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US Case Brief(18) 弁護士の鑑定を入手していなかったからといって不利な推定がなされることはないことが示された判例

原謙三国際特許事務所
平成16年10月12日
(文責:新 井)

弁護士の鑑定を入手していなかったからといって不利な推定がなされることはないことが示された判例


Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH v. Dana Corp., Nos. 01-1357, -1376, 02-1221, -1256 (Fed. Cir. Sept. 13, 2004) (en banc)

1.簡単な経過説明
(a) Knorr-Bremse は、工業用の大型車両に搭載されるエア・ディスクブレーキを製造している。被告のDana Corporation (米国企業)は、スウェーデン企業のHaldex Brake Products AB 、及びその米国関連企業との間で、スウェーデン国内のHaldex によって製造されたエアー・ディスクブレーキを米国で協力して販売することに合意した。

被告は、1997年から1999年にかけて、Haldex によって製造されたエアー・ディスクブレーキ(the Mark II model)を100ユニット輸入し、これらを Dana Corporation 及び見込み客のトラックに据え付けた。

(b) 1999年8月31日に、Knorr-Bremse はヨーロッパのHaldex に対する侵害訴訟を提起する旨、及びKnorr-Bremse のU.S. Patent No. 5,927,445 ("the '445 patent") が1999年7月27日に特許発行された旨、をDana Corporation に通知した。

Knorr-Bremse は、Dana Corporation らを相手取り、2000年5月15日に侵害訴訟を地裁に提起した。

(c) 2000年9月に Haldex は、改良版のブレーキ・デザイン(the Mark III) を地裁へ提示し、この改良版ブレーキが"the '445 patent"を侵害していないことを確認する略式の申立を要求した。

(d) これに対して、Knorr-Bremse は、Mark II ブレーキが"the '445 patent"を文言上侵害していると共に、Mark III ブレーキが"the '445 patent"を文言上または均等論下で侵害している旨の判決を求める略式裁判を要求した。

(e) 地裁は、Knorr-Bremseの申立を認め、Mark II ブレーキが"the '445 patent"を文言上侵害している旨の判決を下した。2001年1月の公判を受けて、地裁は、Mark III ブレーキが"the '445 patent"を文言上侵害している旨の判決を下した。

(f) 故意侵害に係る争点について、Haldex は、Knorr-Bremse の特許に関して、ヨーロッパ及び米国の弁護士に相談していた旨、開陳した。しかしながら、Haldex は、”attorney-client privilege” に基づき、公判中、法律専門家の意見を提出すること、すなわち、法律専門家から得た助言を開示することを拒否した。

(g) 一方、Dana Corporation は、弁護士に相談していなかった旨を開陳した。判例に基づき、地裁は、法律専門家の上記意見が好ましくない結果であったとの認定を行った。

地裁は、状況証拠の全体性に鑑み、被告によるMark II ブレーキの使用が"the '445 patent"を故意侵害している旨、認定した。故意侵害の認定に基づいて、地裁は、35 U.S.C. sec. 285 下で、Mark II ブレーキに関して被告が弁護士費用を負担すべき旨の判決を下した。

(h) Dana Corporation らは、故意侵害に係る認定を不服とし、CAFC に控訴した。CAFC は、判例を再考し、4つの質問(*)に対するブリーフの提出を求めることとした。

(i) Dana Corporation らは、入手した弁護士の鑑定に関する”attorney-client privilege” の行使、及び Dana Corporation が弁護士の鑑定を得ていなかったことに基づく不利な推定は不当である旨、開陳した。

(j) 故意か否かは、状況証拠の全体性を考慮してなされ、幾つかのファクタの寄与を含み得る。地裁の判決によれば、”attorney-client privilege” の行使、又は弁護士の鑑定を得ていなかったことに基づいて不利な推定が行われている。

(k) しかしながら、この不利な推定は、Fromson v. Western Litho Plate & Supply Co., 853 F.2d 1568, 1572-73, 7 U.S.P.Q.2d (BNA) 1606, 1611 (Fed. Cir. 1988) において補足されており、次の一般的なルールが確立されている。

すなわち、鑑定を入手していなかった、または鑑定を入手していた場合であっても、特許権者の発明を実施したい或いは継続して実施したいという侵害者の欲求に反する内容であったと、裁判所が推定することは自由でなければならない。

(l) 一方、提示しなかった鑑定が顧客の訴訟に不利であるという推定は、弁護士―顧客間の関係を歪める可能性がある。その結果、弁護士―顧客間の関係の基盤の低下を招来する。特許事項に関し、顧客と弁護士との間で行われる開示に対する障害のリスクとなるべきものがあってはならない。なぜなら、そのようなリスクは、すべてのコミュニケーションに立ち入る可能性があり、最終的には、オープンで枠にとらわれない顧客と弁護士間の関係を促進するという公益を損なう虞があるからである。

2.結論
CAFC は、次のA~Dのように判示した。
結論A:顧客-弁護士間秘匿特権、及び/又は弁護士職務-活動成果秘匿特権を行使したからといって不利な推定がなされてはならない。このことは、法を遵守するという義務を低下させるものではない。

結論B: Dana Corporation は、Knorr-Bremse によるthe '445 patent の係属または特許発行の通知を受領した時、または侵害訴訟が提起された時に、独自に弁護士に法的助言を求めなかった。
CAFC は、弁護士に相談をしなかったからといって不利な推定を行うことは不当であると認定する。

他人の特許権を侵害することを回避するための相当な注意を払うという積極的な義務は残っている(L.A. Gear Inc. v. Thom McAn Shoe Co., 988 F.2d 1117, 1127, 25 U.S.P.Q.2d (BNA) 1913, 1920 (Fed. Cir. 1993)が、無罪を証明する弁護士の鑑定を求めておかなかったからといって、それをもって不利な推定、すなわち、そのような鑑定が好ましいものではなかったであろうという推定を形成するものではない。

結論C:地裁は、Haldex の行使した“attorney-client privilege”、及び Dana Corporation が法的助言を弁護士から得ていなかったことに加えて、幾つかのファクタに基づいて、被告の故意侵害を認定した。

しかしながら、不利な推定が存在しなくなった今、状況証拠の全体性における重要な変化が生じている。それゆえ、被告が故意侵害を行ったか否かを決定する証拠に対して、新たな重み付けが必要である。そのため、CAFC は、故意侵害の認定を取り下げ、上記争点の再審理のために本件を地裁に差し戻す。

結論D:判例は、一方で、特許権侵害に対する実質的な抗弁がなされたか否かが、状況証拠の全体性のうち斟酌されるべきファクタとして含まれることを示している。しかしながら、判例は、他方で、事実認定者が、特定のケースにおける各ファクタの強さによって正当化された重みを付与することが許されていることも示している。

CAFC は、このようなアプローチが、処理のためのファクタを抽出するのに好ましいものであると考える。なぜなら、このように大きなフレキシビリティによって、事実認定者は、下すべき決定を状況証拠のすべてに適合させることが可能となるからである。このように、CAFC は、” a per se rule” を採用することを差し控える。

 (*)
質問1:侵害訴訟の被告が弁護士―依頼者間秘匿特権および/または弁護士職務-活動成果秘匿特権を行使した場合、事実認定者が故意侵害について不利な推定を行うことは適切か。
Answer: No.

質問2:被告が法的助言を求めていなかった場合、故意侵害について不利な推定を行うことは適切か。
Answer: No.

質問3:もし、裁判所が法の変更が必要であり、本件においてなされた不利な推定は取り下げられるべきであると判断した場合には、本件の結論はどうあるべきか。
Answer: 地裁における故意侵害の認定は、状況証拠の全体性を再審理するために取り下げる。

質問4:侵害に対する実質的な抗弁の存在は、法的助言が入手されていない場合であっても、故意侵害を否定するに十分なものであるかどうか
Answer: No.


以 上

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