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US Case Brief(19) クレームに規定の化合物について明細書中に明確にしておらず、実施可能要件違反として特許無効の認定がなされた判例

原謙三国際特許事務所
平成16年10月18日
(文責:新 井)

クレームに規定の化合物について明細書中に明確にしておらず、実施可能要件違反として特許無効の認定がなされた判例


Univ. of Rochester v. G.D. Searle & Co., No. 03-1304 (Fed. Cir. Feb. 13, 2004), reh'g denied (July 2, 2004)

1.簡単な経過説明
(a) シクロオキシゲナーゼの働きを抑制することによって、伝統的な非ステロイド系の抗炎症性の医薬品が機能すると信じられてきた。シクロオキシゲナーゼは、2つの形態で存在する。第一の形態は COX-1 であり、これは、胃の上皮を保護するものである。第2の形態は COX-2 であり、これは、炎症の原因になるものである。

(b) University of Rochester ("Rochester")の科学者は、スクリーニング分析を推し進め、特定の薬物が上記のような選択性を示すかどうかについて決定し、これにより、U.S. Patent No. 5,837,479 を 1998 年に取得した。また、この出願から派生する分割出願手続を行い、この分割出願も特許付与された(U.S. Patent No. 6,048,850 ("the '850 patent"))。"the '850 patent" は、上記のような治療を必要とする宿主(人)に対する COX-2 遺伝子産物の働きを選択的に抑制する非ステロイド系化合物を投与することによって、宿主である人の体内で COX-2 の働きを選択的に抑制する方法に関するものである。

(c) しかしながら、特許明細書は、上記方法において使用すべき化合物について明確にしていなかった。"the '850 patent" が発行されたその日に、"Rochester" は、G.D. Searle & Co., Inc., Monsanto Co., Pharmacia Corp. と、Pfizer Inc. (以下、"Pfizer"と言う。)とを相手取り、侵害訴訟を地裁に提起した。

(d) "Pfizer" は、略式判決を要求し、35 U.S.C. sec. 112, para. 1 が要求する記載要件*1と実施可能要件*2とを満足していないので、"the '850 patent" が無効である旨を主張した。これに対して、"Rochester" は、クロスする形で争点の記載要件について略式判決を要求した。

(e) 地裁は、"Pfizer" による無効に係る略式判決の要求を認める一方、"Rochester" による略式判決の要求を退けた。

(f) これを不服とし、"Rochester" は、CAFC に控訴し、次のように開陳した。実施可能要件と無関係に記載要件が存在するわけではない。また、係争中の特許以外の証拠を”Pfizer” が提出していないので、記載要件に係る略式判決は許可されるべきである。更に、特許は有効であるとの推定が成立するので、"the '850 patent" が特許無効を証する、有力かつ明白な証拠とはなり得ない。

(g) これに対して、 CAFC は次の見解を示した。Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., 535 U.S. 722, 736, 122 S. Ct. 1831, 1839-1840, 152 L. Ed. 2d 944, 958, 62 U.S.P.Q.2d (BNA) 1705, 1712 (2002) において、最高裁は、記載要件を、実施可能要件やベストモード要件*3とは別の法的要件として認定している。また、記載要件によれば、記載内容から当業者が、クレーム発明を理解できると共に、発明者がクレーム内容を発明したことを認識できるように、充分詳細に特許明細書は記載されていなければならないからである。

2.結論
 CAFC は、次のように判示した。
 結論1:CAFC は、係争中の特許("the '850 patent")が無効であるとの地裁の略式判決を支持する。
なぜなら、"the '850 patent" は、方法のクレーム発明を実施するために使用することが可能な化合物の製造に関する手引きを与えるものでもないし、その化合物が当業者の知識の範囲内でもないので、実施可能要件を満足していないからである。


 結論2:上記地裁の略式判決は、地裁による裁量権の濫用には当たらない。
 これは、特許クレームが、すべて、COX-2 の選択的な化合物を必要としているにもかかわらず、特許明細書中にはそのような化合物についての開示は一切なく、このことが、"the '850 patent" 自体の無効を証しているからである。


*1 記載要件:明細書の発明を他の技術(従来技術等)と識別できるように記載しなければならない。
 *2 実施可能要件:当業者が発明を実施し、使用するのに十分な具体的手段、方法を明記しなければならない。
 *3 ベストモード要件:発明者が認識している最善の実施態様を記載しなければならない。

以 上

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