので"665 patent"は無効である旨を争点とした。地裁は、"New Enterprise"のsummary judgmentの申し立てを認める判決を行った。
(c) これを不服とし、
"High Concrete"は、CAFCに控訴した。"High Concrete"は、本件特許クレームがベスト・モード開示要件下で無効ではないことを開陳した。なぜなら、多くのタイプの貨物にはクレーンの使用は不要であると共に、
重量貨物を積載する際にクレーンが使用されることは公知であるからである。
(d) これに対して、
"New Enterprise"は、次のように反論した。クレーンが全ての場合に必要か否かに関係なく、
重量貨物に対してクレーンを使用することが好ましいにもかかわらず、発明者は、
クレーム発明を実施する好ましいモード(クレーンの使用)を開示することを怠っている。
(e) CAFCは、ベスト・モード要件について次の見解を示した。すなわち、35 U.S.C. sec. 112の規定によれば、明細書はクレーム発明を実施するために発明者が知っているベスト・モードを記載しなければならない。ベスト・モード開示要件下において特許権を無効とするためには、次の(1)及び(2)の認定が必要である。
(1) クレーム発明を実施するためのモードとして、開示したモードよりも更に良いモードを発明者が知っていた。
(2) 更に良い上記モードを発明者が故意に隠した。
2.結 論
CAFC は、次のように判示した。
"New Enterprise"は、重量貨物の輸送に経験豊富な者であれば、重量物を移動させる際にクレーンを使用することを知っているであろうことを争点にしなかった。操作を行うための情報及び知られた技術を故意に隠そうとした意図が存在することを証明できない限り、これらを故意に隠したとすることはできない。
発明の技術分野の者であれば容易に知っていたであろう情報の省略が故意によるものでなければ、この省略をもって、ベスト・モード要件違反とすることはできない。
以上より、地裁による特許権無効の判決を破棄し、更なる審理が行われるべく本件を差し戻す。
以 上